今回は結束バンドのグルーミーグッドバイのレコーディング回となります。
長くなったので、分割しました。
それではどうぞ
クリスマスライブから2ヶ月が経ち、2月になった。
この日、土曜日の午前9時。
虹夏・リョウ・喜多の3人は、とある目的でひとりの家にやって来た。
セキュリティのIDチェックをクリアし、後藤家の門をくぐると、ひとりが門の前で待っていた。
「あっみなさん。おはようございます」
「おはようぼっちちゃん!土日よろしくね〜♪」
「ひとりちゃん家でお泊まり!私すごく楽しみにしてたの!」
「………」
「あっ寒いので、家に入りましょう」
虹夏・リョウ・喜多の3人は、ひとりに導かれるまま玄関へ向かう。
3人は改めて、後藤家を見渡した。
「相変わらずひとりちゃん家…大豪邸ですね」
「そうだね〜。でも【NEW GLORY】のNaokIさんの家って分かったら、こんな大豪邸なのも納得だよ。ぼっちちゃんも最初はこの家に驚いたの?」
「あっ私は物心ついた頃から住んでたので、これが普通かと…周りと違うと思ったのも、割と最近で…」
「やっぱり昔から居たら、これが普通って思うのね」
「…………」
「…さっきから黙ってるけど、どうしたのリョウ?」
「まぁ…なんとなく理由は分かりますけどね」
リョウは後藤家の門をくぐった瞬間から、目を見開いて呆然としていた。
「……これがぼっちの…NaokIさんの自宅?…想像以上すぎる…ぱっと見ただけでも、私の家の5〜6倍はデカい」
リョウは珍しく言葉を失い、ぼんやりと周りを見回していた。
「そういえばリョウ先輩…ひとりちゃん家に来るの初めてでしたね。と言っても…私も2回目ですけど」
「なんか、リョウの反応見たら懐かしくなったな〜。あたし達も初めて来た時、めちゃくちゃ驚いたし」
リョウの家も豪邸だったが、後藤家は別格。
正面の庭だけでも、テニスコートが4面は余裕で入りそうな広さで、芝生は完璧に手入れされ、噴水や石灯籠まである。
ふと周りを見渡すと、ひとりをそのまま小さくしたような女の子と柴犬が走り回っていた。
ひとりの妹──
「ん?…あっ!お姉ちゃんのお友達来たー!」
「ワン!」
ふたりは【結束バンド】3人の姿を見つけると、元気に駆け寄ってきた。
ジミヘンもワンワンと尻尾を振りながら、3人に飛びついてきた。
「え〜!ぼっちちゃん妹いたの〜!?」
「あっはい」
「可愛い〜!お名前は?」
「後藤ふたりです!犬はジミヘン」
「ワンワン!」
ふたりは虹夏たちを見て、目をキラキラさせて可愛く挨拶した。
ジミヘンは虹夏の足元に擦り寄り、尻尾を激しく振って遊んでほしそうにしている。
「ふたりちゃんって言うんだ〜よろしくね。私の事は喜多ちゃんって呼んでね」
「よろしくね喜多ちゃん!ねーねー喜多ちゃん!お姉ちゃんから聞いたけど、喜多ちゃんもギターしてるんでしょ?ギターでむによんずの歌弾いて〜!」
「じゃあ、今度来る時までに練習しておくね〜」
「やった〜絶対だよ!喜多ちゃん、家に案内してあげる〜」
「ふふっありがとう、ふたりちゃん♪」
ひとりと違ってふたりは人懐っこくて、すぐに喜多と仲良くなった。
喜多の手を握って家の中に引っ張り、ジミヘンは虹夏の足に前足をかけてじゃれつく。
「ワンワン!」
「あはは〜♪ジミヘンは人懐っこいね〜♫」
「ワン!ワンワン!」
「…よしよし」
虹夏はジミヘンを抱き上げて撫でまくり、嬉しそうに笑った。
リョウはジミヘンが自分の足元に寄ってきても、軽く撫でるだけだったが……内心では少し癒されていた。
