娘のバンドと対バンしたい   作:肉野郎

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なんか急激にお気に入り登録が増えててびっくりしてます。
あぁ^〜承認欲求が満たされるぜェ~!ぼっちちゃんの気持ちがよくわかる…
今回は虹夏ちゃん視点でお送りします。

それではどうぞ


10

 

 

 

 私は伊地知虹夏。

 

 今日はぼっちちゃんの…ギターヒーローの動画撮影を見学するために、ぼっちちゃんの家に向かってる。

 

 前回のロゴ作りで、一度訪れたあの家にまた行くと思うと、胸がドキドキする。

 

 

 

 金沢八景駅に着いて、そのままぼっちちゃんの家に向かう。

 ぼっちちゃんの家に着き、また門の前で本人確認のIDチェック。

 身分証見せて、金属探知機を通り、許可が出たあと、警備員さんに軽く会釈されて中に入る。

 

 

 (毎回これか。防犯面ホントに完璧だよね……でもこれ絶対お金かかるよね…セキュリティ数人雇うのだって安くないだろうし…ぼっちちゃんのお父さん、どんだけお金持ちなんだろ?)

 

 

 家の中に入ると、やっぱりすごい。

 庭は広すぎて、ちょっとした学校のグラウンドみたい。

 家自体も海外セレブが住んでるような大豪邸。

 

 ぼっちちゃんが玄関まで迎えに来てくれて、私を2階の自分の部屋に案内してくれた。

 

 部屋に入ると、相変わらずの広さ。

 キングサイズベッド、高級ソファ、ゲーミングデスクに最新のApp○e PCがずらり。

 ウォークインクローゼットにはハイブランドの服が並んでるけど、ぼっちちゃんは今日もピンクジャージ。

 

 

 (こういうとこホントぼっちちゃんらしいよね。豪邸に住んでるのに、いつもこんな感じだし…ギャップがすごすぎる……)

 

 

 私はソファに座って、ぼっちちゃんが持ってきたお菓子やジュースを楽しみつつ、この前ぼっちちゃんが買ってた、新しいギターに目をとめた。

 

 

 「ぼっちちゃんの新しいギターやっぱりかっこいいね!確かSchecterのギターだっけ?」

 

 「あっありがとうございます…」

 

 「ねぇねぇぼっちちゃん!もっと近くで見せてほしいな〜!」

 

 「あっはい。どうぞ」

 

 

 ぼっちちゃんは、恥ずかしそうにギターを手に取り、私に手渡した。

 私は近づいて、まじまじと見た。

 

 

 「うわぁ……ヤバい……EMGのピックアップがキラキラしてるし、Floyd Roseのブリッジも完璧……ボディの軽さとネックの薄さ、速弾きしやすそうだね!ぼっちちゃんにぴったり! 絶対このギター、ぼっちちゃんの音を引き出してくれるよ!」

 

 「あっ…ありがとうございます……虹夏ちゃん」

 

 「今日はこれで動画撮るんだよね?宅録見てみたかったから、今日はたのしみだな〜♪」

 

 「あっはい」

 

 

 ぼっちちゃんは顔を真っ赤にして、俯いた。

 …それにきても、ギターヒーローとしてのぼっちちゃんを見るのは初めてだな…

 ギターヒーローは私がずっと凄いと思ってた人だもんね。

 同一人物だなんてやっぱり不思議だ…

 

 私はここで、ギターヒーローの凄さを改めて思い返した。

 

 日本の流行り曲とか売れ線のJ-POPを、ロック風にカッコよくアレンジして弾いてるし……

 全部、原曲の良さを残しつつ、ギターソロで脳に衝撃与えるレベルに仕上げてる……

 海外の曲も全部、ハイゲインで歪ませて、速弾きで昇華させててすごい…

 

 

 そして何より【NEW GLORY】の弾いてみた動画……

 

 

 あの脳に直撃するメロディを、完コピどころかアレンジ入れてさらにカッコよくしてる……

 再生1億超えの動画も、ぼっちちゃんが弾いてるんだ……

 そんな人が……私の目の前にいる……

 ぼっちちゃんが……ギターヒーロー……

 信じられない……

 今、私……すごいところにいるんだ……

 

 

 「あっすみません。そろそろ撮影しようかと…」

 

 「あっはい!分かりました!」

 

 「えっあっ敬語…」

 

 「あっぼっちさん。お茶でもどうですか?」

 

 「えっどっどうしたんですか!?」

 

 

 ………なんか…急に緊張してきた…ギターヒーローって意識するとドキドキする!

