アストレアファミリアのハーレムクソ野郎   作:神崎せもぽぬめ

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難産でした………



第五話

 

 

 

 

 

 光粒による大爆撃を目撃したアリーゼの判断は早かった。

 

「総員戦闘準備ッ!!」

 

 その瞳は、揺るがない。

 その声音に、畏れはない。

 

「リャーナ、セルティ、リオンは詠唱を開始!!先ずは注意(ヘイト)を分散させるわ!!」

「「「了解ッ!」」」

 

 発展アビリティ『魔導』を発現させている三人の火力による殲滅、そして魔力による誘導を瞬時に指示。そして次に、

 

「アスタとノインは倒木を使って即席の槍を生成して!大きくてもぶきっちょでもいいから、出来るだけ鋭いのを!!」

 

「うんッ!」「りょーかい!!」

 

 土木工事はドワーフ(アスタ)の得意なところである。そしてノインは『器用』値が上昇し、武装時には更に上昇する『スキル』を持っている。

 使い捨ての槍はきっと、あのなんでも溶かす芋虫相手に使うはずだ。

 しっかりと意図が伝わった様子にアリーゼは微笑み、更に次へ!

 

「イスカとライラは二人の護衛よ!イスカの魔法も有効打になるはず!────ライラ、出し惜しみしないで、道具(アイテム)をここで使い切っちゃって!」

 

「へへ、オッケー!」「はいよ団長っ!」

 

 イスカは任意のタイミングで二重の拳打を発生させる超短文詠唱魔法を持っている。発動条件は触れるだけであり、詠唱のタイミングは自由!離れた位置で倒すことが出来るこれ以上ない存在だ。

 そしてライラには自家製の爆薬や、地雷魔法がある。芋虫以外の新種の魔法耐久度は気になるところだが……調べてる暇はないようだ。

 

「輝夜は悪いけどお荷物!マリューを抱っこして、私たちに着いてきて!もちろんおんぶでもいいわ!」

 

「チッ、しかたない……」「私、お姫様抱っこがいいわ〜」

 

「そしてユース────」

 

 最後に俺。

 

 言葉は要らない。

 

 その視線だけで伝わってきた。

 

「一枚岩まで、私をエスコートしてくれる?」

「────喜んで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【九魔姫(ナイン・ヘル)】リヴェリアと【千の妖精(サウザンドエルフ)】レフィーヤによる二重大結界【ヴィア・シルヘイム】によって被害を最小限に防ぐことに成功したロキファミリアは、しかし防戦必死の状況であった。

 

「チッ、クソッタレな芋虫がァ!!」

 

 【凶狼(ヴァナルガンド)】ベート・ローガは苛立ちを隠さずに吼える。足元に転がる小石をモンスター相手に蹴り飛ばすが、威力が強すぎて途中で粉になってしまった。更に苛立ちは募る。

 

「ベートうるさぁーい!あたしだってあの新種に『大双刃(ウルガ)』溶かされてイライラしてるのにー!」

「あんたたちの方が煩いわよ!団長の長考を邪魔したらぶちのめす!!」

 

 「嗚呼あたしのウルガぁ……」と溶けて無くなった片方を見つめるのは【大切断(アマゾン)】ティオナ・ヒリュテ。

 小人族(パルゥム)の首領への愛が止まらないのは【怒蛇(ヨルムガンド)】ティオネ・ヒリュテ。

 双子のアマゾネスである彼女達は、自分たちに今できることはないと割り切り、力を溜めていた。

 

「……うずうず」

 

 そして我慢できないのは【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインだ。

 鞘の中で鈍く光る不壊属性(デュランダル)の愛剣『デスぺレート』に手を添え、首領があげる開戦の合図を今か今かと待ち望んでいた。

 

「ちぃとばかり厄介じゃのう」

 

 顎髭を撫でながら語るのはドワーフの守護者、【重傑(エルガルム)】ガレス・ランドロック。

 時を多く重ねた彼の瞳が刺すのは、女体型の三体だった。

 

 幾回も光爆、それから後頭部に生える管からの溶解液の射出を繰り返し、しかし二重大結界が阻む結果になっている。

 

 レフィーヤの表情が怪しいが……まだリヴェリアの方は余裕があるように見える。

 結界については問題ないが、あの女体型を倒した際に発生するだろう大爆発。それも()()()を受け止めきれるかどうか。

 ガレスの懸念は、そこに収束していた。

 