(…5歳児と犬以下のコミュ力……)
そしてひとりは、あっさり【結束バンド】3人と打ち解けてる ふたりとジミヘンに、敗北感を感じていた。
◆
玄関のドアを開けると直樹と、ひとりの母であり…
あの──【
「おはようみんな、よく来たね」
「お父さん抱っこしてー!」
「ワン!」
「あっNaokIさん!お久しぶりです!東京ドーム公演以来ですね!」
「今日は招いて頂き、ありがとうございます!それとドームツアーお疲れ様でした!」
「お…お忙しいところ、お邪魔してすみません…フルアルバムの制作もあるのに……」
虹夏と喜多は元気よく明るく感謝を伝え、リョウは珍しく遠慮がちに言った。
直樹は近寄って来たふたりを抱き抱えながら、笑顔で首を振った。
「気にしなくていいよ。ドームツアーも終わったし…ツアーの合間にレコーディングは終えて、とっくに納品済みだから。4月のワールドツアーまでは長期休暇中なんだよ」
「お父さん、4月まで春休みなんだよ〜!」
「ワンワン!」
今は完全にオフだと言って、気にしないように伝える直樹。
そして虹夏・喜多・リョウの3人は、【NEW GLORY】の最新フルアルバムが納品済みと聞いて、目を輝かせて声を揃えた。
「11thフルアルバム、3月の頭に発売ですよね!?」
「私、すごく楽しみにしてます!CDも予約しました!」
「通常盤も初回限定盤もデジタルダウンロード盤も全部予約済みです…!日本でのライブも当たったら絶対行きます…!」
「ありがとう。楽しみにしててね」
『はい!』
直樹と挨拶を済ませた【結束バンド】の3人。
直樹との会話が終わると…今まで後ろで控えていた美智代が、柔らかな笑顔で3人に挨拶した。
「はじめまして〜ひとりの母の後藤美智代です。いつも娘がお世話になってます」
「初めまして 伊地知虹夏です。こちらこそ、いつもひとりちゃんにはお世話になってます」
「私は喜多です。急にすみません、土日お世話になります」
「山田リョウです。よろしくお願いします」
虹夏と喜多は丁寧に頭を下げて挨拶をし、リョウも無表情で小さく頭を下げた。
美智代は、3人の挨拶を優しく受け止め、ひとりにそっくりな顔立ちで微笑んだ。
「ふふっ。みんな礼儀正しくていい子ね〜♪ひとりちゃんから、いつもみんなの話聞いてたから、私も楽しみにしてたのよ〜♪ひとりちゃんったらいつも【結束バンド】の話しててね〜」
「おっお母さん!恥ずかしいよ!」
ひとりの大きな瞳、柔らかな輪郭、優しい目元……全て美智代から受け継がれている。
年齢は30代後半のはずなのに、20代前半にしか見えない若々しさ。
化粧も薄く自然な美しさで、初見ではひとりの姉にしか思えなかった。
故に虹夏たちは内心で驚いた。
(……ぼっちちゃんのお母さん…めちゃくちゃ美人だし、ものすごく若いね…)
(そうですね…肌のハリとか艶とかすごいですし、ナチュラルメイクなのに透明感半端ないですね…)
(美魔女…)
美智代はおっとりとした穏やかな性格で、3人を優しく迎え入れた。
声は柔らかく、言葉の端々に温かさがにじむ。
挨拶も済んだところで、直樹が【結束バンド】に声をかける。
「じゃあ早速、地下スタジオ行こうか。もう準備は整ってるから」
『はい!!』
(……ヤバいヤバい!!まさか初のレコーディングを、NaokIさんのプライベートスタジオでやるなんて…!!)
(私まだ入ったことないんですけど、ひとりちゃんのギターヒーローの動画見た限り…絶対すごそうですよね!?)