 

 

 「ああっ!うん、ごめんごめん!なんでもないよ!ちょっと緊張しちゃって…!」

 

 「あっそうですか」

 

 「………そういえばぼっちちゃん。撮影ってここでするの?なんか、いつもの動画の背景と違う感じがするけど…」

 

 「あっ違います…撮影はいつも、地下の防音室でしてます」

 

 

 私は、目を丸くした。

 

 

 「地下!?この家、地下にも部屋があるの!?」

 

 「あっはい。じゃ…じゃあ早速向かいましょう」

 

 「!うん!」

 

 

 ぼっちちゃんは、ギターを抱えてエレベーターに向かった。

 私も、ぼっちちゃんの後ろに着いて行って、一緒に乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 (今から…本当にギターヒーローの撮影見学できるんだ…私……ドキドキしすぎて……心臓が爆発しそう…!)

 

 「あっ着きました」

 

 

 エレベーターが地下に着いた瞬間。

 

 私はまた息を飲んだ。

 

 

 「…えっ!!?なにこれ!!?海外のレコーディングスタジオ!!?」

 

 

 地下スタジオは、広さが70畳以上はありそう。

 天井は4メートル以上で、完全防音の厚い壁と特殊吸音材で覆われている。

 

 そして、壁一面にハイエンドギターがずらり。

 Gibson Les Paul Standard 50s、Fender Stratocaster American Professional II、PRS Custom 24、ESP Horizon FR、Schecter Hellraiser Hybrid C-1、Ibanez RGシリーズ……

 プライベートストックのカスタムモデルが7〜8本以上。

 

 ベースもFodera Emperor、Music Man StingRay、Ibanez SRシリーズ、Rickenbacker 4003、Warwick Corvette……

 

 ……リョウがこれ見たら、興奮してずっとうるさそう…

 

 

 『これ、Fodera Emperor Standard…!カーボンファイバー強化ネックにEMGピックアップ!こっちはMusic Man StingRay Special 5HH…!HHピックアップ構成で、低音の太さが異常…!Ibanez SRシリーズのプレミアムも!?SR5000E…African MahoganyボディにPanga Panga指板…!Rickenbacker 4003…!あの独特の鈴鳴りトーン…Warwick Corvette $$……ブビンガボディにWenge指板……待って…これ全部…現行のハイエンドどころか、限定モデルやカスタムショップ品まで混ざってる!!?いや待って、このラインアップ…プロミュージシャンが一生かけて集めるレベルだよ?私今、夢の中にいるの?』

 

 

 うわっ!?イマジナリーリョウが出てきて、目がキラキラしてる!めっちゃ早口で喋ってるし、完全に「ベースオタクモード」に入ってる!

 

 

 『このFodera…Anthony Jacksonの影響受けたEmperorシリーズ…!低音のレスポンスが異常っていう…!…ぼっち触っていい!?いや、触るだけじゃなくて弾きたい…!弾かせて…!このWarwickのブビンガの響き…生で聴きたい…!Rickenbackerのあの独特のピックアップ配置……鈴鳴りトーンを生で…ぼっちお願い!!』

 

 

 しっ!しっ!あっちいけ!

 

 

 『というか、ぼっちの家ヤバすぎる…!私一生ここに住…ぎゃあああああああ!!!』

 

 

 ふぅ…やっといなくなった。迂闊にリョウをここには呼べないな。

 本気で住むとか言いかねない…

 

 スタジオ中央にはNeve 1073やSSL 4000シリーズクラスのアナログミキシングコンソール、Pro Tools HDXシステム、Genelec 1238Aのモニタースピーカー、Neumann U87Aiマイク……

 プロのレコーディングスタジオそのもの。

 いや……プロを凌駕してるかも……

 

 

 「うわ〜、ホントすごいねここ!………ん!?あれドラム!!?」

 

 

 奥にはなんとドラムセットも置いてあった。

 

 ……え!?あれって【NEW GLORY】の○○○○○さんが使ってた……SJCのカスタムドラムセットじゃん!!!

