新たなるゲートウォッチ   作:Dr.ヤマブキ

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OCGのカード効果とアニメでのカード効果が混在しています。注意してください。


シーン15:天よりの宝札

「さあ、実験再開(リスタート)だ! 我輩のターン、ドロー!」

 

ニヴ=ミゼットがカードを引く。

 

「この瞬間、《サイレント・マジシャン》の効果発動! 僕のモンスターは、相手がカードを1枚引くたびに魔力を蓄積し、攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

フィールドの少女が、静かに杖を掲げる。

 

ニヴ=ミゼットが引いたカードから溢れ出るマナの残滓が、彼女の杖へと吸い込まれていく。

 

**サイレント・マジシャン 攻1000 → 1500**

 

「ほう……なるほど。相手の知識量を自身の力に変換するアルゴリズムか。だが、たかだか500ポイント。我輩の爆炎竜(攻3000)には遠く及ばん!」

 

ニヴ=ミゼットは攻撃の手を止め、ニヤリと笑った。

 

「その程度か? 貴様の言う『進化』とは。……興が醒めたな、このターンで終わらせてやる。バトル! 《爆炎竜 ニヴ=ミゼット》で《サイレント・マジシャン》を攻撃!」

 

「そうはさせない! 罠発動! 《和睦の使者》!」

 

遊戯のフィールドに半透明の盾を持つ3人の女神が現れ、ドラゴンの炎を優しく受け止める。

 

「このターン、僕のモンスターは戦闘で破壊されず、僕への戦闘ダメージも0になる!」

 

「チッ、往生際の悪い……! ならばターンエンドだ。さあ、今度こそ見せてみろ。その魔術師がどこまで耐えられるかをな!」

 

ニヴ=ミゼットは焦れていた。そして、その焦燥こそが、遊戯の狙い通りだった。

遊戯のターンが回ってくる。

 

「僕のターン……ドロー!」

 

遊戯がカードを引いた瞬間、再び警報音が鳴る。

 

「無駄だ! 引いたな!? 《火想者の知性》発動! そのドローという行為への罰(ペナルティ)として、貴様にダメージを与える!」

 

またしてもドラゴンの翼から熱線が放たれる。

遊戯はそれを避けることもせず、正面から受け止めた。

 

「ぐうぅっ……!!」

 

**遊戯 LP 2500 → 1500**

 

「遊戯!」 アジャニが叫ぶ。

 

遊戯は苦痛に顔を歪めながらも、引いたカードを見て、力強く頷いた。

その目には、勝利への確信が宿っていた。

 

「……ニヴ=ミゼット。あなたは知識を『力』だと言ったね。そして、それを独占しようとした」

 

「それがどうした? 知識を持つ者が支配するのは、多元宇宙の摂理だ」

 

「違うよ。知識は、溜め込むだけじゃ意味がない。……誰かと分かち合い、誰かのために使ってこそ、本当の力になるんだ!」

 

遊戯は手札から一枚の魔法カードを天高く掲げた。

 

そのカードの絵柄を見たケルシーが、ハッと目を見開く。

 

「あれは……まさか!?」

 

**「魔法カード発動! 《天よりの宝札》!!」**

 

実験室の天井が砕け、黄金の光が降り注ぐ。

それは全ての人に平等に与えられる、恵みの雨。

 

**【天よりの宝札】**

通常魔法

お互いのプレイヤーは、手札が6枚になるようにデッキからカードをドローする。

 

「なっ……敵である我輩にもカードを与えるだと!?」

 

ニヴ=ミゼットが驚愕する。

ケルシーが鋭く叫んだ。

 

「ダメよ! 遊戯!。それは自殺行為よ!。」

 

ニヴ=ミゼットの手札には、魔法を打ち消す《対抗変動》がある。

通常ならば、迷わず発動していただろう。

だが、彼の脳裏で、悪魔的な計算(ウィスパー)が囁いた。

 

(待てよ? 我輩の手札は今1枚。ここでドローすれば5枚引ける。……5枚ドローすれば、その時点で我輩のドラゴンの効果が5回発動する。遊戯のライフは残り1500。5発の砲撃(5000ダメージ相当)を食らえば、奴は確実に塵になる!)

