娘のバンドと対バンしたい   作:肉野郎

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お気に入り登録ありがとうございます!
今回はお泊り回です。後藤家の内装がグレードアップしまくってます。

それではどうぞ


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 レコーディングが終了した瞬間、スタジオに静寂が訪れた。

 

 『グルーミーグッドバイ』の全パートが完璧に録り終わり、NaokIが「全トラックOK」と告げた途端、【結束バンド】の4人は急に肩の力が抜けた。

 興奮と集中が一気に解け、急に疲労が押し寄せてきた。

 時間を見ると、すでに17時近く。

 昼ごはんも食べずに没頭していたせいで、急にお腹が鳴り始めた。

 

 

 「ん〜疲れた〜!」

 

 「もうこんな時間だったんですね。来た時は朝だったのに」

 

 「朝と昼ほとんど食べてないから、お腹すいた…」

 

 「まぁ、軽食だけじゃお腹空くからね〜」

 

 「あっはい」

 

 

 その時、エレベーターの「チン」という音が響き、美智代がエプロン姿のまま降りてきた。

 先ほど直樹から、ロインで連絡をもらったらしい。

 美智代は4人の疲れた顔を見て、優しく微笑んだ。

 

 

 「みんなお疲れ様〜、レコーディング終わったみたいね。ちょっと早めだけど、晩御飯出来てるわよ〜」

 

 

 その言葉に【結束バンド】の3人は目を輝かせ喜ぶ。

 

 

 「ホントですか!?ありがとうございます!」

 

 「ありがとうございます!もうお腹ペコペコです!」

 

 「ぼっちの家の晩御飯楽しみ…絶対高級食材バンバン使ってるハズ…」

 

 「とりあえず荷物置いてから食べましょう?3階のゲストルームに荷物置いておいで」

 

 『はい!』

 

 

 ひとりはみんなの反応を見て胸が温かくなり、直樹もコンソールの椅子から立ち上がり、普段の優しい父親モードに戻っていた。

 全員晩御飯にワクワクしながら、エレベーターに乗り込み、地下スタジオを後にした。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ひとりと直樹は先にエレベーターから降り、一旦2階の自室に戻る。

 虹夏・リョウ・喜多の3人は、美智代に3階の空いている部屋に案内された。

 

 

 「ここが虹夏ちゃんの部屋ね。好きに使っていいから」

 

 「わ〜!すご~い!本当にこの部屋使っていいんですか!?」

 

 「ふふっ♪もちろんよ~♪」

 

 

 部屋に入った瞬間、虹夏は思わず声を上げた。

 

 そこは高級ホテルのスイートルームクラスの、贅沢で洗練された空間だった。

 

 広さは20畳以上はあり、天井は高く、間接照明が柔らかく部屋全体を照らしている。

 

 床はキングサイズのベッドが中央に鎮座し、シモン○やサー○を超えるカスタムオーダーのマットレスで、シーツも最高級品。

 枕は羽毛と低反発の組み合わせで、首にぴったりフィットする形状。

 ベッドサイドには高級ブランドのナイトスタンドと、調光可能なブラケットライト。

 

 窓は大きな掃き出しで夜景が一望でき、カーテンは電動で開閉可能。

 

 床の反対側にはL字型のソファセットが置かれ、座面は深く、クッションは高密度ウレタンと羽毛の混合で体を優しく包み込む。

 ローテーブルは大理石天板で、ガラス製の花瓶に生花が活けられている。

 

 壁には控えめなアート作品が飾られ、部屋全体の色調はベージュ・グレー・ホワイトを基調に、アクセントとしてブラックのラインが走るモダンで高級感のあるデザイン。

 

 クローゼットはウォークインで、ハンガーと棚が充実し、セーフティボックスも完備。

 

 空調は個別制御で、静音設計のアロマディフューザーが優しい香りを漂わせ、部屋全体が「疲れを癒す」空間に仕上げられていた。

 

 虹夏は荷物を置いたあとベッドに飛び込んで、顔を埋めキャッキャと声を上げた。

 

 

 「これ高級ホテルのスイートくらい豪華だよ!ベッド沈むし寝心地やばい!」

 

 

 喜多とリョウの部屋も同じ仕様で豪華。

 

