なんか急激にお気に入り登録が増えててびっくりしてます。
あぁ^〜承認欲求が満たされるぜェ~!ぼっちちゃんの気持ちがよくわかる…
今回は虹夏ちゃん視点でお送りします。
それではどうぞ
あたしは伊地知虹夏。
今日はぼっちちゃんの…ギターヒーローの動画撮影を見学するために、ぼっちちゃんの家に向かってる。
前回のロゴ作りで、一度訪れたあの家にまた行くと思うと、胸がドキドキする。
金沢八景駅に着いて、そのままぼっちちゃんの家に向かう。
ぼっちちゃんの家に着き、また門の前で本人確認のIDチェック。
インターホンのカメラに向かって慌てて身分証を見せて、さらに今回は入り口に設置されたポータブルの金属探知機のゲートをくぐり、電子音でのチェックをクリア。
ようやく管制室から許可が出たあと、防刃ベストを着た本物の警備員さんに「どうぞ」と軽く会釈されて、重厚な鉄門をくぐって中に入る。
(毎回これか。防犯面ホントに完璧だよね……でもこれ絶対お金かかるよね?セキュリティ数人雇うのだって安くないだろうし…ぼっちちゃんのお父さん、どんだけお金持ちなんだろ?)
一般家庭の防犯という概念をとうに超越した、国家元首レベルの物々しさに圧倒されながら、あたしは冷や汗を拭った。
鉄門を抜けて敷地の内側に入ると、やっぱり何度見てもその光景はすごかった。
手入れの行き届いた広大な庭は、あたしたちの通う学校の中庭どころか、ちょっとした学校のグラウンドが丸ごと一つ収まってしまいそうなくらい広い。
その中央にそびえ立つ家自体も、テレビの特番やネットのニュースでしか見たことがないような、海外セレブが優雅に住んでるような息を呑むほどの大豪邸。
ぼっちちゃんが玄関まで迎えに来てくれて、あたしを2階の自分の部屋に案内してくれた。
部屋に入ると、相変わらずの広さ。
キングサイズベッド、高級ソファ、ゲーミングデスクに最新のApp○e PCがずらり。
ウォークインクローゼットにはハイブランドの服が並んでるけど、ぼっちちゃんは今日もピンクジャージ。
(こういうとこホントぼっちちゃんらしいよね。豪邸に住んでるのに、いつもこんな感じだし…ギャップがすごすぎる……)
あたしはソファに座って、ぼっちちゃんが持ってきたお菓子やジュースを楽しみつつ、ふと部屋のスタンドに立てかけられていた、この前ぼっちちゃんが嬉しそうに買ってた新しいギターに目をとめた。
「ぼっちちゃんの新しいギターやっぱりかっこいいね!確かSchecterのPA-SXだっけ?」
「あっありがとうございます…」
「ねぇねぇぼっちちゃん!もっと近くで見せてほしいな〜!」
「あっはい。どうぞ」
ぼっちちゃんは、褒められて恥ずかしそうに身体を縮こまらせながら、エメラルドグリーンのギターを大切そうに手に取り、あたしに手渡した。
あたしは手元に近づけて、そのプロ仕様の美しい機体をまじまじと見た。
「うわぁ…ヤバい。EMGのピックアップがキラキラしてるし、Floyd Roseのブリッジも完璧だ。ボディの軽さとネックの薄さ、速弾きしやすそうだね!ぼっちちゃんにぴったり!絶対このギター、ぼっちちゃんの音を引き出してくれるよ!」
「あっ…ありがとうございます虹夏ちゃん」
「今日はこれで動画撮るんだよね?宅録見てみたかったから、今日はたのしみだな〜♪」
「あっはい」
ぼっちちゃんは顔を真っ赤にして俯いた。
……それにしても、ギターヒーローとしてのぼっちちゃんを間近で、しかもリアルの生身で見るのはこれが初めてだな
ギターヒーローはあたしがずっと凄いと思ってた人だもんね。
同一人物だなんてやっぱり不思議だ…
あたしはここで、ギターヒーローの凄さを改めて思い返した。
日本の流行り曲とか売れ線のJ-POPを、原曲のコード進行をベースにしながらも、重厚なロック風に最高にカッコよくアレンジして弾いてるし。
全部、原曲の持っている良さを1ミリも殺さずに残しつつ、自身が爪弾く圧倒的なギターソロパートで聴く者の脳に衝撃与えるレベルに仕上げてる。
海外の超有名な曲も全部、自慢のハイゲインで獰猛に歪ませて、人間の指の限界を超えるような超高速の速弾きで完全に昇華させてて、とにかくすごい。
そして何より【NEW GLORY】の弾いてみた動画……
あの脳に直撃するメロディを、完コピどころかアレンジ入れてさらにカッコよくしてる…
世界中でジャックされて再生1億超えを叩き出してるあの伝説の動画も、今目の前でもじもじしているぼっちちゃんが全部一人で弾いてるんだ…
そんな歴史に名を刻むレベルのネットの怪物が……今、あたしの目の前に座っている…
目の前でジュースのストローをいじっているぼっちちゃんが……あのギターヒーロー…
信じられない……
今、あたし…すごいところにいるんだ……
「あっすみません。そろそろ撮影しようかと…」
「あっ…はい!分かりました!」
「えっ?あっ…敬語…」
「あっぼっちさん。お茶でもどうですか…?」
「えっ…?どっ…どうしたんですか!?」
………なんか…急に緊張してきた…ギターヒーローって意識するとドキドキする!