 

「……クックック、面白い! 受けてやろうじゃないか、その恩恵!」

 

「バカな!?」 ケルシーが絶句する。

 

「礼を言うぞ、武藤遊戯! 貴様のその甘さが、貴様自身を焼き尽くす燃料となるのだ!」

 

「……行くよ、ニヴ=ミゼット!」

 

二人は同時に山札に手をかけた。

運命のドロー。

 

シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ――!

 

カードを引く音が重なる。

その瞬間、実験室はカオスと化した。

 

「喰らえぇぇぇ!! ドロー連鎖砲撃(ドロー・チェーン・ブラスト)!!」

 

ニヴ=ミゼットがカードを引くたび、爆炎竜が咆哮し、遊戯に向かって殺人的な熱線を乱射する。一発、二発、三発……!

 

「ぐわあぁっ……!!」

 

遊戯の体が紅蓮の炎に包まれる。

モニターのアラートが絶叫し、遊戯のライフカウンターが高速で減少していく。

 

**遊戯 LP 1500 → 1000 → 500……**

 

「終わりだ! 遊戯!!」

 

最後の5発目が遊戯を直撃しようとした、その刹那。

遊戯はドローしたばかりの手札から、一枚のカードを墓地へ投げ捨てた。

 

**「手札より《ハネワタ》の効果発動!!」**

 

光の粒子が集束し、愛らしいクリボーに似た、しかし透明な輝きを放つ妖精が現れる。

妖精は小さな体で結界を展開し、爆炎竜の熱線を完全に弾き返した。

 

**【ハネワタ】**

効果モンスター

手札からこのカードを墓地へ送って発動できる。このターン、自分が受ける効果ダメージは0になる。

 

「なっ……効果ダメージ無効だと!?」

 

爆風が晴れると、そこには無傷――ではないが、しっかりと大地を踏みしめて立つ遊戯の姿があった。

 

「ありがとう、ハネワタ……。君が守ってくれた希望、無駄にはしない!」

 

「だが、凌いだだけだ! 貴様のライフは風前の灯火! 対して我輩の手札は潤沢! 次のターンになれば……」

 

「次のターンなんてない。……見て!」

 

遊戯が指差す先。

そこには、爆炎の中に佇む、一人の魔導師の姿があった。

 

ニヴ=ミゼットが5枚のカードを引いた。

そしてそれ以前の蓄積も含め、彼女の杖には限界を超える魔力が充填されていた。

魔力カウンターが5つを超え、臨界点を突破する。

 

**「レベルアップ!!」**

 

光の繭が弾け飛ぶ。

 

そこにいたのは、もはやあどけない少女ではなかった。

 

純白の法衣を纏い、神々しいまでのオーラを放つ、美しき大魔導師。

 

その瞳はニヴ=ミゼットの「全知」すらも見下ろすほどに澄み渡り、静寂(サイレント)そのものとなっていた。

 

**【サイレント・マジシャン LV8】**

星8/光/魔法使い族/攻3500/守1000

 

「進化したか……! だが攻撃力3500! 我輩の爆炎竜(3000)を倒せても、ライフ8000を削り切るには程遠い!」

 

「それはどうかな? ……彼女はレベルアップしても、その身に刻まれた『記憶(魔力)』を忘れたりはしない!」

 

遊戯が叫ぶと、サイレント・マジシャン LV8のオーラがさらに膨れ上がった。

今までのターンで蓄積してきた攻撃力上昇分が、進化した彼女の力に上乗せされる。

 

**サイレント・マジシャン LV8 攻3500 → 6000**

 

「なっ……攻撃力6000!? 進化前の強化を引き継いでいるというのか!?」

 

「さらに! ライフが減った僕には、このカードがある……!」

遊戯は手札から最後のカードを突き出し、装備魔法として発動した。

 

**「装備魔法、《巨大化》!!」**

 

**【巨大化】**

装備魔法

自分のライフポイントが相手より低い場合、装備モンスターの攻撃力を倍にする。

 

サイレント・マジシャンの体が巨大な光の巨人と化す。

ラヴニカの空を突き抜けるほどの、圧倒的な魔力の柱。

 

**サイレント・マジシャン LV8 攻6000 → 12000**

 

