アストレアファミリアのハーレムクソ野郎   作:神崎せもぽぬめ

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ちょい短め
原作開始



二章
プロローグ


 

 

 

 拝啓、田舎のお爺ちゃん。それからアルフィアおば……お義母さん、ザルド叔父さん。そしてオラリオにいる、ユース兄さんへ。

 

 僕、ベル・クラネルは今────

 

 

『ヴモオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!』

「ほぁああああああああああああああああ!?!?」

 

 

────野生のミノタウロスに追われています。

 

「な、なんでええええ!!!」

 

 

 一攫千金ならぬ一攫美少女。

 そんな()()(よこしま)でいかにも青臭い考えを抱いて冒険者になってしまった結果がこの現状。

 夢見た美少女達との逢瀬(ランデブー)よりも先に、凶悪無比な猛牛(ミノタウロス)との追いかけっこ。

 

 本当にどうして!?どうしてこんなことになったんだ!?

 

 きっかけはなかった。

 予兆もなかった。

 いつも通りに目覚めて、いつも通りにご飯を食べて、いつも通りの身支度をして、いつも通りの冒険をする。

 

 そして目の前に絶望がいたんだ。

 

『ヴゥムゥンッ!!』

「でえぇっ!!」

 

 ミノタウロスの蹄。

 背後からの一撃は直撃さえしなかったものの、身に余る程の余波は僕を脅かした。

 地を砕き、そして砕かれた破片それ自体が、レベル1の僕には凶器になり得る。

 

「うぐっ!?」

『ヴォォォ!ヴヴォ!!』

 

 粗末な胸鎧(チェストプレート)からそれた礫が薄皮一枚の薄さで皮膚を細切れにする。

 流れる血、ドクドクと躍動する鼓動、そして歓喜するミノタウロス。

 

 全部が全部、現実だった。

 

 遮二無二の逃走を図る。

 でも慌てていた僕は、今の居場所さえも分からないまま、ただただ走った。

 

 走って走って走って、ただひたすらに走って、もうどうしようもないミノタウロスの一撃に死を覚悟して─────黄金が現れた。

 

 

「……大丈夫ですか?」

 

 

 いや、違う。

 現れたのは女の子だった。

 ただ女神と見紛うほど美しくて、僕なんかが束になっても勝てないミノタウロスを簡単に倒しちゃえる、そんな女の子だった。

 

「……ぁ」

 

 言え、言え!

 大丈夫だって!助けてくれてありがとうございますって!

 

 なのに爆発しそうなくらい激しく脈を打つ心臓だけが、今の僕の全部だった!

 ドッと上がってくる熱が身体の隅々まで支配する。耳が熱い。頬が熱い。肌という肌が熱い!

 

「だっ───」

「だ?」

 

 何とか捻り出した言葉に、目の前の少女は小首を傾げる。そんな姿を見て、心臓はもう砕けそうだった。

 

 モウ、ムリ。ゲンカイ。

 

「だいッじょうぶですありがとうございましたぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 相手の顔を直視できずに叫ぶように感謝を伝える。

 

 そして僕は、また走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

「どうしたの、ユース?」

「いや、なんか聞き覚えのある声で呼ばれた気がしたんだけど………気のせいか」

 

 異常事態(イレギュラー)続きだった遠征を終えた俺たちは、共に乗り越えた【ロキファミリア】より一足先に地上へ帰還していた。

 一柱(ひとり)残したアストレア様が心配だし、何より会いたいという想いが最大の理由だ。

 

 ロキファミリアの面々からは『うちの主神(アホ)と交換しない?』と、あまりにも嘘が見えない本気(ガチ)の発言にちょっと引いた。そしてもちろんアストレア様は俺たちの神様なので断固たる決意で断った。奪うというのなら、戦争遊戯(ウォーゲーム)も辞さない覚悟だ。

 

 そして帰宅した俺たちを迎えるのは、やはりアストレア様だった。

 

「おかえりなさい、みんな」

 

 誰であっても、一目見ればわかる。

 彼女が善神にして、慈悲、あるいは慈愛に満ちた神物(じんぶつ)であることを。

 それほどまでに彼女の纏う空気は優しく、清らかだった。

 

 アストレア様の一言を聞くと、思い出したように全身から強ばりが抜ける。ようやく緊張から解放されたと、心までが軽くなる。

 

「ただいま帰りました、アストレア様」

「おかえりなさい、ユース。疲れたでしょう。お風呂の準備が出来てるけれど、どうする?」

「お気遣いありがとうございます。せっかくだし、頂きますね」

 

 遠征の帰りには大体18階層の『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』で沐浴をするが、今回はしなかったのでゆっくりとしたい気分だった。

 

「なら私も入ろうかしら!」

「なななななな何を言うのですかアリーゼ!?異性とのこっ、ここここここここっ、混浴など!認めるわけには……ッ!!」

 

 突然ニワトリと化したリオンが叫ぶ。

 あの……俺、普通に一人で入りたいんですけど………

 

「冗談も通じない堅物エルフさんの相手は面倒ですねぇ………そうだ。折角なので、私も入りましょう。深層での()()もまだですし、このままでは淑女の名折れでしょう?」

 あ全然大丈夫です。というか輝夜の口から『お礼』って聞くと、なんでか嫌な予感しかしないんだわ。あと一般的な淑女は混浴しないだろうが!

