前回後書きでクリスマスライブあと一話で終了的なこと書いてましたが、なんか色々付け加えてたら長くなったんで分割しました。
それではどうぞ
ステージの転換作業が終了し、いよいよ今回のクリスマスライブの主催であり、今夜のトリを務める【結束バンド】の出番が回ってきた。
ステージ袖の後方では、【NEW GLORY】の4人が、肩の力を抜いてその時を待っていた。
「いよいよ【結束バンド】の番だな。ひとりのライブをこんな間近で見れるなんて本当に嬉しいなぁ~」
「NaokI君、ひとりちゃんの演奏なら家とか動画で腐るほど見てるでしょ」
「何を言ってるんだ!家での宅録とハコでのバンド演奏じゃ全くの別物だよ!それにひとりのバンド演奏を生で観るのは僕だってまだ2回目なんだから!そもそも娘の晴れ舞台なんて何回見ても飽きるわけがないじゃないか!」
「はは…本当に親バカですねNaokIさん」
NaokIの娘への溺愛ぶりに、Kyoyaが苦笑を浮かべて肩をすくめる。
「…そういや俺らって【結束バンド】のライブ自体、ちゃんと見るのは初めてだな」
熱弁を振るうNaokIを横目に、RoÉはステージにセットされた楽器を見つめながらぽつりと言葉を零す。
「確かにね~。つーかインディーズバンドのライブ自体、最後に見たの何十年前だっけってレベルだからマジで新鮮だわ」
「そもそも俺ら、他人のバンドの演奏自体しっかり聴いたことねェけどな」
「まぁライブもほぼワンマンだし、フェスとかに呼ばれても出番ギリギリで来るし、演奏が終わったらさっさと撤収しちゃうからな。こうやってのんびり眺めるのなんて確かに新鮮だな」
そんなプロとしての日常を笑い合いながら、彼らはスターリーの熱気を肌で楽しんでいた。
「まぁとにかく、みんなのライブを純粋に楽しみにしよ──ん?」
言いかけたところで、NaokIはステージの上手袖にふと視線を向け、その言葉をピタリと止めた。
そこには、愛娘のひとりがフライドチキンの被り物を片手にミニスカサンタコス姿でオロオロとしている姿があった。
(え!!?ひっひとり!!!?)
「うっわ…ひとりちゃんすげー格好してンな…」
「風俗嬢かよ」
「なんかひとりちゃんオロオロしてません?NaokIさん、ひとりちゃんに声掛けたらどうですか?………?NaokIさん?」
「えっ?えっ?ちょっと待って?なんでひとりがアレを…?ちゃんとクローゼットの奥に保管してたのに……いやそれよりも…もしかして見られてた?……まずいまずいまずい…!ただでさえ家族ヒエラルキー最下位なのに…!このままじゃ変態親父と貶されゴミみたいな目で見られる…!ただでさえふたりには舐められてるのに、ひとりにまでゴミ扱いされたら本気で死ぬッ…!」ブツブツ
NaokIはひとりとサンタコスを交互に見つめては、ブツブツと虚空に独り言を呟きながら頭を抱えており、完全に狼狽えて使い物にならなかった。
「Kyoさん、NaokI君聞いてないよ」
「すげー頭抱えてンな」
「………この人肝心な時コレだもんな。…俺が行くよ。幸い周りに人いないし……」
頼りにならないNaokIを放って、Kyoyaは少し距離を詰め、衣装の裾を気にして挙動不審になっているひとりに声をかけた。
ちなみに【NEW GLORY】の周囲に人っ子一人いないのは、世界トップのアーティストの休憩を邪魔してはならないというハコ側の配慮や、「許可なく近づいたり話しかけるなんて恐れ多い」と畏怖しているためだったが、彼らは知る由もなかった。
「ひとりちゃん。どうしたのその格好?すごい格好だけど…」
「ひえええええええええええ!!?…あっなんだ…Kyoyaさんか…」
いきなり声をかけられ、ビクゥッ!と飛び跳ねてビビり倒したひとりだったが、相手がKyoyaだと分かると一瞬で安堵の息を漏らして脱力した。
世界一のドラマーを前に実家のような安心感を覚えるギタリストはおそらくひとりだけだろう。
LavielとRoÉも周囲を気にしながらも、ひとりに声をかけた。
「ひとりちゃんコスプレとか珍しいじゃん。クリスマス仕様?」
「あっいやその…コスプレでスカートを穿くなんて羞恥心で私の全細胞が死滅してしまうので、本当はこのフライドチキンのコスプレを用意してたんですけど…」
「いやそっちも恥ずいだろ」
「えっとその…なんというか、直前に色々ありまして……」
ひとりは恥ずかしそうにケープで体を隠し、視線を泳がせながら、小さな声でもにょもにょと、先ほどの楽屋での一幕をKyoyaたちに語り始めた。
◆
『みなさ~ん!そろそろ私たちの出番ですよ~!着替え終わりましたか~?』キターン!
