今現在、モーシンデルマートのバックヤードにいる俺たちの前に立ち塞がっているのは、ゾンビの巨漢・・・スーパー店長曰く、その名は【ゲボール不死長】。
・・・あとついでに、そんな怪物によって吹っ飛ばされたと思われる金髪に白衣を着た女性もユキノに介抱され庇われる形でその場に居た。
「キミたち、早く逃げるんだ・・・!アレは、人間が敵う相手じゃない・・・!!」
フランシー博士「私の名はリリィ・フランシー、フランシー博士と呼んでくれ。私はゾンビたちの研究者だ・・・まずは謝らせてくれ、すまない・・・」
マック「アンタ、すまないってどういうことだよ!?大体、何がどうなってんだコレ!?」
トムニャン「マック!一旦落ち着くミャウ!」
金髪に白衣を着た女性、フランシー博士は自己紹介の後にいきなり謝ってきた。こういった人が起こした理解不能への耐性がないマックはフランシー博士に問い詰めるが、トムニャンがなんとか諌めてくれた。マックはあまり納得がいっていない様子だったが。
マック「・・・ッ。」
フランシー博士「・・・まず、そこのゾンビたちは通常【ゾンビナイト】という現象によって発生する怪物だ。ゾンビナイトにおいて人間は逃げることしか出来ない。だから私は、このゾンビナイトを終わらせる為に、市役所の鐘を鳴らそうと向かったのだが・・・あのゲボール不死長に見つかってしまってな。逃げ回って追い込まれた末に此処に逃げ込んだ・・・だが、今にして考えてみれば、ゾンビナイトから足を洗ったモーシンデルマートのゾンビたちやキミたちのことも狙っていたのかもな・・・私はキミたちのような若者を巻き込んでしまった・・・!」
ウィスパー「ゾンビは、噛み付くことで仲間を増やします!更に、ゾンビになったら二度と元に戻ることはできません!気をつけて立ち回ってください、高成くん!」
・・・なるほどな。この空気が澱んだ夜を楔にしたゾンビたちが大量発生するこの異常現象はゾンビナイトというらしい。
そんなゾンビナイトを止めるべく市役所の鐘を鳴らそうと向かったが途中でゲボール不死長に見つかりあえなく敗走。
そして、モーシンデルマートのゾンビたちは人々を襲うゾンビナイトから足を洗ったこう言っていいのかはわからないが【善いゾンビ】で、勝手に足を洗った落とし前をつけさせる為にゲボール不死長は部下のゾンビたちを引き連れてやってきたようだ。
ゲボール不死長「ソウイウコトダ!ソコノ灰色ノキサマ!!」
指を差すなよ、礼儀がなってないな・・・と、場違いな感想を抱きつつも直ぐさま亜空間ジッパーから【
「ヤ ッ ト ミ ツ ケ タ ! オ マ エ ニ ガ サ ン ゾ ォ ! !」
マック「お、オイ!どうすんだよタカナリ!?あのバケモン、俺たちもそうだけどお前のことも確実に殺す気だぞ!」
高成「安心しろよ、マック。俺はこの程度の輩に負ける程弱くは無い・・・!そして、ゲボール不死長よ・・・」
狼狽えるマックを後ろに下がらせながら俺は臨戦状態に直ぐさま切り替えた。その直後から俺の少し長めの灰銀の髪が妖力で靡き、青紫色の瞳が彼の周囲の妖力と共に爛々と輝き始める・・・
その異様な初見のマックたちやフランシー博士、そしてスーパー店長を始めとしたモーシンデルマートのゾンビたち、そしてゲボール不死長たちを始めとしたゾンビナイト一派は後退り、俺がやろうとしていることを理解したユキノたちはスーパー店長たちにこの間研究の過程で調合して偶然出来た
「キサマ如き弱兵から逃げるつもりなど毛頭ないわッ!!」
・・・
ゲボール不死長は、文字通り歴史を見てもゾンビの関係者の中では五指に入るほどの実力者だ。ゾンビの名称の由来ともなったコンゴ共和国の全知全能の神とも称されるンザンビには敵うべくもないが、それ以外の強靭なゾンビたち相手には互角かそれ以上に渡り合える。
少なくとも中世から近現代出身者かつゾンビという条件下において、彼以上の強者は先ずいないと言っていいだろう。
そんな彼にとってゾンビナイトは自身の君臨する楽園にして王国であり、自身の矜持であり、存在価値そのものだ。人間や妖怪を襲い、仲間に取り込む。彼らゾンビにとって正に存在意義を満たせる楽園そのものだ。
最近になって人間の小娘が嗅ぎ回っており鬱陶しいがたかが人間。相手するだけ無駄だと判断した。自身の王国は何者にも崩されない。そう思っていた。
───だが、そのゾンビナイトを根底から破壊し尽くしかねない強者が唐突にセントピーナッツバーグに現れた。サウスモンド地区に拠点を構えたと思しきそれは相当に上手く隠蔽されており並の者は疎か、一定水準以上の強者でも気が付かないだろうが、ゲボール不死長の歴戦の勘がその異様に強大な覇気を感知した。
