デッキ展示会から一週間ほどたったある日。
ブルーの女子寮に新入生が入ってきた。
「こちらはアカデミアの推薦入試によって飛び級で入学してきた二人です。みなさんより少し歳が下ですが仲良くしてください。では、お二人とも自己紹介を」
寮長の鮎川女史に促され、ブルーの制服に身を包んだ二人の少女が前にでる。
一人は生徒会長更識結と同じ蒼い髪に、特徴的な髪飾りと眼鏡をつけている大人しそうな少女で、ブレザーの制服を着ている。
もう一人は、のんびりとした雰囲気をもち、袖を伸ばした改造制服を着ている。
「更識簪です。飛び級で編入してきました。十五歳です。名前で気づくかと思われますが、更識結の妹です。ですが気兼ねなく話しかけてもらえるとうれしいです」
ぺこりと頭を下げて、挨拶をする簪。
「かんちゃんと同い年の布仏本音って言いま~す。虚お姉ちゃんの妹で~す。大好きなのはお菓子で~す。よろしくお願いしま~す」
聞く者の気持ちを和ませるような声で本音もあいさつをする。実際に近くにいた生徒は、和み、緩んだ表情をしていた。
「では、二人の編入を祝ってカンパーイ!!」
結の声と共に俺、虚、簪、本音は生徒会室でグラスを鳴らす。
「いや~。二人が編入試験に受かって本当によかったわ。これから毎日会えるわね!簪ちゃん」
「うん。お姉ちゃん」
相変わらず仲がいいな。
「本音、あなたも受かったからには頑張りなさい」
「え~、疲れるのは」
「ほ・ん・ね」
「うう、は~い」
こちらも相変わらずか。
ちなみに二人は生徒会に入っており、簪は会長補佐で結が動けないとき、会長権限が使える役職で、本音は会計だ。
ジュースを飲んでいると、ふと、気になり、
「結、歓迎会なら十代たちも呼んだ方が良かったんじゃないか?」
気になっていたことを聞いてみる。
「あ~、実はちょっとね~」
結は少し、困った顔をすると、一枚の書類を俺に投げてきた。
それを受け取り、目を通す。
「『早乙女レイ』?」
「簪ちゃん達と一緒に編入した子でね。オシリスレッドに入って、十代君たちと同じ部屋らしいのよ。もう少ししたら調整がつくんだけど、それまでっていう処置みたい」
なるほど。その編入生の面倒を見ている十代たちに気を使った・・・・ってわけじゃないな。
「・・・結。こいつ」
「やっぱりわかる?」
どうみても
「「女の子だろ(よ)」」
「しかもかなり年下よ。気になっていろいろ調べたの」
「入ってきた理由は?」
「そこがいまいち分からないのよ。今少し調べているんだけど、警戒されるのもあれだからまだ接触はしない方がいいと思って」
まあ、妥当な判断だな。
しばらく静観するか、と俺たちがそう結論を出した、が・・・
「十代が女の子と同棲?」
「「あ・・・」」
「ふふふ・・・」
「か、簪ちゃん?」
簪に聞かれてしまった。
「ちょっと、用事を思い出したから、レッド寮に行ってくるね。お姉ちゃん、義兄ちゃん」
「か、簪ちゃん。お、お、落ち着いて。ね?」
「・・・私は落ち着いているよ?」
「い、いや、だからね・・・」
「だから、退いて、姉さん」
「はい」
おいいいい!?ものすごく素直に引き下がったぞ?!しっかりしろよ、姉!
ま、まずい。このまま、レッド寮に行って十代を血祭りにあげかねない。最近思うのだが簪ってけっこうヤンデレなのか?
「まあ~まあ~。落ち着いてよ、かんちゃ~ん」
そんな簪を本音がやんわりと止める。
「・・・本音、どいて」
「ほら~。まだまだこんなにお菓子があるんだから~」
「・・・どいて」
「一緒に食べようよ~、そうすれば少し落ち着くよ~?」
頑張って止めてくれ本音。今は、姉も使えん。なぜなら、そこでへこんでいるから。
「・・・そんなものどうでもいい」
その瞬間、世界が凍った。
「そんなもの?」
本音が一度顔を伏せたと思うとゆっくりと上げた。
その表情は笑ったままだが、目が笑っていない。
「へ~。お菓子をそんなもの呼ばわりするんだ~」
「どうでもいいから、さっさと退いて」
二人の間に不穏な空気が漂い始めた。
「ま、まずいわ」
「ええ。このままではここがめちゃくちゃになってしまいます」
今更何言っている。もうメチャクチャだ。そして、お前が言うな、結。妹を止められなかったくせに。
「カイ君、急いで十代君のところに行って早乙女レイの目的を探ってきて!」
「は?」
「ここは私たちで二人を押さえますから」
いや、いくらなんでもたかが喧嘩で・・・
『ただの喧嘩じゃないのよ。これが』
エリア?