可愛らしいサンタコスに身を包んだ喜多が、じゃーんと自慢の衣装を見せつけるように張り切った声を上げる。
『うぅ…恥ずかしい……こんなふざけた格好でライブするなんて…』
『貴重な機会なんだからいいじゃないですかぁ~!それに伊地知先輩、めちゃくちゃ可愛いですよ~!』
ノリノリの喜多とは対照的に、赤面して衣装の裾を引っ張る乗り気ではない虹夏。喜多はなんとか先輩をおだてようと必死に言葉を並べる。
しばらくしてドアが開くと、そこにはトナカイの着ぐるみに身を包んだリョウがぬぼ~っと立っていた。
『待たせたな。トナカイです』
『あー!いいな~リョウ!あたしもそっちがよかった~!』
『えぇ~!?ちょっとちょっと〜!みんなでサンタコスにしようって約束したじゃないですか~!』
ルールを平気で無視したリョウに虹夏が羨望の眼差しを向け、喜多が一人で裏切りに憤慨する。
そんな中、喜多の視線が部屋の隅にうずくまるピンクの物体へと向けられた。
『ひとりちゃんはサンタ服ちゃんと用意してきたわよね──……え?なにそれ?』
『あっへへ…フライドチキンです。さっ探したんですけど、サンタ服はどこも売切れで……』
『それ見つけてくる方が難しくない!?ていうかひとりちゃん!本当はわざと買わなかったんじゃないの!?』
『うぐっ…!あっいや~その…クリスマスシーズンなのか、本当にどこにも売ってなくてですね…へへ…』
尤もらしい理由をこじつけ、なんとかサンタコスを回避しようとするひとり。フライドチキンのコスチュームの中で『勝った…!』と陰キャ特有のニチャアとした笑みを浮かべた、その時だった。
ひとりの背後から、肩をポンと優しく叩かれた。
『ぴっ!!?あっ……ェ…て……店長さん…?』
ギギギ、と錆びついた人形のようにひとりが振り返ると、そこには心の底からキラキラとした満面の笑みを浮かべた星歌が立っていた。
その両手には、ひとり用のミニスカサンタコス衣装をきっちりと携えて。
『え?え?あ…あの……店長さん…?』
『…』
『えっと…その…』
『…』
星歌は何も答えなかった。
ひとりが何を言おうとも声一つ発さず、星歌はただひたすら笑顔を貼り付けたまま、ミニスカサンタコスを片手にニコニコと佇んでいる。
『あっあの…わっ私フライドチキンがあるので……』
『…』
『えっと…だから…その……』
『…』
『あっあの…店長…さん…』
『…』
『…』
『…』
静まり返る楽屋。
あまりに一点の曇りもない満面の笑みだからこそ、かえって逃げ場のない底なしの無言の圧となり、ひとりの細い精神をゴリゴリと削り取っていく。
『………あっ…それ着ます…』
『そうかそうかそんなにこれが着たいか!!!ぼっちちゃんが着たいなら仕方ねェな!!!ホラこれ!!あとガーターベルトとブーツも持ってくるからな!!!』
『あっはい…』
ひとりが折れた瞬間、星歌はさっきまでの無言が嘘のように爆速で衣装を押し付けた。こうして流されるままに用意されたサンタコスをフル装備させられたひとりだった。
───
──
─
『あっ…うぅ…恥ずかしい…《去年お姉さんが恥ずかしがってた意味が今になってわかった。……あと胸がキツい…》』
そのサンタコスは、全体的にウエストをしっかり絞り、胸とヒップのコントラストを強く出したボディライン重視のデザインだった。
胸元を大胆に開いたコルセット風のタイトなボディスは、白いファーの縁取りが豊かな胸の谷間を容赦なく際立たせ、柔らかく張りのある膨らみをほとんど押し出すように包み込んでいる。
布地がきつく張りつき、谷間の影が深く落ちるほどに豊満で、動きひとつで揺れそうなほど弾力を感じさせる。
大きな黒いリボンがウエストを強く締め上げ、くびれた腰を強調し、その下のヒップの丸みを際立たせるように短めのスカートが広がる。
肘まである黒い長手袋と、太ももを艶やかに締めつける黒いガーターベルトは、白い肌とのコントラストを強調し脚のラインを妖しく見せる。
黒ニーハイにファー付きの赤いブーツを合わせ、長いケープを羽織ることで、どこかミステリアスで大人びた色気を帯びた雰囲気を漂わせていた。
その結果──どこからどう見ても完璧に仕上げられた、かなりエロティックな美少女サンタが爆誕した。
『『キタァァァァァァァァァァァ!!!!』』
お披露目されたひとりのサンタコス姿を見るなり、喜多はスマホを構え、リョウはスターリーで使っている一眼レフカメラを構え(無断使用)、四方八方からひとりの撮影会を始めた。
『良い!ひとりちゃん凄く良いわ〜!もっとポーズとって!!』キターン!
