アストレアファミリアのハーレムクソ野郎   作:神崎せもぽぬめ

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第二話

 

 

 

 突然だが、【アストレアファミリア】の派閥評価をここで語ろうと思う。

 

 管理機関(ギルド)から下されている【アストレアファミリア】の等級(ランク)はA。

 ちなみに、Aより上のSで評価されている派閥(ファミリア)は【道化の派閥(ロキファミリア)】、【美神の派閥(フレイヤファミリア)】、そして【民衆神の派閥(ガネーシャファミリア)】の三派閥のみ。

 

 そんな俺たちが等級(ランク)A()()で停滞している理由は二つある。

 

 一つは先の三派閥に比べて、小規模であるということ。

 少数精鋭とは聞こえはいいが、例えば頭数そのものが必要な場面において、俺たちはどうしても力になりきれないことがある。じゃあ新規団員募集すれば?となるが………異端児(ゼノス)っていう特大の爆弾があるため、安易に募集はできないのだ。

 

 そして二つ目。

 そもそもの話、アストレアファミリア(おれたち)の最高到達階層が49階層で止まっていることだ。公式では48階層。そしてもっと非公式的に言うと51階層までは行った(にげた)ことはある。

 これが等級(ランク)Sへの最大の障壁になっているらしい。ギルド長(ロイマン)が愚痴っていたのを聞いたから間違いない。

 

 じゃあ何故49階層で止まっているのか?

 

 それはあの大荒野(モイトラ)の王であり、階層主の一角────『単眼の王(バロール)』がいるからに他ならない。

 

 階層主。

 それは特定の階層にのみ存在する『迷宮の孤王(モンスターレックス)』。

 その階層域の推奨レベルを上回る圧倒的な潜在脅威(ポテンシャル)を有しており、個でありながら群である俺たちを一蹴してしまう強さを誇る。

 

 ただそんなモンスターが一般モンスターみたいにヒョコヒョコ産まれてくるわけじゃない。もしそんなんだったら下界は1000年前に終わっていただろう。

 階層主には次産間隔(インターバル)というのが存在していて、強さに応じてその次産間隔(インターバル)も長期になる。

 ちなみにバロールは大体九ヶ月と言われている。

 なのでやろうと思えば、『遠征』に行くタイミングとバロールの次産間隔(インターバル)をズラすことだって出来る。というかむしろ、遠征計画を立てる上ではそっちが主流の考えだ。

 

 けれどもうちの脳内お花畑バーニング団長(アリーゼ)は無駄にドヤ顔で言ったのだ。

 

『自派閥だけでバロールを倒せないまま等級(ランク)Sの評価貰うの、ちょっとダサくない??だから倒せるまで先に進まないようにしましょ!!』

 

 はい、今貴方の心の中のライラはこう言ったはずです。『んなリスク高いことするかよ』……と。

 

 しかしその提案をしたのが初見でバロールに挑んでボコボコにされてしかも遠征大大大赤字で帰ってきた後にブチ上げた『傷心パーティー(爆)』だったから、プライドの高い輝夜やリオン、その場の雰囲気に流されて俺や他のメンバーも賛同してしまいました本当に後悔しています。ハイ。

 

 それ以降、俺たちはバロール討伐の為に色々と準備をした。なんせ九ヶ月も間隔は空くし、何より他の派閥───49階層だと三派閥と被ることも考えて、入念な準備を沢山行った。

 二回目は、同時に現れるフォモールというモンスターを処理するのにどうしても頭数が足りなくて撤退を決意。

 

 三回目はなんと異常個体(イレギュラー)だった。通常のバロールよりなんか二回りくらいは大きかったしなんか心臓めっちゃバクバクしたし、前回個体より超強かった。討伐寸前までいきかけたが……やはり途中で断念。帰還しようとした時、何故か野生の猛者(オッタル)がソロで現れたため、協力を依頼。

 もちろん断られたが……やはり我らが団長(アリーゼ)と言うべきか。彼女の交渉術が光った。

 最終的に玩具(おもちゃ)を買って貰えなくて暴れている子供のように駄々を捏ねる様子をオッタルの目の前で披露し、協力ではなく『バロールvsオッタルvs俺たち』という形に落ち着いた。もちろんバロールを倒せはしたものの、自派閥で倒せていないため挑戦は続く。

 ソロでバロールを打倒したかったオッタルの背中が、ちょっと悲しんでるように見えた。ドンマイ、オッタル。

 