あまりに唐突な強者の気配に流石のゲボール不死長も泡を食った。そしてすぐさま部下たちに指示を出しながら待ちに待った夜、その者の近くを自身の側近の一人である鬼ゾンビに斥候させたのだが、張り巡らされた対魔性防衛機構によって彼を喪った。消失の間際、その鬼ゾンビが送ってきた情報は、灰色の人間の若者が、自身を一撃で消したという情報だけだった。
鬼ゾンビは、他のゾンビたちに比べて数が少ない。比較的多く、隠密行動が得意なジミーゾンビを嗾けるも、家に張られた結界によって忍び込む以前に踏み込んだ時点で消滅する始末だった。
ゲボール不死長は怒り心頭だった。自身が手塩をかけて鍛え上げたかわいい部下たちは歯牙にも掛けない灰色の若者によって全自動で倒される。しかもその若者の種族はただの人間。ゾンビとしてのプライドはこの上なくズタズタに汚された。
怒りに怒りながら彼は決意した。テリトリーから出たその
そんな時、ゲボール不死長に復讐の機会が訪れる。愚かにも自分たちを嗅ぎ回っていた小娘の位置を捕捉することに成功する。更に小娘が逃げ込んでいるのは、裏切り者どもの巣窟であるモーシンデルマート。
正に一網打尽に面倒事を片付けることができる千載一遇の機会、ゲボール不死長ほどの男がこのチャンスを逃すはずもなく部下たちに指示を出しながら小娘をモーシンデルマートに追い込み、乗り込んだ。
そしてその目に捉えた憎き
ゲボール不死長「GUOOO!!」
高成「喝ッ!
ゲボール不死長「GAAAAAA!?」
全霊を懸けたパンチやスイング、叩きつけ攻撃を、黎嵐によって受け流されたり相殺されたり叩き落されたり・・・まるでお手玉のように弄ばれては、腕を薙刀に絡め取られて強烈なカウンターを入れられている。
なまゾンビはげ「ワルイコハイネガー!!」
高成「木っ端が、俺の相手になるかァ!!」
なまゾンビはげ「グアアアァァァ!?」
ゲボール不死長「なまゾンビはげ!?UOOOOOO!!」
高成「甘い!胴ががら空きにも程があるわ!!」
ゲボール不死長「GYAAAAAA!?」
鬼ゾンビたちは真っ先に全滅し、残った強力なゾンビであるなまゾンビはげの攻撃すら容易く対処され、数を減らされる。他のゾンビたちは近付くだけで消滅する始末だった。
ゲボール不死長たちゾンビたちは、相手の実力を見誤ったという、割とありがちな
・・・
さて、ゾンビどもの攻勢も弱くなってきたな・・・そろそろ潮時か・・・
ところで、先程ユキノがスーパー店長たちに渡した札を覚えているだろうか?アレは、ゾンビの退魔妖術に対する耐性を底上げする代物だ。
高成「臨!兵!闘!者!皆!陣!烈!在!前!」
県内のとあるお寺にて、九字護身法を習った甲斐があったな。
相手は悪霊ではなくゾンビだが、それはオレの特殊な力を持つ眼、
けど、足を洗ったゾンビたちまで消す気は毛頭ない・・・というか、フランシー博士の研究対象が無くなってしまうのはどうなのかとも思うし、何より改心したなら迷惑をかけないように償い続ければいいという俺個人の思想から先程の御札を渡した。
・・・たまたまできた当時はこんな効果いつ使うんだよとも思ったが、まさかこんなところで役に立つとは・・・人生何が必要になるかわかったものでは無いな、全く。
因みに、聖瞳は使い方によってとんでもないことも出来る代物だ。今回使った聖瞳は技の効果の変化と効果範囲の拡大だ。これを使わなかったら、ギリギリモーシンデルマートの駐車場がすっぽり覆う程度の範囲しか効果がない結果となる。
マック「な、なんだありゃあ・・・!?」
トムニャン「ゾンビたちが粒子になって消え始めてるミャウ!?」
フランシー博士「・・・!?何だこの反応は!?まさか、このセントピーナッツバーグにあるゾンビナイトを消滅させるだけの特効エネルギーを彼一人で出し続けているというのか・・・!?」
ゲボール不死長「グゾォ!?ギザマアアアァァァァァァ!?」
最後に俺に襲いかかってきたが・・・
ゲボール不死長「ガッ───!?」
ユキノがゲボール不死長を氷漬けにし、遂にゾンビナイトが終わりを告げたのだった。
その後、スーパー店長やフランシー博士と幾つかやり取りをした後、俺たちはそれぞれ帰るのだった・・・
ちょっと今回マックの性格に矛盾してないか自信はないです・・・が、下手に突っ込ませたらマックがお亡くなりになるのであくまで傍観者として甘んじて貰いました。
さて、今回出てきました聖瞳ですが、攻撃を受けて潰されると自動的に身体が爆発し、最悪の場合死に至るケースもあるとんでもないデメリットがあります。作中にある通り、デメリットを補って余りあるほど強力な能力ではあります。
読んでいただきありがとうございました。