 そして、癖のある団員を束ねるロキファミリアの長、フィン・ディムナは、

 

「…………」

 

 瞑目していた。

 

「……………」

 

 しかしそれは、諦めを意味しない。

 【勇者(かれ)】はいつだって、勝利を手繰ることを諦めない。

 

「………………」

 

 つまるところ、彼は待っているのだ。

 

 勝利の女神を。

 50階層という局地的な戦場において、智将フィン・ディムナと戦術視野を共有できる者を。

 オラリオに永遠の闇を告げた暗黒期を、誰よりも最前線で駆け抜けた彼女達を─────アストレアファミリアを!

 

 

 

「来たか、アリーゼ・ローヴェル!」

 

 フィンと戦術的視野を共有できる、という評価は誇張ではない。

 この状況下において、先ず優先すべきは女体型の注意(ヘイト)分散。そしてその間、速やかに他の新種を殲滅すること。

 

 それらをきっちり果たすべく現れたアリーゼは………何故かユースにお姫様抱っこされていたが、まぁいいだろう。フィンはツッコまないことにした。

 

「お待たせしたかしら?【勇者(ブレイバー)】」

「ちょうどいいタイミングだ、アリーゼ・ローヴェル─────それで、戦闘の所感は?」

「芋虫型は魔石のみを的確に破壊すれば破裂することはないわ。魔石の場所は下半身に付いてる触手と触手の間、深さ60(セルチ)ってところかしら?」

「なるほど。そうすると女体型も同じだろう。こちらはアイズを出撃させよう」

「私とユースが二体担うわ。リャーナの魔法で魔石を探知して報せるわね」

「ありがとう。あの『食人花』タイプは打撃よりも斬撃が有効だ。魔石は喉奥にあるね」

 

 情報共有というよりも答え合わせに近い情報交換。

 打てば響く会話のラリーで勝利への筋道(ロードマップ)を構築し、フィンは微笑む。

 

 負け筋を極限まで減らし勝利するフィンと、勝ち筋を見出して掴もうとするアリーゼの噛み合わせは抜群だった。

 

「よし、作戦を伝える!」

 

 ベート、ティオナ、ティオネは結界から出た後、芋虫型モンスターの駆除を担当。最大懸念材料の腐食液だが、ベートは専用武具『フロスヴィルト』による擬似付与魔法(エンチャント)で、ティオナとティオネはアスタらが作成している木製の大槍でそれぞれ対処することに。

 

 ラウルら第二軍は『食人花』に二人一組(ツーマンセル)での対処だ。『食人花』は個体差はあるがその潜在能力(ポテンシャル)がLv4を大幅に超えることはない。

 

 そしてガレスは魔導師部隊を守る盾であり矛。最終的に妖精部隊(フェアリーフォース)による『食人花』及び芋虫型の殲滅が目標だ。

 

 最後に女体型は、アストレアファミリアの判断に任せる。

 

 

 フィンはそう宣言し、黄金の槍を天に掲げる。

 怒りと血潮のままに逆襲を誓う彼らを、これ以上ないほどの焚き付けたのは、勇者の激だった。

 

「───僕たちに敗北の二文字はない!勝つぞ!」

 

「「「「「オオオオオオオオッ!!!!」」」」」

 

 勝利を約束する勇者の号令に、吼えるように答える。

 

 そして遥か地下世界のダンジョンで、異常事態(イレギュラー)に立ち向かうささやかな英雄譚が、今始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地を這う多脚。揺らめく複腕。極彩色に彩られる怪物的な威容。

 しかし散々芋虫型を相手に試し斬りをしていたユースにとって、()()デカくなっただけの女体型は、苦戦に値もしない、(マト)ですらあった。

 

 迫る巨大な敵を前に、気負いも動悸もなく、ただ静かに。呟く。

 

「【芽吹け(テンペスト)】」

 

 ユースの指先から放たれたのは、種だった。

 幾度の厳冬を耐え抜いた蕾であり、羽化を待つ(イカズチ)。そのように形容できるそれが、ユースの魔法の(タネ)である。

 