(まさか…NaokIさんのプライベートスタジオに入れるなんて…ここ数ヶ月、夢のようなことばかり起こってる気がする…)
この日の虹夏・喜多・リョウが、後藤家に来たとある目的とは──
レコーディングのためだった。
未確認ライオット用の新曲『グルーミーグッドバイ』のレコーディングのために、後藤家に訪問した3人。
(それにしても……【結束バンド】の初レコーディングを、自分家でやるなんて思わなかったな…)
ひとりは、父と【結束バンド】3人の後ろを着いて行きながら、ふと1週間前のことを思い出した。
◆
時は、1週間前に遡る。
久しぶりの長期休暇で、のんびりしていた直樹。
2月の頭にドームツアーも終わり、最新フルアルバムのレコーディングは、去年の年越し前に終えて一段落。
晩御飯を食べた後 ひとりと一緒にリビングのソファでくつろいでる時に、自然と【結束バンド】の未確認ライオットの話になった。
新曲の打ち込みをリョウが完成させ、歌詞もひとりが三日三晩徹夜で仕上げたところだった。
そこで直樹は、ひとりにある事を尋ねた。
「じゃあ後はレコーディングだけだな。…そういえばひとり。どこでレコーディングするんだ?」
「それがまだ考え中で…虹夏ちゃんは、スターリーのスタジオで一発撮りするか提案してたけど…」
レコーディングの場所を聞かれて、ひとりは少し考えて答えた。
すると直樹は、軽く笑って提案した。
「じゃあウチの地下スタジオ使えば?」
父の突然の提案に、ひとりは目を丸くした。
「………え?ウチの…?」
「うん。正直そこらのスタジオよりも、ウチの地下スタジオの方が環境も設備も揃ってるからね。フルアルバムのレコーディングも終わったし、好きに使っていいよ」
「え…?でも、エンジニアが…」
「どうせ暇だし…エンジニアは僕がやるよ。ひとりも知ってるだろうけど……僕 普段から、色んなアーティストに楽曲提供してるから、自分でエディット・MIX・マスタリングもしてるし大丈夫。それで…いつレコーディングする?」
とんとん拍子でレコーディングのスケジュールを詰めていく直樹。
だが──ひとりは、申し訳なさそうに首を振った。
「お父さん…そこまでしてもらっていいの…?気持ちは嬉しいけど、申し訳ないと言うか……」
遠慮気味のひとりに対して、直樹は優しく言った。
「心配しなくていいよ。お父さん…大好きなひとりの力になりたいんだ。それに【結束バンド】の…ひとりの一番のファンになるって言ったからね。レーベル入るまでは協力させてくれ」
「お父さん……」
ひとりは胸が熱くなり、目を潤ませながら頷いた。
「ありがとうお父さん…!最高の曲にしてみせるよ…!」
「ああ、楽しみにしてるよ」
家族の応援を受け、ひとりは決意を新たにした。
未確認ライオットに向けての新曲『グルーミーグッドバイ』。
お父さんのスタジオでみんなと一緒に、最高の形に仕上げると──
そして──今日。
虹夏・リョウ・喜多が後藤家に集まり、『グルーミーグッドバイ』のレコーディングが始まろうとしていた。
◆
直樹とひとり、そして【結束バンド】の3人は、エレベーターに乗って地下スタジオに向かった。
エレベーターが地下に着き、スタジオの扉を開けた瞬間、喜多とリョウの表情が一変した。
NaokIのプライベートスタジオは、地下に広がる広大な空間だった。
全体構成はモダン・ラグジュアリー仕様で、ライブ・ルーム(36〜40畳)コントロールルーム(12〜16畳)ISOブース(6〜8畳)ロビー・休憩ブース(8〜10畳)の4つのゾーンが、透明防音ガラスで繋がっている。
どこからでも全体が見渡せる開放的な設計で、まるで美術館のような美しさとプロスタジオの機能性を両立していた。
壁はマットグレーとマットホワイトを基調に、アクセントとしてブラックのラインが直線的に走り、色数を極力抑えたシンプルで無駄のないデザイン。
照明は二段階LEDで、作業用の白色LED(5000〜6000K)はシャープでプロフェッショナルな印象を与え、リラックス用の暖色LED(2700〜3000K)はギター展示を美術館のように照らし、ソファ周りを高級ホテルのような雰囲気に変える。
