アカデミアのとある場所に新しく作られた生徒会室。
そこで俺と結は机に向かい合い、生徒会の仕事をしていた。
始業式からもう二週間ほどたち、他の役員も決まりいろいろあった。
まずは、ブルー生徒が夜間に襲撃されカードを奪われる、という事件。
この事件の解決が生徒会の初仕事で、夜間に犯人が出現するという場所で俺がブルー生に変装して張り込んでいると、犯人が現れた。身の丈もある大男だったのだがその特徴的な格好と、声からイエローの大原という生徒だと気が付いた俺はすぐにとびかかり、素顔を確認。で、大原に指示を出していた小原と言う生徒と共に捕まえ、犯行の動機を聞き、生徒指導の先生となった織斑先生に、事情を説明。織斑先生が解決したそうだ。
その後も、購買部のドローパンが盗難されるという事件が発生。
盗まれるのはアカデミアで飼っている鶏が一日に一個産むという卵で作った黄金の卵パンらしく、そのパンが大好きな十代たちが勝手に張り込みをして、それになんだかんだで付き合うことになった。
犯人は大山平という、ターザンのような恰好をした生徒だった。
森のほうへ逃げた大山を追っている途中、俺と結は篠ノ之博士の研究所の方に来てしまった。
そこでなんか博士に興味を持たれてしまった。
なんでも博士はアカデミアの施設の整備というのはついでで、織斑先生を追ってきたらしい。わかっていたけど。
で、博士も精霊が見えるらしく、精霊を複数連れている俺と結に目を付けたとか。危うく怪しい機械の実験台にされるところだった。
命からがら博士から逃げてみれば、もう事件は終わっていたらしく、十代が大山をデュエルで負かし、購買部のおばちゃんに謝らせていた。
他にもいくつか事件はあったがおおむね生徒会は順調。
「・・た・・つ・・」
順調
「た・くつ・・・」
じゅんt
「退屈ー!!」
「少しは黙って作業しろ・・・」
さっきからこんな感じだ。
今の生徒会の仕事は基本的に事務的なものがほとんどで、勉強は優秀だが自分の楽しいことが大好きな結は、延々と続く書類作業に飽きてきている(まあ、書類作業をやらせたら完璧にこなしてくれるのだが)。
故にさっきからこうやってぐちぐち言っているのだ。
「もう放課後から二時間もこうやって仕事しているのよ?!いい加減、息抜きしたいのよ!」
「十分前にプリン食べただろ」
この生徒会室は意外と設備がしっかりされており、エアコン、コピー機だけでなく冷蔵庫も完備されており、中には結が持ってきたお菓子やジュースが大量に入っている。
「それにカイ君と折角二人っきりなのに・・・」
「しょうがないだろう?仕事がたまっているんだからな」
まったく。前の倫理委員会は何をしていたんだ?
かなり前に出された、カードの紛失届やレッド・イエロー寮の設備の修理届。さらには、賄賂の証拠なんかもあって呆れ果てたのは記憶に新しい。
「でも~。やっぱり君といるときは・・・」
ん?結の気配が消えた?
「こうしていたいの♪」
いつの間にか俺の椅子の後ろに移動していた結は、抱きついて来た。無駄に達人じみたことを。
その豊満な胸が俺の背中に押し付けられいやがおうにも意識してしまう。
「ふふふ。ずっと、座っていたんだし、ちょっと運動しない?」
そう言って結はその手で俺の胸を撫でまわし始め
「お嬢様、今戻りまし、何をやっているのですか?」
丁度いいタイミングで、生徒会書記となった虚が来てくれた。ただし、俺に抱きついている結を見た瞬間、その視線は絶対零度を伴った物へと変わってしまったが。
「う、虚ちゃん。これは~その~」
虚の視線に冷や汗を流し始める結。
「少し、お話があります」
「い、いやいいよ!忙しいんだし早く仕事を「いいですね。OHANASIです」・・・はい」
そして二人は外に出て行った。
「さて、さっさと仕事を片づけるか」
次の書類に書いてあったのは「デュエルキング 武藤遊戯のレプリカデッキ展示会」だった。
武藤遊戯
この世界の人間なら、知らない人はほとんど皆無という人物で、初代デュエルキング。
その後の大会でも優勝を果たし、文字通り最強の称号をほしいままにした、まさに世界中のデュエリストの憧れ。
もっとも本人と知り合いである俺からすれば、気さくなで付き合いやすい人物で、世間の評価に対しても謙遜した姿勢を崩さない。
もっともそれを知るのは、一握りの人間のみで、ここアカデミアでも大人気だ。
そんな人物のデッキが展示されるというので、整理券を手に入れようと多くの生徒が購買に並んだ。
俺?