 そして直近の四回目。

 今回は通常個体で一安心。そして満を持して──!!というところで、またしても乱入者。

 しかも今度は野生の猛者(オッタル)だけじゃなかった。フレイヤファミリアだった。いや、俺たち事前に遠征通告したんですけど………。

 もうその戦場は散々だった。

 (いかずち)が轟いては戦車は駆け抜け、無限の連携が噛み合っては殺戮の剣が迸り、無尽の回復が降り注いでは猛者(オッタル)猛者猛者(オッタルオッタル)してた。つまりは蹂躙である。

 俺たちはその光景を遠くでぼーっと見ながら、とりあえず湧いて出た雑兵(フォモール)をポコポコ倒していた。

 

 

 うん、まあ、わかる通り、都合四回挑戦し、達成できていないのが現状だ。

 

 『遠征』の『強制任務(ミッション)』は失敗すれば罰金(ペナルティ)という名の上納金が発生する。俺たちはもう四回それを支払っているが………そろそろファミリア資金がやばい状況。さすがにもう二度と野草を煮込んだ激マズスープをアストレア様に飲ませたくはない……!!

 

 それにロイマンも怒っている。

 

『何度挑戦すれば気が済む!?さっさと先の階層に行き成果を上げろ!そうすれば等級(ランク)Sとなりオラリオの名声は更に高まり、ギルド長(わたし)の権威もゲフンゲフン!

 ………ともかく!!最高到達階層の更新を最優先にしろ!以上ッ!!』

 

 正直、怒りで揺れるロイマンの二重アゴしか見てなかったが、多分そんなことを言っていたはずだ。

 

 なので俺たちは仕方なく………本当に仕方なく、到達階層の更新を優先するために遠征へ出かけることになった。

 

 弟分がそろそろオラリオに到着するのでそれを迎えてやりたかったのが正直な感想だが………ファミリアのみんなに迷惑をかける訳にもいくまい。

 

 

 こうして俺たちは唐突ではあるが、渋々、遠征を挙行することにしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 目的地は深層である51階層。

 51階層で採取した素材を献上することで、『遠征』における『成果』を挙げたこととなる。

 それを持って『遠征』は成功。晴れて到達階層の更新が叶う。

 

 これは、その道中だ。

 

 

 

 

『グギャッ───!?』

 

 一本の飛去来刃(ブーメラン)が閃く。

 

 魔物(モンスター)の核である魔石を熟知したような軌道のそれが、骸の兵士『スパルトイ』を打ち倒す。

 断末魔を満足にあげられないまま灰となったモンスターに目もくれず、小人族(パルゥム)にして参謀であるライラは眼を細めた。

 

 種族柄、小人族(パルゥム)は眼が良い。そして先の見えない闇の中でも強引に見通す視力は、彼女がLv4であるが故。

 

「アリーゼ、次は骸骨(スケルトン)系が三、戦士(ウォーリアー)系の大型が四だ!」

「待って、次の壁からもう三体ずつ出現した!」

了解(オーライ)っ!ライラとネーゼはそのまま先導!最短で行くわ!」

「ほいっとな!」

「分かったっ!」

 

 ライラに加え、斥候(スカウト)も熟す狼人(ウェアウルフ)のネーゼ・ランケットが迷宮を駆ける。

 ライラとネーゼの報告通り、怪物(モンスター)が湧き出てくるが………二人は身を隙間に捩じ込むようにしてこれを回避する。

 

『……!?』

 

 唖然とするモンスター。

 しかし無防備に背中を見せた獲物に対して凶刃を振るおうとし───防がれた!?

 

「今!です!」

「サンキュっ、アスタ!」

 

 間に割って入るのは小柄な影。

 ドワーフのアスタ・ノックスだ。

 その身に余る程の大盾で味方の背中を守る、まさに献身的な前衛壁役(ウォール)の仕事を果たす。

 それに報いたのは女戦士(アマゾネス)のイスカ・ブラ。下手な鉱石よりも頑強である骸骨(スケルトン)系モンスターの頭蓋骨を粉砕してのける一撃を軽々放ち、続くもう二撃、三撃が他のモンスターの命を刈り取った。

 

「もお〜『闘技場(コロシアム)にモンスター居ないみたいだし抜けて近道しましょう』って言い出したの誰だよ〜!!ぜんっぜん居るんですけど!?」

「アリーゼちゃんよね〜困ったわね〜」

「マリューはこんな時ものんびり(マイペース)だね、っと!!」

 

 悲鳴をあげるのはヒューマンのノイン・ユニック。

 器用さを活かし、様々なリーチの武器を代わる代わる使い分けることで、モンスターを寄せ付けないことに成功している。

 他方、同じくヒューマンで治療師(ヒーラー)のマリュー・レアージュは楽観としていた。

 ダンジョンの中だというのに肝が座り過ぎている…………というよりは生来の気質だろう。後衛職の己にできることはこの一行(パーティー)の足を引っ張らないことだ、と割り切りの良さも見せていた。

