アストレアファミリアのハーレムクソ野郎   作:神崎せもぽぬめ

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一章
アストレアファミリアのハーレムクソ野郎


 

 

 

 

 

 英雄が生まれる都、オラリオ。

 

 そこは迷宮を地下に据え置く都市。あらゆる因縁、約定、出会い、未知、英雄譚の始まりの地であり、同時に終わりを告げる場所でもある。

 未だにその全容は解明されておらず常に死と隣り合わせの空間であり、昨日の晩に共に飯を食べた者が明日の昼には死んでいても何もおかしくない危険地帯。人類の天敵種(モンスター)を数多生み出し、冒険者は命を懸けてダンジョンへと潜るのだ。

 

 古代ではモンスターが地上を侵略し、神時代たる今は冒険者がダンジョンを攻略する。

 

 ならば人類の敵はモンスターだけか?と聞かれたら、そうではないらしい。

 

 

 『アストレアファミリアのハーレムクソ野郎』

 

 

 迷宮(ダンジョン)都市オラリオは、間違いなく世界の中心だ。

 偉業の数々がそこで生まれ、話題が尽きることはない。多くの冒険者は酒を片手に自らの冒険譚を言って聞かせ、また別の冒険者はそれに対抗しようとして………その繰り返し。

 『いつの時代も、オラリオはオラリオ』というセリフは誰が言ったかともかく、的を射ているらしかった。

 

 やれ【勇者(ブレイバー)】はかっこいい~だとか、やれ【剣姫】は神々(オレたち)の嫁~だとか、やれ【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】は清く正しく美しい~だとか………………いや待て。最後は自称だったか?

 

 まぁともかくとして、第一級の冒険者ともなれば、自分が噂や話題の中心になることは多々ある、というわけだ。

 

 

『アストレアファミリアのハーレムクソ野郎』

 

 

 ………だからといって、噂なんか、鵜呑みにするんじゃあないぞ?間違ってもすれ違った母娘(おやこ)から—————

 

『ママー、はーれむくそやろうさん?がいるよー?』

『シー!見てはいけません!!』

 

—————なんていう謂れはないんだからな!?【不撓なる聖剣(ヴァナハルド)】なんて大袈裟な二つ名を頂いた俺をして、心が折れかけたぜ………!!

 

 けれども。それでも見回りは欠かさずにやろうと決めたのだから、やり通さないとな。

 

 第一級冒険者の強化された聴覚で聞き捨てならない噂を拾いつつ、春風に吹かれるまま出来るだけ無秩序に市街地を散策する。

 

 見回りの際に決まったルートを歩かないのは、小型大型問わず犯罪の抑止力になるから。暗黒期と呼ばれた混沌の時世を抜けた今は、闇派閥(イヴィルス)が唐突に暴れ出す—————なんてことはなくなったが、油断は禁物。第二第三の彼らが現れないとは限らないのだ。

 

 しかし、小型犯罪もほとんどが大派閥である【都市憲兵の派閥(ガネーシャ・ファミリア)】が先に対処することが多いので、手持ち無沙汰になる。傍からしたら今のオレの姿は散歩をしている冒険者にしか見えないだろう。

 けど平和なのは良い事だ。そのためだったら暇人(ニート)っぽい冒険者を見るような蔑んだ目線を頂戴しても一向に構わない。

 

 

 

『アストレアファミリア所属のユースは、ハーレムクソ野郎』

 

 

 

 だがこれは構わなくないからなァ!?

 

 おもっくそフルネームで力いっぱい悪評を広めやがって!!質が悪いのは出所が全く分からんってことだ!!元凶を見つけたら一発ガチでぶん殴ってやりたい………!!

 何故か悪い方向に進化した噂話に対し、心の中で思わず突っ込んだ。

 

 そもそも分かっちゃいない、女の園に男一人が放り込まれる苦労と恐怖を。加入時期や年齢的にも末弟ポジションだからこそ、上の立場(あね)には逆らえないように遺伝子に組み込まれているのだ……………輝夜、ライラ……うっ、頭が…………!