「ああっ!うん、ごめんごめん!なんでもないよ!ちょっと緊張しちゃって…!」
「あっそうですか」
「………そういえばぼっちちゃん。撮影ってここでするの?なんか、いつもの動画の背景と違う感じがするけど…」
「あっ違います…撮影はいつも、地下のスタジオでしてます」
…………………………
「地下!?この家、地下にも部屋があるの!?」
「あっはい。じゃ…じゃあ早速向かいましょう」
「!うん!」
ぼっちちゃんは、ギターを抱えてエレベーターに向かった。
あたしもぼっちちゃんの後ろに着いて行って一緒に乗った。
◆
(今から…本当にギターヒーローの撮影見学できるんだ……ヤバい…!ドキドキしすぎて心臓が爆発しそう…!)
「あっ着きました」
エレベーターが地下に着いた瞬間──あたしはまた息を飲んだ。
「…えっ!!?なにこれ!!?海外のレコーディングスタジオ!!?」
そこに広がっていたのは、一般家庭の地下室なんて可愛い言葉では到底説明がつかない、音楽の化け物たちが集う聖域だった。
フロアの広さは優に70畳以上はあり、見上げるほどの天井は4メートル以上の高さを誇り、コンクリートの分厚い壁は、音の跳ね返りを完璧に計算し尽くされたプロ仕様の特殊吸音材と美しい特注の調音パネルで隙間なく覆われている。
そして、壁一面にハイエンドギターがずらり。
Gibson Les Paul Standard 50s、Fender Stratocaster American Professional II、PRS Custom 24、ESP Horizon FR、Schecter Hellraiser Hybrid C-1、Ibanezシリーズ(Ibanez Egen、Ibanez S、Ibanez RG、Ibanez JEM)
プライベートストックのカスタムモデルが7〜8本以上。
壁にずらりとディスプレイされていたのは、何もハイエンドギターの山だけじゃなかった。その下には、あたしでも名前くらいは知っているような世界的な高級ベースが、狂気的なまでの存在感を放って綺麗に並べられていた。
Fodera Emperor、Music Man StingRay、Ibanez SRシリーズ、Rickenbacker 4003、Warwick Corvetteなど。
……リョウがこれ見たら、興奮してずっとうるさそう…
『これ、Fodera Emperor Standard…!カーボンファイバー強化ネックにEMGピックアップ!こっちはMusic Man StingRay Special 5HH…!HHピックアップ構成で低音の太さが異常な…!Ibanez SRシリーズのプレミアムも!?SR5000E…African MahoganyボディにPanga Panga指板…!Rickenbacker 4003…!あの独特の鈴鳴りトーン…Warwick Corvette $$……ブビンガボディにWenge指板……待って…これ全部…現行のハイエンドどころか、限定モデルやカスタムショップ品まで混ざってる!!?いや待って、このラインアップ…プロミュージシャンが一生かけて集めるレベルだよ?私今、夢の中にいるの?』
うわっ!?イマジナリーリョウが出てきて、目がキラキラしてる!めっちゃ早口で喋ってるし、完全に「ベースオタクモード」に入ってる!
『このFodera…Anthony Jacksonの影響受けたEmperorシリーズ…!低音のレスポンスが異常っていう…!…ぼっち触っていい!?いや、触るだけじゃなくて弾きたい…!弾かせて…!このWarwickのブビンガの響き…生で聴きたい…!Rickenbackerのあの独特のピックアップ配置…鈴鳴りトーンを生で…ぼっちお願い!!』
しっ!しっ!あっちいけ!
『というか、ぼっちの家ヤバすぎる…!私一生ここに住…ぎゃあああああああ!!!』
ふぅ…やっといなくなった。迂闊にリョウをここには呼べないな。
もし本物のリョウをこの地下に連れ込んじゃったら、間違いなくぼっちちゃんの家の床にへばりついて「もうここに住む」って言い出すに決まってる。
あたしは首を振って妄想の霧を晴らし、広大なスタジオの中央へと視線を戻した。
そこにあったのは、もはや個人が趣味でDTM(宅録)をするなんてレベルを100万光年は置き去りにした、要塞のようなレコーディングシステムだった。
中央の特注デスクに鎮座しているのは、世界中のプロが最高峰のアンセムをレコーディングする時に使う、Neve 1073のプリアンプやSSL 4000シリーズクラスの巨大なアナログミキシングコンソール。
その横には最上位のPro Tools HDXシステムが組まれ、壁にはスタジオ用のGenelec 1238Aという超大型モニタースピーカー、ブースのスタンドには1本数十万円はするNeumann U87Aiマイクが何食わぬ顔で設置されていた。
プロのレコーディングスタジオそのもの──いや、プロを凌駕してるかも……
「うわ〜、ホントすごいねここ!………ん!?あれドラム!!?」
奥にはなんとドラムセットも置いてあった。
……え!?あれって【NEW GLORY】の○○○○○さんが使ってた……SJCのカスタムドラムセットじゃん!!!