遊戯のデッキ調整に付き合ったことのある俺からすれば、もはや過去のものとなっているデッキなんて見る必要はない。
それに、当日の段取りが、いくつか生徒会に回ってきて、その処理に追われているのに並ぶ暇なんてあるか。
それでも結は並びに行こうとしたが、俺と虚で確保し、夏休みに海に旅行に行くことを条件にあきらめてもらった。
で、その展示会の前日の夜。俺は一人港にたたずんでいた。
「寒いですね。稲荷火ちゃん。こっちにも来てくさい」
「あ!フェニス。稲荷火は私の友達だぞ」
「いいじゃないですか。この子って抱きしめるとモフモフしていて、あったかいんですから~」
訂正しよう。ヒータとフェニスもなぜか実体化していた。
「最近私たちの影が薄い気がするんですよ」
「そうだぜ、カイ。たまには私たちも使ってくれよ」
「はあ、分かった。今度フェニスを使ってやる。ヒータはその次だ」
「「やった!」」
しばらく、三人で話していたが、船が近づいてくる音がしたので二人は精霊化して普通のやつには見えなくなる。
船は静かに港に着き、そこから二人の人物が下りてくる。
一人は男で平均的な身長より少し高い背格好で、もう一人は小柄な女性だった。
二人は顔をあまり見られないように、襟のついた服に、男の方は野球帽のようなものに、女性の方は黒いベレー帽をかぶっている。
彼らは今回の展示会のために俺がダメもとで呼んでみた二人だ。まさか、連絡がつくとは思っていなかったがな。
しばらくその段取りを話しながら、今夜二人が泊る部屋まで案内していたときだった。
俺の携帯端末が震えたので見てみると結からの電話だった。
こんな時間にまた、呼び出しかと思ったが
『遊戯さんのデッキのレプリカが盗まれたわ。今みんなで犯人を捜索中よ。カイ君も手伝って』
俺の話を聞いた二人も、協力してもらい、島の中を捜索する。
もちろんやみくもに探している訳じゃなく、俺の精霊たち全員に捜してもらっている。
『カイ!見つけました。今、眼鏡君とデュエルしています』
「わかった!」
俺が二人の方を見ると、二人もうなずき、急ぐ。
そこは海岸の近くでごつごつした岩場が目立つ場所だった。
その岩の一つの上で、眼鏡と誰か、恐らく犯人がデュエルをしていたのだろう。しかし、眼鏡は膝をついてうなだれている。
月明りで見えたその犯人は
「ふはは、凄い。これこそが俺の求めていたデッキだ!」
「お前が犯人か、神楽坂」
ラーイエローの神楽坂だった。
こいつは記憶力がものすごく高く、どんなデッキも瞬時に覚え、扱うことができるが作るデッキが必ず誰かのコピーデッキになってしまい、そのせいで周りからあまりいい評価をされていないやつだ。
「火渡カイか。そうさ!俺がこのデュエルキングのデッキを拝借したのさ。俺はどれだけデッキを造っても必ず誰かのデッキに似てしまう。・・・だから、本人になりきることで、俺はそのデッキを十全以上に使いこなすことができるようになったのさ!そして、今俺はデュエルキングのデッキを持っている。もはや俺は負けることはない!これで俺を見下していたやつらも敵じゃない!」
そう言い、高笑いを始める神楽坂。
俺はデュエルディスクを展開しようとするが
「神楽坂君といったね」
傍にいた彼が先に前にでる。
「だれだ?お前は」
「一応、ここに用事があってきた、まあ、しがないデュエリストってところかな」
「ふん。そのデュエリストが何の用だ?」