 

 あと単純に、ぶっちゃけ少しムラムラする。ほんと、ぶっちゃけね。

 立派な大人(21歳)に育った俺は、まぁなんというか、ピンク方面な欲望を持て余しているのだ。

 そりゃあファミリアの皆は、家族同然のように思っている。けれどそれとこれは話が別だ。

 しっかり者の多いイメージのある彼女達だが、星屑の庭(ホーム)へ帰れば隙をさらけ出すラフな格好でうろついたり、あとは何かとボディタッチが多い。

 

『ユ~ス~~~~手を出すんじゃあ!!それでも儂の弟子か!!行け!今じゃ—————』

福音(ゴスペル)

『ぎゃあアアアアアアアア!!!』

 

 毎回耳元で、勝手に弟子扱いしてきやがる悪魔(ジジイ)大悪魔(まじょ)が争い、後者が誘惑を一蹴する。

 え、天使?アイツはこの先の戦いについてこれないから置いてきたぜ。

 

『ユース、ヤるなら避妊は絶対にしろよ?』

 

 とは、料理番(ザルド)の言である。

 

 ……まぁともかく、一時の感情で手を出せばどうなるか。言うまでもない。針の筵のまま過ごすことになり、とてもじゃないが居心地がいいとは言えない毎日を過ごすことになるだろう。

 

 じゃあ娼館に行って発散すればいいじゃないかって?

 

 それはダメだ。

 『膝枕してもらいたい女神』順位(ランキング)脅威の十年連続第一位で殿堂入りを果たした、我らが主神アストレア様直々に禁じられてしまったからだ。なんでさ。

 

 もう八方塞がり。打つ手なし。

 

 俺に石を投げるなら、この現状を知ってから投げてほしい。そうすれば遠慮なく投げ返してやるのに、第一級冒険者の能力で。

 そんなふうに投げやりな気持ちになっていると。

 

「おはようユース。今日も見回りご苦労さま」

 

 ぽんっと肩を叩かれて振り向くと、【ガネーシャ・ファミリア】の偶像(アイドル)的な存在であるアーディ・ヴァルマが、人好きのする笑みでこちらを見ていた。

 短くまとめられた薄蒼色の髪はそよ風にサラサラ揺れる。美しいより、可憐、という言葉が似合う中性的な相貌と、服の上からでもはっきりとわかるスタイルに、二律背反的な魅力を感じざるを得ない。神々が言うところの”ぎゃっぷもえ”って真理を日々実感しています。ありがとう。

 

「おはよう、アーディ。散歩ついでに平和を実感してるだけだよ」

「それを見回りって言うんじゃない?素直じゃないなぁーもう」

「俺が素直になるのは死ぬ直前かアストレア様の膝の上だけだからな」

「………うーん、この主神大好きっ子め〜」

 

 残念なものを見るような目を向けられることは酷く心外だが、別に間違っちゃいないしな。

 肩を竦めて無言の肯定をする。

 

 そこから何となく同じ方向に足を向け、何の変哲もない世間話をした。

 

 やれリオンは可愛いだとか。

 やれリオンは抱き心地がいいだとか。

 やれリオンは────

 

 

「待て待て待て!」

「でねリオンはね……って、もう何さ。ここからがいい所なのに」

「その話は聞きすぎて食傷気味だわ!こちとら毎日顔合わせてんだぞ!」

 

 アーディとの話題は(もっぱ)らリオンについてのものになる。

 リュー・リオン。アストレアファミリア所属の生粋の妖精(エルフ)。正義感が強く暴走しがちでポンコツ、しかしアーディ曰くそこが可愛いとのこと。

 いやいや、1回アイツの作った料理食ってみ?多分、料理を盛り付けた皿を食った方がまだ美味いと思うぞ。

 

「お、そうだ。今日の昼飯当番はリオンだったわ。食いに来るか?」

「うっ、それはちょっと勘弁かも……」

「冗談だよ。あんな劇物食べんのは俺らだけで十分だ」

 

 お陰様で、『耐久』の能力値(ステイタス)が成長してるのは、言わないでおこう。

 

「あと、この間頼まれてた新作。届いてたから今度渡すわ」

「え!世有主(ぜうす)先生の新作英雄譚!?」

「そうそう。アーディに渡すって言ったらめっちゃ気合い入れて書きやがるんだわ」

 

 15年前まで最強の派閥を運営していた主神が、今では立派な絵本作家である。もちろん歴史を直接見ていた古き大神なので、ほとんど原典(オリジナル)のようなものだ。

 と、田舎で隠居生活をしているクソジジイを考えているとふと思い出した。

 そういえば、そろそろ弟分がオラリオに来る時期だったなと。

 …………ますます噂について何とかしなくちゃいけなくなったな…………!!

 

「じゃあ早速行くよ!」

「分かった。なら見回り終わってから行こうか」

「うん!楽しみだなあ〜」

 

 丘の上に咲く呑気な花のように笑ってみせたアーディはそう言うと、軽いステップを刻んで先導していく。

 

「おーい、置いてっちゃうよ〜!」

「はいはい……今行きますよーっと……」

 

 ……これ、ハーレムクソ野郎がアーディにも手を出してるとか言われないだろうな?