SJC Custom Drums──本場アメリカのプロのメタルやハードコア、ラウドロックシーンで圧倒的な人気と絶対的なステータスを誇る最高級カスタムブランド。
壁に同化するような重厚なフィニッシュが施された、世界に一つしか存在しない【NEW GLORY】仕様の完全特注モンスターモデル。
バスドラムは26インチ×2のツーバス仕様、フロントバスに巨大なポートホール開いてて、低音がヤバそう。
タムは10・12・14インチの変則的な3連構成、フロアタムは16・18インチというラウドロックの王道を征く重量級の口径。
スネアは14×6.5インチのブラスシェルで、シャープなクラック音が出そうだし。
シンバルはMEINL Byzance Dual(14インチハイハット、16・18インチクラッシュ)、Byzance Extra Dryの20インチライド、そしてGeneration XやClassics Custom Dark系のエフェクトシンバルが並ぶ。
Remoのコーテッドヘッドとパワードットヘッドの組み合わせで、叩いた瞬間のアタックとサスティンが完璧。
ドラムの真横の特注スタンドには、1台のMacBoo○ Proが静かに配置されている。
最新のM5 Maxチップを搭載した最高峰の16インチモデルの画面には、プロ仕様のL○gic Proが常時起動しており、ライブ映像と同じ同期音源やクリックトラックを静かに流していた。
メインコンソールのPro Toolsシステムとの連携も完璧に行われており、クリック音やメトロノーム、巨大なバックトラックをリアルタイムで1ミリのズレもなく同期。
画面にはDAWのマルチトラックの波形がリアルタイムで美しく表示されてて、ぼっちちゃんの新しいギターの演奏を別トラックで高解像度レコーディングしながら、同時にスタジオ用の Genelec から最高のバランスでモニタリングできる、本物のスタジオのシステムが組まれていた。
あたしは【NEW GLORY】仕様の特注ドラムセットに興奮が抑えられなくなった。
「うわああああああああ!!!!!なにこれなにこれ!!?プロすぎる!!このドラム、SJCカスタムじゃん!!!26インチツーバス、10・12・14タム、16・18フロアにブラススネア!うわこれMEINLのByzance DualとExtra Dryだ!それにClassics Custom DarkやGeneration Xのエフェクトシンバルも!これ【NEW GLORY】のライブ映像で見たまんまじゃん!!ヤバすぎるよ!!!!」
「あっ虹夏ちゃん。よかったら…好きに叩いていいですよ」
「え!?いいの!!?」
「あっはい。どうぞ」
「やったー!!ありがとうぼっちちゃん!!」
ぼっちちゃんの言葉に甘えて、あたしは夢中でその超巨大なドラムセットの椅子へと飛びついた。
自分の手元に馴染む重めのスティックを強く握りしめ、高鳴る胸を抑えながら、まずは右足で軽く26インチのバスドラムのペダルを強く踏み込んでみる。
"ドゥーン!!!"
重低音が部屋全体を震わせる。
タムを叩くと、クリアでパンチのあるアタック。
スネアのクラック音がシャープに響き、ハイハットがシャキッと切れる。
(このレスポンス、最高すぎる!【NEW GLORY】の○○○○○さんが特注しただけある!あたしがこんな凄いセット叩けるなんて夢みたい!)
ぼっちちゃんは、手慣れた手つきで機材準備に取り掛かった。
あたしは、ドラムを叩きながらぼっちちゃんに聞いた。
「ねぇぼっちちゃん。なんでこんな設備が整ってるの?」
「えっ!?あっいや…おっお父さんが私のためにお金をかけて用意してくれまして。…あっあとお父さんの趣味です……」
あたしは一瞬、いくら金持ちでも──と思ったけど、
この大豪邸にセキュリティ、ハイブランドの山を思い出して、「まぁ、あり得るか」と納得して夢中でドラムを叩いた。
◆
ぼっちちゃんは慣れた手つきで、テレビ局のクルーが担ぐような業務用の高画質ビデオカメラを三脚にセットし始めた。
あたしは後ろ髪を引かれつつも伝説のドラムセットからそっと離れ、スタジオの隅にある座り心地のいい大きいソファに深く腰を沈めて、完全に見学モードへと切り替えた。
(ついにギターヒーローの動画撮影が始まる…邪魔にならないように静かに見てよう……!)
当然のように、その撮影機材のラインナップも完全にプロ仕様のそれだった。
まずメインカメラに据えられているのは、映画の撮影現場でも主力を張るZony FX6 Cinema Lineカメラ。4K 120fpsの圧倒的な高フレームレートに対応し、色彩を映画の質感(シネマティック)に仕上げるS-Log3での収録が常時可能。
そこへマウントされているレンズは、狂気的なまでの解像度を誇る最高峰のZe○ss Supreme Prime 35mm T1.5。
さらに別アングルからの手元を捉えるサブカメラとして、Blackm○gic Pocket Cinema Camera 6K Proが抜かりなく配置され、それらを支えるのはプロ御用達の頑強な三脚、Manfr○tto MVH502AH PRO。
スタジオの薄暗い陰影をドラマチックに演出する照明機材には、Ap○ture Amaran 200xとGodox SL-60Wが絶妙な角度でセッティングされ、ピッキングの生々しいアタック音を拾い上げるために、Sennh○iser MKH 416ショットガンマイクとR○de NTG5がそれぞれ最適なポジションへ配置されている。
そして全ての画角をチェックする外部モニターには、 SmallHD C○ne 7が鮮やかな映像を映し出していた。
やば…こんなの個人がネットに投稿する動画の規模じゃない。
完全に世界基準のMV撮影レベルじゃん。
(ぼっちちゃん…ギターヒーローとして本気でやってるんだ。あたし今、すごいところにいる…!)