「攻撃力……いち、12000だとぉぉぉーーっ!?」

 

ニヴ=ミゼットの声が裏返る。

数値の桁が違う。これはもはやデュエルではない。神話の再現だ。

 

「ええい! ならば魔法で消し飛ばしてやる! 手札から《ミジウムの迫撃砲》!」

 

「無駄だよ」 遊戯が静かに告げる。

 

「進化を遂げた彼女は、もう誰の言葉(魔法)にも惑わされない。……彼女は、あらゆる魔法効果を受けない!」

 

「なっ……魔法無効!?」

 

放たれた迫撃砲は、サイレント・マジシャンの展開した静寂の結界の前に、音もなく消滅した。

 

「さあ、決着の時だ。……行け! サイレント・マジシャン! 《爆炎竜 ニヴ=ミゼット》を攻撃!」

 

大魔導師が杖を掲げる。

 

蓄積された膨大な魔力――ニヴ=ミゼットが誇った「知識」のすべてが、純粋な光の奔流となって束ねられる。

 

「知識は力だ。でも、それは他者を傷つけるためじゃない。未来を切り開く光なんだ!」

 

「サイレント・バーニング!!」

 

放たれた閃光は、音すら置き去りにした。

 

攻撃力12000の一撃。

 

ニヴ=ミゼットの分身である爆炎竜が、断末魔を上げる間もなく光の中に溶解していく。

 

そしてその余波は、本体であるニヴ=ミゼットをも飲み込んだ。

 

「ぬおおおおおっ!! 我輩の……計算式があぁぁっ……!!」

 

閃光が実験室を白く染め上げ、そして静寂が訪れた。

 

ニヴ=ミゼット LP 0

 

---

 

ソリッドビジョンの光が消え、実験室に元の薄暗さが戻る。

 

静まり返った部屋の中で、遊戯は肩で息をしながら、ゆっくりとデュエルディスクを下ろした。

 

「……良い勝負でした」

 

その言葉に、煤けた顔をした巨大なドラゴンが、瓦礫の山から身を起こした。

 

ニヴ=ミゼットは怒るでもなく、ただ呆然と、自身の敗北の余韻を噛み締めていた。

 

「……12000。我輩のライフを、一撃で蒸発させたか……」

 

「僕一人の力じゃありません。あなたのドローと、ハネワタの守り、そしてサイレント・マジシャンの成長……全てが繋がった結果です」

 

遊戯が微笑むと、ニヴ=ミゼットは天を仰ぎ、そして高らかに笑い出した。

 

「カッカッカッカッ! 面白い! 実に面白いぞ、人間!!」

 

ドラゴンの笑い声がビリビリと建物を揺らす。

 

アジャニとケルシーは顔を見合わせ、安堵の息を吐いた。

 

「負けを認めよう、武藤遊戯。貴様の提示した『成長する変数』……この目でしかと確認した。実に興味深いデータだ」

 

ニヴ=ミゼットは巨大な顔を遊戯に近づけ、ニヤリと笑った。

 

「約束通り、イゼット団の管轄する区画の一部をくれてやる。少々古臭い場所だが、貴様らの『実験(学校)』にはおあつらえ向きだろう」

 

「ありがとうございます! ニヴ=ミゼット様!」

 

「ただし!」

 

ニヴ=ミゼットは鋭い爪を立てた。

 

「条件がある。……月に一度、我輩の元へ来い。そして、またゲームで我輩と勝負しろ。このまま負けたままでは、イゼットのパルンの名折れだからな」

 

遊戯は嬉しそうに頷いた。

 

「勿論です。何度でも、相手になりますよ」

 

こうして、新たなるゲートウォッチの最初の拠点は、ラヴニカの最も危険で、最も知的なドラゴンの庇護下に置かれることとなった。

 

まだ見ぬ生徒たちを迎えるための、最初の鐘が鳴ろうとしていた。

 




いかがでしたか?。4話に渡るデュエルシーン。

一部、展開のためにルールを無視した場所があります。アニメや漫画の遊戯王っぽいゲーム展開をイメージしたつもりです。感想をいただけると幸いです。

本作「新たなるゲートウォッチ」はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC.
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