 うん。まあ言われるだろうな。

 

 そも、こんな風に言われているのは、アストレアファミリアの女傑らが皆、美少女で、愛されているからだ。

 それを独り占めしてるように見える俺に嫉妬(ヘイト)が向くのも仕方ない。

 

 なら解決方法は一つだ。

 

 あまり気が進まないが……他派閥の女性とお付き合いするしかない。

 

 これ以上家族(ファミリア)のみんなに俺の風評被害で迷惑をかける訳にはいかないからな。それはちょっと正義じゃない。

 

 そんな決心を固めながら、先を行くアーディに追いつく為に足を早める。

 

 

 悩める俺の心とは正反対の晴れやかな青空が、なんだか羨ましく思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 広大な敷地を有するオラリオを八等分したうちの北の区画。閑静な住宅街が広がるその片隅に、星乙女たちの本拠(ホーム)がある。

 『星屑の庭』と謳われるアストレアファミリアの本拠地は決して大きくはないが、白く瀟洒な造りをしている。それは主神である女神アストレアと、彼女を慕う星乙女たちを彷彿とさせる清らかさと温かさを演出しているかのようだった。

 

 だが。

 

「ユースは行ったわね?それじゃあ始めましょう────」

 

 

 星、満ちる空にも雲が翳るように。

 星乙女たちは普段の溌剌とした空気を消していた。

 

 

「────第ン十回、ユースといちゃいちゃらぶらぶ大計画をね!」

 

 

 非常にあたまが悪い作戦名について指摘する乙女は、この場にはもういない。

 最初は ”流石に恥ずいって……” とか ”第何回で飽きるか賭けてみない?” とか宣っていた彼女たちの表情には、おふざけの色合いが一切無い。それはまるで戦場に立つ騎士の如き眼差しだ。

 

 まるで戦場のような?

 

 否!否である!

 

 星乙女の楽園とさえ評される白き瀟洒な館は、最早戦場と化しているのだ!!

 

 それでは紹介しよう!

 この戦いに名を連ねる一騎当千、万夫不当の英雄達をッッッ!!!

 

 疾風の如く現れたのは、金髪ロングの妖精(エルフ)。リュー・リオンだ!!

 その麗しい姿に加えて、クーデレポンコツメシマズと属性のてんこ盛り!一体彼女は何を持ちえないのだ!?

 今日こそ疾風のように意中の彼の心を攫うことができるでしょうか!期待が高まります!

 

 次は極東から現れた屈指の剣客、黒髪清楚の大和撫子────その実、口が悪く、品も悪い猫かぶり。ゴジョウノ・輝夜ァ!!

 羽衣を身に纏った月の姫のように軽やかでいて、その瞳は爛々と紅く輝いているっ!獲物を逃すまいとする捕食者の瞳から逃れ得る者は、果たしているのか!?

 

 そして虎視眈々と狙いを定める、生きた知恵袋。小人族(パルゥム)のライラが満を持しての登場だ!

 一族の『勇者』、フィン・ディムナとの仲を噂される彼女だが、どういう訳か参戦!

 侮ることなかれ。彼女には素晴らしい機転がある!今日も爆発なるか!?

 

 更に更にィ───!

 

 如才なく器用な前衛攻役(アタッカー)のヒューマン、ノイン・ユニック。

 小柄な体躯で皆を守るアストレアファミリアの前衛壁役(ウォール)、ドワーフのアスタ・ノックス。

 狼人(ウェアウルフ)の中衛職。主神大好き筆頭であるネーゼ・ランケット。

 女戦士(アマゾネス)の拳闘士。ファミリア一のオシャレ好きで変わり者のイスカ・ブラ。

 彼の魔法大国(アルテナ)出身のはぐれ魔導士。ヒューマンのリャーナ・リーツ。

 主神(アストレア)様と同格の悩ましい胸を持つ治療師(ヒーラー)、マリュー・レアージュ。

 知識欲の権化、最年少の眼鏡っ娘エルフ、セルティ・スロア。

 

 も、来てくれたぞ!

 

 

 そしてェ───!!

 

 (胸が)なァァァァァァァいッ!説明不要ッ!!

 キュートでチャーミングな絶世の美少女(自称)!何時も貴方の心の太陽(自称)!

 アストレアファミリアの団長、アリーゼ・ローヴェルが進行役を務めるぜ!!

 

 最後に我らが主神!正義神アストレア!

 『膝枕してもらいたい女神ランキング』及び『包容力と母性の化身すぎる女神ランキング』殿堂入り!