喜多は普段ジャージで厳重に隠蔽されているひとりの破壊的な可愛さと、規格外のナイスプロポーションに興奮し、純粋に目をキラキラと輝かせながら狂ったように連写を重ねる。
しかしファインダー越しに突きつけられるあまりにもダイナミックな胸元の立体感を前に、絶望的な胸囲の格差を思い知って血涙をドバーっと出していた。
『わあ!おっきい!ほりだしもんだヮ!うへへ…!これは売れるッ!このぼっちの爆乳サンタコスをブロマイドにして物販で売ればボロ儲け間違いなしだ…!これで夏のハイエンドベースのローン代が全て賄えるッ…!』パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!!!!!
一方リョウは、ひとりのサンタコス姿を一瞥した瞬間、その瞳に¥マークを浮かべた。
ネットオークションか、あるいは【結束バンド】の闇ブロマイド用か、とにかく1円でも価値の上がりそうなアングルを必死に狙って、下から横からとコミマにいるカメラマンさながらの手際で超高速連写をブチかましていた。
そして、衣装を用意した張本人である星歌といえば、二人の大騒ぎから少し距離を置き、「やれやれ仕方ねェな」みたいな上から目線の呆れ顔を作っていた。
『ほっ…ほ~ん…まァ似合ってンじゃねェの…?』パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そう生返事を返しながら、手元ではスマホを構えてこれでもかと連写しまくっていた。
その態度は興味のないフリをして実は内面では興味津々な、まるで好きな子を前にした生々しい思春期童貞の反応そのものだった。
あからさまに鼻の下を伸ばして興奮混じりに激写するよりも、どこか斜に構えて「別に興味ないけど?」みたいな生々しくて茶化しにくい絶妙なキモさが楽屋の空間にじっとりと醸し出されていく。
指先は震え気味で、シャッターを切るたびに微妙に角度を変え、胸元や尻のラインが少しでも強調される構図やローアングルを無意識に探っている。
しかも星歌は、ファインダー越しにひとりを狙いながら──
《……なんかぼっちちゃんの方から『あっ…店長さんも一緒に写真撮りませんか…?』とか言ってくれないかな〜。そしたら『ったく…しょうがねェな』ってノリで密着ツーショット撮れるんだけどな〜。自分から『ぼっちちゃん、一緒に撮ろう』とか言ったらマジでキモいし。でももしぼっちちゃんが『店長さんも…』とか言ってくれたら速攻撮るのに…あ〜誰かが提案してくれたら便乗できるのに》
──と、完全に自分からは言い出せない面倒くさい迫られ待ち感を全身から大放出していた。
口では涼しい顔をしていながら、内心では『もしぼっちちゃんが誘ってくれたら…』という妄想が止まらず、指が少しだけ汗ばんでいる。
『お姉ちゃん……』
そんな中、妹の虹夏だけは、カメラを構えて思春期童貞特有の怪しいオーラを放つ実の姉に向かって、完全にゴミを見るような冷たい視線を突き刺していた。
先ほどのライブで跳ね上がっていた姉の株が、底辺まで大暴落を遂げたのだった。
◆
「──ということがありまして…」
(キッツ…)
(キモ)
(後藤親子、あの店長さんに対して特効すぎるだろ……)
ひとりの切実なカミングアウトが終わると、3人の顔に何とも言えない複雑な表情が浮かんだ。
