YAMA育ちの妖怪王   作:スルメ文庫

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 本章のサブタイトルは植物を入れた五七五七七の短歌でいきます。
 あと、植物の花言葉に意味がありますので時間があれば調べてみてはいかがでしょうか?


第三章 妖怪行軍奇譚
第十五刻目 第十五刻 恋色の心に在りし山吹の咲き誇りては散りゆく花弁(かべん)


 俺は今、とある妖怪を尋ねに正天寺に向かっている。その妖怪の名はりゅーくん。名が示す通り、竜族という妖怪の中でも強者揃いの一族である。とはいえ彼自身はまだ幼体の竜で、俺と父さんと父さんのともだち妖怪の青龍と鍛えてはいるが才能開花にはまだ時間がかかると判断している。

 そんな彼と出会ったのは三週間ほど前、ウォッチ使いになって一週間たったばかりの頃である。ノコギリクワガタが欲しかったりゅーくんの為に、獲ってきたのが出会いであった。

 そして俺は今、りゅーくんの住む正天寺に今向かっている理由は一昨日の妖怪といい、最近悪い妖怪が次々と出てきているからである。しかも、中には前にユキノが言ったような本当に全身漂白したかのような真っ白い妖怪までいるのだ。恐らくどこかの妖怪のお偉いさんが悪事を企んでいるのだろう。

 しかし、手がかりがなければどうしようもない。なので様々なものを映し出すことの出来るりゅーくんの力を借りて、関係者から黒幕を炙り出すつもりである。

 

りゅーくん「あっ、高成!今日は何かくれるのだ?」

高成「ああ。じゃがじゃがチップスを持ってきたぞ。」

りゅーくん「ありがとうなのだ!じゃあ、高成の見てほしいことをひとつ叶えてあげるのだ!」

高成「ああ。りゅーくん、今回の一連の騒動に一番近い妖怪の居場所を教えてくれ。」

りゅーくん「まかせろなのだ!うーん・・・!」

 

 そうして見えてきたのは、以前キュウビと会った

 

高成「ここは、かげむら医院じゃないか!」

りゅーくん「そこには、危険な妖怪のはみ出しものがいるのだ!だから高成も行く時は気をつけるのだ!」

高成「ああ、わかった。気をつけるよ。」

りゅーくん「そういえば高成、今日はゆきおんなとウィスパーは一緒じゃないのだ?」

高成「ああ。実は、昨日ユキノと喧嘩しちゃってな・・・それでウィスパーにもユキノの方に着いてもらってるんだ。」

 

・・・

 

ユキノ「高成、大人になったら貴方は何になりたいの?」

 

 ユキノの唐突な質問に、高成は困惑しつつもこう答えた。

 

高成「ん、俺は父さんのスポーツ用品を手掛ける会社を継いで、色んなデザイナーや職人、スポーツ選手の夢を支えたいかな。やっぱり、夢を叶えようとする人って見てて眩しいけど、いいものだって思うからさ。」

ユキノ「!そっか・・・」

高成「あと、ユキノたちが俺が友達であることを恥じないような大人になりたい。俺はそう思うよ。」

ユキノ「・・・高成。もしも、もしもだよ?ボクたちが明日いきなり居なくなるとしたら、どうする?」

 

 縁起でもないな、とこの時の俺は呑気に思っていた。そして、考えた。

 

高成「・・・間違いなくショックを受けるだろうな。なんだったら、一生モノの心の疵になるかもしれない。」

ユキノ「・・・そう、なんだ。じゃあ、ボクたちはもう別れた方がいいね。」

 

 ユキノがとんでもないことを言い出した。

 

高成「なっ・・・!?何を言ってるんだ・・・?」

ユキノ「だって、ボクはもう高成のことが好きで好きで堪らなくて!でも、ボクは死んで妖怪になっちゃって、高成はまだ生きてる人間で・・・!絶対に結ばれる事は無くて・・・!」

高成「だっだからって別れる必要は・・・「あるの!」!!」

ユキノ「このままだと、ボクは貴方が愛しすぎるあまりに無理やりにでも貴方を手に入れようとしてしまいそうなの!それこそあなたの意志を無視して凍らせてでも!でもそんなことになるのは嫌なの!!結ばれたい!でも、それは許されない!」

高成「ユキノ・・・」

 

 まさか、ユキノがここまで俺を思ってくれていたとは・・・でも、今の彼女はあまりにも痛々しい・・・

 

ユキノ「アハハ・・・本当に、僕たちどうしたら良かったんだろうね?」

 

 そういうと彼女は家を飛び出してしまった。

 

高成「っユキノ!!」

ウィスパー「高成くん!今行っても互いに傷つくだけです!ここは、万能妖怪執事である(わたくし)にお任せを!」

 

 追いかけようとするが、ウィスパーに止められる。混乱する頭から理性を振り絞り、

 

高成「お前、いつから万能になったよ・・・」

ウィスパー「ガビーン!「でも。」?」

高成「お前は最高の妖怪執事だ。ウィスパー、頼むぞ。」

 

 そういうとウィスパーはサムズアップしてこう言い、出ていった。

 

ウィスパー「・・・では、行ってきます!うぃす!」

 

・・・

 

りゅーくん「・・・まあ、たまにはそういう時もあるのだ!」

高成「・・・そういうもんか?」

りゅーくん「そうなのだ!それに、りゅーくんのパパとママもたまに喧嘩するのだ。でも、最後には「ごめんね」と「いいよ」を言い合って仲直りをするのだ!」

 

 ・・・そうか。何を恐れていたのだろう、俺は。彼女と一緒なら、例え無限に続く地獄であろうと怖くはない。それを幼子の言葉で思い出すとは、俺もまだまだ未熟だな。

 

高成「ありがとう、りゅーくん。俺は行く。」

りゅーくん「ちょっと待つのだ高成!・・・行っちゃったのだ。早くウィスパーたちにこの妖怪パッドで連絡しないと・・・!」

 

 そして俺は、その足でかげむら医院に赴いた。そこは妖怪たちの巣窟となっていた。

 

ドカッ!バキッ!ドゴォッ!

高成「そこを退けェェェ!!」

『うわあああ!?』

 

 ようやくコントロールに至った怪力による数多の流派を掛け合わせた喧嘩殺法を以て俺は突き進んでいた。

 しかし、あと少しという所で四人の白い(・・)みちび鬼たちに文字通り足下を掬われ、ベットに乗せられて金属チェーンによって拘束されてしまった。

 

高成「っチィ!離せこのっ!!」

みちび鬼「やぶれかぶれ院長。例の人間を連れてきました。」

 

 そこに居たのは、頭の毛が寂しいことになっている一つ目の医者の風貌をした妖怪だった。

 

やぶれかぶれ院長「よし、よくやったぞみちび鬼たちよ!さて、今まで良くもイカカモネ議長の邪魔をしてくれたな!お礼にお前を妖怪に改造してやろう!!」

 

 ・・・万事休す、か。せめて、イカカモネ議長の名だけでも残せたら良かったな・・・

 そう頭に過ぎった時、バキャアァァァ!!と、扉が吹き飛んだ。

 

『ぎゃああああ!?』

 

 白いみちび鬼たちが吹き飛び、そこに居たのは・・・

 

ユキノ(ゆきおんな)「高成ィッ!!」

ウィスパー「高成くん!」

 

 俺の最高のともだち二人だった。




 読んでいただきありがとうございました。
 次回は、ユキノ視点です。
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