まず、ライブ・ルームの扉を開けると、そこはまるでプロのレコーディングスタジオと高級ギャラリーが融合したような空間だった。
天井高4mの開放感ある部屋は36〜40畳を超え、壁一面に吸音・拡散パネルが美しく配置され、音の反響を完璧にコントロールしている。
床は高級フローリングで、裸足で歩いても気持ちよく、部分的に敷かれた厚手のラグが柔らかな足触りを与える。
部屋の奥には以前 虹夏が目を輝かせた、SJCツーバスドラムが常設され、MEINLシリーズのシンバルが照明を浴びて鈍く輝いている。
ドラムセットの周りには、ルームマイクとしてNeumann U67やAKG C12 VRが天井から吊り下げられ、ドラムの自然な響きを捉える準備が整っていた。
特に目を引くのは、壁際の“ギャラリー展示”スペース。
黒とダークグレーのスラットウォールにスポットライトが当てられ、数十本以上のハイエンドギターが美術品のように並んでいる。
Gibson Les Paul Standard 50s(バーストフィニッシュのヴィンテージ再現モデル)、Fender Stratocaster American Professional II(ローズウッド指板のクラシック仕様)、PRS Custom 24(10トップの美しい杢目)、ESP Horizon FR(ブラックミラー仕上げのメタル仕様)、Schecter Hellraiser Hybrid C-1(エボニー指板のヘヴィサウンドモデル)、Ibanez RGシリーズ(プレミアムラインの7弦・8弦モデル)など、ジャンルを超えた名器が整然と並ぶ。
さらにその奥には、NaokIのプライベートストックのカスタムモデルが7〜8本以上。
どれも一点物で、木材の杢目、ピックアップ配置、ペグの仕上げまでが職人技の結晶のように美しい。
ベースも同様に壁際に展示され、Fodera Emperor(5弦・6弦のアクティブモデル)、Music Man Stingray(クラシックなパッシブサウンド)、Ibanez SRシリーズ(プレミアム5弦・6弦)、Rickenbacker 4003(クラシックなサウンドの象徴)、Warwick Corvette(ブブリンガートップの重厚な低音)など、ハイエンドがずらり。
各ギター・ベースのキャビネットゾーンは左右に分かれ、Marshall 1960AVキャビネットにJCM800ヘッド、Mesa Boogie Dual Rectifier、Fender Twin Reverb、Ampeg SVT-CL + 810Eキャビネットなど、ジャンル問わず対応可能なアンプが並ぶ。
キャビネットの中には、ギターやベースのメンテナンス道具、予備の弦、エフェクターのストックが大量に整理されており、いつでも即座にセッティングできる状態だった。
次にコントロールルームは、ライブ・ルームと透明防音ガラスで完全に隔てられながらも、視界が抜ける開放的な設計になっていた。
広さは12〜16畳ほどだが、天井高4m以上と壁の吸音・拡散処理のおかげで、実際の空間以上に広く感じる。
中央に鎮座するのは、SSL 4000 E/Gシリーズをベースにした最新アナログミキシングコンソール(48チャンネル以上)。
黒とシルバーの重厚な筐体に、無数のフェーダーとノブが整然と並び、背面にはパッチベイがびっしり。
コンソールの前には大型デスクが広がり、M○c Studio Ultra(M2 Ultraチップ、192GB RAM、8TB SSD)が2台、Pro To○ls UltimateとL○gic Proが常駐。
UAD Apollo x16とUAD Satelliteがラックに収まり、プラグインはNeve、API、Manley、Waves、FabFilter、Soundtoysなど、プロ御用達のものがほぼすべてインストール済み。