「僕とデュエルしよう。僕が勝ったらそのデッキを返すんだ」
そう言い、彼はディスクを取出し、腕に着け、デッキをセットする。
「ふん。良いだろう。レッド一人じゃあ物足りなかったところだ」
「じゃあ行くよ」
「右手に
神楽坂もデッキをディスクにセットし構える。
「「デュエル!」」
神楽坂:LP4000
???:LP4000
デュエルが始まった瞬間、結たちが集まってきた。
「カイ君。これどうゆう状況?」
俺は犯人が神楽坂だということと、彼がデュエルをし、勝ったらデッキを取り戻せるということを話した。
「あの人勝てるの?」
「ああ、絶対勝つ」
俺がそう言うと、結は納得はしていないものの十代たちと同じく、デュエルを見始めた。
「僕の先攻。モンスターをセット。ターンエンド」
???:LP4000
手札5
セット1
「俺のターン。《天使の施し》を発動。三枚ドローし、二枚捨てる。《融合》発動!手札の《幻獣王ガセル》と《バフォメット》を融合し、《有翼幻獣キマイラ》を融合召喚する!」
有翼幻獣キマイラ
ATK:2100
双頭を持つ翼の生えた幻獣、遊戯デッキの特攻隊長か。
「いくぜ!セットモンスターに攻撃!
キマイラがセットモンスターに攻撃するが
「破壊されたのは《見習い魔術師》。その効果で僕はデッキから《執念深き老魔術師》をセットするよ」
「面倒なモンスターだな。カードを一枚伏せてターンエンドだ」
神楽坂:LP4000
有翼幻獣キマイラ
伏せ1
「僕のターン。老魔術師を反転召喚。リバース効果で相手のモンスター1体を破壊するよ。キマイラを破壊」
老魔術師の持つ杖から魔法が放たれ、キマイラを破壊する。
「だが、キマイラが破壊された時、墓地の「幻獣王ガゼル」か「バフォメット」のどちらかをフィールドに特殊召喚する!俺は《バフォメット》を守備表示で召喚するぜ!」
ヤギの角に白い翼を持った悪魔が現れる。
「《執念深き老魔術師》をリリースして、《
ATK:2000
「それを待っていたぜ。俺はアドバンス召喚の瞬間、罠発動!《黒魔族復活の棺》。このカードは相手がモンスターの召喚に成功した時発動できる。相手が召喚したモンスターと自分のモンスター1体を墓地に送り、墓地の魔法使い族を復活させるぜ!」
「神楽坂君の墓地に魔法使い族なんていないはずじゃあ」
「いいや、翔。神楽坂には墓地に魔法使い族を送るチャンスがあった」
「最初の《天使の施し》の時に捨てた二枚のうち、どちらか、あるいは両方が魔法使い族だったのだろう」
「あれはこの展開をも見越した布石だったってことか」
眼鏡が疑問の声をあげるが、それに対し、十代、三沢、翼が反論していく。
「墓地より甦れ、我が最強の僕、《ブラック・マジシャン》!」
フィールドに棺が現れ、そこに
次の瞬間には、棺が開きそこから一人の魔術師が姿を現す。
ブラック・マジシャン
ATK:2500
その姿に、十代たちが歓声を上げるが。
「パンドラマジシャン?」
翼が疑問の声をふとあげる。
「なんだよ、翼。パンドラマジシャンって?」
「い、いや、なんかあのブラマジって昔テレビで見た武藤遊戯が使っていたブラマジと色が違うな~って思ってさ。どっちかっていうと、バトルシティで武藤遊戯と対戦したグールズのパンドラっていうやつが使っていたブラマジの色だな~って思って」
少し焦りながらそう言う翼。まあ、あれはレプリカだしな。
「確かに昔テレビで見たのとちょっと色が違うな」