 

 SJC Custom Drums…プロのメタル/ハードコアシーンで超人気のアメリカブランド。

 【NEW GLORY】仕様の特注モデル。

 バスドラムは26インチ×2のツーバス仕様、フロントバスに巨大なポートホール開いてて、低音がヤバそう。

 タムは10・12・14インチ、フロアタムは16・18インチ。

 スネアは14×6.5インチのブラスシェルで、シャープなクラック音が出そうだし。

 シンバルはMEINL Byzance Dual(14インチハイハット、16・18インチクラッシュ)、Byzance Extra Dry の20インチライド、そしてGeneration XやClassics Custom Dark系のエフェクトシンバルが並ぶ。

 Remoのコーテッドヘッドとパワードットヘッドの組み合わせで、叩いた瞬間のアタックとサスティンが完璧。

 

 ドラムの横にはMacBoo○ Proが配置されてる。

 最新のM5 Maxチップ搭載の16インチモデルで、L○gic Proが起動して同期やクリックトラックを流してる。

 Pro Toolsとの連携も完璧で、クリック音やメトロノーム、バックトラックをリアルタイムで同期。

 画面にはDAWのマルチトラックが表示されてて、ぼっちちゃんの演奏を録音しながら、リアルタイムでモニタリングできる設定。

 

 

 私は【NEW GLORY】仕様の特注ドラムセットに興奮が抑えられなくなった。

 

 

「うわああああああああ!!!!!なにこれなにこれ!!?プロすぎる!!このドラム、SJCカスタムじゃん!!!26インチツーバス、10・12・14タム、16・18フロア…ブラススネア…MEINLのByzance DualとExtra Dry、それにClassics Custom DarkやGeneration X のエフェクトシンバルも!これ【NEW GLORY】のライブ映像で見たまんまじゃん!!ヤバすぎるよ!!!!」

 

 「あっ虹夏ちゃん。よかったら…好きに叩いていいですよ」

 

 「え!?いいの!!?」

 

 「あっはい。どうぞ」

 

 「やったー!!ありがとうぼっちちゃん!!」

 

 

 

 私は、夢中でドラムセットに飛びついた。

 スティックを握って、軽くバスドラムを踏む。

 

 

 "ドゥーン!!!"

 

 

 重低音が部屋全体を震わせる。

 タムを叩くと、クリアでパンチのあるアタック。

 スネアのクラック音がシャープに響き、ハイハットがシャキッと切れる。

 

 

(このレスポンス、最高すぎる!【NEW GLORY】の○○○○○さんが特注しただけある!私がこんな凄いセット叩けるなんて夢みたい!)

 

 

 ぼっちちゃんは、機材準備に取り掛かった。

 私は、叩きながらぼっちちゃんに聞いた。

 

 

 「ねぇぼっちちゃん。なんでこんな設備が整ってるの?」

 

 「えっ!?あっいや…おっお父さんが私のためにお金をかけて用意してくれまして。…あっあとお父さんの趣味です……」

 

 

 私は一瞬、いくら金持ちでも──と思ったけど、

 この大豪邸にセキュリティ、ハイブランドの山を思い出して、「まぁ、あり得るか」と納得して夢中でドラムを叩いた。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 ぼっちちゃんは、業務用の高画質ビデオカメラを三脚にセットし始めた。

 私はドラムセットから離れ、隅にある座り心地のいい大きいソファに座って、見学モード。

 

 

 (ついにギターヒーローの動画撮影が始まる…邪魔にならないように静かに見てよう……!)

 

 

 撮影機材もプロ仕様。

 メインカメラはZony FX6 Cinema Lineカメラ。

 4K 120fps対応で、S-Log3収録可能。

 レンズはZe○ss Supreme Prime 35mm T1.5。

 サブカメラはBlackm○gic Pocket Cinema Camera 6K Pro。

 三脚はManfr○tto MVH502AH PRO。

 照明はAp○ture Amaran 200xとGodox SL-60W。

 マイクはSennh○iser MKH 416ショットガンマイクとR○de NTG5。

 モニターはSmallHD C○ne 7。

 

 やば……こんなの、MV撮影レベルじゃん。

 

 

 (ぼっちちゃん。ギターヒーローとして、本気でやってるんだ。私…今、すごいところにいる…!)