星歌が醸し出していたツンデレの皮を被った生々しいキツさ、そしてそれに無自覚なまま心を削られているひとりの様子に、3人は若干引き気味になりながら言葉を失っていた。
「…ひとりちゃん。多少時間過ぎてもいいから、今すぐ楽屋に戻って着替えた方がいいよ。さすがに人前でその格好は色々アウトだから…」
「えっ?あっでも…ここで私が着替えたりしたら、店長さんの逆鱗に触れて海の藻屑にぃぃ…!」
「何かあったら、俺から店長さんに話つけとくから大丈夫だよ。あとねひとりちゃん…無理なら無理ってちゃんと断ってもいいんだよ」
「あっは…はい…!ありがとうございますっ…!」
身内だけでファッションショーをするならまだしも、200人以上の公衆の面前で、こんな『完全にそういう店』のサンタコスをするなど、さすがに容認できるはずがないと判断したKyoya。
Kyoyaの頼もしすぎる大人のフォローに、ひとりは救われたような顔で深く頭を下げた。
「あっじゃあ私、爆速で着替えてきますね…」
「おっおぉ…行ってら」
「ライブ頑張れよ」
「俺らもステージ袖から眺めてるよ」
「あっはい。……そういえばお父さん。さっきから頭抱えてるけど大丈夫?」
「!!?あっいや!なんでもないよ!!大丈夫大丈夫!ひとりもライブ頑張れよ!応援してるから!」
「あっうん…」
現実に戻ってきたNaokIは、大袈裟なジェスチャーで手を振りながら慌てて笑顔を取り繕った。
ひとりは少し不審げに首を傾げつつも、楽屋へ戻る前に、改めて【NEW GLORY】の全員に向かって深く頭を下げた。
「改めて…Kyoyaさん、RoÉさん、ラヴィさん…それからお父さん。本当に今回はありがとうございました。みんなのおかげで、最高のクリスマスライブにできました」
「いいよいいよそんなの。俺らも久しぶりに昔の曲とか、やったことない曲披露できて楽しかったしね」
「まァ…これっきりだけどな。今度からは自分たちの力でなんとかしろよ」
「それに、まだ肝心の【結束バンド】のライブが残ってるんだ。感謝をするにも気を抜くにもまだ早いよ」
「あっはい……!」
Kyoyaの引き締まった言葉に、ひとりは背筋を正して強く頷いた。
そこでようやく完全に立ち直ったNaokIが、愛娘の瞳を真っ直ぐに見つめて、ギタリストとしての、そして父親としての言葉を伝える。
「ひとり、無理しなくていいからな。いつも通り自分たちの音をしっかり鳴らして、フロアのみんなを全部巻き込めばそれでいい」
「お父さん…」
「ラスト…思いっきり楽しみなさい」
「うん…!行ってくる…!」
ひとりは再度ペコっと頭を下げると、時間を気にしながら慌てて楽屋へと戻っていった。
「………ひとりちゃん。昔はあんなに小さくて人見知りだったのに…逞しくなったな」
「Kyoyaジジイみてェな事言ってンな」
「ほらほらNaokI君、娘の晴れ舞台を間近で観るんでしょ?さっさと近くまで行きましょ?…NaokI君?」
Lavielに促され、ステージ袖へと向かおうとしたNaokIの頭の中は、娘の晴れ舞台への期待とは全く別の安堵感で満たされていた。
(あ〜〜よかった!!あれ店長さんが用意したやつだったのか!!危ない危ない!てっきりクローゼットの奥深くに隠してた美智代のサンタコスがひとりにバレたのかと思った!!)