 

「さてさて……私たちの出番はあるのかしら?」

「『白宮殿(ホワイトパレス)』の階層主………死の骸王(ウダイオス)次産(リポップ)はあと二週間は先です。当分出番はないかと」

「あら残念。新調した魔法石の威力を試したかったわ………」

 

 ヒューマンと妖精(エルフ)の魔導師ペアであり、パーティーの最年長と最年少の組み合わせでもあるリャーナ・リーツとセルティ・スロアは手持ち無沙汰そうに走りながら語り合う。

 少し興奮した様子で己の杖を撫でたリャーナに、いつも通りと無視を決め込んだセルティは理性的である妖精(エルフ)そのものだった。

 

「それに……例えウダイオスが現れていても、出番はやはり無いかと」

「あらま……確かにそうみたいね」

 

 セルティが指さす先。

 

 風が(はし)り、刀が(はし)る。異常な光景だった。

 

 斬撃が乱舞する。

 鞘から抜き放たれた刀と『魔力』を秘める木刀が織り成す剣閃の結界は、パーティーを追従する()()()()()()()()()を容易に押し留めていた。

 

 どれだけの数を積み重ねたとしても無駄。

 そう確信する程、彼女たち二人は旋風の如く、瞬きの間にモンスターを屠り続けていた。

 

「95、96!………あらあら。そちらのエルフ様はもうバテてしまったので?お休みしたほうが良いのでは?」

「こちらのセリフだ輝夜!それに数では───98!私の方が勝っているッ!」

「ふふふ────言ってくれるではないか、青二才ッ!」

「その侮辱、そっくりそのまま返しますッ!!」

 

 モンスターよりも先に殺し合いそうな二人は、額がくっつきそうな位近付いて睨み合うと………弾かれるように殺戮を重ね続けた。先程より、速いペースで!

 

「ハァァァアアア!!!」

『ギャァアアア!!』

 

 木刀の一振りで倍以上のモンスターが吹き飛ぶ。

 

 使い手の名は、リュー・リオン。

 枝のようにか細い妖精(エルフ)の身からは想像しえない膂力が発生し、それは疾走する度に強まっていく。

 まるで小さな嵐のように、怪物の群れを飲み込んでは粉砕する。モンスターにとって、悪夢に違いない。

 

 しかし────

 

「ふっっ!!」

『グァァァ────ッ』

 

 ───断末魔も満足にあげられずに、灰の塵になって消えていくこちらの光景もきっと、悪夢に違いなかった。

 

 その剣客の名は、ゴジョウノ・輝夜。

 冴え冴えたる剣技の粋を見せつける彼女は()()だった。

 

 最小の始動、最速の抜刀、最高の戦果。

 

 居合の一閃を何百にも重ね、雨の如く振り下ろす。的確に魔石を狙う技巧は、彼女の積み上げてきた努力と年月を浮き彫りにさせる。

 

「見えてきたわ!次層の階段!」

 

 パーティーの中段。

 指示を飛ばすことに注力していたアストレアファミリアの団長───アリーゼ・ローヴェルは高らかに声を発した。

 

 それはもう高らかに。無駄に無い胸を張って。堂々と。()()で言った。

 

 だから、

 

『『『『『グヴァァ!!!』』』』』

 

「「「「「「「おい」」」」」」」

 

「………テヘペロ☆」

 

「「「「「「「イラッ☆」」」」」」」

 

 

 Q.(自称)最高美少女冒険者が更にモンスターを引き寄せるのは間違っているだろうか?

 

 A.いいえ、間違ってないわ!!!!(A・Lさん)

 

 

「団長!貴女のやかましい声でモンスターが寄ってきた!!」

「うわーん!ごめんなさーい!」

 

 思わず剣舞を止めた輝夜がアリーゼに文句を言う。

 いいぞもっと言え!という小人族(パルゥム)の声は努めて無視した。

 

 しかし実際問題どうするか………

 

「いける?ユース」

「問題ないよ、()()()()()()なら」

「んー!!流石っ、ユース!ありがとう、愛してるわ!!」

「はいはい俺も俺も。早よ先行ってくれ」

 

 うっひゃ〜!と喜ぶアリーゼと、何故かアリーゼを睨みつける一行が次の階層────安全階層(セーフティポイント)である39階層『迷宮の灰橋(アンダーブリッジ)』へ続く階段へ飛び込むのを見届けたのは、白髪の青年だった。

 

 雪のような……というより色が抜け落ちた故の白。そんな印象がある白髪を靡かせ、翡翠色の双眸は迫り来るモンスターの大群を睥睨する。

 