 

 

 ギター周りのアンプとエフェクターも、一級品ばかり。

 アンプはBogner Ecstasyのヘッドが2台。

 3チャンネル構成で、クリーンからクランチ、ハイゲインまで幅広くカバーする名機。

 2台を並列で使用して、Bogner 4×12キャビネットと組み合わせ。

 Celestion Vintage 30スピーカーが4発×2で計8発入ってるから、分厚くてレンジの広いサウンドを実現してる。

 低音の厚みと中高域の抜けが両立してて、プロのハイゲインサウンドに最適。

 

 エフェクターボードは、【NEW GLORY】のNaokIが使ってる構成を忠実に再現したもの。

 Free The ToneのFT-2Y FET Compressor、G-2D Overdrive、VB-10 Vibrato、PS-5 Power Stage、DA-2 Delay、RV-5 Reverb。

 さらに、NaokI愛用のMXR M234 Analog Chorus、Boss DD-500 Digital Delay、Eventide H9 Max、Strymon Timeline、Strymon BigSky。

 どれもプロ御用達のハイエンド。

 電源はVoodoo Lab Pedal Power 4x4でノイズレス。

 

 

 (これ全部、NaokIの機材構成そのまんまだ。プロ使用の機材…ぼっちちゃん、ギターヒーローとしてここまで本気なんだ…!)

 

 

 ぼっちちゃんは撮影準備を進めながら、最後にイヤモニを耳に装着した。

 Ultimate Earsのカスタムインイヤーモニター。

 黒とピンクのツートンカラーで、ぼっちちゃんのイメージにぴったり。

 プロ仕様のUE Proシリーズで、ステージやスタジオで使われる最高級モデル。

 耳にぴったりフィットするカスタムシェルで、遮音性が高く、クリックやバックトラックがクリアに聞こえる。

 ケーブルは強化型で絡みにくく、プラグは3.5mmのストレートタイプ。

 ぼっちちゃんは、イヤモニを耳に押し込んで、軽く頭を振ってフィット感を確認。

 

 

 (ぼっちちゃん、イヤモニまで本格的だ。Ultimate Earsのカスタムって、プロのミュージシャンが使うやつだよね?これでクリックや同期音を完璧に聴きながら弾くんだ。ぼっちちゃん…本当にギターヒーローとしてプロの領域にいるんだ……)

 

 

 ぼっちちゃんは新しいギターを構えた。

 チューニングを終え、カメラに向かって小さく頷く。

 

 「あっ虹夏ちゃん…始めますね」

 

 

 私は、息を潜めて見守った。

 今回弾く曲は、海外の有名なポスト・ハードコアバンドの曲を三曲ほど弾くらしい。

 

 そして──演奏が始まった。

 

 私は、ぼっちちゃんの音に引き込まれた。

 

 新しいSchecterの重厚で鋭いトーンが、Bogner Ecstasy 2台並列のハイゲインで炸裂。

 分厚い低音と抜けのいい中高域が融合して、部屋全体を震わせる。

 Free The Toneのオーバードライブが絶妙に味付けし、Eventide H9 Maxのモジュレーションが空間を広げる。

 ぼっちちゃんの指が弦を滑るように動き、感情を乗せたピッキング。

 速弾きも正確で、でも心がこもっている。

 

 私は、思わず息を飲んだ。

 

 まず一曲目、EMG 81のハイゲインが炸裂し、速弾きのリフが部屋を切り裂く。

 トランス状態に入ったぼっちちゃんの音は、いつものスタ練や、この前の楽器屋での試奏以上。

 ピッキングの精度、ビブラートの深み、弦の鳴らし方──全部が別次元だ。

 

 

 (ぼっちちゃん、やっぱりソロだと圧倒的だ…!この音…プロ以上…!Bogner Ecstasyの歪み、Free The Toneのニュアンス、NaokIの構成そのまま…完璧すぎる。………私がこの曲のドラム叩いても、到底追いつけないかも)

 

 

 次に二曲目、重厚なリフと高速フレーズが融合。

 ぼっちちゃんの指が弦を滑るように動き、感情を乗せたピッキング。

 私は、胸が震えた。

 

 

 (この技術、動画で見た通り……いや、生で聴いたらそれ以上!ギターヒーローって本当にすごいんだ!)

 

 

 最後、三曲目。

 激しいブレイクダウンとメロディックなソロが交互に。

 ぼっちちゃんの演奏は、完璧。

 私は、思わず息を飲んだ。

 

 

 (ライブでもこのくらい弾けるようになったら…いつか私たちがお荷物になっちゃう日が来るかも…足引っ張らないように頑張らないと!)

