難産でした………
光粒による大爆撃を目撃したアリーゼの判断は早かった。
「総員戦闘準備ッ!!」
その瞳は、揺るがない。
その声音に、畏れはない。
「リャーナ、セルティ、リオンは詠唱を開始!!先ずは
「「「了解ッ!」」」
発展アビリティ『魔導』を発現させている三人の火力による殲滅、そして魔力による誘導を瞬時に指示。そして次に、
「アスタとノインは倒木を使って即席の槍を生成して!大きくてもぶきっちょでもいいから、出来るだけ鋭いのを!!」
「うんッ!」「りょーかい!!」
土木工事は
使い捨ての槍はきっと、あのなんでも溶かす芋虫相手に使うはずだ。
しっかりと意図が伝わった様子にアリーゼは微笑み、更に次へ!
「イスカとライラは二人の護衛よ!イスカの魔法も有効打になるはず!────ライラ、出し惜しみしないで、
「へへ、オッケー!」「はいよ団長っ!」
イスカは任意のタイミングで二重の拳打を発生させる超短文詠唱魔法を持っている。発動条件は触れるだけであり、詠唱のタイミングは自由!離れた位置で倒すことが出来るこれ以上ない存在だ。
そしてライラには自家製の爆薬や、地雷魔法がある。芋虫以外の新種の魔法耐久度は気になるところだが……調べてる暇はないようだ。
「輝夜は悪いけどお荷物!マリューを抱っこして、私たちに着いてきて!もちろんおんぶでもいいわ!」
「チッ、しかたない……」「私、お姫様抱っこがいいわ〜」
「そしてユース────」
最後に俺。
言葉は要らない。
その視線だけで伝わってきた。
「一枚岩まで、私をエスコートしてくれる?」
「────喜んで」
♦♦────────♦♦
【
「チッ、クソッタレな芋虫がァ!!」
【
「ベートうるさぁーい!あたしだってあの新種に『
「あんたたちの方が煩いわよ!団長の長考を邪魔したらぶちのめす!!」
「嗚呼あたしのウルガぁ……」と溶けて無くなった片方を見つめるのは【
双子のアマゾネスである彼女達は、自分たちに今できることはないと割り切り、力を溜めていた。
「……うずうず」
そして我慢できないのは【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインだ。
鞘の中で鈍く光る
「ちぃとばかり厄介じゃのう」
顎髭を撫でながら語るのはドワーフの守護者、【
時を多く重ねた彼の瞳が刺すのは、女体型の三体だった。
幾回も光爆、それから後頭部に生える管からの溶解液の射出を繰り返し、しかし二重大結界が阻む結果になっている。
レフィーヤの表情が怪しいが……まだリヴェリアの方は余裕があるように見える。
結界については問題ないが、あの女体型を倒した際に発生するだろう大爆発。それも
ガレスの懸念は、そこに収束していた。
そして、癖のある団員を束ねるロキファミリアの長、フィン・ディムナは、
「…………」
瞑目していた。
「……………」
しかしそれは、諦めを意味しない。
【
「………………」
つまるところ、彼は待っているのだ。
勝利の女神を。
50階層という局地的な戦場において、智将フィン・ディムナと戦術視野を共有できる者を。
オラリオに永遠の闇を告げた暗黒期を、誰よりも最前線で駆け抜けた彼女達を─────アストレアファミリアを!
