YAMA育ちの妖怪王   作:スルメ文庫

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第五刻目 地縛猫妖怪ジバニャン

ゆきおんな「ふぅ・・・昨日は大変だったなぁ」

高成「・・・お疲れ様。大丈夫だったか?」

ウィスパー「高成くんのお母様、とても張り切ってましたからね・・・」

 

 昨日、俺は半日分ゆきおんなことユキノとウィスパーと父さんと一緒に母さんのショッピングに付き合い、もう半日ほどは武道の鍛錬に使ったのだった。もちろん、宿題の日記は付けてある。

 そして今日、今日の分の宿題を終えて妖怪探しに出かけている。現時点では、ジミーという忍者のような妖怪とダルマのような妖怪であるだるだるま、水の雫のような妖怪であるじめりんぼうに氷のような妖怪であるこおりんぼう、それと狛犬の妖怪兄弟であるコマさんとコマじろうがともだちになってくれた。

 

 そうして、魚屋の近くまで歩を進めるとまた新しい妖怪の反応が2つあった。その妖怪たちは手負いのようだった。

 

「やっぱり、諦めるしかないかニャ・・・?」

「ンなコトねぇって!ぜってーお前の宝物を取り戻すぞ!」

ウィスパー「なにやら様子がおかしいですね・・・って、高成くん!?」

ゆきおんな「ちょっと待ってよ高成!」

高成「なあ、キミたち。」

『!?』

「なっ、なんだテメェは!?」

「オレっちたちがみえてるのかニャン!?」

高成「俺は高成、ウォッチ使いだ。キミたちは誰なんだ?それになにがあったんだ?」

ジバニャン「オレっちはジバニャンニャ。オレっちは死因のトラックに克つためにそっちのグレるりんと一緒に路地裏で特訓をしてたんだニャン。そうしたら・・・」

グレるりん「オレはグレるりんだ。ちからモチとヨコドリにネクラマテングがソイツの宝物の写真を盗んだんだ。当然、取り返すために戦ったんだがな・・・返り討ちにあっちまってよ。」

 

 嗚呼(ああ)・・・久々にムカッ腹が立ってきた。その妖怪たちはきっと俺が最も嫌いなタイプの妖怪なのだろう。意味もなく、ただ己の愉悦のために他者を踏みにじる、(ドブ)川の汚泥にすら劣るゲス野郎だ。

 

高成「なあ、二人とも。そいつら今どこら辺にいるか分かるか?」

ジバニャン「え?えっと、まだ魚屋の裏の路地裏にいるはずだニャンよ?」

高成「そうか。」

グレるりん「オメェ・・・」

高成「勘違いしないでくれ。個人的にムカついたから、お礼参りに行くだけだ。」

 

 そうして俺はその場を離れ、魚屋の裏路地に向かった。するとそこには・・・

 

ちからモチ「アイツら弱かったモチねぇ!」

ヨコドリ「簡単に横取り出来たしいいカモだったドリ〜!」

ネクラマテング「そうそう、アイツらの無駄な努力、笑えたよな!弱い奴がどれだけ頑張っても弱いままなのにな!元飼い主とかいういい女の写真はアイツには勿体ねえよな!」

 

 馬鹿笑いするゲス野郎どもがいた。やはり、好きにはなれん。わすれん帽やダルだるまのように、自分の行動を反省することはなく、むしろ高々と誇らしげに過ちを正当化する。

 

高成「ウィスパー、アレがちからモチにヨコドリ、あとネクラマテングか?」

ウィスパー「ええ。にしても彼らはとんでもなく悪い妖怪ですね。なかなか腹が立つものです・・・」

ゆきおんな「アイツら・・・!」

高成「全くだ・・・行くぞ、ウィスパー、ゆきおんな。」

ウィスパー「はい。ってええ!?」

ゆきおんな「ちょっと高成!?」

 

 二人が止めるが俺は止まる気はない。こんな陰湿な行為は、許されてはならないのだ。

 

高成「おい貴様ら。」

ちからモチ「ん?お前誰だモチ?」

高成「俺は高成。ウォッチ使いだ。ンなコトはどうでもいい。貴様ら、ジバニャンの宝物を盗んだ挙げ句、取り返そうとしたジバニャンとグレるりんに暴行したな?」

ヨコドリ「確かにヨコドリしたけど、それが何か?」

ネクラマテング「大体、奪われるくらい弱いのが悪いんだよ!ザコはずっと奪われるだけ運命なんだよ、あのザコどもずっと負け犬だろうな、いい気味だぜ!」

 

 あいつらの意見を聞くだけで苦痛だ。あまりの下衆具合に吐き気すら覚える。『(あやま)ちを改めざる、(これ)を過ちと()う』とはよく言ったものだ。

 

高成「反省の色を見せるようなら、写真を返すだけで見逃したが・・・おい、ネクラマテング。貴様、弱者は奪われるだけと言ったな。」

ネクラマテング「おう言ったぜ?それがなんだ?」

高成「そうか。なら・・・貴様らも俺に写真と自信を奪われる覚悟があるんだろうなァッ!!」

 