モニタースピーカーは最高級のラインナップで、メインにATC SCM50ASL Pro(アクティブ3ウェイ)、サブウーファーにはATC SCM0.1/15 Pro、ニアフィールドにBarefoot MicroMain45、リアにPMC twotwo.6、サイドにGenelec 8341A SAM™(The Onesシリーズ)を配置。
Dolby Atmos対応の完全イマーシブ環境で、7.1.4ch以上のサラウンド再生が可能。
スピーカーケーブルはすべてAudioQuestやNordostのハイエンドモデルで、信号経路の純度を極限まで高めている。
アウトボードはラックに整然と並び、定番中の定番が勢揃い。
Universal Audio 1176LN Rev E(リミッター)、Teletronix LA-2A(コンプレッサー)、SSL G-Series Bus Compressor、Manley Vari-Mu(チューブコンプ)、Empirical Labs Distressor、dbx 160A、API 2500など、どれも実機でプロの現場で酷使されてきたものばかり。
コンバーターはPrism Sound ADA-8XRとLynx Aurora(n)がメインで、Apogee Symphony I/Oもサブとして常備。
プリはNeve 1073SPX、API 512c、Grace Design m905、Manley Voxboxが各チャンネルに割り当て可能。
デスクの背面には、音響拡散パネルと吸音パネルが交互に配置され、反射音を徹底的にコントロール。
後方には低背の高級ソファ(Poltrona Frauの革張り)が置かれ、録音を聴きながらリラックスしてミックスチェックできる。
透明仕切り越しにライブ・ルーム全体が見えるため、エンジニアは演奏者の表情や動きをリアルタイムで確認可能。
照明は二段階LEDで、作業時は白色(5500K)でシャープに、リラックス時は暖色(2700K)で高級ホテルのような柔らかな雰囲気に切り替わる。
そして今回のメインのISOブース(アイソレーション・ブース)は、ライブ・ルームとコントロールルームの間に独立して配置された、完全に遮音された小さな部屋だった。
広さは6〜8畳程度で、天井高はライブ・ルームと同じ4mを維持しつつ、壁・床・天井の6面すべてに多層の防音・吸音材が厚く重ねられ、外部からの音はほぼゼロ、内部の音も漏れない完璧なデッド空間に仕上げられている。
壁面はマットブラックとダークグレーの吸音パネルで覆われ、反射を極限まで抑えつつ、過度なデッドさにならないよう微妙に拡散処理が施されている。
床はライブ・ルーム同様の高級フローリングだが、上に厚手の防振マットと吸音ラグが敷かれ、足音や振動が完全に吸収される設計。
天井にはNeumann KU 100(ダミーヘッドマイク)やSanken CO-100Kなどのバイノーラル/高解像度ルームマイクが吊り下げ可能で、ボーカルやアコースティック楽器の自然な響きを捉えられるようになっている。
ブース内部の主な設備は以下の通り。
•マイクスタンドとマイク群
・ボーカル用メイン:Neumann U87 Ai(ブラック)、AKG C414 XLII(ブラック)、Telefunken ELA M 251E(復刻版)、Zony C-800G
・バックアップ/バリエーション:Shure SM7B、Rode NT1-A、Audio-Technica AT4040、Earthworks SR314
・ギターキャビネット用:Shure SM57 × 2、Sennheiser MD421-II、Royers R-121、Heil PR 40
・管楽器/特殊用途:AKG C451 B、DPA 4006A、Schoeps CMC 6 + MK 41
・すべてのマイクは専用ショックマウントとポップフィルター付きで、即座にセッティング可能。
・マイクケーブルはMogami Gold Studio、Canare Star Quadなど最高級品を使用。
•楽器入力
・ギター/ベース用DI:Radial J48、Countryman Type 85、Avalon U5、Demeter Direct Box