 今回も引き続き調停者(ルーラー)をして頂きます!!

 

 

「先ずはいつもの調査報告から。ライラ、お願い」

「あぁ……結論から話す。が、前回とあんま変わらないな。目下最重要危険人物なのは都市の憲兵(ガネーシャ)んとこのアーディ。そして幼なじみマウントの【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。最後に【白巫女(マイナデス)】。コイツとは主にダンジョンで会っているらしいぜ」

「うん……分かったわ。ありがとう、ライラ」

 

 一体彼の何が、彼女たちをここまで惹きつけるのか。

 それについて語ってしまうと”終末の刻”の方が早く訪れてしまうため省略させていただくが、ただ一つ言えるとしたら……『超絶依存嫉妬女(ヘラファミリア)が考えたさいきょーの男冒険者』ということだ。

 元一般Lv.7冒険者のアル何某(フィア)さんの教育(かいぞう)によって誕生してしまった真正の怪物。曰く、『下半神(ゼウス)から奔放さと好々爺とスケベな性格を抜き取って、精悍な面立ちにした』らしい………それは最早ゼウスではない、というツッコミは置いておこう。

 

 ただ星乙女たち(アストライアーズ)が声高に主張したいのは一点のみ!

 

『うちの弟分(ユース)が恋愛クソボケすぎるッ!』

 

 そんな悲鳴にも似た何かなのだッ!!

 

「この中でも行動派(アクション)なのはアーディちゃんよね〜」

「うんうん。ユースが巡回の当番の時、大体被ってるし……」

「絶対狙っていますね」

「アーディ……我が友ながら、なんて恐ろしい……!?」

 

 悩ましげに頬に手を当てるマリュー、調査書から推察しそれに同意したアスタとセルティ。リューはただただ戦慄するしかない。

 

「いやお前がポンコツなだけだろ、恋愛クソ雑魚エルフ」

「く、くそざこ!?───て、訂正しなさいっ!!」

「断るに決まってる、ばあああかめ!」

((((((また始まった……))))))

 

 輝夜とリューは戦場にて好敵手を演じ合う間柄。二人が何かと小競り合いをするのは日常茶飯事なのだ。

 そしてこの場で争うとなるなら……

 

「これを見ろ、青二才」

「コレは……簪?」

「そうだ、その通り」

 

 長い黒髪を下ろしているのがいつもの輝夜だ。しかし今日は頭の上で結っており、お団子には銀細工でできた竜胆の簪が刺さっていた。

 そんなただのイメチェン程度に輝夜が言及するはずがない。まさか………

 

「これはな…………ついこの間あいつが私に贈ってくれたものだ」

「なっ!?」

 

 リューの鼓動が小さく弾ける。

 でしょうね、とリュー以外の者は頷いた。

 

「露店でこの見事な銀細工の竜胆を見た時、私の顔を思い出したそうだ。そして記念日でもないにも関わらず、私に贈ってくれたのだっ!………もうこれはプロポーズなのではないでしょうか?ふふっ……」

「白昼堂々寝言か?猫かぶりヒューマン」

「黙れ小人族(パルゥム)。羨ましいのが手に取るようにわかるぞ?」

 

 それはそう……ッ!!

 唇を噛み締めながら星乙女たちは思った。

 しかし、くそざこ妖精(リュー・リオン)は余裕の笑みを浮かべていた。

 

「その程度ですか?…………やれやれもっと凄いものを期待していたのですが」

「何だと?」

「お、今回はリオンも反撃するって」

「楽しみねえ〜」

 

 三下のような発言をするリューに、こめかみをヒクつかせた輝夜は問い返す。他の乙女たちは高みの見物を決め込んだ。

 怒気を超えて殺意すら発した彼女に対し、あくまでもリューは雄弁に語る。

 

 それはとある日、買い物当番としてリューもユースが市街を歩いていたときだ。

 主神一柱に眷属が十二名。少数派閥である為、一回の買い物につき購入する食料は少なくて済む。加えてリューとユースは第一級冒険者だ。例え山のようにあったとしても、軽々と運べてしまうだろう。

 定期的に購入する食糧は二人いれば問題ないので、自然とお互いの片手が空く。

 リューはそれを狙っていた。

 そう、この位置、この角度、この瞬間(タイミング)!まるで神が啓示したかのような絶好のチャンスを逃す訳にはいかなかった!