 

 

 三曲が終わり、ぼっちちゃんはカメラを止めた。

 私は、立ち上がって拍手した。

 

 

 「すごいよぼっちちゃん!本当に動画通りの腕前だった!!でも、生で聴いたらもっと迫力があったよ!!」

 

 「あっそうですか?そ、そんな大したことは……うへへへへ…」

 

 

 ぼっちちゃんは、顔を真っ赤にしながらも、褒められて顔がニヤケ始めた。

 ぼっちちゃんは喜びながらも、手慣れた手つきで機材を片付けながら言った。

 

 

 「あっじゃあ…部屋に戻って、データ取り込んで編集しますね」

 

 「うん!動画楽しみ!」

 

 

 私はぼっちちゃんの後についてエレベーターで2階に戻った。

 ぼっちちゃんの部屋に入ると、いつもの広さと豪華さにまた少し圧倒されるけど、今日はぼっちちゃんの作業を見るのが楽しみでソファに座って待った。

 ぼっちちゃんはゲーミングチェアに座り、SDカードをiM○cに挿入。

 手慣れた感じでデータをインポートし、Fina○ Cut Pro(たぶん)を起動した。

 私は隣で画面を覗き込んだ。

 

 

 (編集もめっちゃ速い。カット割り、色調補正、エフェクト…全部サクサクやってる。プロのオーチューバーみたい…)

 

 

 ぼっちちゃんは、集中して編集を進めていく。

 BGMの調整、テロップ入れ、カット割り、トランジション……

 あっという間に3本の動画が完成した。

 

 

 「よしできた…あっじゃあ、投稿しますね」

 

 「うん!」

 

 

 ぼっちちゃんは、3本の動画を一気にアップロード。

 サムネイルも事前に作ってあったらしく、すぐに投稿完了。

 私のスマホから、オーチューブの通知がきて、すぐに通知ベルをタップした。

 

 

 「……おっ!もう反映されてる!………すごっ!再生数、もう伸び始めてるよ!」

 

 「あっそうですか。へへ…うへへ…!」

 

 

 ぼっちちゃんは、PCの画面を覗き込んで、ニヤニヤし始めた。

 高評価ボタンにたくさんのいいねがつき。

 コメント欄にも、すぐに賞賛の声が殺到。

 日本語コメントはもちろん、海外からのコメントもどんどん増えていく。

 

 

 『ギターヒーロー神』

 

 『このアレンジ最高』

 

 『また来たぞ! 毎回ヤバい』

 

 『サビのフレーズがマジで良すぎる!』

 

 『個人的には30秒辺りのリフがガチで好き』

 

 『この曲マジで大好きだから、大好きなギターヒーローがカバーしてくれて最高すぎる』

 

 『ギターヒーローのお陰で、毎回かっこいいロックバンドに出会えるからマジ神』

 

 『原曲の良さを殺さず、カッコよく昇華してんのマジやばい』

 

 『新しいギターかっこいい!音がよすぎる!』

 

 『Insane cover! The tone is perfect, EMG pickups screaming!』

 

 『This is better than the original riff! Japanese guitarist is on another level!』

 

 『guitar hero again with another masterpiece. The emotion in the playing is unreal』

 

 『As a guitarist from USA, I can say this is top tier. The picking speed and accuracy is godlike』

 

 『cover is fire! That solo at 1:45… chills!』

 

 『From Brazil here, love your covers!』

 

 『The vibrato and bends are so expressive. You can feel the soul in every note』

 

 『That new guitar tone is next level. The high gain is so tight and aggressive』

 

 『Mate, you’re a beast! Subscribed instantly.』

 

 『The breakdown section with that high gain tone is insane』

 

 『This guy is a monster』

 

 『guitar hero is the best guitar cover channel on YouTube right now. No cap』

 

 『한국에서도 팬 많아요! 다음 영상도 기대돼요!!』

 

 『Incroyable ! Le feeling est parfait, continue comme ça !』

 

 『Japanese legend strikes again. Respect from Germany』

 

 

 すごい…投稿して数十分で三本全部、70〜80万再生超え始めてる。

 ぼっちちゃんの口元が、どんどん緩んでいく。

 

 

 「うへ…うへへへへ…!承認欲求が満たされる…!私は、世界の最先端を行く女、ワールドワイド後藤ひとり!…うへ…!うへへへへへ…!」

 

 (ぼっちちゃんニヤニヤしてる。可愛い……承認欲求が満たされて、ご満悦だね♪)

 

 