・リバーブ/エフェクト送り用:Lexicon PCM96、Eventide H9000、TC Electronic System 6000
・インラインエフェクト:MXR Phase 90、Boss CE-2W、Electro-Harmonix Small Stoneなど、定番ペダルがラックに収納。
•椅子とデスク
・1人掛けの包み込むタイプの高級チェア(Herman Miller AeronまたはHumanscale Freedom Chairのレザー仕様)。
・背もたれは体にフィットする形状で、長時間のボーカル録音でも疲れにくい。
・小さなデスク(マットブラック天板)には、水筒置きとノートPCスタンドが常備。
・デスク下にはフットレストと小型ヒーターが隠されており、冬場でも快適。
•モニタリング環境
・インイヤーモニター(IEM)システム:Shure PSM 1000 + SE846(カスタムIEM)複数セットに加え、Ultimate EarsのUE Proシリーズのカスタムインイヤーモニターも併用。
・ヘッドフォン:Beyerdynamic DT 1990 Pro、Audeze LCD-X、Sennheiser HD 800 S。
・ヘッドフォンアンプ:Grace Design m905、SPL Phonitor X。
•照明と空調
・二段階LED照明:作業時は白色(5500K)、リラックス時は暖色(2700K)に切り替え可能。
・空調は個別制御で、温度・湿度を24時間365日最適に維持。
・換気システムは無音設計で、録音中に空気の流れによるノイズが発生しない。
•その他の細部
・透明防音ガラス越しにコントロールルームが見え、エンジニア(直樹)と視線やジェスチャーで即時コミュニケーション可能。
・ブース内には小型の鏡が設置され、ボーカリストが表情を確認できる。
・壁に小さな棚があり、喉飴、水、ティッシュ、リップクリームなどが常備。
・床下に防振マットが二重構造で、足音や体重移動の振動を完全に遮断。
最後に休憩ブース(ロビー・休憩エリア)は、コントロールルームの後方に隣接する8〜10畳ほどの空間で、まるで高級ホテルのラウンジをそのままスタジオ内に持ち込んだような設計だった。
透明防音ガラス越しにライブ・ルーム全体が見渡せる“ショールーム空間”となっており、録音中でもエンジニアやアーティストがリアルタイムで演奏を視認しながら休憩できる。
壁はマットホワイトを基調に、アクセントとしてブラックのラインが走り、色数を抑えたモダンで高級感のある内装。
床はコントロールルーム同様のカーペット敷きで、足音が完全に吸収され、静寂が保たれている。
中央には、Poltrona FrauやMinottiクラスの高級レザーソファがL字型に配置され、3人掛け+1人掛けの組み合わせで合計6〜7人がゆったり座れる。
ソファの座面は深く、背もたれは体を優しく包み込むようなカーブを描き、革の質感は滑らかで触れるだけでリラックスできる。
クッションは高密度ウレタンと羽毛の混合で、長時間座っていても疲れ知らず。
ソファの前にはマットブラックの大理石ローテーブルが二つ置かれ、ガラス天板が照明を反射して高級感を増している。
•飲料・軽食コーナー
・業務用コーヒーメーカーとエスプレッソマシン。
・冷蔵庫にはミネラルウォーター、スポーツドリンク、フルーツジュース、軽食(ナッツ、プロテインバー、チョコレート)が常備。
・ガラス製の小型冷凍庫にアイスクリームやジェラートも常備。
•リラックスアイテム
・Bose SoundLink FlexやBang & Olufsen Beosound A1(Bluetoothスピーカー)でBGM再生可能。
・iP○d Proが2台置かれ、スポチファイやAp○le Musicが常時ログイン済み。
・アロマディフューザー(DiptyqueやJo Maloneのフレグランス)が稼働中で、部屋全体に優しい香りが広がる。
・ブランケット(カシミヤ素材)とクッションが複数用意され、仮眠も快適に取れる。
•その他の細部
