YAMA育ちの妖怪王   作:スルメ文庫

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 今回は結構短めです。


第三十三刻目 ありえた世界

 俺は、石田高成は紛うことなき生者(ニンゲン)である。妖怪という死の側に立つ者たちに深入りしすぎているという自覚はあるし、なんならそのうち一人とは婚約者という非常に深い関係にある。だがしかし、流石に自認識まで死者(妖怪)になった憶えまでは無い。だというのに・・・

 

景太(ケータ)「あっ!なんか格好いい妖怪が出てきたよ!」

ウィスパー「ケータくん!この妖怪は間違いなくSランク妖怪でウィス!」

 

 未だに交友関係にある小学生時代の友人が、ちょうどその頃の姿で俺の執事であるウィスパーを引き連れて目の前にいる。

 寝起きで訳の分からない事態に陥っているのだ。さすがに少し動揺する。しかし、まずは情報収集が大事だ。そう判断した俺は仮初の自分を演じ、情報を引き出すべく改めて彼等の前に向き直る。

 

景太「ねぇ、キミの名前はなんて言うの?」

ワイルドハント(高成)「・・・余の名は、ワイルドハントだ。」

景太(ケータ)「ワイルドハント?」

ウィスパー「ワイルドハントとは、西洋に伝わる死者たちが走り回る現象を指します。(ですが、おかしいでウィスね・・・そんな妖怪聞いたこともありませんが・・・)」

景太(ケータ)「へ〜、でもそれが妖怪の名前ってどうなの?」

ワイルドハント(高成)「言うな、余自身もそう思っている。・・・恐らく、そういった現象の代表者としてその名前になったのだろうがな。」

景太(ケータ)「へぇ〜。よろしくね、ワイルドハント!」

ワイルドハント(高成)「ああ。宜しく頼む、ケータよ。」

 

 ・・・ふぅ、何とか取り入ることが出来たようだな。ウィスパーに少し怪しまれているが・・・まあ仕方ないだろう。ウィスパーの様子から妖怪王ワイルドハントという妖怪がこの世界に存在していないことがわかった。だとすると彼ほどの妖怪執事が俺のような正体不明かつ不審な余所者を警戒しないはずがない。

 

 ・・・この時は気が動転しており気が付かなかったが、黒い逆立った髪に浅黒い肌をした少年がいたのだった。

 

・・・

 

 さて、俺はケータに着いて色々と回ったが、この時代のケータは俺の時代のケータと違って色々とだらしない面が強く映った。勉強は滅多にしないし、漫画を読んでばかりのぐーたら三昧。

 尤も、俺の時代のケータがこの時代じゃ考えられないほど紳士的かつクソボケな色男に育ったというのもあるのだろうが。

 アイツに惚れた乙女たちの恋愛相談を別の中学校に進学した俺がほぼ毎日していると言えば違いがよくわかるだろう。

 こちらのケータも並以上に顔がいいだけはあり、それ故に残念度が嵩増しされている感じがした。

 ・・・あと序でにウィスパーとジバニャンもかなりポンコツだった。ウィスパー知ったかぶりした挙句、妖怪の名前を間違えるという失態を犯しているし、ジバニャンに至ってはチョコボーの空袋を散らかしていた。

 

 まあ、それは置いておいて、そんなケータの妖怪辞典を一緒に見させてもらっていると・・・

 

ワイルドハント(高成)「ケータ、お前は随分多くの妖怪たちと友達になったのだな。」

景太(ケータ)「へへっ、まあね。」

ウィスパー「ですが、まだまだ空欄も多いですからねぇ・・・これからもともだち妖怪を集めてもらいますよ、ケータくん!」

景太(ケータ)「え〜・・・」

 

 こんな日々も楽しいと思っていたが、ユキノやウィスパーたちの事を思うと、帰りたい気持ちもあった。

 

 そう思ってしまったのなら、きっと今日の夜が潮時だな・・・まだまだ役に立ててないのが気残りだが、家族やユキノたちのことを思うとこれ以上長居する訳にはいかなかった。

 

ウィスパー「・・・」

 

・・・

 

 その日の夜、俺は妖怪ガシャの前に立っていた。さて───

 

ワイルドハント(高成)「そこにいるんだろ、妖怪執事のウィスパー。」

ウィスパー「・・・やっぱり、バレていましたか。」

 

 そう、ウィスパーは俺を付けていたのだ。俺はガシャの方を向いてウィスパーには背を向けている。・・・きっと、振り返れば未練が強くなり、帰れなくなると分かっていたから。

 

ワイルドハント(高成)「で、俺が誰だかは分かっているんだろう?」

ウィスパー「ええ。・・・貴方は別の世界の(わたくし)のご主人様なのでウィスね。」

 

 ウィスパーの答えに俺は少し微笑んで言った。

 

ワイルドハント(高成)「正解だ。なぜわかったかも参考に聞いていいか?」

ウィスパー「時々夢で見ていたんでウィスよ。いつにも増して有能な(わたくし)と強い絆で結ばれた強靭な仲間たちがチームにいる・・・そんな未来も有り得たのでウィスね・・・」

 

 そんなウィスパーの声は、どこか物悲しく寂しそうだった。

 

ワイルドハント(高成)「・・・止めてくれるなよ、ウィスパー。余・・・ではなく()には()の生活と立場があるものでな。」

ウィスパー「そんなこと言わなくても止めませんよ。・・・ただ、向こうのケータくんってどんな人なのか聞かせてくれませんか?」

高成「ケータか。俺の世界でのアイツは中学二年生で、ハーレム形成一歩手前のクソボケ色男だ。其方のケータには、くれぐれも女子たちの心情の機微がわかる男に教育してやれ。違う中学に進んだというのに俺にしてくる恋愛相談はもう散々だ。」

ウィスパー「貴方も大変なのでウィスね・・・」

 

 ウィスパーはきっと苦笑いしているだろう。

 

ワイルドハント(高成)「勝手に消えるお詫びだ。受け取ってくれ。」

ウィスパー「なんですかなんですか・・・!これは!神剣くさなぎ!あの黒鬼を倒すか鬼ガチャでしかゲットできないと言うあの!」

高成「確かアイツのトモダチ妖怪にしょうブシがいただろう?アイツに使ってやってくれ。」

ウィスパー「・・・わかりました。」

高成「じゃあな、ウィスパー。元気でな。」

ウィスパー「はい。貴方の方こそ「貴方じゃねえよ、俺の名前は石田高成だ。」!っはい!高成くん、お元気で〜!!」

ワイルドハント(高成)「ああ、元気でな。」

 

 ウィスパーに見送られた俺は妖怪ガシャに妖力を込めて、この世界を去った。

 これで帰れたと、そう思ったのだが・・・

 

文花(フミ)「あっ!かっこいい妖怪が出たね!」

ウィスパー「フミちゃん!この妖怪は恐らく、Sランク妖怪でウィス!」

 

 ・・・どうやら、まだ受難は続くらしい。




 今回は原作主人公との邂逅でした。流石に同じ内容を二回はくどいかと思い、フミちゃんの方は丸ごとスキップさせていただきますが、一言だけ言うと、彼はこの後に元の世界に帰ることができました。

 読んでいただきありがとうございました。
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