「レプリカだからしょうがないさ」
「ちぇ~。本物見たかったな」
十代がふてくされたようにそう言い、三沢が苦笑交じりにいさめる。
「・・・カイ君」
「なんだ?」
「彼何者なの?この状況に少しも動揺していない。まるで、自分の予想通りとでもいうかのように」
「・・・鋭いな。流石は」
「流石は、更識家の次期当主と言ったところかしら」
俺の言葉をかっさらったのは、ベレー帽の女性。
「彼が何者かはもうすぐわかるわよ」
突然しゃべり始めた彼女に結は鋭い視線を向けるが、どこ吹く風というふうに流され、仕方なく、その言葉に従ってデュエルの行方を見ることにする。
「そのデッキをそこまで使いこなすなんて、君は本当にすごいね」
彼の賛否に神楽坂は少し面食らったような顔になる。
「でも、だからこそ本当に惜しいと思うよ。そんな借り物の力に満足していることが」
「か、借り物の力だと!?」
「そうじゃないか。そのデッキは君が自分で作った物じゃない。君の魂がこもっていないじゃないか」
「だまれ!さっきも言っただろう!どんなにデッキを造っても誰かのコピーになってしまう俺にどうしろというんだ!?」
そう叫ぶ神楽坂に彼は少し、沈黙し
「どうすればいいかはこのデュエルで見つかる」
そう言った。神楽坂は訳が分からないという顔をするが彼はデュエルを続行した。
「僕は魔法カード《古のルール》を発動!手札からレベル5以上の通常モンスター一体を特殊召喚する!」
「な、なんだと!?まさか俺の手を読んでいたのか?」
「あの状況で《ブラック・マジシャン》を墓地に送ったから、十中八九その罠カードだと思って、あえて誘いに乗ってみたんだ」
忘れがちだがデュエルディスクの機能の中には相手の墓地を確認する機能もある。おそらくそれで確認したのだろう。
手札からモンスターが召喚される。それは彼の代名詞というえるカード・・・
「出でよ、我が最強の僕《ブラック・マジシャン》!」
『はああ!!』
ブラック・マジシャン
ATK:2500
現れたのは神楽坂の召喚したブラック・マジシャンと違い、黒い衣装に身を包んだ最上級魔術師だった。
「な、なんだと!!?」
「すっげえ!今度は本当のブラマジだ!」
「まさかこの目で見られる日が来るなんて・・・」
周りが騒然としている中、彼はさらに魔法を使う。
「さらに《師弟の絆》を発動。自分の場にブラック・マジシャンがいるとき、デッキ・手札・墓地から《ブラック・マジシャン・ガール》を守備表示で特殊召喚できる!」
『アハ☆』
ブラック・マジシャン・ガール
DEF:1700
ポン!というコミカルな音を立てて現れたのは、青い装束に身を包んだ金髪の魔術師の少女。ブラック・マジシャンの唯一の弟子であった。
『あ~!フェニスちゃんにヒータちゃん久しぶり!』
フェニスとヒータを見つけた彼女は、二人に手を振る。
二人も苦笑しながらも手を振りかえす。
『マナ。まだデュエルの最中だぞ』
『あ!そうだった』
『まったくお前ときたらいつもいつも』
「まあ、まあ。マハード。今はデュエル中だから」
『マスター!ありがとうございます』
「お説教は後でね」
『あれ?』
『はっ。わかりました』
彼とブラマジ師弟、マハードとマナがそんな会話をしている横で神楽坂や、俺以外のアカデミア生は驚きっぱなしのようだ。
「ブ、ブラック・マジシャン・ガールまでだと?い、一体お前は何者なんだ!?」
その言葉に彼は帽子を取り去る。