 

「ならアタシも入るかぁ〜」

「んじゃ、私も私も!」

「ふふ、みんなで入るのは何時(いつ)ぶりですかね〜」

「わ、私も入って、いい?」

「もちろんですアスタさん。私も興味があるのでご一緒させてください」

「あらま、こんな大人数だとちょっと手狭になるかもしれないわね?」

「大丈夫でしょ!オシャレだもん!」

「その理屈は分からないや、イスカ……」

 

 おいおい……と、俺が冷や汗をかきそうになったその時。リオンは言い放つ。その顔も耳も首元も真っ赤に染め上げて。

 

「あ、あくまでも監視!監視するために、私も共に………!!」

 

 が、

 

「「「「「「「「「「どうぞどうぞ」」」」」」」」」」

 

「なァッ!?」

 

 末妹ポジションのリオンが、何度目かも数えることすら億劫になるほどの茶番劇にまた引っかかった。

 ハァ……と俺はため息をしたくなる。何回も引っかかるリオンに対しても、そして入浴させてくれない上姉(あね)たちにも。

 

「あらあら……リューは相変わらず、愛されているわね」

「リオン本人は絶対にこんな愛され方はしたくないと思ってるハズですけどね」

「でも、好きな子には悪戯しちゃうものでしょう?」

「その概念、神々の間でもあるんですね………」

 

 アリーゼたちに翻弄されてまた憤慨するリオン。そしてそれを見つめるアストレア様と俺。

 帰ってきた日常を実感するのは、こういう瞬間なのだろうとふと思う。

 

「ところでユース」

「?なんですか?」

「私とも一緒に、お風呂に入ってくれる?」

 

 アストレア様は茶目っ気を覗かせるように、胡桃(くるみ)色の長髪を揺らして言う。

 

 ハァ……まったく、と。

 

 何度目かもう分からなくなったため息を心の中に留めて、俺は。曇りなき眼で宣言した。

 

 

 

 

是非お願いしますッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 もちろん、アリーゼ達に妨害された。

 

 

 俺は惜しい気持ちを堪えて一人、お風呂に入ったのだった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちがお風呂を堪能した後。

 腹ぺこだった俺たちを出迎えたのはアストレア様お手製の食事だった。

 

「うおすっげぇ……」

「この豪勢な食事は………」

「凄く美味しそう……!!」

 

 どうやら最高到達階層を更新した時の為のお祝いの食事だったようだが、遠征から帰ってきたのが早かったことから、その、まぁ……失敗したことを察してくれたアストレア様。

『それでも無事に帰ってきてくれるだけで嬉しいわ』と仰って頂き、【祝!最高到達階層更新!】から【ドンマイ!遠征大失敗!】の会に変わった。

 

「ナニコレ滅茶苦茶おいしいっ……!?」

「アストレア様が司るのは正義と母性(バブみ)だからな」

「そうに違いねえな」

 

 どっかの銀の美神(フレイヤ)様とは違い、アストレア様の料理の腕は確かだった。というか前者の女神は、あれは料理じゃない。人類最終試練(アジ・ダハーカ)である。

 神の力(アルカナム)でも使われたのかと錯覚してしまうその料理を瞬く間に完食し、食後のお茶を堪能していると。

 

「ユース、貴方宛にお手紙が届いていたわ」

「ありがとうございます」

 

 アストレア様に手渡されたのは一枚の白い手紙。

 宛先には俺の名前。送り主は………!!

 

「ベルの手紙か!」

「べる?」

「ん?(ベル)がどしたの?」

 

 入浴後ということもあって銀の腕(アガートラム)無しの片手だった為、輝夜に開けてもらい、中身の手紙を読む。

 

 既にオラリオに着き、何とか神様を見つけて派閥(ファミリア)に加入したということ。主神の名前は神ヘスティア………アストレア様曰く天界での神友(しんゆう)だった。ならその神格(じんかく)も確かだろう。懸念点が解消され一安心する。

 

 次を読む。

 

 初めてのダンジョン探索、初めての都会。初めて尽くしだけど頑張っているということ。そして久しぶりに会いたいということ。ああ俺もだ!と思わず笑みが零れる文章だ。

 

 次を読む。

 

 あと、時期は多少ズレるが、アルフィアお義母さんが来るらしい。オラリオに。ハハハッ、冗談が上手くなったんだなぁと、笑みが引き攣る。

 

 次を読む。

 

 これは冗談じゃないらしい。笑みが凍る。

 

 次を読む。次は無かった。

 

 

 

 ……

 

 …………

 

 ……………

 

 ………………冗談じゃないの?????