・室内用スリッパと靴置き場(革製の高級スリッパがサイズ別に揃っている)。
・小型冷蔵庫の横にティッシュ、ウェットティッシュ、リップクリーム、のど飴が常備。
・照明は二段階LEDで、作業時は白色(5500K)、リラックス時は暖色(2700K)に切り替え可能。
・ガラス越しにレコーディング・ルームが見えるため、演奏者の表情や動きをリアルタイムで確認でき、休憩中でもセッションの流れを把握しやすい。
NaokIのプライベートスタジオを紹介したあと、喜多とリョウの反応が一瞬で極端に分かれた。
喜多は、目を大きく見開いて立ち止まり、思わず両手を頰に当てて声を上げた。
「えええええ!? 何これ何これ!?スタジオ広すぎません!?家の中にこんな本格的なスタジオがあるなんて…!海外の有名なレコーディングスタジオレベル…ですよね!?よく分からないけど、なんかすごい!!というか…ひとりちゃん、いつもここで練習とか動画撮影してたの!!?」
「あっはい。休日は大体、ここに入り浸ってます…」
「ひとりちゃんいいな~!うちはマンションだし、お母さんもうるさいから…あまり遅くまで練習もできないのよね」
「あっそうなんですね…」
喜多は、細かい機材の名前やスペックはほとんど理解できていないが──
「ここでプロの人がレコーディングしてる」
「世界的に有名なスタジオみたい」
という雰囲気だけは肌で感じ取っていた。
だからこそ、興奮と驚きが混じった純粋なリアクションで、キラキラした目で部屋中を見回し続けている。
一方、リョウは──完全に別人になった。
普段の無口でクールなリョウが消え、ハイエンドベースの山を目にした瞬間、目が血走り、早口で饒舌モードに突入した。
ベースケースをソファに置いて、展示壁に駆け寄り、指を震わせながら次々と説明を始めた。
『これ、Fodera Emperor Standard…!カーボンファイバー強化ネックにEMGピックアップ!こっちはMusic Man Stingray Special 5HH…!HHピックアップ構成で、低音の太さが異常…!Ibanez SRシリーズのプレミアムも!?SR5000E…African MahoganyボディにPanga Panga指板…!Rickenbacker 4003…!あの独特の鈴鳴りトーン…Warwick Corvette $$……ブビンガボディにWenge指板……待って…これ全部…現行のハイエンドどころか、限定モデルやカスタムショップ品まで混ざってる!!?いや待って、このラインアップ…プロミュージシャンが一生かけて集めるレベルだよ?私今、夢の中にいるの?』
「うわ〜…一言一句全く同じことを言ってるよ……」
「?…あっあの虹夏ちゃん。なんの話ですか?」
「何でもないよ〜ぼっちちゃん。こっちの話」
以前 虹夏の想像上に現れた、イマジナリーリョウ*1と全く同じセリフを吐いて、早口でまくしたてるように続ける。
ベース一本一本に触れながらスペックを呟き、時には弦を軽く弾いて音を確認する。
「これ…Darkglass Infinityと組み合わせたら絶対ヤバい…!」と興奮のあまり息を荒げている。
いつもは無表情で一言二言しか話さないリョウが、ここでは完全にベースオタクモード全開。
喜多が「リョウ先輩……すごい饒舌……!」と驚くほどだった。
直樹は興奮気味な様子のリョウを見て、くすっと笑った。
「リョウちゃん。弦も予備たくさんあるから、順番回ってくるまでは好きに弾いていいよ」
「!!?…えっ!?いいんですか!!?」
「お好きにどうぞ。楽器は弾いてナンボだからね」
リョウは直樹の方を振り返り、珍しく目を輝かせて。
「ありがとうございます…!!!神様仏様NaokI様…!!!!!」
リョウがベースの展示コーナーで興奮を抑えきれず、次々と機材を触り始めている頃、虹夏と喜多は改めて直樹の前に立った。
二人は深く頭を下げ、虹夏が代表して言葉を紡いだ。
「NaokIさん。本当にありがとうございます!こんなすごいスタジオを貸してくれて、しかもエンジニアまでやってくれるなんて……でも、私たち…まだ何も返せてなくて…申し訳ないです……」