『昔、二人が似たような話題で喧嘩したことがあったんだけど、その時に尋常じゃない被害が出たわ』
「・・・たかが、喧嘩でか?」
『実は、二人には、特殊な力があるの』
「特殊な力?」
『カードを実体化させるっていう力がね』
おい。それって5D’sで出てきた十六夜アキみたいなサイコデュエリストじゃないか?
『二人には精霊はいないけど、その力があってね。私たちが見えるのもそのせい。昔は苦労したけど、私が制御方法を教えて、何より結と虚のおかげで二人とも力をコントロールできたの。でも、喧嘩した時は感情が不安定で制御が甘くなるの。今回もそうなるとは言えないけど、このままじゃ・・・』
「・・・わかった」
「カイ君!」
「すぐに行ってくる。二人を頼んだぞ」
俺はそう言い、生徒会室の窓から飛び降りてレッド寮に向かった。
「ふふふ、かんちゃんにはすこ~しお仕置きが必要みたいだね~」
「・・・そこをどかないのなら私にも考えがある」
カイ君がレッド寮にむかってくれましたが、状況はまずいですね。
本音はお菓子を侮辱されるととても怒りますし、最近、十代君みたいな気の合う初めての男友達と知り合えた簪様も、いろいろ暴走しています。ここはお嬢様と似ていますね。
「虚ちゃん・・・」
「お嬢様」
「本音ちゃんをお願いね」
「はい。お嬢様もご武運を」
私は本音の、お嬢様は簪様の前に立ちます。
「二人とも落ち着きなさい」
「これ以上やるというのでしたら・・・」
お嬢様と同時にデュエルディスクを取出し、デッキをセットします。
「「私たちが相手になるわ(ます)」」
「・・・姉さんも邪魔するの?」
「おね~ちゃ~ん。私はいまと~っても忙しいんだよ?」
なんかいろいろ、傷つきそうな眼で睨まれるのは精神的に応えますが・・・。
「どうしてもやりたいっていうのなら、私たちを倒してからにしなさい」
「少し、頭を冷やしてもらいます」
私たちがそう言うと、二人もデュエルディスクを起動させました。
「邪魔をするのなら、倒すよ」
「ふふふ・・・」
本音、少し怖いですよ?
「「「「デュエル!」」」」
虚:LP4000
本音:LP4000
先攻は私ですね。
「モンスターをセット。カードを一枚伏せてターンエンドです」
虚:LP4000
手札4
セット1
伏せ1
「私のターン。《マドルチェ・ミルフィーヤ》を召喚~」
マドルチェ・ミルフィーヤ
DEF:300
お菓子に乗った子猫。また厄介なモンスターですね。このモンスターが出たということは
「この子が召喚に成功した時、手札から「マドルチェ」と名のついたモンスターを召喚できるよ~。《マドルチェ・メッセンジェラート》を召喚~」
マドルチェ・メッセンジェラート
ATK:1600
お菓子の国の郵便配達員。やはりいましたか。
「この子が特殊召喚に成功した時、私のところに「マドルチェ」の獣族モンスターがいれば~、デッキから「マドルチェ」と名のついた魔法・罠カードを1枚手札に加えられるよ~。《マドルチェ・シャトー》を手札に加えて、発動!」
マドルチェのフィールドになってしまった。これはまずいですね。
「このカードがある限り、フィールドのマドルチェは攻撃力と守備力が500ポイントアップするよ~」
マドルチェ・ミルフィーヤ
DEF:800
マドルチェ・メッセンジェラート
ATK:2100
「メッセンジェラートでセットモンスターに攻撃ぃ!」
「セットしていたのは《クリッター》です。その効果で私はデッキより攻撃力1500以下のモンスター《The アトモスフィア》を手札に加えます」
よし。これで何とか。
「ふっふ~ん。そんなの分かっていたもんね~。カードを一枚伏せて~《手札抹殺》を発動~」
「な!?」
これではサーチしたアトモスフィアが。
「ターンエンドだよ~」
「その瞬間、速攻魔法《終焉の焔》を発動します。私の場に《黒焔トークン》を二体召喚します」
黒焔トークン
DEF:0
本音:LP4000
手札2
マドルチェ・ミルフィーヤ(DEF)
マドルチェ・メッセンジェラート
「ちょ、ちょっと、簪ちゃん!?アブソルートからのアシッドって、私の場が全滅しちゃったんだけど!?」
「・・・邪魔をする人は吹き飛ばす。融合召喚《E・HERO ノヴァマスター》」