ギター周りのアンプとエフェクターも、一級品ばかり。
壁際に鎮座するアンプはBogner Ecstasyのヘッドが2台。
3チャンネル構成で、クリーンからクランチ、ハイゲインまで幅広くカバーする名機。
2台を並列で使用して、Bogner 4×12キャビネットと組み合わせ。
Celestion Vintage 30スピーカーが4発×2で計8発入ってるから、分厚くてレンジの広いサウンドを実現してる。
低音の厚みと中高域の抜けが両立してて、プロのハイゲインサウンドに最適。
そして床に置かれた巨大なエフェクターボードは、【NEW GLORY】のNaokIが実際に使っていた構成を忠実に再現したものだ。
中心にはFree The ToneのARC‑3(ループスイッチャー)を据え、そこに合計12台のエフェクターを完全同期でコントロールする“司令塔”仕様になっている。
搭載されているのは、NaokIの象徴とも言えるDigitech Whammy、エスニックな倍音を生む Electro‑Harmonix Ravish Sitar、変態系モジュレーションを担うLine 6(M5/FM4系)。
さらに、質感を整えるためFree The Tone Silky Comp、Red Jasper、Matt Black といったプロ御用達のアナログペダル群も組み込まれている。
どれもNaokIの“未来的ギターサウンド”を支えるハイエンド機材ばかり。
電源はFree The ToneのPT‑3Dを中心にノイズレスで供給。
デジタルとアナログを高次元で融合させた、NaokIならではのハイブリッドボードだ。
(これ全部、NaokIの機材構成そのまんまだ。プロ使用の機材…ぼっちちゃん、ギターヒーローとしてここまで本気なんだ…!)
ぼっちちゃんは撮影準備を進めながら、最後にイヤモニを耳に装着した。
使ってるのは、Ultimate Earsのカスタムインイヤーモニター。
カラーリングは黒とピンクのツートンカラーで、ぼっちちゃんのイメージにぴったり。
中身は当然、プロ仕様のUE Proシリーズで、世界中のアリーナやレコーディングスタジオで使われる最高級モデル。
ぼっちちゃんの耳にぴったりフィットするカスタムシェルで、外部の音を100%遮断する遮音性が高く、アンプからの爆音の中でもクリックやバックトラックがクリアに聞こえる。
ケーブルは強化型で絡みにくく、コンソールへと繋がるプラグは3.5mmのストレートタイプ。
ぼっちちゃんはイヤモニを耳に押し込んで、軽く頭を振ってフィット感を確認。
(ぼっちちゃんイヤモニまで本格的だ。Ultimate Earsのカスタムって、プロのミュージシャンが使うやつだよね?これでクリックや同期音を完璧に聴きながら弾くんだ。ぼっちちゃん…本当にギターヒーローとしてプロの領域にいるんだ……)
ぼっちちゃんは新しいギターを構えた。
チューニングを終え、カメラに向かって小さく頷く。
「あっ虹夏ちゃん…始めますね」
あたしは、息を潜めて見守った。
今回弾く曲は、海外の有名なポスト・ハードコアバンドの曲を三曲ほど弾くらしい。
そして──演奏が始まった。
最初の一音で、あたしはぼっちちゃんの音に引き込まれた。
新しいSchecterの重厚で鋭いトーンが、Bogner Ecstasy 2台並列のハイゲインで炸裂。
分厚い低音と抜けのいい中高域が融合して、部屋全体を震わせる。
Free The Toneのアナログペダル群が音の輪郭を丁寧に磨き上げ、Line 6の変態系モジュレーションがサウンドに異次元の広がりを与える。
ぼっちちゃんの指が弦を滑るように動き、感情を乗せたピッキング。
速弾きも正確で心がこもっている。
まず一曲目、EMG 81のブリッジポジションから繰り出される容赦のないハイゲインが室内に炸裂し、空間を鋭利に切り裂くような速弾きのリフが部屋の静寂を粉々に粉砕する。
トランス状態に入ったぼっちちゃんの音は、いつものスタ練や、この前の楽器屋での試奏以上。
ピッキングの精度、ビブラートの深み、弦の鳴らし方──全部が別次元だ。
(ぼっちちゃん、やっぱりソロだと圧倒的だ…!この音…プロ以上…!Bogner Ecstasyの歪み、Free The Toneのニュアンス、NaokIの構成そのまま…完璧すぎる。……あたしがこの曲のドラム叩いても、到底追いつけないかも)
次に二曲目、デジタルなエレクトロコア要素と、重厚なメタルリフ、そして息を呑むような高速フレーズが至高のバランスで融合していく。
ぼっちちゃんの指が滑らかに指板の上を滑るように動く。
その歪んだ音の羅列の中に、引きこもりだった彼女の魂の叫びが、感情を乗せたピッキングによって全部吐き出されているのを感じて、あたしの胸が物理的に激しく震えた。
(この技術、動画で見た通り……いや、生で聴いたらそれ以上だ!ギターヒーローって本当にすごいんだ!)