 そして、

 

「私の人差し指が彼の手に触れたところで………思わず投げ飛ばしてしまいました」

「もうそれはただのテロだろ」

「ポンコツエルフが免罪符だと思ってらっしゃる?」

「いつかやると思ってたわ!」

「ま、まだこの話には続きがあるんですッ!コホン、それから───」

 

 

 ───私の投げに逆らわず、あえて自ら跳ぶ事で衝撃を減らした彼は、しかし持っていた食材の安全だけは保証できませんでた。

 空に舞う野菜やお肉、魚に缶詰。私にちょうど降りかかる軌道のそれらに対して、私は為す術もありませんでした。

 その時でした。彼が身を翻したのは。

 守るもの(食糧)が無くなった彼は抜群の機動性を発揮し、全てのものをキャッチしてみせると突然、私の頬に手を添えて───

 

「『ジャガ丸くん、髪についてたよ』と…………これは実質プロポーズなのでは?」

「拡大解釈の英雄か?どこをどう切り取ったらそうなるんだよ………」

「結論の着地点が意味不明でしょ。新体操未経験でもそんなんならんて」

「負け犬の遠吠えというやつですか?羨ましいと素直に言ったらどうなんです?」

 

 それはッ……そう……ッ!!

 唇を噛みちぎりそうな勢いで星乙女たちは悔しがった。

 もう収拾がつかない……とアストレアは半ば諦めていた。

 

「はいはいそこまでよ!皆、この会議の主旨を思い出してちょうだい」

『恋愛弱者たちによる傷の舐め合い?』

「違うわよ!?皆そんなに卑屈にならないで!!」

 

 さめざめと乾いた笑いをする一同。

 アリーゼはコホンと咳をして、無い胸を張った。

 

「いい?私たちの目的はユースの認識を変えることよ!」

「認識、ですか?」

「ええ。ユースの心の中では、私達は家族としての立ち位置(ポディション)にいる。そして彼にとっての家族っていうのは関係性の中でもう完成しちゃっているの。

 ユースの中ではもうなんか『仲間』とか『恋人』っていう過程をすっ飛ばして『家族』っていう結論に帰着しちゃってるってわけ!…………改めて考えるとちょっとムカつくわね!!!!」

それはそう

 

 星乙女たちは真顔で同意した。

 家族として見られているというのは百歩譲って良しとしよう。

 だが、女として見られていないのは彼女たちの誇り(プライド)が許さなかった。というかこっちがバリバリ男として見てるんだからそっちも見るのが道理でしょ??と逆ギレみたいな感情すらある。

 アストレアがユースに対して娼館に行くことを禁じたのはこの為。もし行ってしまったら……彼女たちがメンヘラ────精神状態(メンタル)が女神ヘラのようになることを指した造語である────になってしまうのは確定だからだ。

 

「強力なライバルもいるわ────そしてここにいるメンバーを出し抜こうとする人だっている」

 

 一体なんの事やらと、黒髪の彼女は目をそっと逸らした。

 

「けれど私たちには正義がある!これ以上ユースの毒牙にかかる女性を増やさないという、使命がある!」

『!!』

 

 そこだけ聞くと、まるでユースがハーレムクソ野郎のように聞こえるじゃないか!!

 

「私達が取るべき行動はただ一つ!悲しみの涙を拭い、みんなの笑顔を守る!そうですよね、アストレア様!!」

「……えぇ、まあ、そうね。星の数ほどあれ、それもまた正義の……正義?……正義の一つでしょう。多分、きっと、恐らく」

「アストレア様のお墨付きももらったし、問題ないわね!さあ、恒例のあれをやって今日からも頑張るわよ!」

 

 全知零能であるアストレアには、これが正義なのかは分からなかった。

 ただ……彼女たちの暴走を止められなかったことについて、心の中で謝っておいた。ごめんなさい、ユース…………

 

「正義の剣と翼に誓って!」

『正義の剣と翼に誓って!!』

 

 

 果たして、ユースによる脱ハーレムクソ野郎と、星乙女たちによるハーレムクソ野郎化作戦が始まった。

 

 この勝負の行方を握るのは一体誰なんだ────!!

 

 

 

 






───Tips───

真名:ユース(・アストレア)
種族:ハーフ・エルフ
所属:アストレアファミリア
年齢:21歳
到達階層:51階層・61階層(非公式)
所持金:三千万ヴァリス
武器:片手剣、短杖、円盾(ラウンドシールド)
二つ名:不撓なる聖剣(ヴァナハルド)、残響(非公式)

《ステイタス》
Lv.6
力 :C648
耐久:A822
器用:S901
敏捷:A879
魔力:SS1011
『剣士』C
『適応』F
『魔導』G
『覇衝』I

 スキルや魔法は後々
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