 

 

 

 

「がッ、はァ………」

 

「「「「「「「「ユース!?!?」」」」」」」」

 

 

 思わず卒倒した。いや、しかけた。

 

 見間違え?読み間違え?記憶違い?

 

 うん、そうそう。そうだよな!!そうに違いないって絶対!!!!!

 

 あらゆる困惑を、レベル6に至った精神力でねじ伏せ、もう一度読むことにした。

 

 

 オラリオに無事着いたこと。心温まる。

 

 善神(ヘスティア)様と契りを交わす。心温まる。

 

 ダンジョン探索を頑張っている。心温まる。

 

 久しぶりに会いたい旨。心温まる。

 

 アルフィア義母さんが来る。心冷える。

 

 

 

「ぁあ、あああ、ああああっ!!」

「ど、どうしたのっ?」

 

 困惑するアストレア様(めっちゃかわいい)が心配の声を掛けてくださる。

 そして俺は意識が朦朧とする中、その事実を言い放った。

 

 

 

「アルフィアが、来るっ………!!」

 

 

 

 本拠(ホーム)『星屑の庭』に、阿鼻叫喚が迸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦────────♦♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メインストリートを出ていかにもというような細い裏道を通り、幾度も角を曲がった先に見えるうらぶれた教会が、僕と神様(ヘスティア)本拠(ホーム)だった。

 

 かろうじて原型を保つ祭壇の奥の小部屋に建付けてある本棚。それを動かして現れる隠し階段の先のドアを開け、声を張り上げて足を踏み入れると。

 

「神様あ!!ただいま帰りまし───」

 

 

 

()()()()

 

 

 

「ちょっ、ぐわああ!!」

 

 

 ────痛い痛い痛い!

 

 今日出会ったモンスターのどんな攻撃よりも痛い掴頭強撃(アイアンクロー)が僕を襲った!!

 

 視界は下手人の手によって間抜けに塞がれている!でもかろうじて見えたのは、何故か神様が泣きそうな顔で硬い床に正座していたということ!!理解できない!!!

 

 混乱と痛みの反復横跳びを繰り返す僕に対して、掛けられたのは冷たくて静かな声。

 それはとても聞き覚えのある声だった。

 

「嘆かわしい……家に帰ってきた時、まず何をどうすると教えた?ん?」

「く、靴の泥を払って、扉を静かに開けること、ですぅ!」

「理解しているならいい。次からは気を付けろ」

「痛いっ!?」

 

 ぺいっ、と効果音がするかもしれない勢いで開放された。僕は惨めに尻餅を着く。

 

 そしてようやく見えた視界に映るのは、灰色の長髪と身に纏う漆黒のドレス。そして、やっぱり瞼を閉じている女性の姿。

 

 アルフィアお義母さんが、何故か、本当に何故かここにいた。

 

「ど、どうして!?」

「あの好々爺(ゼウス)がヘラに見つかった。田舎にいては煩くてかなわん。まだオラリオの方がマシだと判断したので、暫くはここに滞在する」

 

 それが決定事項かのように振る舞うアルフィアお義母さん。

 

 確かにオラリオにいつかは来るとは言ってたけど、ちょっと早すぎでは?と思った。

 だってあの涙の別れ(主演:(ベル)、助演:アルフィアお義母さん・ザルド叔父さん、木:首から上が埋まった祖父(ゼウス))から半月も経ってないのに。

 

 でも、また一緒に暮らせるということに、僕は自分でも信じられないくらい嬉しくなっていた。

 

 そしてふと、一つの疑問が浮かんだので聞いてみた。

 

「ザルド叔父さんは?」

「あの筋肉(ザルド)は『味見だ』と言って尻軽女神(フレイヤ)の所の猪に突撃した」

「えぇ………」

 

 なんとか声を絞り出す。

 

 猪って……まさか【猛者】?都市最強のレベル7じゃなかったっけ?ザルド叔父さんってそんなに強いの………?

 

「座れ。汚い場所だがな」

「あ、あのぅ……一応、ボクが家主なんだけど」

「黙れ」

「はいィ!」

 

 神様は相変わらず正座をしていたし、アルフィアお義母さんは客人なのに凄く寛いでいる。一体僕がいない間に何があったんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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