「キャラが変わっているわよ!?」
「・・・わたしは、必ず、レッド寮に行く。なんかこのままだと十代にその子が恋しそうっていう予感がある」
「ああ!もう。カイ君早く何とかしてきて!」
「アシッドとノヴァマスターで攻撃・・・!」
「まだまだやられないわ!《速攻のかかし》!」
「!?そんなカード、いつの間にデッキに」
「さっき、ちょっと調整しているときに入れてみたのよ。私のターン、《氷霊神 ムーラングレイス》召喚!」
お嬢様も苦戦していらっしゃいますね。というか、簪様の攻撃で服が・・・。
私はああなりたくありませんから攻撃は受けないようにしましょう。
「私のターン。黒焔トークン1体をリリースし《邪帝ガイウス》をアドバンス召喚します」
邪帝ガイウス
ATK:2400
「ガイウスの効果でミィルフィーヤを除外」
ガイウスの作り出した闇黒球体に子犬は次元の彼方絵飛ばされます。
マドルチェには共通した効果がありますが、こうすれば大丈夫です。
「魔法カード《フォース》を発動。メッセンジェラートの攻撃力を半分にし、その数値分、ガイウスの攻撃力をアップさせます」
マドルチェ・メッセンジェラート
ATK:1050
邪帝ガイウス
ATK:3450
「ガイウスでメッセンジェラートに攻撃します」
ガイウスが郵便配達員を殴り飛ばす。
本音:LP1600
「マドルチェたちの効果発動~。破壊されて墓地に行ったとき、デッキに戻しま~す。でもでも~シャトーの効果で手札に戻りま~す」
それでも、複数展開されるミルフィーヤよりましです。
「カードを二枚伏せてターンエンドです」
虚:LP4000
手札1
邪帝ガイウス
黒焔トークン
伏せ2
「わったしのタ~ン。《マドルチェ・マジョレーヌ》を召喚~。効果でデッキから《マドルチェ・シューバリエ》を手札に~」
マドルチェ・マジョレーヌ
ATK:1400→1900
「リバースカードオ~プ~ン。《マドルチェ・ハッピーフェスタ》!」
ま、まずいです。あのカードは
「手札から好きなだけマドルチェを召喚するよ~。《マドルチェ・シューバリエ》!!《マドルチェ・メッセンジェラート》!!《マドルチェ・プディンセス》!!シャトーの効果でみんな強くなるし、今の私の墓地にモンスターがいないからお姫様はさらに強くなるよ」
マドルチェ・シューバリエ
ATK:1700→2200
マドルチェ・メッセンジェラート
ATK:1600→2100
マドルチェ・プディンセス
ATK:1000→2300
「レベル4のマジョレーヌとメッセンジェラートでオ~バ~レイ~」
は?
「二体のモンスターでオ~バ~レイネットワークを構築~。エクシーズ召喚~。《クイーンマドルチェ・ティアラミス》!」
二体のモンスターは渦に飛び込み、一つになります。そこから出てきたのは、豪奢なドレスを身に纏った女王の品格を持った女性です。
クイーンマドルチェ・ティアラミス
ATK:2200
「わ~い。じょ~お~さまだ~」
ああ、かわいいわね本音。手をあんなにふりふりして嬉しそうに・・・。
「じょ~お~さまの効果~。その前に永続魔法《マドルチェ・チケット》を発動~。オ~バ~レイユニットを一つ使って、墓地の「マドルチェ」っていう名前がついたカードを二枚までデッキに戻して、その数までおね~ちゃんのカードをデッキに戻すよ~。私の墓地には手札抹殺で送ったカードが二枚あるから、これを戻しま~す。でもでも、チケットの効果でデッキから「マドルチェ」のモンスターを手札に加えて、さらに「マドルチェ」の天使のじょ~お~さまがいるとき特殊召喚できま~す。もう一人のシューバリエを召喚~」
「じょ~お~さまの効果で黒焔トークンとガイウスをデッキに戻しま~す」
このままでは負けてしまいます。
「お姫様とじょ~お~さま、二人のシューバリエでダイレクトアタ~ク!」
「速攻魔法《スケープ・ゴート》!羊トークンを四体召喚します」
羊トークン×4
DEF:0
「じゃ~、お姫様で攻撃~。お姫様の効果でもう一体の羊さんを破壊~。二人のシューバリエで残りの羊さんたちを破壊~」
トークンは全滅ですか。
「じょ~お~さまでダイレクトアタ~ク」
「くぅ!」
虚:LP1800
あら?攻撃が実体化していない?