 喜多もベッドに座って目を輝かせた。

 リョウはベッドに体を預け、静かに沈み込む感触を確かめた。無表情のまま、でも目が少し細くなる。

 

 

 「きゃ〜すごいわ〜!こんないい部屋に泊まれるなんて!アロマの香りも落ち着く〜」

 

 「あ〜…寝心地最高すぎる…このまま寝ちゃいたい…」

 

 

 美智代は3人の反応を見て、優しく微笑んだ。

 

 

 「気に入ってもらえてよかったわ。早速、下で晩御飯にしましょうね〜」

 

 

 3人は至れり尽くせりの環境に満足しながら、後藤家に来て良かったと改めて思った。

 虹夏はベッドに寝転がって天井を見上げ、喜多は窓から景色を眺め、リョウはソファに深く腰を下ろして目を閉じた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 『うわ…広っ!!』

 

 「あっみんな…」

 

 「おぉっみんな降りて来たか」

 

 

 美智代以外の後藤家は既にリビングに居て、それぞれくつろいでいた。

 

 3人はリビングに入ると、そこは予想を遥かに超えた広大な空間だった。

 

 ひとりの部屋の3倍は軽くある広さで、まるで高級ホテルのラウンジのような雰囲気。

 天井は高く、間接照明が柔らかく空間を照らし、チリや埃一つなくピカピカに磨き上げられた床が広がっている。

 

 ちなみに後藤家の床材は全て、犬のジミヘンの足腰に一切負担が掛からないよう配慮されており、滑りにくくクッション性のある高級フローリング(ペット対応の特殊コーティング仕上げ)に、部分的に厚手の防音・防汚ラグが敷かれている。

 ジミヘンが走り回っても爪が傷つきにくく、滑って転ぶ心配もない設計で、毛が絡みにくく掃除もしやすい素材を選んでいた。

 

 ラグジュアリーな空気が漂い、足を踏み入れた瞬間、虹夏・リョウ・喜多の3人は思わず息を飲んだ。

 

 

 「ぼっちちゃんの部屋もすごかったけど、ここは倍あるよ…!」

 

 「すごい…!テレビもひとりちゃんの部屋より大きい…!」

 

 「明らかに200インチは超えてる……オーディオも最高品質だし。ウチのリビングの倍はある…」

 

 

 家具はどれも最高級のものばかり。

 

 テレビは200インチ超で、テレビというより “家庭用シネマスクリーン” に近い。

 最新の8K対応レーザーTV or マイクロLEDパネルで、明るさは映画館のスクリーンを超えるレベル、HDR性能は市販最高峰。

 

 オーディオは 世界最高級のスタジオグレード。

 世界トップブランドのフラッグシップモデルで、天井にも壁にも、視界に入らない位置に巧妙に仕込まれたスピーカーが並び、Dolby Atmosのフル構成で1本100〜300万円クラスのスピーカーが複数配置。

 

 テレビの前にはL字型の大きなソファが二つ置かれ、どちらも座り心地が最高だと一目でわかる。

 座面は深く、背もたれは体を優しく包み込むようなカーブを描いている。

 

 ローテーブルも二つあり、どちらもガラスと大理石を組み合わせた重厚で洗練されたデザイン。

 テーブル上には、美智代が選んだインテリアが完璧に配置され、部屋全体の調和が取れている。

 花瓶には生花が活けられ、照明の光を受けて優しく輝いていた。

 

 美智代はみんなの反応を見て、優しく微笑んだ。

 

 

 「みんな〜早速晩ごはんテーブルに並べるから、座って待っててね〜」

 

 「あっ!私手伝います!」

 

 「私もやります!」

 

 「ありがとね〜虹夏ちゃん 喜多ちゃん。でも大丈夫だから、二人ともゆっくりしてて〜」

 

 

 美智代はキッチンに戻り、料理を運び始めた。

 キッチンは広々としており、業務用の大型冷蔵庫が並び、周りはピカピカに磨き上げられ、清潔そのもの。

 

 テーブルには色とりどりのおかずが並ぶ。

 ひとりの大好物の唐揚げはサクサクジューシーで、ハンバーグは肉汁たっぷり。

 鮭の塩焼き、野菜たっぷりの味噌汁、炊き立てご飯、煮物、ポテトサラダ、……どれも家庭的で温かみのある家庭料理。

 香りがリビングに広がり、3人は思わずごくりと唾を飲んだ。

 