 彼は愛用する短い杖、『不朽たる聖王杖(シャスティフォル)』を水平に構えて、唱える。

 

「【芽吹けよ(テンペスト)】」

 

 心臓の鼓動。

 去来する魔の風。

 そして、()()

 

『………』

 

 圧縮され、蓄電(チャージ)されていた魔力が。無慈悲に降り注ぐ雷皇の威光が。

 理知を携えぬ怪物にさえ、平等に死を理解させた。

 

 

 

「──────【ケラウノス】」

 

 

 

 轟雷。

 消音。

 破壊。

 衝撃。

 

 空間(そら)が悲鳴をあげるように軋んだ。

 魔物(モンスター)を討滅せしめた雷鳴の極致は、あらゆるものを撃砕の渦へ押し流した。

 

 

 その中で生存を許されたのはたった一人。ユースその人である。

 

 魔石すら砕き、強化種という後顧の憂いを断ち、聖杖を下ろす。

 

 その所作には、疲労の影すら見えない。

 

 

「うっし、お掃除完了。さっさと行くか〜」

 

 

 足取り軽やかに、ユースもまた、次層へ続く階段へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────幕間────♦♦

 

 

 

 

「お願いお願いお願いーーーー!!!」

「………」

 

 オッタルは死んだような目で”それ”を見つめていた。

 ”それ”とは今己の目の前で───というか地面の上でだが───子供のように暴れ回る人のこと。

 

 人間が持ち合わせている尊厳を全て投げ出したその挙動にオッタルは尊敬───なんてするわけがなく。ただただ死んだような目で”それ”を見つめていた。

 

「いいのかよ、猛者(おうじゃ)サマ?」

 

 そして”それ”と同じく派閥の出身である桃髪の小人族(パルゥム)が歩み出てくる。

 その顔には途方もなく疲れが滲み出ており、オッタルは苦労人(そういう)立場の者をふと思い出した。というかヘイズだった。

 

 オッタルがそんな邪念に囚われていると知りもせず、その小人族(パルゥム)は宣う。

 

「お願いお願いお願いお願いお願いーーー!!!………チラッ?」

「アタシたちの団長は物分りが悪りぃんだ」

「…………」

「お願いお願いお願いお願いーーー!!………チラチラッ?」

「多分、あんたが首を縦に振るまで、地獄の底だろうとついて行くと思うぜ??」

「……………」

 

 事実そうだった。

 オッタルが無視してバロールへ向かおうとしても、”それ”は器用にも炎の付与魔法(エンチャント)でゴキブリの如く地を這い、オッタルの傍に何処までもついてるのだ。

 

 

「…………………ハァ………」

 

 オッタルは溜息をついた自分を認識できなかった。

 武人として未熟、と引き締めようにも、目の前の”ソレ”を見てはやるせない気持ちになった。

 

 そしてついに。

 

「…………………共闘ではない。俺の戦場で俺の獲物を狙う分には構わん。精々巻き添え───「えホント!?やったありがとう!流石はLv7ね!!」…………」

「ア、アリーゼェ………」

「レベルは関係ねーだろ……」

「これが私たちの団長ですか……ふふ、このまま深層(ここ)に置いていきとうございますねえ」

「なんか、ほんと、ごめんな?オッタル」

「…………問題ない」

 

 金髪エルフ(リューリオン)は泣きそうになっているし、桃髪小人族(パルゥム)はもう呆れているし、黒髪剣客(かぐや)はブチ切れすぎて額に浮かんでいる青筋で迷路が出来そうだった。

 

 白髪に翡翠の瞳をした半妖精(ハーフエルフ)(ユース)に同情されたオッタルは、いたたまれない気持ちになったが構うことなく大剣を構える。

 

「…………」

 

 そして鬱憤溜まったこの感情のままに大剣を振るい、半殺し状態だったバロールを完全討伐してのけた。

 

 

 





アストレアファミリア 戦力図

『Lv6』
アリーゼ・ローヴェル 前衛攻役(アタッカー)
ユース 万能全役
『Lv5』
リュー・リオン 魔法剣士
ゴジョウノ・輝夜 前衛攻役(アタッカー)
ネーゼ・ランケット 中衛攻役
アスタ・ノックス 前衛壁役(ウォール)
イスカ・ブラ 前衛攻役(アタッカー)
『Lv4』
ライラ 中衛撹役
マリュー・レアージュ 治療師
ノイン・ユニック 中衛支援師
リャーナ・リーツ 後衛魔導師
セルティ・スロア 後衛魔導師

アストレアファミリア。長ずればみんな第一級になれるって……っぱ、アストレア様しか勝たんよなぁ〜

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