そこから出てきたのは黒髪に、赤や金が混じった髪に特徴的な髪形の青年だった。
だがその姿に俺とベレー帽の彼女以外が驚愕する。
「あ、ああ、ああああ・・・」
「僕の名前は、武藤。武藤遊戯だよ。よろしくね」
笑顔でそう自己紹介する遊戯。
「彼が武藤遊戯ってことは、あなたは・・・」
結の言葉に、彼女はベレー帽を取る。
「私はレベッカ・ホプキンス・武藤。ダーリンのフィアンセよ」
元全米チャンプに輝いた天才少女だった。
この展示会で特別ゲストとして参加できないか、ダメもとで俺が二人に確認を取ったところまさかのOKをもらったのでこっそりここに呼んだのだ。
「すっげえ!遊戯さん、お久ぶりです!俺のこと覚えていますか?」
「ああ。覚えているよ。ハネクリボーは元気かい?」
「はい!」
『クリクリ~』
十代に笑顔で遊戯は応える。
「デュエルを続けるよ。僕は魔法カード《
ブラック・マジシャン
ATK:4500
『いくぞ、マナ!』
『はい!お師匠様』
二人が杖を1つに合わせ、その魔力を高める。
「ブラック・マジシャンで神楽坂君のブラック・マジシャンに攻撃!」
『ブラック』
『ツイン』
『『バースト!!』』
最上級と上級魔術師の攻撃はたった一人の魔術師に止められるようなものではなく、神楽坂のブラック・マジシャンはあっという間に呑み込まれてしまう。
「うわああ!!」
神楽坂:LP2000
「カードを一枚伏せて、ターンエンドだよ」
遊戯:LP4000
手札0
ブラック・マジシャン
ブラック・マジシャン・ガール
伏せ1
遊戯のターンが終わるが、神楽坂はドローする気配もない。
「む、無理だ。デュエルキングに勝てるわけがない・・・」
そう言い、デッキの上に手を置く、すなわち
「言っておくけど、僕は君のサレンダーを認めないよ」
遊戯がそれを認めなかった。サレンダーはお互いの同意のもとに適応されるので、遊戯が認めない限り神楽坂はサレンダーできない。
「そのデッキは、僕が昔、魂を込めて作ったデッキだ。そのデッキを使うのなら簡単にサレンダーすることは許さない」
そう、あのデッキは遊戯ともう一人の遊戯、古代エジプトのファラオ、アテムと共に作り上げた、二人の魂の込められたデッキだ。
それを勝手に使い、こんな簡単にサレンダーするなど許すはずがない。
「あ・・・う」
遊戯が神楽坂をきつく睨み、それに神楽坂は気圧され数歩後ずさる。
「お、おれのターン《翻弄するエルフの剣士》を守備表示で召喚してターンエンド」
翻弄するエルフの剣士
DEF:1200
やがて、プレッシャーに耐えられなくなった神楽坂はエルフの剣士を召喚し、ターンを終了した。
神楽坂:LP2000
手札2
翻弄するエルフの剣士(DEF)
「僕のターン、ドロー!」
引いたカードを見た遊戯は少し、神楽坂を見る。
神楽坂はもう完全にこのデュエルをあきらめているようだ。
「神楽坂君。君はもうこのデュエルをあきらめているね。まだ、LPは残っているのに」
「あ、当たり前じゃないですか。デュエルキングに勝てるはずない」
「僕は、カイ君とデュエルしたことがある」
遊戯の言葉に全員が俺の方を見る。
「その時、彼はどんな状況になってみあきらめなかった。どんなに僕が強いモンスターを召喚しても、デッキを信じてカードをドローして、デュエルに臨んでいた。そして、僕に勝った」
おい。それを言うか?確かに勝ったがまだ、負け越しているぞ?