最後、三曲目。
地を這うような激しいブレイクダウンの重低音と、胸を締め付けるほどエモーショナルでメロディックなソロの旋律が、交互に、カミソリのようなダイナミクスで展開される。
一分の狂いもないぼっちちゃんの演奏は非の打ち所がないほど完璧で、あたしは呼吸を忘れて思わず息を飲んだ。
(ライブでもこのくらい弾けるようになったら…いつかあたしたちがお荷物になっちゃう日が来るかも…足引っ張らないように頑張らないと!)
三曲全ての演奏が終わり、ぼっちちゃんはエフェクターを踏んで音を切り、カメラの録画ボタンを押して静かに止めた。
静寂が戻ったスタジオの中で、あたしはあまりの感動に耐えかねてソファーから立ち上がり、全力で手を叩いて拍手した。
「すごいよぼっちちゃん!本当に動画通りの腕前だった!!でも、生で聴いたらもっと迫力があったよ!!」
「あっそうですか?そ、そんな大したことは……うへへへへ…」
あたしの賞賛を真正面から浴びて、ぼっちちゃんはジャージの襟元へ顔を真っ赤にしながらも、嬉しさをどうしても隠しきれずに顔がだらしなくニヤケ始めた。
ぼっちちゃんは手慣れた手つきで、Fx6カメラのシールドを抜き、三脚を畳んでテキパキと機材を片付けながら言った。
「あっじゃあ…部屋に戻って、データ取り込んで編集しますね」
「うん!動画楽しみ!」
あたしはぼっちちゃんの後についてエレベーターで2階に戻った。
ぼっちちゃんの部屋に入ると、いつもの広さと豪華さにまた少し圧倒されるけど、今日はぼっちちゃんの作業を見るのが楽しみでソファに座って待った。
ぼっちちゃんはゲーミングチェアに座り、カメラから抜いたSDカードを最新型iM○cのポートへと滑らかに挿入。
一切の迷いがない手慣れた感じでデータをインポートし、プロ愛用のFina○ Cut Pro(たぶん)の編集画面を起動した。
あたしはソファから少し身を乗り出し、隣で大型ディスプレイの美しい画面を覗き込んだ。
(凄い…編集もめっちゃ速い。カット割り、色調補正、エフェクト…全部サクサクやってる。プロのオーチューバーみたい…)
演奏している時と同じように、PCの前に座ったぼっちちゃんは完全に集中して編集作業を進めていく。
音源と映像のマルチトラックを瞬時に1ミリの狂いもなく同期させ、BGMの音量バランスの調整、見やすさを考えたテロップ入れ、手元と引きの綺麗なカット割り、画面が切り替わる瞬間の滑らかなトランジション。
一般的な動画クリエイターなら何日も頭を抱えるような高度な編集タスクを、彼女はショートカットキーを狂ったような速度で叩き叩き、あっという間に3本ものハイクオリティな動画として完成させてしまった。
「よしできた…あっじゃあ、投稿しますね」
「うん!」
ぼっちちゃんは、3本の動画を一気にアップロード。
サムネイルも事前に作ってあったらしく、すぐに投稿完了。
あたしのスマホからオーチューブの通知がきて、すぐに通知ベルをタップした。
「……おっ!もう反映されてる!………すごっ!再生数、もう伸び始めてるよ!」
「あっそうですか。へへ…うへへ…!」
iM○cの巨大な画面を見つめながら、ぼっちちゃんは溢れ出る脳汁を抑えきれないといった様子で、分かりやすくニヤニヤし始めた。
画面をリロードするたびに、高評価ボタンのカウンターには恐ろしい勢いでたくさんのいいねがつき。
スクロールが追いつかないほどの速度で、世界中のタイムラインからコメント欄にもすぐに賞賛の声が殺到していく。
日本語コメントはもちろん、海外からのコメントもどんどん増えていく。
『ギターヒーロー神』
『このアレンジ最高』
『また来たぞ! 毎回ヤバい』
『サビのフレーズがマジで良すぎる!』
『個人的には30秒辺りのリフがガチで好き』
『この曲マジで大好きだから、大好きなギターヒーローがカバーしてくれて最高すぎる』
『ギターヒーローのお陰で、毎回かっこいいロックバンドに出会えるからマジ神』
『原曲の良さを殺さず、カッコよく昇華してんのマジやばい』
『新しいギターかっこいい!音がよすぎる!』
『Insane cover! The tone is perfect, EMG pickups screaming!』
『This is better than the original riff! Japanese guitarist is on another level!』
『guitar hero again with another masterpiece. The emotion in the playing is unreal』
『As a guitarist from USA, I can say this is top tier. The picking speed and accuracy is godlike』
『cover is fire! That solo at 1:45…chills!』
『From Brazil here, love your covers!』
『The vibrato and bends are so expressive. You can feel the soul in every note』
『That new guitar tone is next level. The high gain is so tight and aggressive』
『Mate, you’re a beast! Subscribed instantly.』
『The breakdown section with that high gain tone is insane』
『This woman is a monster』
『guitar hero is the best guitar cover channel on OhTube right now. No cap』
『한국에서도 팬 많아요! 다음 영상도 기대돼요!!』
『Incroyable ! Le feeling est parfait, continue comme ça !』
『Japanese legend strikes again. Respect from Germany』
すごい…投稿して数十分で三本全部、70〜80万再生超え始めてる。
これ、本当に起きてる現実なんだよね……?