 天空(そら)のない天井に打ち上げられたそれは宙に漂い、発雷と発芽を同時に繰り出す。

 無秩序に浮かぶ魔素を喰らっては渦を巻き、喰らっては雷鳴を呼ぶそれの正体とは、雷雲。

 蓄雷(チャージ)時間に比例して威力が変動する、招雷魔法である。

 

『────!!』

 

 女体型は打ち震えた。

 芽吹き拡がる雷雲に反応するように、眼なき表情でユースだけを見詰めると────パカァ、と無貌(のっぺらぼう)に見えた顔面部に横一線の亀裂を走らせ、口腔を解放する。

 

 威力、量、速度は深層の階層主にも匹敵するであろう腐食液の掃射。

 

 浴びてしまえば貫通は必至。輝夜のような重傷ですら生温い死が待っている。

 

 だがユースは、回避を選択しない。

 

 ただただ静かに敵を見据え、聖剣を構える。

 

『─────!』

 

 悲鳴のように轟く射出音と共に、腐食液が迫ってくる。

 

 だが、

 

────遅い。あまりにも遅い。

 

 音を斬り、光へ至り、竜を討たんとするユースにしてみれば。

 

────無挙動無拍子(ノーモーション)で繰り出される福音拳骨(ゴスペルパンチ)に比べたら、欠伸が出るほど遅いッ!!

 

 

 そして大上段に構えたユースは、腐食液を()った。

 

『─────!?』

 

 『星屑の栄光剣(マルミアドワーズ)』には特殊属性(スペリオルズ)が備わっている。

 その名も不朽属性(カラドボルグ)

 所有者の魔力を吸収し、刀身を生成するという武装の新しい次元(ステージ)にして、一種の到達点。

 篭める魔力量によって鋭さが変わるその剣身は、魔力を更に与える事で()()を果たす。

 

 春になれば何度も咲き誇る、花々のように!

 幾度倒れても不屈を示す、不撓不屈の英雄の如く!

 

 腐食液はあらゆる物を溶かした。

 岩壁、土木、鋼のように堅い怪物(モンスター)、そして乙女の素肌────

 

 だが溶けない、折れない、倒れない!!

 

『─────ッ!!』

 

 ならばと考える女体型は、四枚二対の腕を交差し、大きく広げる。

 降り注ぐは夥しい量の光粒!一つ一つは小規模でも、この数を一斉起爆してしまえば、ここら一体は確実に焦土になるだろう粒子群!

 目も眩む程の閃光が迸り、絶殺の一撃が────

 

「───【ケラウノス】」

 

 それ以上の轟雷によって掻き消された。

 

 相殺すら演じられない天の怒り。その具現とさえ思う一撃だった。

 

 『恐ろしい』

 

 凶暴な本能の裏に隠れる、薄く淡く儚いだけの理性が、そう嘯いた。

 

「お前が本人?本蟲?であろうとなかろうと、許せない理由は二つある」

 

 男は歩く。

 女体型の巨躯よりも遥か矮小の身であるはずなのに、怖気が立つほどの魔の剣威を伴っている。

 

 魔人である。

 男は精霊を根源とする女体型よりも、魔に近い場所の生物である。

 

「一つ、俺たちの拠点(キャンプ)を破壊尽くしたこと。このままじゃ遠征は続けられないし、到達階層の献上品を集めきれなかったから失敗に終わる。また罰金を払わないといけない………アストレア様にひもじい思いを暫くさせてしまう、大罪だ。これ一つですら万死に値する」

 

 男が剣を構える。

 

 雷霆(ケラウノス)を宿らせた聖剣が、怪物の魔石(いのち)を明確に脅かすものだと知っている。

 

 近付いてくる!!近付いてくる!!近付いてくる!!

 女型を滅ぼす破滅が。

 ()()を殺すニンゲンが。

 絶対の意志を宿した、白い『半妖精』が。

 

「そして、最後のひとつはァ!」

 

 雷光の刃を携え、男は吠えた。

 やがてその歩みは発走へ、発走は疾走へ。

 雷鳴が轟くよりも速く、迅雷の突貫が迫り来る。

 

『──────────ァァァァアッ!!!』

 

 迫り来る必殺。

 たなびく白髪が軌跡を残し、迸る紫電が大地を焦がす。

 女型は恐怖の咆哮を上げて、二対四枚の触腕を振るった。その巨体から繰り出されるどんな攻撃よりも俊敏な一撃だ。

 

 しかし。

 

 男はそれを凌ぐ速度で、斬り上げた。

 

 

『────』

 

 

 煌々たる雷霆が嘶き、男は憤怒の声を解き放つ。

 

 

 

 

あの綺麗な黒髪を、汚したッてことだァーーーー!!!!!!!