「君はまだLPが残っているのに、あきらめている。それはそのデッキには君の魂がないからだ」
「デッキに・・・俺の魂?」
「デュエリストは数千枚以上のカードの中から、カードを選んでデッキを造る。そこには魂がこもるんだ。例え、デッキの中身が似ていてもその魂は違うんだ」
そう言い、遊戯は自分のデッキに目を落とす。
「そして、その魂はデュエリスト共に強くなる。最初は誰かのデッキと似ているかもしれない。でも、一緒に戦っていくことでデッキは自分だけのものに進化していくんだ!こんなふうにね。僕はチューナーモンスター《マジシャンズ・クラーク》を特殊召喚!」
マジシャンズ・クラーク
ATK:400
現れたのは、マナに似た装束を身に纏い、本を片手に持った眼鏡をかけた魔術師だった。なんか虚に似ているな。
「レベル7のブラック・マジシャンにレベル1のマジシャンズ・クラークをチューニング!魔導を極めし者よ、遥かなる頂の力を今こそ解放せよ、シンクロ召喚!」
クラークが光の輪になり、それがマハードを包み込む。
「生誕せよ!《ブラック・リアライト・マジシャン》!」
『私の新たな力、見るがいい』
ブラック・リアライト・マジシャン
ATK:2900
「このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分と相手の墓地の魔法カードを任意の枚数除外する。そして、この効果で除外したカード1枚につき、相手フィールド上のモンスターの攻撃力は、このカードが存在する限り300ポイントダウンする。僕は君の墓地のカードも含めた魔法カード5枚を除外する」
水晶を身に纏ったマハードの杖が輝き、神楽坂のフィールドを照らす。
これでマハードが存在する限り、神楽坂のモンスターは全部、攻撃力が1500ポイント下がる。
「さらに、マジシャンズ・クラークの効果発動!このカードが魔法使い族シンクロモンスターのシンクロ召喚のために墓地に送られた場合、デュエル中に1回だけ墓地から特殊召喚する。さらに、僕はレベル6のブラック・マジシャン・ガールにレベル1のマジシャンズ・クラークをチューニング!師の思いを受け継ぎ、さらなる魔導の高みへ駆けのぼれ、シンクロ召喚!」
今度はマナがクラークの輪に入る。
「生誕せよ《ブラック・リアライト・マジシャン・ガール》!」
『私も初お披露目だよ♡』
ブラック・リアライト・マジシャン・ガール
ATK:2400
「ブラック・リアライト・マジシャン・ガールもシンクロ召喚に成功した時、自分と相手の墓地の魔法カードを任意の枚数除外するよ。この効果で除外したカード1枚につき、自分フィールド上の魔法使い族モンスターの攻撃力は、このカードが存在する限り300ポイントアップする。僕は君の墓地の《黒魔族復活の棺》を除外」
マナの杖から放たれる光が二人をさらに強化する。
ブラック・リアライト・マジシャン
ATK:3200
ブラック・リアライト・マジシャン・ガール
ATK:2700
「ブラック・リアライト・マジシャンの効果発動!自分の攻撃表示で存在する魔法使い族モンスター1体を守備表示にすることで、フィールド上のカード1枚の効果を無効にする。僕はブラック・リアライト・マジシャン・ガールを守備表示に変更してエルフの剣士の効果を無効にする」
翻弄するエルフの剣士は攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない効果を持つ。だがこれで攻撃ができるようになったというわけだ。
「さらにブラック・リアライト・マジシャン・ガールの効果発動。1ターンに1度、自分フィールド上に守備表示で存在する魔法使い族モンスターを攻撃表示にすることで、除外されている自分の魔法カードの数だけ、デッキからカードをドローする。僕はブラック・リアライト・マジシャン・ガールを攻撃表示に変更して、デッキから三枚ドロー!」
遊戯:手札3
「なんてタクティクスだ。互いの効果をうまく組み合わせ自分に有利な状況に持って行っている」
三沢がそう評する。まあこのコンボは二体がそろって初めてできるみたいなものだしな。
「ブラック・リアライト・マジシャンで翻弄するエルフの剣士に攻撃!ブラック・ライト・マジック!」