それだけの富と名声を文字通り一瞬で手繰り寄せていく画面を前にして、ぼっちちゃんの口元はどんどん、限界まで締まりなく緩んでいくのだった。
「うへ…うへへへへ…!承認欲求が満たされる…!私は、世界の最先端を行く女、ワールドワイド後藤ひとり!…うへ…!うへへへへへ…!」
(ぼっちちゃんニヤニヤしてて可愛い。承認欲求が満たされて、ご満悦だね♪)
あたしはぼっちちゃんの目の前で自分のスマホから動画を開いて、高評価ボタンを押した。
そして、コメント欄に書き込んだ。
『ギターヒーローさん、今日も神でした!!!新しいギターの音、めっちゃカッコいいです!!!』
「!あっ虹夏ちゃん…!」
「えへへ〜♪」
ぼっちちゃんはあたしの方を振り向きつつ、あたしのコメントも今後に見て、さらにニヤニヤが止まらなくなった。
顔が赤くなって、でも嬉しそうに口元を手で隠してる…ぼっちちゃん可愛い♪
「あっ虹夏ちゃん。ありがとうございます…!高評価にコメントまで…嬉しいです…!」
「当たり前だよ!ぼっちちゃんのギター、本当にすごいんだから!これからも、もっともっと動画上げて、みんなを熱狂させよう!」
「あっはい…!…がんばります…!虹夏ちゃんも……一緒に……!」
ぼっちちゃんは照れくさそうに、でもこれ以上ないほど力強くコクコクと頷いた。
そしてあたしは、胸の高鳴りをそのままに、心の中で静かに熱く誓った。
(ぼっちちゃん本当にすごい…!あたしたちも負けてられない…!【結束バンド】として…もっと一緒に上を目指そう!)
ぼっちちゃんの部屋の画面に、再生数がバグのようにどんどん伸びていく。
タイムラインに流れるコメントも賞賛の嵐。
海外からも「Insane」「God tier」「More please!」と次々に。
ぼっちちゃんは、ニヤニヤしながら画面を見つめ続けた。
あたしはそんなぼっちちゃんを見て、胸が温かくなった。
(ぼっちちゃん…!これからもずっと一緒に…【結束バンド】を最高のバンドにするよ!)
地下スタジオの余韻と、新しいギターの音が、ぼっちちゃんの部屋に静かに残っていた。
未来への一歩が、また踏み出された瞬間だった。
数日後、改めて三本の動画を確認したら、どの動画も1000万再生を超えていた。
やっぱりギターヒーローは、ぼっちちゃんはすごいや!!
◆
私は
【ぽいずん♡やみ】って名前で活動してる。
フリーの音楽ライターを名乗ってるけど、最近はただのアクセス稼ぎマシーンだ。
今日もWordを開いて、原稿を進めようとした。
タイトルは「【2027年最新】今すぐ聴くべきインディーズバンド10選!」本文はすでに途中まで書いてあったけど、3行目で筆が止まった。
指がキーボードの上をさまようだけで、書きたいと思う文字が出てこない。
(……またか……)
ため息をついて、保存ボタンを押した。
Ctrl+Sの音が妙に虚しく響く。
これ以上は思考が進まないと諦めてWordを閉じて、デスクトップの壁紙──昔のライブ写真をぼんやり見つめた。
最近、琴線に触れる新しいバンドが見つからない。
…いや、見つからないんじゃなくて、見つけても「これじゃ記事にならない」って自分で見切りつけてる…
本当に心が震えたバンドは、PV再生数1000回未満の地下すぎる場所に埋もれてる。
そんなバンドを一生懸命紹介してもPVは伸びないし、いいねもコメントもほとんど来ない。
忘れた頃にたまに通知コメントがついても『誰これ?』『知らん』って反応が返ってくる。
一方で、アクセスが取れる記事は決まってる。
『○○が脱退!衝撃の理由』『××が炎上した瞬間』みたいな、クソみたいなネタ記事。
皮肉なことに、魂を売ってそういう下世話なゴシップを書くと、PVは面白いように爆伸びする。
クリック数に応じて、自分の口座に振り込まれる広告収入も少しだけ増える。
でも、毎回書くたびに胸がざわつく。
(私、なんの為に音楽ライターやってんだろ…いいバンドをもっと大勢に知って欲しくて始めたのに…)
真面目に記事を書いても誰も読んでくれないし、読まれたとしても「こんなマイナーなバンド紹介されても……」ってスルーされる。
それならバズるネタ記事を書いた方がマシだって、自分で自分を納得させてる。
嫌気がさす。
本当に嫌気がさす。
スマホを手に取って、トゥイッターを開いた。
タイムラインに流れてきたのは、文化祭ライブの女子高生ダイブ失敗動画。
【結束バンド】ってバンドのリードギターの子が、客席にダイブしようとして失敗して床に転がってるやつ。
『誰も受け止めないのが胸に来る』
『突然ダイブされたら無理だよ』
『さすがに不憫すぎるwwwww』
『草草の草』
『ダブリューダブリューダブリューダブリューダブリュー』
『可哀想だけど草ですわ』
『これはバズるwww』
『誰か受け止めてやれよww』
『陰キャが調子に乗った末路』
『ギター暦0年ですが、いいOPでした』
『ワイならどさくさに紛れておぱぱぱーいもみもみするンゴ!』
『今すぐこの子の幼馴染オリ主になって、ラッキースケベしたいドン!』