「来たか、アリーゼ・ローヴェル!」
フィンと戦術的視野を共有できる、という評価は誇張ではない。
この状況下において、先ず優先すべきは女体型の
それらをきっちり果たすべく現れたアリーゼは………何故かユースにお姫様抱っこされていたが、まぁいいだろう。フィンはツッコまないことにした。
「お待たせしたかしら?【
「ちょうどいいタイミングだ、アリーゼ・ローヴェル─────それで、戦闘の所感は?」
「芋虫型は魔石のみを的確に破壊すれば破裂することはないわ。魔石の場所は下半身に付いてる触手と触手の間、深さ60
「なるほど。そうすると女体型も同じだろう。こちらはアイズを出撃させよう」
「私とユースが二体担うわ。リャーナの魔法で魔石を探知して報せるわね」
「ありがとう。あの『食人花』タイプは打撃よりも斬撃が有効だ。魔石は喉奥にあるね」
情報共有というよりも答え合わせに近い情報交換。
打てば響く会話のラリーで勝利への
負け筋を極限まで減らし勝利するフィンと、勝ち筋を見出して掴もうとするアリーゼの噛み合わせは抜群だった。
「よし、作戦を伝える!」
ベート、ティオナ、ティオネは結界から出た後、芋虫型モンスターの駆除を担当。最大懸念材料の腐食液だが、ベートは専用武具『フロスヴィルト』による擬似
ラウルら第二軍は『食人花』に
そしてガレスは魔導師部隊を守る盾であり矛。最終的に
最後に女体型は、アストレアファミリアの判断に任せる。
フィンはそう宣言し、黄金の槍を天に掲げる。
怒りと血潮のままに逆襲を誓う彼らを、これ以上ないほどの焚き付けたのは、勇者の激だった。
「───僕たちに敗北の二文字はない!勝つぞ!」
「「「「「オオオオオオオオッ!!!!」」」」」
勝利を約束する勇者の号令に、吼えるように答える。
そして遥か地下世界のダンジョンで、
♦♦────────♦♦
地を這う多脚。揺らめく複腕。極彩色に彩られる怪物的な威容。
しかし散々芋虫型を相手に試し斬りをしていたユースにとって、
迫る巨大な敵を前に、気負いも動悸もなく、ただ静かに。呟く。
「【
ユースの指先から放たれたのは、種だった。
幾度の厳冬を耐え抜いた蕾であり、羽化を待つ
無秩序に浮かぶ魔素を喰らっては渦を巻き、喰らっては雷鳴を呼ぶそれの正体とは、雷雲。
『────!!』
女体型は打ち震えた。
芽吹き拡がる雷雲に反応するように、眼なき表情でユースだけを見詰めると────パカァ、と
威力、量、速度は深層の階層主にも匹敵するであろう腐食液の掃射。
浴びてしまえば貫通は必至。輝夜のような重傷ですら生温い死が待っている。
だがユースは、回避を選択しない。
ただただ静かに敵を見据え、聖剣を構える。
『─────!』
悲鳴のように轟く射出音と共に、腐食液が迫ってくる。
だが、
────遅い。あまりにも遅い。
音を斬り、光へ至り、竜を討たんとするユースにしてみれば。
────
そして大上段に構えたユースは、腐食液を
『─────!?』
『
その名も
所有者の魔力を吸収し、刀身を生成するという武装の新しい
篭める魔力量によって鋭さが変わるその剣身は、魔力を更に与える事で
春になれば何度も咲き誇る、花々のように!
幾度倒れても不屈を示す、不撓不屈の英雄の如く!
腐食液はあらゆる物を溶かした。
岩壁、土木、鋼のように堅い
だが溶けない、折れない、倒れない!!
『─────ッ!!』
ならばと考える女体型は、四枚二対の腕を交差し、大きく広げる。
降り注ぐは夥しい量の光粒!一つ一つは小規模でも、この数を一斉起爆してしまえば、ここら一体は確実に焦土になるだろう粒子群!
目も眩む程の閃光が迸り、絶殺の一撃が────
「───【ケラウノス】」
それ以上の轟雷によって掻き消された。
相殺すら演じられない天の怒り。その具現とさえ思う一撃だった。
『恐ろしい』
凶暴な本能の裏に隠れる、薄く淡く儚いだけの理性が、そう嘯いた。
「お前が本人?本蟲?であろうとなかろうと、許せない理由は二つある」
男は歩く。
女体型の巨躯よりも遥か矮小の身であるはずなのに、怖気が立つほどの魔の剣威を伴っている。
魔人である。
男は精霊を根源とする女体型よりも、魔に近い場所の生物である。
「一つ、俺たちの
男が剣を構える。
近付いてくる!!近付いてくる!!近付いてくる!!
女型を滅ぼす破滅が。
絶対の意志を宿した、白い『半妖精』が。
「そして、最後のひとつはァ!」
雷光の刃を携え、男は吠えた。
やがてその歩みは発走へ、発走は疾走へ。
雷鳴が轟くよりも速く、迅雷の突貫が迫り来る。
『──────────ァァァァアッ!!!』
迫り来る必殺。
たなびく白髪が軌跡を残し、迸る紫電が大地を焦がす。
女型は恐怖の咆哮を上げて、二対四枚の触腕を振るった。その巨体から繰り出されるどんな攻撃よりも俊敏な一撃だ。
しかし。
男はそれを凌ぐ速度で、斬り上げた。
『────』
煌々たる雷霆が嘶き、男は憤怒の声を解き放つ。
「あの綺麗な黒髪を、汚したッてことだァーーーー!!!!!!!」
Lv6の第一級、【
♦♦───────♦♦
「【真実を灯せ、無垢なる鼓動】────【ヴァールハイト】!!」
『………』
淡い
だが、変化は劇的である。
怪物の絶対的な弱点である『魔石』が、赤く発光し始めたのだ。
「リャーナ!ありがとう!」
「気を付けてねアリーゼ!それじゃ私は、【剣姫】のとこに向かうわ!」
そしてアリーゼは一人、女体型と相対する。
階層主に匹敵するその
「悪いけど、あなたに時間を掛けてる暇は無いの。ユースはもう倒しちゃったみたいだし………だからすぐ、倒すわ!」
────【アガリス・アルヴェシンス】!!