そう。NaokIが使い物にならなくなっていた本当の理由は、自らの恥部が娘にバレたかもしれないという恐怖だったのだ。秘密が何一つバレずに済んだことを知り、冷や汗を拭いながら内心でガッツポーズを決めるNaokIだった。
そして、そのサンタコスの用途については──毎年クリスマスの夜に子供たちが寝静まった後、朝まで何かあるらしいが、その真実は夫婦以外知る由もない。
◆
『メリークリスマース!ラスト、トリを務める【結束バンド】でーす!みんな最後まで残ってくれてありがとー!』
Kyoyaのフォローによって爆速で着替えを済ませたひとりは、普段のピンクジャージに【結束バンド】の黒いロゴパーカー、さらに頭には申し訳程度にフライドチキンの被り物を被るという、サンタコスに着替えさせられる前の自前のコスプレ姿でステージに上がっていた。
「嗚呼…ぼっちちゃんのサンタコスが…」
「店長〜!もうライブ始まりましたよ〜!」
「コーチ元気出してください!!」
「コーチはやめろ店長って呼べ。にしても…はァ……」
「アンタいつまで落ち込んでるのよ…」
最前列を陣取っていた星歌は、ひとりのサンタコスを拝めなかった絶望から、露骨にがっかりした顔を浮かべていた。
『今日は【結束バンド】サンタたちが、みんなに最高の歌をプレゼントしちゃいまーす!今夜は写真もたくさん撮っていいからね~~!』
「かわい~~!」
「喜多ちゃ~~ん!」
可愛らしいミニスカサンタ姿の喜多がポーズを決めると、フロアの客から熱狂的な歓声が上がる。その後ろで同じくサンタコスに身を包んだ虹夏が、少し照れくさそうに頭を掻きながらマイクを引き寄せた。
『どっどーも~…クリスマスイブなのに来てくれて本当にありがとう。おかげさまで今夜はソールドアウトになりました~…はは…』
『ちょっとちょっと~伊地知先輩!せっかくのクリスマスなんですから、もう少しサンタになりきってくださいよ~!』
『『………………』』
『そっちの二人はなりきらないで!!』
ステージ上で虹夏と喜多が女子高生らしい微笑ましいやり取りをする横で、ひとりとリョウは完全にフライドチキンとトナカイの役職になりきっていた。
ただただ不気味な無言を貫き通している二人に、喜多の鋭いツッコミが響き、フロアからドッと笑いが起きる。
しかしそれ以上に、観客たちの胸には先ほどからずっと渦巻いていた最大級の疑問があった。
「てかさぁー!結局なんで【NEW GLORY】が出演してくれたのー!?」
「マジでそれ!!」
「なんで世界トップのバンドがスターリーにいんの!?」
「よくインディーズのブッキングに出てくれたね!」
「まさか裏でとんでもないコネとかあったの!?」
フロアの至る所から、【NEW GLORY】の出演に対する疑問が【結束バンド】へと飛び交った。
喜多は待ってましたとばかりに笑みを浮かべると、事前にリョウが用意した完璧なカバーストーリーを伝えるべく、マイクを握り直した。
『みんなやっぱりそこが気になるよね~!実は今回、あの世界的ロックバンドの【NEW GLORY】が出てくれたのは──リーダーの伊地知先輩がダメ元で直々にDMを送ったら、奇跡的に了承してくれたんです!』
喜多は手短に要点だけをまとめ、その奇跡の経緯をフロアへと語り始めた。
───
──
─
『──ということで!色んな奇跡が重なり合って、今回の出演が成立したんです!』
喜多の説明が終わると、観客たちは驚きながらもその詳細な経緯を理解し、一気に納得の渦へと巻き込まれていった。
「マジか…めちゃくちゃ運いいじゃん【結束バンド】」
「知ってるこれ!なんかテレビのドッキリ特集とかで見たことあるわ!」
「これあれじゃね?有名アーティストとか国民的アイドルが、一般の結婚式とかにサプライズで現れて演奏してくれる系のやつ」
「完全にそれだわ!まさか実際に自分が遭遇するとか思わなかった!」
「てか【NEW GLORY】の人たち優しすぎでしょ…」
「だよね。ワールドツアー終わってすぐなのに、インディーズの企画ライブにノーギャラ同然で出てくれるとか神じゃん」
「虹夏ちゃんマジでお姉ちゃん想いだわ~」
「つーかあたしら、たまたまこのサプライズに参加できたってことでしょ?ラッキーすぎるわ」
「だよな。ただでさえ倍率アホみたいに高いのに、こんな間近で見れて最高だった」