 

 「わぁ〜美味しそう〜!」

 

 「ひとりちゃんのお母さん、ありがとうございます!こんなご馳走用意してくれて!」

 

 「いい匂い…!早く食べたい…!」

 

 「あっ唐揚げにハンバーグ…!」

 

 「お母さんのご飯すごく美味しいんだよ〜」

 

 「ワンワン!」

 

 「母さんの作ったご飯は世界一美味いから、みんな期待していいよ」

 

 「ふふ、喜んでもらえて何よりだわ〜♪それじゃあ食べましょうか」

 

 

 『いただきま〜す!!』

 

 

 食事が始まると、みんな自然と会話が弾んだ。

 美智代は優しく微笑みながらおかわりを勧め、直樹は娘と【結束バンド】の様子を温かく見守る。

 ふたりとジミヘンは、テーブルの下でみんなの足元をうろうろして、時々膝に飛び乗っては甘えてくる。

 ひとりはみんなが楽しそうに食べているのを見て、胸が温かくなった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 食事が終わってしばらくリビングでくつろぎ 3階の部屋に戻ってでゆっくりしていた時、ふたりが3階の廊下に飛び出してきて、風呂に誘った。

 虹夏と喜多は快く同意して準備を始める。

 リョウは面倒くさがってたが全員風呂に向かった為、慌てて準備をして着いていく。

 その後ひとりにも声をかけ、少し照れくさそうに合流した。

 5人で1階に降りて、奥にある家族用の大浴場へ向かった。

 

 

 ドアを開けると、まず脱衣所が広がった。

 

 広さは20畳は余裕であり、壁は白とベージュのタイルで統一され清潔感が溢れている。

 

 洗面台は5〜6人並んで使える大型のダブルボウルで、鏡は全面LED照明付きで顔がくっきり映り、鏡は全面でLED照明が埋め込まれている。

 

 洗面台の上には、世界的に有名なスキンケアブランドがずらりと並び(SK-I○、La ○er、Shis○ido、Di○r、Chane○、Aes○p、Tatc○a、Drunk Eleph○ntなど)、化粧水・乳液・クリーム・美容液・シートマスク・ボディローションまで揃っている。

 

 棚にはタオルが山積みで、ふわふわのバスタオルとフェイスタオルが色別に整理され、バスローブもサイズ別に用意。

 

 空調は個別制御で、ほのかにアロマの香りが漂い、まるで高級スパの脱衣所そのものだった。

 

 喜多は洗面台の前に立ち、目を輝かせた。

 

 

 「きゃ〜!!S○-IIに○a Mer…Tatch○まで揃ってる!!ひとりちゃん、これ本当に自由に使っていいの!?」

 

 「あっはい。まだ予備も沢山ありますし、お母さんが毎回補充してくれますので」

 

 「やった〜!ありがとうひとりちゃん!!この化粧水ずっと使ってみたかったのよね〜!!」

 

 「……郁代、今日一張り切ってる気がする」

 

 「そうだね〜。喜多ちゃんスキンケアにすごい力入れてるし、こんだけスキンケア充実してたら興奮するか……あと、PAさんの目が輝きそう…」

 

 

 脱衣所を通り抜け風呂場に入った瞬間、虹夏・喜多・リョウの3人は再び息を飲んだ。

 

 広さは50畳近くもあり、まるで高級温泉旅館の大浴場をそのまま家に持ち込んだような空間だった。

 

 直樹が妻や娘たちのために、そして作曲で長時間座り作業が多い自分自身のためにも、特に力を入れた場所だった。

 

 天井は高く、星空のようなLED照明が散りばめられ、壁は大理石調のタイルと天然石のアクセントで統一され、照明は暖色と白色の切り替え可能。

 

 メインの湯船は温泉施設並みの大きさで、15人以上で入っても全員が足を伸ばしてゆったり浸かれる。

 ジャグジー機能付きのメイン湯船、炭酸泉のサブ湯船、ぬるめの薬草湯(ローズマリー・ラベンダー・ユーカリ・カモミールなどのブレンドを日替わりで)、冷水風呂、露天風呂風の外気浴スペース(ガラス窓から庭の景色が見える半屋外設計)まで揃っている。