アリーゼの口から魔法名が、そして全身から魔力が噴き出す。
火山の噴火と聞き間違う程の音と共に、生じるのは太陽の如き
両腕、両脚、そして愛剣『
彼女の四肢と一振りの武器に、その髪の色と同じ『炎』が付与される。
清く美しい花弁の鎧を宿したアリーゼは、弧を描くように
「空中戦は好みかしらッ!?」
小刻みに爆発を繰り返す足裏を巧みに操り、蝶のように舞う。
『………!』
多脚でしかない女体型と、自在に宙を駆けるアリーゼ。
圧倒的機動力の差を突きつけられた女体型の行動は迅速に行われた。
「わ、なにその髪の毛!?撃ち出す気でしょ!」
後頭部に生え付けられた管の先、射出口はアリーゼを捉える。
その数は両手両足の指では数えられない腐食液の雨であり、包囲網となってアリーゼを襲う。
しかし、当たらない!
「竜の谷でやった竜種との空中戦よりよっぽど楽ね!」
ひらりひらりと避け続けるアリーゼの言葉は、理知を宿さない怪物では解せない。
しかし、その得意げな笑みとドヤ顔は、苛立ちに値した。
触髪管による射出を継続しつつ、女体型は触腕から光粉を撒き散らした!
「あ、ちょっとそれはいただけないかも────」
ドコーン!!
一つ一つが凶悪な小型爆弾である光粒と、溶解液が反応し想定以上の爆発が引き起こる。
その余波を少々食らってしまったが、女体型は口もない
さて、次は精霊の魔法を感じるあのヒトを────と女体型が次なる目標を定めようとした時。
「っはーッ危なかったわ!
爆風で巻き上がった砂塵の奥。
大火を宿すアリーゼは無傷で、現れた。
【アガリス・アルヴェシンス】。
アリーゼ・ローヴェルの象徴とも言える炎の
従来通りであれば四肢と武装の五箇所のみに炎の鎧を纏い、任意のタイミングで爆発させる魔法であるそれは、アリーゼの成長と共に進化を遂げた。
四肢に限定されない他部位に炎を纏えるという操作性の拡張────
そして、一つの部位に炎を集中させる事で攻撃力と防御力を高める
それらがアリーゼの戦闘スタイルを大きく幅広げることとなった。
「さて、もう攻撃は出し尽くしたかしら?」
『ッ────!!』
侮られている!
蝿のごとく
女体型は否定を返すべく、二対四枚の触腕をアリーゼに叩きつけた。が、
『─────ッ!?!?』
「鋼よりも硬い自信がないなら、私に斬られる覚悟をしておくことをオススメするわ」
灼熱を帯びた炎剣があっさりと両断を果たす。
切断と同時に焼き切られた苦痛が、女体型を何度でも苦悩の檻に閉じ込める。
痛みに支配される本能で触髪管による腐食液の
ならばと再び光爆を繰り返すが、「【
癇癪を起こして暴れても、すぐに炎剣によって沈黙される。
何もかも、通じない。
「これで終わりよ………!」
アリーゼは『クリムゾン・オーダー』に全ての炎をかき集める。
折り重なる炎纏によって、
「【
追加詠唱。
それを重ねること四度。
太陽を宿す剣と共に、アリーゼは炎の雄叫びを解き放つ。
「『フレア・ノーヴァ』ッ!!!」
閃光と劫火、そして衝撃。
それが放たれた一撃の全てだった。
『──────────ッッッ!?』
滅焼した怪物の断末魔のなりぞこないを爆炎の奥にかき消し、灼熱を放出した剣から排熱が開始される。
炎を束ねた斬撃の炸裂。
その絶大な威力を前に、確かな手応えと共にアリーゼは満足気に頷いた。
「よしッ、あとは【剣姫】だけね!」
♦♦────────♦♦
遠くで輝いた残光を、アイズは目撃していた。
あれは
それはまるで父のような英雄の一撃であり、あるいは母のような精霊が寄り添った雷の極撃でもあった。
『俺はただの保険だ』
『俺は騎士にはなれても、
『いつかきっと、あなたに相応しい英雄が現れる』
でも、でも、でも。
あの眩しい光を見てしまったら、期待しない方がおかしい。そうに決まってる。心の中の幼い
そう、期待。期待である。
アイズ・ヴァレンシュタインは都市でも有数の実力者で、レベル5の高みに立っていても、期待することをやめられなかった。
もしかしたら、と。
いつか私の悲劇を知って、
というか上の条件、全部ユースが当てはまってない?という幼い
(そう、だよね。お姉ちゃんほんと、困っちゃう、な。………あれ?今って何してるんだっけ?)