マハードが強大な魔力の球を撃ちだし、エルフの剣士を破壊する。
「君はデッキを造っても、どうせ誰かに似ているんだからと、すぐに崩していたんじゃないのかい?」
遊戯の言葉に何か思うことがあったのか、ハッとする神楽坂。
「僕のデッキだって、最初はじいちゃんのデッキをそのまま使っていたんだ。でも、僕の使いたいカードを悩んで、試行錯誤しながら入れて行って自分だけのデッキにしたんだ」
だから、
「君も、誰かのマネって言われたからすぐにデッキを崩したりしないで、どうやったら自分の好きなデッキになるのか考えてみよう?そして、あきらめずにデュエルを楽しもうよ?」
「遊戯さん・・・」
「ブラック・リアライト・マジシャン・ガールで攻撃!と行きたいところだけど、効果を使ったターン、僕は君にダメージを与えられないんだ。これでターンエンドだよ。さあ、神楽坂君。まだまだデュエルは終わっていないんだ。僕がそのデッキに籠めた魂を感じてみてよ」
遊戯:LP4000
手札3
ブラック・リアライト・マジシャン
ブラック・リアライト・マジシャン・ガール
「俺のターン、ドロー!」
遊戯の言葉で持ち直したか。
「俺は魔法カード《死者蘇生》を発動!甦れ、ブラック・マジシャン!」
ブラック・マジシャン
ATK:2500
「さらに、墓地の光属性《ホーリー・エルフ》と闇属性《バフォメット》を除外して、《カオスソルジャー―開闢の使者―》を特殊召喚!」
カオスソルジャー―開闢の使者―
ATK:3000
ホーリー・エルフは天使の施しで捨てていたのか。
だが、マハードの効果で攻撃力はそれぞれ下がる。
ブラック・マジシャン
ATK:1000
カオスソルジャー―開闢の使者―
ATK:1500
「俺はカオスソルジャーの効果でブラック・リアライト・マジシャンを除外する!」
カオスソルジャーの生み出した時空の斬撃にマハードは飛ばされる。
マハードがいなくなったことで神楽坂のモンスターたちの攻撃力は元に戻る。
「さらにブラック・マジシャンに《魔術の呪文書》を装備。攻撃力を700アップ!」
ブラック・マジシャン
ATK:3200
「行け!ブラック・マジシャン!ブラック・リアライト・マジシャン・ガールに攻撃!ブラック・マジック!」
「迎え撃て!ブラック・ライト・バーニング!」
マナは魔力弾を撃ち返そうとするが返し切れずに破壊される。
遊戯:LP3500
「これでターンエンドです」
神楽坂:LP2000
手札0
ブラック・マジシャン(魔術の呪文書装備)
カオスソルジャー―開闢の使者―
「僕のターン、ドロー!」
さて、このターンで終わるかな。
「僕は《サイレント・マジシャンLV4》を召喚!」
サイレント・マジシャンLV4
ATK:1000
「レベルアップすることで強くなる伝説のレベルモンスターか」
「今日は夢みたいな光景ばかり目にするわね」
亮と明日香がそうこぼす。この世界じゃLVモンスターはかなり貴重らしい。
「魔法カード《二重召喚》発動。このターン、僕は二回、通常召喚ができる。《召喚僧サモンプリースト》を召喚。このカードは召喚された時、守備表示になる」
召喚僧サモンプリースト
DEF:1600
「サモンプリーストは手札の魔法カードを墓地に送ることでデッキからレベル4のモンスター1体を特殊召喚できる。僕はデッキから《魔導戦士ブレイカー》を召喚」
魔導戦士ブレイカー
ATK:1600
レベル4のモンスターが3体。これは来るな。
「僕はサイレント・マジシャンLV4を含む、三体のモンスターでオーバーレイ!」
サイレント・マジシャンを中心として、三体が光の渦に飛び込む。
「沈黙の魔術師よ。今こそ、魔導を統べる女王へと進化せよ、エクシーズ召喚!《サイレント・クイーン・マジシャン》」
『今ここに、極めた力を開放しましょう』
サイレント・クイーン・マジシャン
ATK:2500
「クイーン・マジシャンは「サイレント・マジシャンLV4」を素材としてこのカードがエクシーズ召喚に成功した時、このカードの元々の攻撃力は3500となり、魔法カードの効果を受けない」
サイレント・クイーン・マジシャン
ATK:3500
「さらに1ターンに1度、オーバーレイユニットを使うことで自分の墓地の魔法使い族モンスター1体の攻撃力分、このカードの攻撃力をエンドフェイズまでアップさせる。僕は墓地の《ブラック・マジシャン》を選択」