 

 湯船の周りには、高級リクライニングチェア(防水仕様)が複数置かれ、湯に浸かりながらも体を休められる。

 

 シャワーブースは個室型で8つあり、それぞれにレインシャワー、ハンドシャワー、ボディジェット、ミストサウナ機能が完備。

 

 アメニティはDiptyqu○、Jo Malon○、L’Occit○ne、Aes○p、Cree○などの高級ラインが揃い、シャンプー・コンディショナー・ボディソープ・バスソルト・スクラブまで充実。

 

 さらに、ジミヘン用の洗い場も完備されており、専用の低めのシャワーヘッドとペット用シャンプー、滑り止めマット、ドライヤーが置かれ、ジミヘンが汚れた時はいつでも洗えるようになっている。

 

 

 「うわヤバッ!こんなのもう高級スパじゃん!」

 

 「これその辺の温泉施設よりも広いんじゃないですか!?」

 

 「………今日1日で何回驚いただろう?ぼっちの家ヤバすぎる…」

 

 

 後藤家の大浴場に驚きつつも気を取り直して、みんなで体を洗い、湯船にゆっくり浸かってリラックスしていた。

 

 

 「ふたりちゃん、かゆいところはないかな〜♫」

 

 「大丈夫だよ喜多ちゃん〜気持ちいいよ〜」

 

 「ふたりちゃんの髪サラサラで綺麗ね〜♪それにこのシャンプー香り最高だわ〜♪ひとりちゃんのお家、本当にすごい!」

 

 

 喜多はふたりの髪を優しく洗ってあげていて、ふたりは目を細めて気持ちよさそうにしている。

 喜多は自分の髪にも高級シャンプー(Dipt○queのローズ系)を泡立てて、ご満悦の笑みを浮かべた。

 

 

 「あ〜…ジャグジー気持ちいい〜〜…日頃の疲れが一気に吹き飛ぶ〜〜〜……」

 

 

 虹夏はジャグジーの噴射に体を預け、目を閉じて体全体を伸ばしていた。

 

 

 「ぬるめで丁度いい……ずっとここにいたい……」

 

 

 リョウはぬるめの薬草湯に深く浸かり、静かに目を閉じてリラックスしていた。

 湯の香りが体に染み込み、普段の無表情が少しだけ緩んでいる。

 そのあと5人は一緒の湯船に浸かりのんびりしていた。

 

 ふと、【結束バンド】3人の視線がひとりに向かった。

 

 

 ひとりの体は、グラビアアイドル顔負けの完璧なプロポーションだった。

 

 

 特に胸は、栄養たっぷりの食事で育った結果、驚くほど豊満でハリがある。

 

 バストサイズはIカップに迫るほどのボリューム。

 

 柔らかく自然な揺れを持ちながらも、年齢相応の張りと弾力が保たれていた。

 

 重力に負けず上向きに張りつめ、柔らかく弾力のある肉がたっぷり詰まり、湯船に浸かると水面に浮かぶように形が整い、深い谷間がくっきりと刻まれる。

 

 肌は湯気でしっとり濡れ、水滴が鎖骨から胸の膨らみを伝って谷間に溜まり、ゆっくりと滴り落ちる様子は、息を呑むほど生々しくエロティック。

 

 湯に濡れた肌は透き通るように白く、胸の先端がわずかに硬く尖り、湯気の熱でほんのり赤みを帯びている。

 

 細い肩から流れる背中のラインも綺麗で、鎖骨のくぼみから胸の膨らみへの移行が自然で、視覚的に「完璧」としか言いようがない。

 

 ウエストは細くくびれ、ヒップは丸みを帯びて肉付きが良く、全体的に「健康的で男受け最高の豊満さ」を持っていた。

 

 そしてひとりは、自分の体に全く興味がなく、その無防備さが逆に色気を増幅させていた。

 

 

 (……ぼっちちゃん。スタイルとか色気すごくない?文化祭の時から感じてはいたけど…ていうか…デッッッッ)

 

 (………ひとりちゃんが羨ましすぎる…!!…私のなんて…!私のなんてッッ…!!)