 

 

 

 

 Lv6の第一級、【不撓なる聖剣(ヴァナハルド)】ユースは、黒髪フェチであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦───────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【真実を灯せ、無垢なる鼓動】────【ヴァールハイト】!!」

 

『………』

 

 淡い(ともしび)が直撃するのは女体型。苦痛はなく、致命傷には程遠い。

 だが、変化は劇的である。

 怪物の絶対的な弱点である『魔石』が、赤く発光し始めたのだ。

 

「リャーナ!ありがとう!」

「気を付けてねアリーゼ!それじゃ私は、【剣姫】のとこに向かうわ!」

 

 

 そしてアリーゼは一人、女体型と相対する。

 階層主に匹敵するその潜在能力(ポテンシャル)を前にしかし、アリーゼは不敵な笑みを絶やさない。

 

「悪いけど、あなたに時間を掛けてる暇は無いの。ユースはもう倒しちゃったみたいだし………だからすぐ、倒すわ!」

 

────【アガリス・アルヴェシンス】!!

 

 アリーゼの口から魔法名が、そして全身から魔力が噴き出す。

 火山の噴火と聞き間違う程の音と共に、生じるのは太陽の如き紅焔(こうえん)の鎧だった。

 両腕、両脚、そして愛剣『星紅の秩序(クリムゾン・オーダー)』。

 彼女の四肢と一振りの武器に、その髪の色と同じ『炎』が付与される。

 

 清く美しい花弁の鎧を宿したアリーゼは、弧を描くように()()()()()

 

「空中戦は好みかしらッ!?」

 

 小刻みに爆発を繰り返す足裏を巧みに操り、蝶のように舞う。

 

『………!』

 

 多脚でしかない女体型と、自在に宙を駆けるアリーゼ。

 圧倒的機動力の差を突きつけられた女体型の行動は迅速に行われた。

 

「わ、なにその髪の毛!?撃ち出す気でしょ!」

 

 後頭部に生え付けられた管の先、射出口はアリーゼを捉える。

 その数は両手両足の指では数えられない腐食液の雨であり、包囲網となってアリーゼを襲う。

 

 しかし、当たらない!

 

「竜の谷でやった竜種との空中戦よりよっぽど楽ね!」

 

 ひらりひらりと避け続けるアリーゼの言葉は、理知を宿さない怪物では解せない。

 しかし、その得意げな笑みとドヤ顔は、苛立ちに値した。

 

 触髪管による射出を継続しつつ、女体型は触腕から光粉を撒き散らした!

 

「あ、ちょっとそれはいただけないかも────」

 

 ドコーン!!

 

 一つ一つが凶悪な小型爆弾である光粒と、溶解液が反応し想定以上の爆発が引き起こる。

 その余波を少々食らってしまったが、女体型は口もない無貌(かお)で嗤った。苛立ちの元である女を殺せたからだ。

 

 さて、次は精霊の魔法を感じるあのヒトを────と女体型が次なる目標を定めようとした時。

 

「っはーッ危なかったわ!付与魔法(エンチャント)を一点集中しなかったら、腕の二本三本は折れてたかも!」

 

 爆風で巻き上がった砂塵の奥。

 

 大火を宿すアリーゼは無傷で、現れた。

 

 

 【アガリス・アルヴェシンス】。

 アリーゼ・ローヴェルの象徴とも言える炎の付与魔法(エンチャント)

 従来通りであれば四肢と武装の五箇所のみに炎の鎧を纏い、任意のタイミングで爆発させる魔法であるそれは、アリーゼの成長と共に進化を遂げた。

 

 四肢に限定されない他部位に炎を纏えるという操作性の拡張────

 そして、一つの部位に炎を集中させる事で攻撃力と防御力を高める炎帝浄土(ニルヴァーナ)スタイルの構築────

 

 それらがアリーゼの戦闘スタイルを大きく幅広げることとなった。

 

 

「さて、もう攻撃は出し尽くしたかしら?」

『ッ────!!』

 

 侮られている!