 その瞬間、背中に引っ提げた木刀でカス野郎三人を薙ぎ払って壁まで吹っ飛ばした。そして、ネクラマテングが手放した写真を丁寧に拾い上げた。幸い、写真は傷一つシワ一つ付いてなかった。

 

『ガッ!何すん・・・ヒィッ!?』

高成「オイ、次にこんなことをしてみろ・・・俺の顔が過ぎって二度と悪事が出来ないくらい叩き潰すからな?」

『ヒィィィ!?』

 

 そう言うと、奴らは慌てたように逃げ出した。

 そして俺は自分の手を見る。年齢の割に皮の厚い少しゴツゴツとした手。

 ・・・俺とて、好き好んで暴力を振るっている訳ではない。だが、時には力づくでどうにかしなければならない時もあるのだろう。ましてや妖怪に関わった以上、そうしなければならないことも増えるはずだ。

 もちろん平和が一番だが、世の中悪人はいる。その時相手より弱ければ大切なものが奪われかねん。

 

高成「もっと、鍛えなければな。・・・二人とも、行くぞ。」

ウィスパー「は、はい・・・」

ゆきおんな「う、うん・・・」

 

 そうして俺は、ジバニャンとグレるりんの所へ戻ったのだった。

 

高成「ジバニャン。大切な宝物なんだろ?」

ジバニャン「あ、ありがとニャン!」

グレるりん「アンタ、オレのダチの宝物を取り返してくれてありがとうな。」

高成「どういたしまして。」

 

 ジバニャンは写真を渡したら喜んでくれたが、すぐに落ち込んでしまった。

 

ジバニャン「うぅ、写真一つ取り返せないなんて、やっぱりオレっちはダサいニャン・・・」

高成「・・・なあ、ジバニャン。なんで自分を鍛えていたんだ?」

ジバニャン「オレっちが猫だった頃、この写真の女の子・・・エミちゃんに飼われてたニャン。エミちゃんはオレっちを可愛がってくれて、オレっちはエミちゃんが大好きだったんだニャン。・・・でも、ある日オレっちはトラックに轢かれたニャン。そしてその時、こう言われたんだニャン『トラックに撥ねられるなんてダサい』って・・・」

 

 ・・・確かに、そんなことがあったのなら未練のあまり妖怪になっても可笑しくないな。

 しかし、オレのともだちと執事である二人は余りの言い草に我慢ならなかったのか、今までの沈黙を破った。

 

ゆきおんな「ちょっと!そのエミちゃんって人酷すぎるでしょ!」

ウィスパー「うーん、そのエミちゃんって人、本当に人間ですか・・・?」

グレるりん「テメェらは黙ってろ!」

『!?』

ジバニャン「グレるりん・・・」

グレるりん「お前らは・・・エミのことを知らないからそう言い切れるんだ!!」

 

 なにやら、彼にも訳がありそうだな。でも、その前に謝らなければ。

 

高成「俺のともだちが酷いことをした・・・すまない。二人とも、話は最後まで聞こう。」

ゆきおんな「う、うん。ごめんね、ジバニャン。」

ウィスパー「は、はい・・・すみませんでした、ジバニャン。」

ジバニャン「いいニャンよ。話を戻すニャンが、オレっちは無念の余り妖怪になったけど、妖怪になって暫くしてからグレるりんに出会ったんだニャ。そしてそこで聞かされたんだニャン。『エミちゃんは悲しみのあまりにオレっちに辛く当たったんだ。当たった事をエミちゃんは後悔している』って言ったんだニャ。」

グレるりん「・・・まだ生きていた頃、俺は不良をやっていてな・・・それで雨でずぶ濡れの猫を拾ったんだが、その時にエミに猫の飼い方を教わっていたんだ。その内に付き合うことになったんだ。だから、つい怒鳴っちまってな。まあ、俺はトラックの居眠り運転に巻き込まれてアイツを置いて逝っちまったから、本当は俺に怒鳴る権利はないんだけどな・・・」

高成「・・・そうか、すまないな。辛いことを聞いちまって。」

グレるりん「・・・気にすんなよ。だから俺たちは二人ともトラックに勝てるくらい強くなってエミに会おうって誓ったんだ。」

高成「そうか。なら、俺の家に通わないか?俺の家、筋トレ用品とかの鍛錬の環境が整ってるんだ。良かったら鍛えていかないか?」

ジバニャン「でもオレっちたち、妖怪ニャンよ?」

高成「俺の親は霊感持ちだ。そして既に他の妖怪にも鍛錬に使ってるし、今更妖怪二人増えても大丈夫だ。」

 

 実際、昨日セミまるが鍛錬にやってきている。今更増えても問題はないのだ。そして説得の結果、二人も通うこととなった。そしてセミまるはジバニャンとグレるりんに加え、ジミーという鍛錬仲間に喜んでいたのだった。




読んでいただきありがとうございました。
次回で第一章が終わります。
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