「そうです…!ひとりちゃんの為だけじゃなくて、私たち全員のために…ここまでして頂いて…!……まだ、全然お返しできるものがなくて…」
NaokIは、コンソールの椅子に座ったまま、優しく首を振った。
声は穏やかで、しかし芯のある響きがあった。
「みんなが申し訳なく思う必要なんてないよ。もちろん、大好きな娘の力になりたいってのも本音だ。でも……それだけじゃない」
「え?」
「【結束バンド】のみんなを見てて…ひたむきに努力してる姿に、僕も応援したくなったんだ。プロのレコーディングの雰囲気や空気感…そういうのを早めに味わって、経験積ませてやりたいと思った。それに【
「NaokIさん………」
虹夏と喜多は、胸に熱いものが込み上げてきて、思わず目を潤ませた。
「NaokIさん…ありがとうございます!私たち…今回の事、絶対無駄にしません!必ず恩返しします!」
「私も全力で歌います!NaokIさんの期待、裏切りません!」
虹夏は拳を握りしめ、声を震わせながら言った。
喜多も涙目で強く頷き、感謝を伝える。
その二人の決意にNaokIはふっと笑って、静かに言った。
「なら…まずは未確認ライオットで優勝して欲しい。それが…僕への恩返しになるかな?」
『はい!』
その言葉に、【結束バンド】の4人は全員、改めて決意を固めた。
新曲『グルーミーグッドバイ』
ここでみんなと一緒に、最高の形に仕上げる。
NaokIの期待に応えるために。
そして──【NEW GLORY】にも負けないバンドになるために。
ここまで見てくれた方、ありがとうございました!
今回は6話の後藤家訪問の時に出番のなかった、ふたりちゃん ジミヘン 美智代ママが結束バンドのみんなと対面する話と、改めて地下スタジオの設備や機材、部屋回りの紹介をする回でした。
↓に地下スタジオのイメージ図を書いたので、よかったら見てみてください。
┌──────────────────────────────────────────────┐
│ ライブ・ルーム(36〜40畳) │
│ ┌───────────────┐ ┌──────────────────────┐ │
│ │ ドラム常設ゾーン │ │ ギター/ベース展示ウォール │ │
│ └───────────────┘ └──────────────────────┘ │
│ │
│ アンプゾーン(左右) 低めのラウンジソファ │
│ │
│ ※天井4m、透明ガラス越しに全体が見渡せる │
└──────────────────────────────────────────────┘
▲ 透明防音ガラス(視界が抜ける)
┌──────────────────────┐ ┌────────────────────┐
│ コントロールルーム(12〜16畳) │──│ ISOブース(6〜8畳) │
│ ・大型モニター(ATC/PMC/Barefoot) │ │ ・ボーカル/キャビ録り用 │
│ ・Neve/API/Manley/Graceプリ │ │ ・1人掛け高級チェア │
│ ・1176/LA-2A/SSLバスコンプ │ │ ・デッド寄り音響 │
│ ・低背ソファ(後方) │ └────────────────────┘
│ ・透明ガラス越しにライブ・ルーム全体が見える │
└──────────────────────┘
┌──────────────────────────────────────────────┐
│ ロビー・休憩ブース(8〜10畳)+靴置き場 │
│ ・ホテルラウンジ級ソファ(L字 or 3人掛け+1人掛け) │
│ ・コーヒー/冷蔵庫/小テーブル │
│ ・室内用シューズラック │
│ ・透明ガラス越しにライブ・ルームが見える │
└──────────────────────────────────────────────┘
↑
スタジオは、全体的にはこんなイメージ図です。自分の理想のスタジオをイメージをこれでもかと詰め込みました。
次回から、本格的なレコーディングに入ります。