ということは本音の精神が落ち着いているってことかしら?
「Great TORNADOでエリアに攻撃」
「ちょ、ライフが残り25ってなに?!」
お嬢様はほとんど服が破れていますね。
まあ、これでデュエルの目的は達成されましたが、このまま負けるのは姉としていささかかっこ悪いでしょう。
「タ~ンエンド。この時に、ハッピーフェスタで召喚したシューバリエはデッキに戻るよ~」
本音:LP1600
手札0
マドルチェ・シューバリエ
クイーンマドルチェ・ティアラミス
マドルチェ・プディンセス
マドルチェ・チケット(永続魔法)
「私のターン、《トーチ・ゴーレム》をあなたのフィールドに召喚して、私の場にトーチトークンを二体召喚します。この二体のトークンと、墓地のクリッターを除外し、すべてを包み込む大いなる風を、今ここに《The アトモスフィア》を特殊召喚します」
二体のトークンが風に包まれ、竜巻が巻き起こり、そこから巨大な大鳥が羽ばたき、舞い上がります。
The アトモスフィア
ATK:1000
「ええぇ!?さっき捨てたはずなのに?!」
二枚目が来たのですよ。
「アトモスフィアの効果で、トーチ・ゴーレムをこのカードに装備。その攻撃力分、アトモスフィアの攻撃力をアップさせます」
The アトモスフィア
ATK:4000
「アトモスフィアで、ティアラミスに攻撃!テンペスト・サンクションズ!」
「うわきゃああ!!?」
本音:LP0
アトモスフィアの起こした風に本音が吹き飛ばされ、このデュエルは終了しました。
「ポセイドラでダイレクトアタック!海皇蒼葬!!」
「きゃああ!?」
あちらも終わりましたね。
「きゅうううぅぅ」
どうやら、エリアさんが攻撃を実体化させて、簪様を気絶させたようですね。
「はあああぁぁぁ~。終わった~」
「お疲れ様です。お嬢様」
「お疲れ~。虚ちゃん。あら?スフィアちゃん帰ってきたの?」
「へ?」
お嬢様の言葉に私が後ろを振り返ると、小さな体になっていましたが私の精霊《The アトモスフィア》が居ました。
「あら?お帰りなさい」
『ピィ!』
この子はしばらく、精霊界を飛び回って、旅行していたのです。
こうして無事に帰ってきてくれてうれしい限りですね。
「それはそうとお嬢様」
スフィアを肩に止まらせ、ひとしきり撫でた後、私はお嬢様に声をかけ、
「なに?」
「いつまでその恰好でいるつもりですか?」
「へ?」
お嬢様は先ほどのデュエルで、怪我こそありませんでしたが、服がボロボロでいろいろ見えています。
「・・・戻ったぞ」
「あ?」
「あ?」
「・・・は?」
また、見計らったようなタイミングで・・・。
この後、何があったかはご想像に任せます。
ただ、生徒会室が半壊してしまったのは、しょうがなかったと思いますね。
カイ君から、件の早乙女レイの詳細を聞きまとめると、ここに来た目的は憧れにして、初恋の相手、丸藤亮に会うためだった。
でも、彼女はまだ小学五年生で、ここに来るために男装して、少しでも不自然じゃないようにしていたみたい。
詳しいことは、分からないけど、レイちゃんの問題は翼くんが、頑張って解決したみたい。結果で言えば、レイちゃんの告白は断られ、涙を流したらしいんだけど、新たに翼くんに恋したみたい。ほんと、十代君じゃなくてよかったわ。もしそうだったら、簪ちゃんが・・・。
彼女が帰るまで、私の部屋に止めたんだけどその時にいろいろアドバイスをしておいたわ。こうしないと、明日香がいつまでも、積極的になれないしね。
帰りの船から翼くんに
「またお会いしましょう~翼様~」
って、レイちゃんが行ったときの明日香の表情は傑作だったわ。
「お嬢様、ニヤニヤしていないで、速く始末書を書いてください。あなたが生徒会室を壊したんですから、その責任をしっかり取ってくださいね」
「うう~、もういや~~!!」
マドルチェを回すのは初めてだったから、とても疲れた。
あと、久しぶりに、オリカなしのデュエルができた。
簪と本音が編入してきました。彼女たちも加わり、生徒会はよりにぎやかになっていくでしょう。
次は対抗戦出場選手決定戦です。どんなデュエルになるかはお楽しみに。・・・実はまだ決まってなかったり