新たなるゲートウォッチ   作:Dr.ヤマブキ

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シーン10:協働(コラボレーション)

極彩色の光が弾け、次元を越える衝撃が収まった瞬間、遊戯を襲ったのは圧倒的な「情報の洪水」だった。

 

テラの雪山の静寂とは対照的な、耳を刺すような金属音、立ち昇る蒸気の熱気、そして見上げるほど高い石造りの摩天楼の数々。

 

空には見たこともない巨大な飛行機械が旋回し、路地裏からは魔術的な火花が散っている。

 

「ここが……ラヴニカ……」

 

遊戯がそのあまりのスケールに息を呑んだ直後、腹に響くような爆発音が響き渡った。

 

「どけ! どけ! 制御不能だ! 圧力指数が臨界を越えているぞ!」

 

青いローブを纏い、背中に奇妙な装置を背負った魔術師たちが、逃げ惑う群衆をかき分けて走っていく。

 

彼らの背後、一本の太い通気パイプが破裂し、そこから異形の怪物が這い出してきた。

 

それは蒸気と熱水、そして青白い電光で形成された「奇魔(合成エレメンタル)」だった。

 

実体を持たないその巨躯は、周囲の建物を熱気で歪ませながら、手当たり次第に魔力的な放電を撒き散らしている。

 

アジャニの隻眼が鋭く光った。彼は即座に腰の戦斧を引き抜き、同時に空いた左手を天に掲げる。

 

「遊戯、ケルシー! 私が正面から抑える! 二人は安全な場所へ!」

 

「アジャニさん、無茶だ!」

 

遊戯の制止を聞くより早く、アジャニは戦場の真っ只中へと躍り出た。

 

アジャニの手から放たれたのは、暴力的な破壊の光ではない。それは柔らかく、しかし強固な「秩序の鎖」――白き浄化の魔法だった。

 

光の網がエレメンタルの周囲に展開され、その荒れ狂う動きを封じ込めようとする。

 

しかし、エレメンタルは苦しげに咆哮し、さらにその熱量を増大させた。

 

イゼットの魔術師たちの装置がショートし、火花が周囲の市民に降り注ぐ。

 

「……負傷者が多すぎる。このままでは収束の前に犠牲が出るわね」

 

ケルシーは動じることなく、背負っていた医療鞄のストラップを締め直した。

 

彼女にとって、相手が源石病の患者であろうと、異世界の魔法による負傷者であろうと、成すべきことに変わりはない。

 

「アジャニ、抑止に集中して。私は後方の救護を担当する。この程度の負傷者なら……私の指先だけで十分よ」

 

ケルシーは戦火の中を流れるように移動し、倒れ伏した市民や魔術師たちの間を縫って歩く。

 

彼女の手元では、見たこともないほど精密な医療器具が瞬時に展開され、止血と応急処置が機械的な正確さで行われていった。

 

一方、遊戯はアジャニの戦いを凝視していた。

 

彼は戦士ではない。魔法の理(ことわり)も知らない。しかし、彼には「盤面」を読み解く力があった。

 

(あのアジャニさんの光の網……。エレメンタルが動くたびに、特定の場所だけが薄くなっている。……そうか、あれは意志を持った生き物じゃない。パイプから供給されるエネルギーに従って動く、ひとつの『装置』なんだ!)

 

遊戯は周囲を見渡し、破裂したパイプの構造、そしてエレメンタルの体内で明滅する魔力の核を観察した。

 

「アジャニさん! 闇雲に全体を抑えちゃダメだ! 左側にあるあの赤いバルブ……あそこからエネルギーが逆流してる! そこに網を集中させて、流れを止めるんだ!」

 

「何だと……?」

 

アジャニは一瞬戸惑ったが、遊戯の言葉を信じて魔法の指向性を変更した。

 

言われた通り、供給源と思わしき箇所を光の楔で打ち抜く。

 

すると、エレメンタルの激しい抵抗が目に見えて弱まり、その巨体が霧散するように萎んでいった。

 

「今だ! 核の動きが止まったよ!」

 

遊戯の叫びに応え、アジャニは最後の一撃を放つ。

 

破壊ではなく「鎮静」の波動が、エレメンタルの核を包み込み、暴走していたマナを穏やかな大気へと還元した。

 

静寂が訪れる。

 

周囲には、ケルシーによって迅速な処置を受けた負傷者たちが、驚きと共に顔を上げていた。

 

イゼットの魔術師たちも、自分たちの手に負えなかった実験体の無力化に呆然としている。

 

「助かった……。あんたたち、一体何者だ? 特にあの、白い獅子の旦那と……妙な髪型の少年……」

 

一人の魔術師が腰を抜かしたまま問いかけた。

 

アジャニは戦斧を収め、荒い息を整えながら、駆け寄ってきた遊戯の肩を叩いた。

 

「……君の目は確かだった、遊戯。君の助言がなければ、建物を一つ失うところだったよ」

 

「ううん、アジャニさんの力がすごかったからだよ。……それに、ケルシーさんも」

 

遊戯が振り返ると、ケルシーは最後の一人の包帯を巻き終え、立ち上がるところだった。

 

彼女の衣服には一点の返り血もなく、その表情は相変わらず氷のように冷静だったが、助けられた市民たちは彼女を聖女でも見るかのような目で見つめていた。

 

「……騒動は収まったようね。だが、この程度の事故が日常的に起きているのだとしたら、この都市の安全管理は著しく欠如していると言わざるを得ない。アジャニ、この混乱を利用して、その『龍』への接触を早めましょう。恩を売る相手は、多いに越したことはないわ」

 

ケルシーの言葉に、アジャニは苦笑しながら頷いた。 三人の異なる力が、初めて一つの目的のために噛み合った瞬間だった。

 

そこに一人の魔術師の男が声をかけてくる。

 

「アンタらが噂の三人か...。ギルドマスターがお呼びだ。ついて来てくれ。」




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