 

 

 虹夏と喜多は、ひとりの体と自分の体をチラッと見て、内心でショックを受けていた。

 特に喜多は、笑顔のまま血涙を出していた。

 ちなみにふたりは気にせず、湯船で泳いで遊んでいた。

 

 

 (……また大きくなってる。最近ブラきついし、重いし邪魔。みんなに見られるの恥ずかしいし…もっと細くなりたい…)

 

 

 ひとりは、ふと自分の胸に視線を落とし、ため息をついた。

 最近また胸が大きくなった気がする。

 ブラのサイズが合わなくなってきて、肩紐が食い込み、カップがはみ出しそうになる。

 胸が重くて肩が凝るし、ジャージの上からでも目立つようになって、鏡を見るたびに鬱陶しく感じる。

 

 

 そしてリョウは、湯船の端でひとりの体をガン見。

 普段無表情のリョウの目が、突然キラーン!と金マークに変わった。

 そして早口で、完全に下衆モード全開。

 

 

 「ほうほう…ぼっちはダイヤの原石どころか、もう完成されたダイヤモンドだったのか〜!」

 

 「え…?あの…リョウさん…?」

 

 「今回の『グルーミーグッドバイ』のMVはぼっちを水着にしよう!」

 

 「えっ!!?」

 

 「そして【結束バンド】の物販で1枚5000円でぼっちのブロマイド出そう!ビキニ、スク水、競泳水着、ブルマ、ミニスカナース服、猫耳メイド、バニーガール、チャイナドレス、チアガール!全部出してマイニューグラビアしよう!これは売れる…売れるぞ!!」

 

 

 ひとりはリョウの言葉を聞いて、自分の水着・グラビア姿を想像してしまった。

 人前でビキニ…胸の谷間強調……みんなに見られる!?

 想像した瞬間、顔が真っ青になり、胃がキリキリ。

 

 

 次の瞬間──

 

 

 「…うぇぇぇええええええ!!!!無理無理無理無理無理無理無理!!!むむむむむむむむむむむむむむむむ!!!!!!おええぇえぇぇぇぇえええ!!!!ゲロゲロゲロゲロ〜〜〜!!!」

 

 『ギャアアァァアア━━━━━!!!!!』

 

 

 ひとりは発狂しながらゲロゲロしまくって、頭から湯気が出た後爆発四散した。

 そしてドロドロ〜っと液体になって湯船に溶けた。

 残ったのは、ぷるぷる震えるメンダコぼっち(手のひらサイズ)。

 メンダコぼっちは、プルプル震えながら「ヒーン!」と小さな声で泣いている。

 

 

 「ああああ!!ぼっちちゃんそっち排水溝だよ!!戻って戻って!!!もう!リョウのせいだよ!!!」

 

 「ぎぇええええ!!冗談だよ虹夏…!!冗談だからヒールフックはやめて…!!しかもインサイドはマジで洒落にならん…!!!」

 

 「ああ…!よりにもよって一番回収が大変な液体タイプだし…!!早く集めないと〜!!」

 

 「あはは〜♪お姉ちゃんたちおもしろ〜い♫」

 

 

 元凶のリョウをお仕置きする虹夏、そして必死に洗面器でひとりを集める喜多。

 3人は必死に液体を集め、なんとかひとりを元の人間の形に戻した。

 元の姿に戻ったひとりは、顔を真っ赤にして湯船に沈み込む。

 そしてふたりはみんなのやり取りを見て、ケラケラ笑いながら湯船で遊んでいた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 風呂から上がった後、ふたりは湯上がりの眠気に負けて「ねむねむ〜」と目をこすりながら先に自室に戻っていった。

 ジミヘンもふたりの後をトコトコついて行った。

 

 残った【結束バンド】の4人は、ひとりの部屋に集まってのんびりしていた。

 

 虹夏はひとりのベッドにどさっと寝っ転がり、隣に座ったひとりの手を自然と握った。

 指を絡めて、軽く揺らしながら天井を見上げる。

 

 喜多は、ローテーブルに新品のスキンケア用品をずらりと並べて、ご満悦の笑顔。

 SK-I○の化粧水、La M○rのクリーム、Tatch○の美容液……美智代から「好きに持って帰っていいわよ〜」と渡されたものだ。

 喜多はスマホを構えて、自撮りしながらポーズを決める。

 