 私は、ぼっちちゃんの目の前で、自分のスマホから動画を開いて、高評価ボタンを押した。

 そして、コメント欄に書き込んだ。

 

 

 『ギターヒーローさん、今日も神でした!!!新しいギターの音、めっちゃカッコいいです!!!』

 

 「!あっ虹夏ちゃん…!」

 

 「えへへ〜♪」

 

 

 ぼっちちゃんは私の方を振り向きつつ、私のコメントも今後に見て、さらにニヤニヤが止まらなくなった。

 顔が赤くなって、でも嬉しそうに口元を手で隠す。可愛い…

 

 

 「あっ虹夏ちゃん。ありがとうございます…!高評価にコメントまで…嬉しいです…!」

 

 「当たり前だよ!ぼっちちゃんのギター、本当にすごいんだから!これからも、もっともっと動画上げて、みんなを熱狂させよう!」

 

 「あっはい…!…がんばります…!虹夏ちゃんも……一緒に……!」

 

 

 ぼっちちゃんは、照れくさそうに、でも力強く頷いた。

 

 そして私は、心の中で誓った。

 

 

 (ぼっちちゃん……ギターヒーローとして……本当にすごい。でも、私たちは仲間だ。【結束バンド】として……もっと一緒に上を目指そう!)

 

 

 ぼっちちゃんの部屋の画面に、再生数がどんどん伸びていく。

 コメントも賞賛の嵐。

 海外からも「Insane」「God tier」「More please!」と次々に。

 ぼっちちゃんは、ニヤニヤしながら画面を見つめ続けた。

 私は、そんなぼっちちゃんを見て、胸が温かくなった。

 

 

 (ぼっちちゃん…!これからもずっと一緒に…【結束バンド】を最高のバンドにするよ!)

 

 

 地下スタジオの余韻と、新しいギターの音が、ぼっちちゃんの部屋に静かに残っていた。

 未来への一歩が、また踏み出された瞬間だった。

 

 

 

 数日後、改めて三本の動画を確認したら、どの動画も1000万再生を超えていた。

 やっぱりギターヒーローは、ぼっちちゃんはすごいや!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は佐藤愛子(さとうあいこ)

 

 【ぽいずん♡やみ】って名前で活動してる。

 

 フリーの音楽ライターを名乗ってるけど、最近はただのアクセス稼ぎマシーンだ。

 

 今日もWordを開いて、原稿を進めようとした。

 タイトルは「【2027年最新】今すぐ聴くべきインディーズバンド10選!」。

 本文はすでに途中まで書いてあったけど、3行目で筆が止まった。

 指がキーボードの上をさまようだけで、文字が出てこない。

 

 

 (……またか……)

 

 

 ため息をついて、保存ボタンを押した。

 Ctrl+Sの音が妙に虚しく響く。

 Wordを閉じて、デスクトップの壁紙——昔のライブ写真——をぼんやり見つめた。

 

 最近、琴線に触れる新しいバンドが見つからない。

 

 …いや、見つからないんじゃなくて、見つけても「これじゃ記事にならない」って自分で見切りつけてる…

 本当に心が震えたバンドは、PV再生数1000回未満の地下すぎる場所に埋もれてる。

 そんなバンドを一生懸命紹介しても、PVは伸びない。

 いいねもコメントもほとんど来ない。

 たまにコメントがついても『誰これ?』『知らん』って反応が返ってくる。

 

 一方で、アクセスが取れる記事は決まってる。

 『○○が脱退!衝撃の理由』『××が炎上した瞬間』みたいな、クソみたいなネタ記事。

 そういうのを書くと、PVは爆伸びする。

 広告収入も少し増える。

 でも、毎回書くたびに胸がざわつく。

 

 

 (あたしなんの為に音楽ライターやってんだろ…いいバンドをもっと大勢に知って欲しくて始めたのに…)

 

 

 真面目に記事を書いても誰も読んでくれない。

 「こんなマイナーなバンド紹介されても……」ってスルーされる。

 それなら、いっそバズるネタ記事を書いた方がマシだって、自分で自分を納得させてる。

 

 

 嫌気がさす。

 

 本当に嫌気がさす。

 

 

 スマホを手に取って、トゥイッターを開いた。

 タイムラインに流れてきたのは、文化祭ライブの女子高生ダイブ失敗動画。

 

 【結束バンド】ってバンドのリードギターの子が、客席にダイブしようとして失敗して床に転がってるやつ。

 