コメント欄に流れてくるのは有象無象のネット民による、ただ悪趣味に他人の恥を娯楽として消費するクソみたいな反応やセクハラコメントで埋め尽くされていた。
…キモ。死ねよこいつら…
(……これか……)
私は画面の光に顔を照らされながら、また一つため息をついた。
ロックの本質なんてどこにもない、ただのネットの笑い者…けれど、アクセス稼ぎマシーンとしての私の脳は、これがバズるエサであることを瞬時に理解してしまう。
これを適当に取材して、ネタ記事に仕立て上げればいい…『文化祭でダイブ失敗!?女子高生バンドの衝撃の事実!』みたいな、いかにも大衆がクリックしたくなるような低俗なタイトルで。
そうすればPVは確実に爆伸びするし、今月の私のアクセス稼ぎのノルマも簡単に達成できる。
私は一度閉じたはずのWordをもう一度立ち上げ、新規の白いファイルを作成すると、思考を介さずにキーボードでタイトルを打ち込んだ。
『【衝撃】文化祭ライブで女子高生がダイブ失敗!ダイブ事件の真相に迫る!』
指がキーボードの上を動き始めた。
心のどこかがちくちくと痛むけど無視した。
…これでいいんだ。
これしか、今の私は書けないんだから。
(……いつか、本当にいいバンドを紹介できる日が来るのかな……)
叶うはずのない、音楽ライターを始めた頃の純粋な理想が脳裏を過り、ため息がまた一つ静かな自室の中に漏れた。
液晶画面に並んだ『女子高生ダイブ失敗』という下俗な文字の羅列が、自分の涙でほんの少しだけぼんやりと滲んで見えた。
(……もういいや……気分転換しよ…)
再びスマホを手に取り、今度は現実逃避のためにオーチューブを開く。
ギターヒーローのチャンネルにアクセス。
通知が3つ来てて、新しい動画が3本アップされてる。
「あっ…!また上がってる…!」
私はニヤニヤが止まらなくなり、テンションが一気に上がる。
(ギターヒーローさん…相変わらずの更新頻度。…しかも、新しいギター使ってる!?これってSchecterの…ヤバい……音がどう変わったか気になる…!)
まずは一本目から再生。
イントロのハイゲインが炸裂した瞬間、脳に直撃。
EMG 81の歪みが、以前よりエッジが効いてる。
速弾きの精度がさらに上がってる気がする。
ソロパートで感情を乗せたビブラート。
私は画面に釘付けになり、ニヤニヤが止まらない。
(最高!このトーン…このピッキング…!ギターヒーローさん進化してる!)
次に二本目。
重厚なリフと高速フレーズの融合。
新しいギターの低音が、以前より太く響く。
私は、思わず拳を握った。
(このギター…!やっぱり最高だ!ギターヒーローさん……ありがとう…今日のクソ記事のイライラ……全部吹き飛んだ…!)
最後、三本目
ブレイクダウンとメロディックなソロの交互。
完璧な演奏。
私は再生が終わった瞬間、スマホを胸に当てて呟いた。
「……ギターヒーローさん……大好き……」
気分がリフレッシュされたところで、ふと関連動画に【NEW GLORY】のアレンジソロが出てきたので思わず再生。
NaokIのギターソロを、ギターヒーローさんがさらにカッコよくアレンジした動画。
脳に直撃するメロディが、完璧に再現されつつ、独自の味付けが加わってる。
(……やっぱりギターヒーローさん、【NEW GLORY】のNaokIとプレイスタイルがそっくりね。…いや、そっくりってレベルじゃない…完全に影響受けてる。でも、それが最高なのよね)
私は、【NEW GLORY】のことを考える。
ギターヒーローさんが大好きだけど、それ以上に【NEW GLORY】が大好き。
メンバー全員大好きだけど、最推しはNaokI。
6年前、17歳の時。
たまたま寄ったチカレコの試聴機で、初めて【NEW GLORY】の曲を聴いた瞬間、脳に雷が直撃したような衝撃を受けた。
これまでの人生で一度も聴いたことのない、最先端で暴力的で美しい新しいサウンド。
一度聴いたら最後、耳から離れなくなって脳が勝手にリピートを欲する中毒性抜群のメロディ。
NaokIの圧倒的なギターテクニック、ボーカルのハイトーンとスクリームの切り替え、ベースの神スラップ、ドラムのパワフルで感情的なドラミング。
全部が完璧だった。
これを聴いた瞬間、その場で棚にあった彼らのCDを全部買った。
財布はすっからかんになったけど、いい思い出だ。
私は音楽ライターとして色んなインディーズバンドや、歴史に名を残す世界的な歴代のギタリストのギターを数え切れないほど聴いてきたけれど、正直NaokIが世界で一番ギターが上手いと確信してる。
だからこそ…時折、ギターヒーローさんの動画のコメント欄で『ギターヒーローの方がNaokIより上手いんじゃね?』『原作者超え』みたいな、何も知らないキッズたちの安易な書き込みをたまに見かけるたびに、私は胸の奥で烈しい拒絶の炎を燃やし、全力でそれを否定する。
(そんなわけないでしょ!ギターヒーローさんには悪いけど、それだけは絶対ない!NaokIの本気はこんなもんじゃない!!)