 蝿のごとく(たか)る分際で、見下されている!

 

 女体型は否定を返すべく、二対四枚の触腕をアリーゼに叩きつけた。が、

 

『─────ッ!?!?』

 

「鋼よりも硬い自信がないなら、私に斬られる覚悟をしておくことをオススメするわ」

 

 灼熱を帯びた炎剣があっさりと両断を果たす。

 切断と同時に焼き切られた苦痛が、女体型を何度でも苦悩の檻に閉じ込める。

 

 痛みに支配される本能で触髪管による腐食液の超連射(ガトリング)を執行するも、陽光の護りを剥がすことさえ敵わない。

 ならばと再び光爆を繰り返すが、「【燃え上がれ(アルガ)】!」の叫びと共に更に燃え上がる大炎に光粉を焼き焦がされた。

 癇癪を起こして暴れても、すぐに炎剣によって沈黙される。

 

 何もかも、通じない。

 

 

「これで終わりよ………!」

 

 アリーゼは『クリムゾン・オーダー』に全ての炎をかき集める。

 折り重なる炎纏によって、細剣(レイピア)だった『クリムゾン・オーダー』はその形を変えていた。その刃の幅は剣のように広く、長さは大剣の如く伸長していた。

 

「【燃え上がれ(アルガ)】!【燃え盛れ(アルガ)】!!【燃え焦がせ(アルガ)】!!!────【全霊解放(アルヴァーナ)】ッ!!!」

 

 追加詠唱。

 それを重ねること四度。

 

 太陽を宿す剣と共に、アリーゼは炎の雄叫びを解き放つ。

 

 

「『フレア・ノーヴァ』ッ!!!」

 

 

 閃光と劫火、そして衝撃。

 それが放たれた一撃の全てだった。

 

『──────────ッッッ!?』

 

 滅焼した怪物の断末魔のなりぞこないを爆炎の奥にかき消し、灼熱を放出した剣から排熱が開始される。

 

 炎を束ねた斬撃の炸裂。

 

 その絶大な威力を前に、確かな手応えと共にアリーゼは満足気に頷いた。

 

「よしッ、あとは【剣姫】だけね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠くで輝いた残光を、アイズは目撃していた。

 あれは弟分(ユース)の剣だ。

 それはまるで父のような英雄の一撃であり、あるいは母のような精霊が寄り添った雷の極撃でもあった。

 

『俺はただの保険だ』

 

『俺は騎士にはなれても、()()の英雄になる資格はない』

 

『いつかきっと、あなたに相応しい英雄が現れる』

 

 でも、でも、でも。

 

 あの眩しい光を見てしまったら、期待しない方がおかしい。そうに決まってる。心の中の幼い自分(あいず)は腕を組んでウンウンと頷いていた。

 

 そう、期待。期待である。

 

 アイズ・ヴァレンシュタインは都市でも有数の実力者で、レベル5の高みに立っていても、期待することをやめられなかった。

 

 もしかしたら、と。

 いつか私の悲劇を知って、悲願(ねがい)を知って、絶望を知って。そのうえで手を取ってくれる─────セピア色の記憶で微笑む、父と母のような、『私だけの英雄』と出会う奇跡を、どうしたって捨てられなかった。

 

 というか上の条件、全部ユースが当てはまってない?という幼い自分(あいず)の主張に、今度はアイズが深く同意する番だった。

 

(そう、だよね。お姉ちゃんほんと、困っちゃう、な。………あれ?今って何してるんだっけ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、そっか。そうだった。思い出した。

 女体型のモンスターの討伐を任されていたんだった。

 

 

 

 回帰したアイズは、静かに唱えた。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 風を召喚したアイズは縦横無尽に駆け巡っていた。

 

『─────!!』

 

 その『風』の起源に打ち震えるように女体型は、光粒を撒き散らし、顔面部分からの腐食砲撃(バスター)を放つ。

 

 だが、風に愛された彼女には及ばない。

 

 風に乗って爆撃範囲から外れ、風を纏った剣が大理石(マーブル)模様の腐食液と衝突しあう。

 

 女体型は強引に推し流そうと出力を倍増させるが、金の瞳を吊り上げ、液を断ち続けるアイズの剣は微動だにしない。

 