 コメント欄は…

 

 

 『誰も受け止めないのが胸に来る』

 

 『突然ダイブされたら無理だよ』

 

 『さすがに不憫すぎるwwwww』

 

 『草草の草』

 

 『ダブリューダブリューダブリューダブリューダブリュー』

 

 『可哀想だけど草ですわ』

 

 『これはバズるwww』

 

 『誰か受け止めてやれよww』

 

 『ワイならどさくさに紛れておぱぱぱーいもみもみするンゴ!』

 

 『今すぐこの子の幼馴染オリ主になって、ラッキースケベしたい!』

 

 

 …みたいな反応で埋まってる。

 

 …キモ。死ねよこいつら…

 

 

 (……これか……)

 

 

 私はため息をついた。

 これをテキトーに取材して、ネタ記事にすればいい。

 『文化祭でダイブ失敗!?女子高生バンドの衝撃の事実!』みたいなタイトルで。

 PVは確実に伸びる。

 アクセス稼ぎになる。

 私はWordをもう一度開いた。

 新しいファイルを作成して、タイトルを打った。

 

 

 『【衝撃】文化祭ライブで女子高生がダイブ失敗!ダイブ事件の真相に迫る!』

 

 

 指がキーボードの上を動き始めた。

 心のどこかが、ちくちくと痛むけど、無視した。

 

 これでいいんだ。

 

 これしか、今の私は書けないんだから。

 

 

 (……いつか、本当にいいバンドを紹介できる日が来るのかな……)

 

 

 ため息が、また一つ漏れた。

 画面の文字が、ぼんやりと滲んで見えた。

 

 

 (……もういいや……気分転換しよう……)

 

 

 再びスマホを手に取り、オーチューブを開く。

 ギターヒーローのチャンネルにアクセス。

 通知が3つ来てる。

 新しい動画が3本アップされてる。

 

 

 「また上がってる……!」

 

 

 私は、思わずニヤニヤが止まらなくなった。

 テンションが一気に上がる。

 

 

 (ギターヒーローさん……相変わらずの更新頻度……しかも、新しいギター使ってる!?これってSchecterの…ヤバい……音がどう変わったか気になる…!)

 

 

 まずは一本目から再生。

 イントロのハイゲインが炸裂した瞬間、脳に直撃。

 EMG 81の歪みが、以前よりエッジが効いてる。

 速弾きの精度がさらに上がってる気がする。

 ソロパートで感情を乗せたビブラート。

 私は、画面に釘付けになり、ニヤニヤが止まらない。

 

 

 (最高!このトーン…このピッキング…!ギターヒーローさん進化してる!)

 

 

 次に二本目。

 重厚なリフと高速フレーズの融合。

 新しいギターの低音が、以前より太く響く。

 私は、思わず拳を握った。

 

 

 (このギター…!やっぱり最高だ!ギターヒーローさん……ありがとう…今日のクソ記事のイライラ……全部吹き飛んだ…!)

 

 

 最後、三本目

 ブレイクダウンとメロディックなソロの交互。

 完璧な演奏。

 私は、再生が終わった瞬間、スマホを胸に当てて呟いた。

 

 

 「……ギターヒーローさん……大好き……」

 

 

 気分がリフレッシュされたところで、ふと関連動画に【NEW GLORY】のアレンジソロが出てきた。

 思わず再生。

 NaokIのギターソロを、ギターヒーローさんがさらにカッコよくアレンジした動画。

 脳に直撃するメロディが、完璧に再現されつつ、独自の味付けが加わってる。

 

 

 (……やっぱり……ギターヒーローさん、【NEW GLORY】のNaokIとプレイスタイルがそっくり……いや……そっくりってレベルじゃない……完全に影響受けてる……でも、それが最高なのよね……)

 

 

 私は、【NEW GLORY】のことを考える。

 ギターヒーローさんが大好きだけど、それ以上に【NEW GLORY】が大好き。

 メンバー全員大好きだけど、最推しはNaokI。

 

 6年前、17歳の時。

 たまたま寄ったチカレコで、初めて【NEW GLORY】の曲を聴いた瞬間、脳に雷が直撃したような衝撃を受けた。

 聴いたことのない新しいサウンド。

 中毒になるメロディ。

 NaokIの圧倒的なギターテクニック。

 ボーカルのハイトーンとスクリームの切り替え。

 ベースの神スラップ。

 ドラムのパワフルで感情的なドラミング。

 全部が完璧だった。

 これを聴いた瞬間、CD全部買った。財布はすっからかんになったけど、いい思い出だ。

 色んなバンドや、歴代のギタリストのギターを聴いてきたが、正直NaokIが世界で一番ギターが上手いと確信してる。

 