サイレント・クイーン・マジシャン
ATK:6000
「サイレント・クイーン・マジシャンでカオスソルジャーに攻撃!《サイレント・カラミティ・ブレイザー》!」
神楽坂:LP0
「申し訳ありませんでした」
デュエルが終わった後、神楽坂はそう言い、デッキを遊戯に返却した。
彼はどんな罰設けると言っていたが、こっそりこの場に集まった多数のアカデミア生の弁護で罰を軽くできないか、生徒指導である織斑先生を説得。織斑先生も本人が反省していることと、遊戯や生徒会長である結の訴えから、そこまで思い罰にせず、校長と相談し、1か月間の謹慎処分とした。その謹慎中に神楽坂は自分のデッキを作り上げるだろう。
その後の展示会で遊戯との握手会や、レベッカのデッキ診断などが催され、大いに盛り上がったことは語るまでもないだろう。
VS遊戯デッキ。対戦相手はまさかの遊戯でした。
いままで誰もやらなかったことをやろうと思ったんですよ。
次回はみんなお待たせ、あの二人が出てきます。
狂戦士さんとのコラボ作品「交差する世界 剣士と暴君と五聖獣」の方もよろしくお願いします。
オリカ紹介
マジシャンズ・クラーク
☆1/光属性/魔法使い族/効果モンスター・チューナー/ATK40DEF100
自分フィールド上に「マジシャンズ・クラーク」以外の「マジシャン」と名のつくモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
このカードが魔法使い族シンクロモンスターのシンクロ召喚のために墓地に送られた場合、墓地から特殊召喚する。このカードはデュエル中1回のみ使える。
ブラック・リアライト・マジシャン
☆8/闇属性/魔法使い族/効果モンスター・シンクロ/ATK2900DEF2400
「ブラック・マジシャン」+チューナーモンスター
このカードは光属性としても扱う。
このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分と相手の墓地の魔法カードを任意の枚数除外する。この効果で除外したカード1枚につき、相手フィールド上のモンスターの攻撃力は、このカードが存在する限り300ポイントダウンする。
1ターンに1度、自分フィールド上に攻撃表示で存在する魔法使い族モンスター1体を守備表示にすることで、フィールド上のカード1枚の効果を無効にする。
ブラック・リアライト・マジシャン・ガール
☆7/闇属性/魔法使い族/効果モンスター・シンクロ/ATK2400DEF2100
「ブラック・マジシャン・ガール」+チューナーモンスター
このカードは光属性としても扱う。
このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分と相手の墓地の魔法カードを任意の枚数除外する。この効果で除外したカード1枚につき、自分フィールド上の魔法使い族モンスターの攻撃力は、このカードが存在する限り300ポイントアップする。
1ターンに1度、自分フィールド上に守備表示で存在する魔法使い族モンスターを攻撃表示にすることで、除外されている魔法カードの数だけ、デッキからカードをドローする。この効果を使用したターン、自分は相手にダメージを与えられない。
ブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールが水晶の装飾がついた衣服と杖を身に纏った姿。
サイレント・クイーン・マジシャン
ランク4/光属性/魔法使い族/エクシーズモンスター・効果/ATK2500DEF2000
魔法使い族レベル4モンスター×3
「サイレント・マジシャンLV4」を素材としてこのカードがエクシーズ召喚に成功した時、このカードの元々の攻撃力は3500となり、魔法カードの効果を受けない。
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を取り除いて発動できる。自分の墓地の魔法使い族モンスター1体の攻撃力分、このカードの攻撃力をエンドフェイズまでアップさせる。
サイレント・マジシャンLV8がさらに進化した姿。ロープを羽織り、杖も大きくなっている。