 リョウはソファに深く腰を下ろし、ひとりの部屋の大型テレビを眺めている。

 サブスクでずっと見たかった映画を再生中。

 音量は控えめで、時々リモコンを操作しながら、画面に集中している。

 無表情だが、目が少し細まって満足げ。

 

 ひとりは虹夏の手を握り返しながら、みんなを見渡した。

 ベッドの端に座って、虹夏の隣に寄り添うように体を傾ける。

 虹夏の手の温もりが、胸にじんわりと広がる。

 

 湯上がりの火照った体が少し冷めてきて、部屋のアロマディフューザーの香りが心地いい。

 虹夏は天井を見上げながら、ぽつりと呟いた。

 

 

 「今日はすごい一日だったね〜。ぼっちちゃんの家には驚かされまくったよ…」

 

 「私もです!それにさっきもらったスキンケア用品、イソスタに写真あげちゃいました!さっき投稿したのに、もういいねがバンバンついて、フォロワーも増えてますし!嬉しすぎて今日一日の疲れ全部吹き飛びました!」

 

 

 喜多は、スマホの画面を虹夏に見せながら、目を輝かせた。

 虹夏はベッドから起き上がって笑った。

 

 

 「喜多ちゃんよかったね〜。…あたしも今日1日の疲れが一気に取れたよ。風呂上がりにマッサージチェア使ったんだけど、高性能すぎて肩も腰も全部溶けたみたい」

 

 「伊地知先輩もリラックスできてよかったですね♪」

 

 

 そんな中、喜多がふと何かを思い出したかのように、虹夏の方を向いて首を傾げた。

 

 

 「そういえば伊地知先輩。さっきNaokIさんにちょっと呼び出されてましたよね?何話してたんですか?」

 

 「あ〜。あれね…NaokIさんがCDプレス業者の伝手とか、音楽配信サイトの審査通りやすいところのリストとか、登録の仕方のメモをPDFで送ってくれたんだよね〜。丁寧にまとめてあって簡潔で読みやすかったし、本当に助かる」

 

 「NaokIさん親切ですね。それにずっと音楽業界に居たから、やっぱりそういう人脈や知識は幅広いですね」

 

 

 虹夏はひとりの手を握ったまま、ベッドに寝転がって天井を見上げながら答えて、喜多は直樹の人脈や知識に感心していた。

 そして改めて、直樹の気遣いに【結束バンド】の4人は心から感謝した。

 虹夏はベッドから起き上がり、拳を握ってみんなを見回した。

 

 

 「NaokIさんには、本当に感謝してもしきれないよ。あたし達にこんな親身になってくれて。だから…未確認ライオット優勝して…絶対恩返ししよう!」

 

 「もちろんです!NaokIさんの期待を裏切らない為にも…絶対優勝しましょう!!」

 

 「うん。最高のステージにしよう……でもその前にデモ審査落ちたら終わりだけどね…」

 

 「も〜!リョウそれは言わないの!」

 

 「……あっあの皆さん」

 

 

 リョウが少し茶化して場を和ませた。

 話が落ち着いた所で、ひとりはふと顔を上げ、みんなに提案した。

 

 

 「ん?どうしたのひとりちゃん?」

 

 「あっ…今からスタジオで、練習しませんか?」

 

 「え!?今から!?」

 

 「あっはい…今日録った音が、頭の中で鳴ってて…もっとみんなと合わせたくて…」

 

 

 ひとりからの意外な提案に驚いた3人だったが、全員ひとりの提案を快く引き受ける。

 

 

 「いいね!行こ行こ!あたしもまだまだドラム叩きたい!」

 

 「私も賛成!実はバッキングの練習もしたかったの!」

 

 「いいよやろう。部屋からベース取ってくるから待ってて」

 

 「あっはい!」

 

 

 そのあと4人は部屋から出て、エレベーターで地下スタジオへ向かった。

 4人はスタジオに立ち、合わせの練習が始まると、着実にレベルアップした音が響いた。

 虹夏のドラムはさらに安定し、グルーヴに深みが増し、リョウのベースは抜けが良くなり、指の独立性が飛躍的に向上。

 ひとりのギターはトランス状態で感情を乗せ、喜多のボーカルはハイトーンが伸びやかで息継ぎが自然。

 そして練習の合間に、【結束バンド】の練習風景を動画を撮った。

 周りのハイエンド機材が映らないようシンプルな背景で撮影し、SNSにアップした。

 【結束バンド】のスタ練は日付が変わるまで続いた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 翌朝、後藤家の玄関前は穏やかな朝日が差し込み、庭の木々が優しく揺れていた。