確かにギターヒーローさんは、【NEW GLORY】の楽器隊にも十分ついていけるほどのポテンシャルだ。
でも、NaokIの本気には足元にも及ばない。
そう断言できるのは、私があの人の「本物の光」を、最前列で全身に浴びた経験があるからだ。
初めて【NEW GLORY】のライブに行った時のことを思い出す。
18歳の時、天文学的な倍率を奇跡的に潜り抜け、国立競技場のチケットが当たった。
相変わらず収容人数以上の動員だったのに、数秒でソールドアウト。
会場の周囲を囲むグッズ売り場も何時間待ちかもわからない長蛇の列で、全グッズが告知する間もなく速攻で売り切れていた。
まぁ…私はガチ勢としての執念で、運良く限定のTシャツとパーカーを買えたから大勝利だったけれどね。
そして奇跡が重なり、アリーナの、それもNaokIの立ち位置の真正面にあたるギター側の最前ブロックをゲットした私は、開演前から感極まって涙を流して大喜びした。
照明が落ちて、SEが鳴り、メンバーが一気に登場して、NaokIがステージに現れた。
ギターストラップをかけ、SEが鳴り終わって曲が始まり、最初の弦を弾いた瞬間。
会場が震えた。
立っているだけで世界を支配する、圧倒的なカリスマのオーラ。
その指先から生まれる暴力的なまでに美しい音が、分厚い音の壁となって、私の脳細胞を直接殴りつけてくる。
──そして、忘れもしない、ライブが最高潮を迎えたギターソロの最中のこと。
ステージの最前面まで歩み出てきたNaokIの鋭い眼光が、最前列で髪を振り乱していた私と一瞬、真っ直ぐに目が合って……
私に向けてその目線をピタリと合わせながら、狂おしいほどエッジの効いたギターソロをこれ見よがしに目の前でかき鳴らしてくれたのだ。
あの瞬間、脳が…心が…魂が震え、歓喜に満ちた。
私はあの瞬間、心の底からNaokIのことが…NaokIの全てが大好きになった。
もはや崇拝するレベルで、あの人のためなら自分の人生の全てを捧げてもいい。
そしてライターになってから、色々NaokIのことを血眼になって調べてみたけど、【NEW GLORY】自体メディア露出がないし、SNSも事務的な告知を淡々と流すだけの公式のやつか、唯一ボーカルがイソスタを個人でやってるのしかなく(ほぼ更新しないけど…)、NaokIの情報はなに一つ出てこなくて、謎に満ちていた。
(また【NEW GLORY】のライブに行きたい。でも、久しぶりのJAPAN Tour…夏のアリーナツアーも追加公演のドームも、全公演数秒でソールドアウト…全部抽選外れた。…【NEW GLORY】って、いつになったら全盛期が過ぎるんだよ。倍率世界一高すぎる……【NEW GLORY】のことは大好きだけど、チケットが全然取れないところは嫌い。日本最大級のスタジアムや国立競技場すらも数秒でソールドアウトになるし…)
一般売りはおろか、高額なファンクラブの最速先行抽選にいたるまで、画面に表示されたのは冷酷な「落選」の文字だけ。
全盛期が衰えるどころか、世界中で新たなリスナーを巻き込んでその飢餓感は年々膨れ上がっている。
7万人以上も入る日本最大級のスタジアムや、かつて自分が奇跡の最前列をもぎ取ったあの広大な国立競技場ですら、彼らにとってはキャパシティが狭すぎるのだ。
私はスマホを閉じ、誰もいない暗い部屋で深いため息をついた。
(また日本でライブがあったら絶対行く…!NaokIの本気…また見たい…!)
気分は少し落ち込んだけど、ギターヒーローさんの動画を見たおかげで、少しだけ元気が出た。
私は、もう一度Wordを開いた。
アクセス数を稼ぐためだけに、クソ記事を書くしかないけど……
(ギターヒーローさん…NaokI…ありがとう。今日も、少しだけ…がんばれる……今度取材行って…ネタ記事書いたら、またギターヒーローさんの特集記事書こう…)
いつか、本当にいいバンドを紹介できる日が来ることを信じて。
今回はギターヒーローの宅録見学に来た虹夏ちゃんと、地下スタジオの紹介。
そしてみんな大好き、ぽいずん♡やみの登場でした。
ちなみにアンプとエフェクターはまたしても、元ベガスのSxunさんの使用機材です。
そして、【NEW GLORY】のドラマーのドラムセットは、クロフェのあまたつのドラムセットをモチーフに、ツーバス仕様にした物にしました。(自分の趣味全開)
今回も見てくれた方、ありがとうございました!