あ、そっか。そうだった。思い出した。
女体型のモンスターの討伐を任されていたんだった。
回帰したアイズは、静かに唱えた。
「【
風を召喚したアイズは縦横無尽に駆け巡っていた。
『─────!!』
その『風』の起源に打ち震えるように女体型は、光粒を撒き散らし、顔面部分からの
だが、風に愛された彼女には及ばない。
風に乗って爆撃範囲から外れ、風を纏った剣が
女体型は強引に推し流そうと出力を倍増させるが、金の瞳を吊り上げ、液を断ち続けるアイズの剣は微動だにしない。
先に根負けしたのはモンスター。口腔からの射出を止め、砲撃を止める。
アイズは軋む体の訴えを無視し、今以上の強い風を纏う。
直後、疾駆した。
『────』
女体型の反応を容易く振り切る。
これまでとは一線を画す加速を以て敵の左側を抜き去り、すれ違いざまに一閃。多脚の片側を全て切り落すことに成功した。
『!?』
(足を狙って、地面に落とす。大型怪物の基本)
アンバランスとなって崩れ落ちる女体型に、さらに追撃をかける。
バランスを取ろうと地面に突いた片方二枚の触腕を切断し、後頭部から生える触髪管もいくつか切り刻む。
切断面から噴出する腐食液。
肩口と管、多脚から勢い良く噴き出すそれが、切り落とされた触腕から舞い上がる光粉がそれぞれ反応し、
『───────────ァァァッッッ!!!』
紛うことなき自爆の連鎖が懐で行われる。
斬り縮んだ管の髪と残った複腕で悶え苦しむ。
その隙を見てアイズは剣を正眼に構えると、風を更に呼び込む。
「【
これは見様見真似の斬光の一撃。
如何なる枢機を以て行使されるのか。
知らずとも分かる。彼の光をずっと見続けてきたのはアイズだから────!!!
「【
斬撃が飛ばないなら、風の刃で斬撃を
すなわち、超超超長大剣を振りかざせば同じだという、圧倒的な脳筋思考!パワーイズパワー!アイズいずジャスティス!!
「うぅぅぅぅゃああああああああ!!!」
『────────!!』
交差する複腕も残った管も全て注いだ防御形態。
だが、アイズは赤く輝く『魔石』の一点だけを見る。そして振りかぶる。
風を纏う大斬撃は、女体型の防御と接触し、
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
僅かな拮抗も許さずに突破。
両断する。
剣の形をした嵐の塔の中で、女体型の魔石は攪拌された。
トドメを受けた女体型は硬直し、体力の灰となって風に攫われる。
すごい、と。
想像以上の威力に目を奪われるアイズは、思わず剣を手放してしまった。
嵐剣を維持している、『デスぺレート』をだ。
「あっ」
その後の顛末を話そう。
速攻で女体型を討伐した三人はそのまま厄介な芋虫型を処理し、それを見ていたフィンは残る勢力を全て『食人花』に専念させる指令を出した。
嵐剣の制御を手放してしまったアイズだが不幸中の幸いと言うべきか、周囲にはモンスターしかおらず、これが掃討の後押しとなった。
芋虫型相手で非常に
そして列の最後尾ではアイズがリヴェリアに粛々と怒られていた。
『嵐剣』の使用許可制、そして地上に帰ったら一週間ジャガ丸くん禁止令が下された。
アイズは真っ白になっていた。
次からようやく、原作です
───Tips───
ユース
『魔法』
【ケラウノス】
・招雷魔法
・聖雷属性
・詠唱式
【
・
【万雷束ねろ、星を
・ アリーゼ・ローヴェル
『魔法』
【アガリス・アルヴェシンス】
・
・炎属性
・詠唱式
【
・
【
・
【
【アストレア・レコード】
・
『スキル』
【
・
・炎属性の高補正。
・発展アビリティ『火閃』の補正。補正度合は