 朝食を終え、荷物をまとめた虹夏・喜多・リョウの3人は、ひとりと一緒に玄関に立っていた。

 直樹、美智代、ふたり、ジミヘンも揃って見送りに来てくれている。

 

 虹夏は深く息を吸ってから、みんなに向き直った。

 少し緊張した表情で、でも心からの感謝を込めて、ゆっくりと頭を下げた。

 

 

 「この土日…本当にお世話になりました!レコーディングしてもらって、そしてお風呂もご飯も部屋も…全部全部最高すぎて…こんなによくしてもらったの初めてです…!最高の休日でした……!」

 

 「私も、ここに来れて本当によかったです。ひとりちゃんのお家に来て、みなさんの温かさに触れて…こんなに幸せな気持ちになれたの初めてです。また絶対…遊びに来ます!」

 

 「ありがとうございました」

 

 

 喜多も目を潤ませながら虹夏の隣で深く頭を下げ、リョウも一言お礼を言って深く頭を下げた。

 そして虹夏は、最後に直樹をまっすぐ見て、リーダーとして代表して宣言した。

 

 

 「NaokIさん。ここまでお膳立てしてくれて、本当にありがとうございます。スタジオ貸してくれて…エンジニアまでしてくれて…CDプレスの伝手や配信サイトのメモまで…全部全部、私たちのために……私たち絶対、未確認ライオット優勝してみせます。NaokIさんの期待…絶対裏切りません。見ててください…!」

 

 

 虹夏の声は少し震えていたが、決意に満ちていた。

 直樹は穏やかに、でも誇らしげに笑顔で頷いた。

 娘の仲間たちを、家族のように見つめて。

 

 

 「楽しみにしてるよ。みんなならきっと…優勝できる。がんばれ」

 

 『はい!!!』

 

 

 美智代は優しく微笑んで「みんな、またいつでも来てね」と伝えて手を振る。

 ふたりはみんなに飛びついて手を振り、ジミヘンもワンワンと尻尾を振って見送る。

 虹夏たちは涙をこらえながら、最後にみんなに手を振った。

 

 

 「絶対また来ます!本当にありがとうございました!!」

 

 

 ひとりは門の前で、みんなを見送りながら手を振り返す。

 虹夏・喜多・リョウの3人は、門をくぐり、角を曲がって姿を消した。

 後藤家の門前は、再び静かになった。

 

 でも──その静けさの中に、強い絆と決意が残っていた。

 

 未確認ライオットへの挑戦は、まだ始まったばかり。

 

 後藤家の温かさが、4人の背中を強く押していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※おまけ

 

 

 

 

 

 後藤家の門を出た瞬間、虹夏と喜多は駅に向かって歩き始めた。

 朝の空気が清々しく、金沢八景の街並みが穏やかに広がっている。

 虹夏は荷物を肩にかけ、喜多はスキンケア用品の入った紙袋を大事に抱えて、楽しそうに振り返った。

 

 

 「ふぅ〜本当に最高の休日だったね〜。ぼっちちゃんの家、また泊まりたい」

 

 「そうですね!今度はレコーディングがない時に行きたいですね!」

 

 「そうだね〜。あ〜…また風呂に入ったり、あのフカフカのベッドで寝たい」

 

 「私もです!ひとりちゃんの家、どこもイソスタ映えしてて最高でした!!」

 

 「ホントすごかったね~。…ていうか、まさかジミヘンの専用の遊び場まであるなんて思わなかったね〜」

 

 「しかも私の部屋より広かったですよ。本当NaokIさんって規格外ですよね…リョウ先輩もそう思いますよね……ってあれ?」

 

 

 ……が、二人が数歩進んだところで、ふと気づいた。

 

 リョウがいない。

 

 

 「…あれ?リョウ?」

 

 「リョウ先輩どこに?…あっ門の前に居る…」

 

 

 振り返ると、リョウはまだ門の前で立ち尽くしていた。

 片手を軽く上げて、虹夏たちに手を振っている。

 

 