 …あと、ギターヒーローの動画のコメント欄で「ギターヒーローの方がNaokIより上手い」みたいな書き込みをたまに見かけるけど、私は強く否定する。

 

 

 (そんなわけないでしょ!ギターヒーローさんには悪いけど、それだけは絶対ない!NaokIの本気はこんなもんじゃない!!)

 

 

 確かにギターヒーローは、【NEW GLORY】の楽器隊にも十分ついていけるほどのポテンシャルだ。

 

 でも、NaokIの本気には足元にも及ばない。

 

 初めてライブに行った時のことを思い出す。

 18歳の時、国立競技場(新)のチケットが当たった。

 相変わらず収容人数以上の動員だったのに、数秒でソールドアウト。

 グッズ売り場も長蛇の列で、全グッズ速攻売り切れ。

 まぁ、私は運良くTシャツとパーカー買えたけどね。

 そしてギター側の最前をゲットして、私は涙を流して大喜びした。

 照明が落ちて、SEが鳴り、メンバーが一気に登場して、NaokIがステージに現れた。

 ギターストラップをかけ、SEが鳴り終わって曲が始まり、最初の弦を弾いた瞬間。

 

 

 

 会場が震えた。

 

 

 圧倒的なカリスマ。

 

 指先から生まれる音が、脳を直接殴る。

 

 そして、ギターソロの最中に、私と目が合って…こっちに目線を合わせながら、ソロをかき鳴らした。

 

 

 

 

 

 あの瞬間、脳が…心が…魂が震え、歓喜に満ちた。

 

 

 

 

 

 私は、あの瞬間。心の底からNaokIのことが…NaokIの全てが大好きになった。

 

 もはや崇拝するレベルで、全てを捧げてもいい。

 

 そして、ライターになってから、色々NaokIのこと調べてみたけど、【NEW GLORY】自体メディア露出がほとんどないし、SNSも公式のやつか、唯一ボーカルが、イソスタを個人でやってるのしかなく、NaokIの情報はなに一つ出てこなくて、謎に満ちていた。

 

 

 (また【NEW GLORY】のライブに行きたい。でも、久しぶりのJAPAN Tour…夏のアリーナツアーも追加公演のドームも、全公演数秒でソールドアウト…全部抽選外れた。…【NEW GLORY】って、いつになったら全盛期が過ぎるんだよ。倍率世界一高すぎる……【NEW GLORY】のことは大好きだけど、チケットが全然取れないところは嫌い。日本最大級のスタジアムや国立競技場すらも数秒でソールドアウトになるし…)

 

 

 私は、スマホを閉じて、ため息をついた。

 

 

 (日本でライブがあったら……絶対行く…!NaokIの本気……また見たい…!)

 

 

 気分は少し落ち込んだけど、ギターヒーローさんの動画を見たおかげで、少しだけ元気が出た。

 私は、もう一度Wordを開いた。

 クソ記事を書くしかないけど……

 

 

 (ギターヒーローさん…NaokI…ありがとう。今日も、少しだけ…がんばれる……今度取材行って…ネタ記事書いたら、またギターヒーローさんの特集記事書こう…)

 

 

 いつか、本当にいいバンドを紹介できる日が来ることを信じて。

 

 

 




今回はギターヒーローの宅録見学に来た虹夏ちゃんと、地下スタジオの紹介。
そしてみんな大好き、ぽいずん♡やみの登場でした。
ちなみにアンプとエフェクターはまたしても、元ベガスのSxunさんの使用機材です。
そして、【NEW GLORY】のドラマーのドラムセットは、クロフェのあまたつのドラムセットをモチーフに、ツーバス仕様にした物にしました。(自分の趣味全開)
にしても、楽器類にアンプ・エフェクター、録音・ミキシング機材に、ぼっちちゃんのギターヒーロー用の撮影機材、その他もろもろ…合計で5億円前後は確実にあるレベルになっちまった…
ぼっちちゃんパパ、化けモンすぎて草。ブルジョアすぎて涙がで、出ますよ…

今回も見てくれた方、ありがとうございました!
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