「俺今回の日本公演全落ちしたから本気で嬉しいわ…!」
「つーか改めてセトリマジでバグってたな!」
普通なら「そんな漫画みたいな都合の良い話があるか」と一蹴されそうなハッタリだが、リーダーのNaokIが気まぐれで突飛な行動を連発する性格だということは、【NEW GLORY】ファンの間ではもはや周知の事実だった。
「あのNaokIなら、クリスマスにそんなノリで動くこともワンチャンあるかもしれない」──その共通認識が、疑うことなく全員を納得させていた。
『というわけで!今回の【NEW GLORY】の出演は完全シークレットのプライベート枠となっています!なのでみなさん!外で出待ちしたりとかは迷惑なのでやめてくださいね!あと明日になるまでは、今回のライブのことは絶対にSNSで広めないようにしてください!冗談抜きで下北沢が人で溢れかえってパニックになっちゃうから!!』
今や【NEW GLORY】は日本どころか世界中で、10年前の全盛期を超えるほどの圧倒的な人気と影響力を誇っている。
喜多のこの発言が比喩じゃなく本当なのだと全員が瞬時に理解し、客席の全員が深く頷いたり、声を上げて了承の意思を示した。
『みんなありがとー!!それじゃあ私たち【結束バンド】も、【しじみ帝国】や店長さんたち、そして【NEW GLORY】にも負けない最高の歌をプレゼントしたいと思いまーす!──『ギターと孤独と蒼い惑星』!!』
演奏が始まった瞬間、4人が放つ剥き出しの初期衝動がすさまじい濁流となって渦巻いていた。
「うぉ!?すげぇ!」
「なんか【結束バンド】いつもより上手いな」
トリを務める【結束バンド】のライブは、今夜のイベントを締めくくるにふさわしい、圧倒的な盛り上がりを見せていた。
【しじみ帝国】が広げた熱気、世界の頂点である【NEW GLORY】が残していった天上の残響、そして星歌たちが10年分の魂を込めて鳴らした『Star Chain』の奇跡──その全ての熱量を一滴たりとも途切らせることなく、彼女たちはフロアのオーディエンスを力ずくで自分たちの世界へと惹き込んでいた。
今の4人の演奏はいつも以上の実力を極限まで発揮し、まさにプロ顔負けの鋭い音をスターリーの底から繰り出していたのだ。
◆
ライブは予定通り進み、ついにラストの一曲となった。その直前、4人は一度音を止め、ラストのMCへと入った。
『今日のセットリストはあと一曲で最後です!アンコールは用意していません!なので最後の最後にみんなで一体になって、このクリスマスライブを完成させたいです!!みなさん!最後の力を振り絞る準備は出来てますかァー!!?』
『おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!』
喜多の渾身の煽りに呼応して、ハコ全体が弾け飛ぶような大歓声が巻き起こった 。【結束バンド】のファンたちだけでなく、他のバンド目当てで来ていた観客までもが、限界を超えて力の限り声を上げて叫んでいた。
『ありがとうございます!!ラスト一曲……私たちなりのサプライズを用意してきました!最後の曲は、多分最初で最後の演奏になります。なのでみなさん!最後まで歌って踊って最高に楽しんで帰ってください!!』
『わああああああああ!!!!!』
喜多の言葉を合図に、【結束バンド】の4人は互いに顔を見合わせ力強く頷き合った。
ひとりはふと、ステージ袖の暗がりに佇むNaokIへと視線を向ける。
(お父さんからもらった曲…今日だけ使わせてもらうね)
そして喜多が天に向けて右手を高く掲げ、タイトルを叫んだ。
『それでは聴いてください…『IGNITION』!!』
喜多のコールが響き渡ると同時に、ひとりの放ったあまりにも重厚でクリアなギターリフがスターリーを揺るがした。
今夜のラスト、フィナーレを飾る曲は──かつてNaokIが【結束バンド】のために気まぐれで提供した『IGNITION』だった。*1
あまりのクオリティの高さに、あの日から4人だけの秘密として大切に共有し、封印していた楽曲。
それを今回のクリスマスライブのサプライズのために、彼女たちはこの幻の曲を、この聖夜の夜にのみ解禁することにしたのだ。
猛烈なスピードで駆け抜ける演奏の中で、4人のアンサンブルは一寸のヨレもなく完璧にシンクロしていた。