 「リョウ先輩? どうしましたか?」

 

 「もしかして忘れ物?なら、ぼっちちゃんにロインして取ってきてもらえば?」

 

 

 虹夏と喜多は、リョウの足が一歩も動いていない事に気づいて駆け寄った。

 リョウは無表情のまま、しかしきっぱりと言った。

 

 

 「もうここに住む」

 

 「「え?」」

 

 

 リョウは門の方をじっと見つめながら、淡々と続ける。

 

 

 「ぼっちの家、ウチの何十倍も快適すぎる!ご飯は美味いし、風呂は気持ちよかったし、部屋は快適すぎるし、スタジオでいくらでも練習できるし、それにあのハイエンドベースの山!!Fodera Emperor 6弦フレットレス仕様の低域はヤバいし、Music Man Stingray Special HHのアクティブPUのスラップ音は私の指に溶けてたし、Ibanez SR Premium 5弦のエボニー指板の滑らかさ…ネックが細くて握りやすくて神だった!Rickenbacker 4003…あの独特の鈴鳴りトーンはクラシックなのに現代的にアップデートされてて完璧も完璧!Warwick Corvette $$のブブリンガートップの重厚低音をまた指弾きで試したいし!アンプコーナーにあったDarkglass Microtubes Infinityの歪みのコントロールは無限で低域ブーストはヤバいし、Ampeg SVT-CL + 810Eキャビネット、あの低音の壁は私のベースと溶け合ってて最高すぎた!」

 

 「ちょ…リョウ先輩?何言って……」

 

 「あんな宝の山を前に帰るなんて…絶対に無理!!不可能!!もう私、今日から後藤家の娘になる!山田リョウ改め…後藤リョウになる!!」

 

 「何言ってるか分かりませんが、リョウ先輩戻ってきてくださ〜い!私がリョウ先輩の娘になりますから〜!!」

 

 「ええい!郁代HA☆NA☆SE!!私は後藤家に…郁代………ぶふっw」

 

 「ああああああ!!!リョウ先輩やっぱりダジャレみたいに思ってるじゃないですか!!?本当にやめてください!!」

 

 

 リョウはゆっくりと門の方へ向き直し、後藤家に引き返そうと一歩踏み出した。

 その足取りは、まるで聖地巡礼に向かう信者のように神聖で、でも完全にヤバい。

 喜多は、必死にリョウの腕を引っ張って引き戻そうとするが、リョウは止まらない。

 

 

 次の瞬間──

 

 

 虹夏の恐ろしく速い手刀がリョウの首筋に炸裂。

 

 トンッ──という乾いた音とともに、リョウの意識が一瞬で刈り取られた。

 リョウは声を上げる間も無く、その場に崩れ落ちる。

 

 

 「……ごめん喜多ちゃん。リョウの荷物…代わりに持ってもらっていい?」

 

 「はっはい!!」

 

 

 虹夏は、リョウの腋の下から自分の首を差し入れた後、肩の上にリョウを担ぎ上げる。

 所謂、ファイヤーマンズキャリーの担ぎ方だ。

 喜多もリョウの荷物を持って、慌てて虹夏の後ろから着いていく。

 

 

 (リョウったら、やけにおとなしいと思ったら…やっぱりこんな事考えて!……リョウが起きたら、ぼっちちゃん家に入り浸らないように注意しなきゃ)

 

 (伊地知先輩…やっぱり店長と同じ血を引いてるわ…)

 

 

 そのまま虹夏はリョウを担いだまま、角を曲がって姿を消した。

 後藤家の門前は、再び静かになった。

 

 

 (な…なんなんだあの速さ…!?手元が見えなかったぞ…!!?)

 

 (特殊部隊でも、あそこまで鋭く刈り取れないぞ…!!)

 

 (あの子は一体何者なんだ…!!?)

 

 (ひとり様のバンド仲間の子…あんなに凄かったのか!?)

 

 

 ちなみに、近くにいたセキュリティ数人は、虹夏の手刀の速度と正確さに内心戦慄していた。

 

 




ここまで読んでくれた方、ありがとうございました!

俺もこんな豪邸に住みたい。
次回から一気に時間進みます。
MV撮影、路上ライブ、池袋ライブ、デモ審査にネット投票は全部ダイジェストで送ります。
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