「我輩のターン、ドロー! ……フン、もはや小細工など不要。イゼットの頂点を見せてやろう」
ニヴ=ミゼットは引いたカードを確認すると、口元を歪めた。
それは勝利への確信、そして自身の偉大さを誇示する笑みだった。
「我輩はフィールドの魔法使い族モンスター、《ゴブリンの電術師》と《どぶ潜み》をリリース!」
二体の実験体が光の粒子となって分解され、天上の輝きへと吸い込まれていく。
実験室の天井――いや、ラヴニカの空そのものが赤熱し、雲が渦を巻き始めた。
「天焦がす知性、地を統べる叡智! 万物は我輩の計算式に従う! 現れろ、我が分身にして最強の解!」
**『特殊召喚! 《伝説の爆炎竜 ニヴ=ミゼット》!!』**
轟音と共に、実験室の床が軋む。
爆炎の中から現れたのは、ニヴ=ミゼットそのものだった。いな、今の彼よりもさらに神々しく、マナの光を全身に纏った「完全なる姿」がそこにあった。
**【伝説の爆炎竜 ニヴ=ミゼット】**
星10/炎/ドラゴン族/攻3000/守3000
「このカードは魔法カードの効果を受けず、そして……我輩がいる限り、お互いの手札制限枚数は撤廃される! 無限の知識を持て!」
「攻撃力3000……! しかも魔法が効かないなんて……」
遊戯が圧倒的な威圧感に息を呑む。
「さらに! このカードは『ドロー』に反応する。誰かがカードを引くたび、フィールドのカード1枚を破壊(消去)する能力を持っている」
アジャニが驚愕の声を上げた。
「なんだと……!? つまり、遊戯がターン開始時にカードを引くだけで、その瞬間に爆撃されるということか!?」
「その通りだ。……貴様にはもはや、戦場に立つ権利すらない。バトル! 《爆炎竜 ニヴ=ミゼット》でダイレクトアタック!」
ドラゴンの口から、すべてを灰にする灼熱のブレス(ミジウム・ブレス)が放たれる。
フィールドにモンスターのいない遊戯に、回避手段は残されていない。
「くっ……!」
遊戯は咄嗟に腕で顔を覆うが、爆風が容赦なく彼を吹き飛ばす。
**遊戯 LP 5500 → 2500**
「ハハハハハ! 脆い、あまりに脆いぞ、人の子よ! エンドフェイズ!」
土煙が晴れると、そこにはボロボロになりながらも膝をつかずに耐える遊戯の姿があった。
そして、亜空間に逃れていた《サイレント・ソードマン LV3》がフィールドに帰還する。
「……よく耐えたな。だが、帰ってきたその剣士ごときで何ができる? 次のターン、貴様がドローした瞬間に、その剣士は消し炭だ」
「僕の……ターン……!」
遊戯の手がデッキに伸びる。
その瞬間、実験室内一帯に警報音が鳴り響いた。
「感知したぞ、ドローの波動を! 『火想者の知性』、発動! その生意気な剣士を排除せよ!」
爆炎竜の翼が輝き、目にも止まらぬ速さで熱線が放たれる。
LV5へと進化しようとしていた《サイレント・ソードマン》は、剣を抜く間もなく爆散した。
「あああっ! ソードマン!」
「これでフィールドは空。手札も貧弱。ライフは風前の灯火。……チェックメイトだ、武藤遊戯」
ニヴ=ミゼットは勝ち誇った。
理論上、ここからの逆転確率は限りなくゼロに近い。ケルシーの計算でも、生存確率は0.001%未満と表示されているはずだ。
だが。
「……まだだ。まだ、終わっていない」
遊戯は静かに、手札から1枚のカードを選び取った。
「僕は、このカードを召喚する」
廃墟と化したフィールドに、凛とした空気が満ちる。
現れたのは、白いローブを纏った、銀髪の美しい魔術師。
まだあどけなさの残る少女のような姿だが、その瞳には深い沈黙の海が広がっている。
「召喚、《サイレント・マジシャン LV4》」
**【サイレント・マジシャン LV4】**
星4/光/魔法使い族/攻1000/守1000
ニヴ=ミゼットは、拍子抜けしたように鼻を鳴らした。
「……何だそれは? さっきの剣士よりさらに非力ではないか。絶望のあまり、思考回路がショートしたか?」
攻撃力1000。
目の前の攻撃力3000の巨竜に比べれば、あまりにもちっぽけな存在。
だが、ケルシーだけは違った。彼女のエメラルドの瞳が、その魔術師の持つ「特異な性質」を見抜いていた。
(……あの子は、自分からは何も発していない。周囲の魔力を、ただ静かに『吸収』しようとしている……?)
遊戯はニヴ=ミゼットを見上げた。
その瞳は、デュエリストとしての闘志だけでなく、相手の「本質」を見透かすような、不思議な優しさを湛えていた。
「ニヴ=ミゼット。あなたは知識を愛し、新しい発見を何よりも喜ぶ人だ」
「……何が言いたい?」
「なら、今ここで僕を倒すのは勿体ないと思わないかい? この《サイレント・マジシャン》はね、相手が強くなればなるほど、そして相手が『知ろう』とすればするほど……その力を糧にして成長するんだ」
遊戯の言葉は、挑発というよりは「招待状」だった。
未知なる実験への招待状。
「我輩のドローを……糧にするだと?」
「そう。あなたが次のターン、カードを引けば引くほど、彼女は強くなる。……見てみたくはない? あなたの膨大な知識を受け止めた彼女が、どんな姿になるのかを」
ニヴ=ミゼットの瞳孔が収縮する。
合理的に考えれば、今すぐ《イゼットの魔除け》などで除去し、次のターンで攻撃すれば終わる話だ。
しかし、彼の「火想者」としての知的好奇心が、それを拒絶した。
(この少年の瞳……ハッタリではない。我輩の計算を超える『何か』を隠している。……ならば、見てやろうではないか! その『未知』の解を!)
ニヴ=ミゼットは口角を吊り上げた。
それは、獲物を見つけた捕食者の顔ではなく、難問に出会った学者の顔だった。
「……面白い。その誘い、乗ってやろう。見せてみろ、我輩の叡智が勝つか、貴様のその細い希望が勝つか……究極の実験だ!」
遊戯は小さく微笑み、ターンエンドを宣言した。
静寂なる魔術師と、傲慢なる爆炎竜。
勝負の行方は、次のターン、運命のドローに委ねられた。
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