空間を切り裂くような攻撃的なギターリフが耳を突き刺し、それに負けない虹夏の凄まじい手数のドラムが、生きるスペースを正確に捉えて爆発的な推進力を与えていく。
リョウのベースはスラップを交えたうねるような重低音で、シンセサイザーの超高密度な音の壁を力ずくで支え、喜多の突き抜けるような明るい歌声とバッキングギターが、聴き手に強烈なカタルシスを与えて視界を切り開いていく。
「うおー!!」
「ヤバい!ガチでエモい!!」
「待って!これ個人的に一番刺さる!」
何の前情報もないままその圧倒的な音に呑み込まれた初見の客たちが、本能を剥き出しにして歓声を上げ、ジャンプを繰り返す。
だがその熱狂の真ん中で【結束バンド】のファンたちは、あまりにも唐突すぎるゲリラ初披露に驚愕を隠しきれずにいた。
特にフロアの最前線にいる最古参のファン1号と2号の反応はより顕著だった。
「え!?え!?これ新曲!!?すごい!!めちゃくちゃイイ!!」
「カッコいい!!こんな曲作ってたの!!?でもこれで最初で最後って…えぇー!!?もったいない!!もったいなさすぎるよー!!」
歓喜と絶望が入り混じったファンの悲鳴が上がる中、星歌の隣でフロアの最前列を陣取っていたやみもまた、衝撃のあまりその場で完全に硬直していた。
(え!?なにこれ!?疾走感エグッ!コード進行のテンション感もシンセのボイシングも完璧だし、何より他の3人のアンサンブルの精度も、このバケモノみたいな高難度曲に一切負けてない!…っていうかギターヒーローさん、明らかにネット動画の時よりも演奏レベル上がってない!?アタックの均一さもハイフレットでのレガートの滑らかさも別次元だし…!完全にNaokIさんの領域に片足突っ込んでない!?!?)
音楽ライターとしての専門的な分析すら追いつかない楽曲自体の圧倒的なクオリティと、それを完璧に鳴らしきる【結束バンド】の演奏力への称賛。
そして目の前で化け物じみた進化を遂げているひとりの超絶技巧に、やみは心臓を激しくバクバクさせながら驚愕しまくっていた。
「きゃ~!♡リョウ様しゅきぴ~~!♡♡」
(やっぱり、後藤先輩はかっこいい!)
やみの横では、恵恋奈が推し活命といった表情で猛烈にペンライトを振り回し、さらにその隣で猫々は、いつも以上に眩しい光を放つひとりの姿に静かに見惚れていた。
そしてステージ袖の暗がりでは、【NEW GLORY】のメンバーたちも、その圧倒的な音の奔流に身を委ねながら、驚きと感嘆の視線をステージへと注いでいた。
「………これNaokI君が作ったでしょ?」
「あっ、やっぱりわかった?」
溢れ出す圧倒的な音圧の壁を浴びながら、最初にLavielが一発でその核心を見抜いた。
NaokIがバカ正直にあっけらかんと言うと、それに対してRoÉが呆れたような視線を突き刺した。
「わかるに決まってンだろ。サビ前のビルドアップで裏のシンセをポルタメントでうねらせる癖とか、ブレイクに細かいグリッチ仕込むやり方とか、Super Sawを何本も重ねてクリアに聴かせるエグい音作りとかはNaokIさんの十八番だろ。そもそもあんな中毒性あるリフなんてアンタしか作れねェよ」
「へへ、さすがRoÉだな。全部お見通しか」
「たりめーだろ。何年アンタの曲聴いてると思ってンだよ」
それは長年相棒としてNaokIの音を背後から支え、誰よりもその癖を理解しているRoÉだからこその、一切の迷いもない見抜き方だった。
「相変わらず引き出しがすごいですね、NaokIさんは」
Kyoyaも自らのリーダーが持つ、化け物じみた作曲センスを心から讃えた。
しかし、それ以上にプロの3人が戦慄していたのは、その化け物染みた難曲を完全に乗りこなしている【結束バンド】の4人の姿だった。
「にしてもインディーズの女の子たちが、あの複雑なシンセワークとコード進行に全く振り回されることなく、ここまでタイトに縦の線をハメてくるなんて普通にエグいよ」
「……まァな…ベースの低音の支え方も的確だ。あの暴力的な厚みに生のグルーヴが1ミリも負けてねェ。曲のエネルギーに圧倒されずに、完全に自分たちのバンドの音として支配してる」
「虹夏ちゃんのドラムのキープ力も大したもんだよ。このアップテンポの中でトリッキーなキレに1ミリも遅れてない。完全に4人の音が一体になってる」