 先に根負けしたのはモンスター。口腔からの射出を止め、砲撃を止める。

 

 アイズは軋む体の訴えを無視し、今以上の強い風を纏う。

 

 直後、疾駆した。

 

『────』

 

 女体型の反応を容易く振り切る。

 これまでとは一線を画す加速を以て敵の左側を抜き去り、すれ違いざまに一閃。多脚の片側を全て切り落すことに成功した。

 

『!?』

 

(足を狙って、地面に落とす。大型怪物の基本)

 

 アンバランスとなって崩れ落ちる女体型に、さらに追撃をかける。

 バランスを取ろうと地面に突いた片方二枚の触腕を切断し、後頭部から生える触髪管もいくつか切り刻む。

 

 切断面から噴出する腐食液。

 肩口と管、多脚から勢い良く噴き出すそれが、切り落とされた触腕から舞い上がる光粉がそれぞれ反応し、

 

 

『───────────ァァァッッッ!!!』

 

 

 紛うことなき自爆の連鎖が懐で行われる。

 斬り縮んだ管の髪と残った複腕で悶え苦しむ。

 

 その隙を見てアイズは剣を正眼に構えると、風を更に呼び込む。

 

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!」

 

 

 これは見様見真似の斬光の一撃。

 如何なる枢機を以て行使されるのか。

 知らずとも分かる。彼の光をずっと見続けてきたのはアイズだから────!!!

 

 

「【猛り荒れろ(テンペスト)】ッ!!」

 

 

 斬撃が飛ばないなら、風の刃で斬撃を()()()()

 すなわち、超超超長大剣を振りかざせば同じだという、圧倒的な脳筋思考!パワーイズパワー!アイズいずジャスティス!!

 

「うぅぅぅぅゃああああああああ!!!」

『────────!!』

 

 交差する複腕も残った管も全て注いだ防御形態。

 だが、アイズは赤く輝く『魔石』の一点だけを見る。そして振りかぶる。

 

 風を纏う大斬撃は、女体型の防御と接触し、

 

『〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』

 

 僅かな拮抗も許さずに突破。

 

 両断する。

 

 剣の形をした嵐の塔の中で、女体型の魔石は攪拌された。

 トドメを受けた女体型は硬直し、体力の灰となって風に攫われる。

 

 すごい、と。

 想像以上の威力に目を奪われるアイズは、思わず剣を手放してしまった。

 

 嵐剣を維持している、『デスぺレート』をだ。

 

「あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の顛末を話そう。

 

 速攻で女体型を討伐した三人はそのまま厄介な芋虫型を処理し、それを見ていたフィンは残る勢力を全て『食人花』に専念させる指令を出した。

 嵐剣の制御を手放してしまったアイズだが不幸中の幸いと言うべきか、周囲にはモンスターしかおらず、これが掃討の後押しとなった。

 

 仮拠点(ベースキャンプ)が破壊され、これ以上の遠征は不可能と判断した両派閥の長は速やかな帰還を指示。

 芋虫型相手で非常に苛立ち(ストレス)が溜まっていたベートやヒュリテ姉妹や、輝夜(完治済み)が復路でその思いの丈を全て吐き出すように暴れまわっていた。

 

 そして列の最後尾ではアイズがリヴェリアに粛々と怒られていた。

 『嵐剣』の使用許可制、そして地上に帰ったら一週間ジャガ丸くん禁止令が下された。

 アイズは真っ白になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 次からようやく、原作です



───Tips───

ユース

『魔法』
【ケラウノス】
・招雷魔法
・聖雷属性
・詠唱式
芽吹け(テンペスト)
天霆鍵(スペルキー)
【万雷束ねろ、星を()く鼓動】


・ アリーゼ・ローヴェル

『魔法』
【アガリス・アルヴェシンス】
付与魔法(エンチャント)
・炎属性
・詠唱式
花開け(アルガ)
爆散鍵(スペルキー)
炎華(アルヴェリア)
収斂鍵(スペルキー)
灼華(ノーヴァ)

【アストレア・レコード】
誓約魔法(カヴァナント)

『スキル』
正燦巡継(アストライアー・ヴァルマス)
器力共鳴(ファルナエフェクト)
・炎属性の高補正。
・発展アビリティ『火閃』の補正。補正度合は能力値(ステイタス)に比例。
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