メンバーたちから次々と飛び出す技術的な大絶賛を浴びながらも、NaokIはただ真っ直ぐにギターを掻き鳴らす愛娘の姿を愛おしそうに見つめていた。
(…ひとり。本当に、いい仲間達を見つけたな)
中学の時まで友達が一人もできず、学校ではいつもクラスの輪に入れずに孤立して、家に引きこもりながら、ただずっと孤独にギターを鳴らし続けていた娘。
それが今では、こんなにも信頼できる かけがえのない仲間たちと並んで、お互いの音を合わせ、こんなにも多くのオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んで沸かせている。
そのあまりにも眩しい事実の前に、NaokIは一人の父親として、胸の奥からこみ上げてくる熱く感慨深いものに激しく打たれていた。
そして迎えた最後のアウトロでは、ひとりの指先から放たれる渾身のギターソロが炸裂した。
スターリーを完全に掌握するようなエモーショナルなチョーキングと、目にも留まらぬ超絶怒涛の速弾き。
その感情を剥き出しにした圧倒的なプレイの輝きに、またもやフロアは大盛り上がりを見せ、狂喜の叫びがハコを物理的に激しく揺るがしていく。
(虹夏ちゃんも、リョウちゃんも、喜多ちゃんも、そして…ひとりも最高だよ。いつか【結束バンド】は、本当に僕達のところまで追いついてくるだろうな)
一人のギタリストとしての確かなリスペクトと、底知れない未来への予感をその熱い眼光に宿しながら、NaokIは眩しそうにステージを見つめ続ける。
そして──ついに『IGNITION』は終わりを迎える。
『ラスト……『IGNITION』でした!今日は本当にありがとうございました!!』
喜多が最後の力を振り絞るようにマイクへ声を乗せ、4人の放った音が完璧に鳴り止んだその瞬間、フロア全体から天井を突き破るような爆発的な大歓声と割れんばかりの拍手喝采が巻き起こったのだった。
「わぁー!!」
「すげぇ!!最後マジで鳥肌止まんなかった!!」
「喜多ちゃーん!!」
「ひとりちゃんカッコよかったよー!!!」
最前列にいた星歌も静かに目を細めて、愛おしそうな表情でステージの上の【結束バンド】を見つめていた。
(一年ちょっと前は、客の言葉一つでライブもガタガタになるくらい不器用で危なっかしかったのに……)
星歌はゆっくりと後ろを振り返り、スターリーのフロアを埋め尽くした客一人一人の顔を、確かめるように見渡していく。
「うおー!!いいぞー!!【結束バンド】ー!!!」
「最後のギターソロのとことか、めちゃくちゃかっこよかったー!」
「全員10代でこんなクオリティとか神だろ!?」
「このバンド絶対売れるわ!マジで保証する!!」
「マジでサブスク解禁してくれ!一度とは言わずに!」
「本当に来てよかった。全バンド当たりとか最高すぎる」
「【結束バンド】ー!武道館まで行っちゃえー!!!」
「次のライブも楽しみにしてるー!」
興奮冷めやらぬ様子で互いに熱い感想を言い合ったり、【結束バンド】を惜しみなく賞賛する歓声を上げたりと、フロアの全員が、例外なく最高の笑顔で満足そうな表情を浮かべていた。
世界の頂点である【NEW GLORY】の音に当てられ、耳が肥えているはずのオーディエンスたちが、自分たちの意思で【結束バンド】という名前を叫び、熱狂している。
(それがいつの間にか、自分たちでこんな大層な企画を立ち上げられるくらいになって。こんな大勢の客を心から満足させられるくらい、あいつらは成長してたんだな……)
あの日、お母さんとカフェで交わした約束。
虹夏を悲しませないために、虹夏の笑顔を守るために作ったこのスターリーという城。
そのステージの真ん中で、最高の仲間たちに囲まれてキラキラと輝いている妹の姿。
そして、自分への誕生日サプライズのために、神様を引き連れてまでこの最高の聖夜を創り上げてくれた4人の絆。
その全てが愛おしくて、誇らしくて、星歌の胸の奥からは言葉にならない温かい感情が溢れ出していた。
今回も見てくれてありがとうございました!
ラスト一曲で、33話のぼっちパパが作ってくれたオリジナル曲をここにねじ込みました。(書くだけ書いて使わないのは勿体無いので)
続きは最低でも1週間後くらいには更新したいと思います。