ただ暗く、物静かな宇宙空間──
突如として眩く輝く光が生じた。
二つの戦艦の間で眩い閃光を放っている。
「リフ・ザクアーでるッ」
そう叫び、ベルのワッペンがついた軍人は青色の機体に乗り宇宙空間へ射出された。
地球連邦軍のエースパイロット用に再調整を施したRGZ-95C リゼルC型
いわゆる隊長機である。
「部隊展開。来てるぞ!」
リフ・ザクアーは部下へ指示を出しながら、操縦桿を引いた。
視界の先、袖がついた様なMS小隊が展開している。
「……すでに囲まれたか」
部下たちが応戦する。
一機、また一機と敵を眩い閃光と共に落していく。
だが、それと同等の速度で、味方も削られている。
「無理に応戦するな」
「陣形を崩さず互いの援護が出来る範囲内で戦え!」
ロンド・ベルの大尉。
部隊長。
かつて、ただの新兵だった自分からは、想像もできない立場だ。
部下たちも同様だ。
厳しい訓練や幾つもの死線を共に潜り抜けてきた者達である。
先日、功績が認められ一階級昇任した者もいた。
だが、戦場は等しく残酷だ。
階級も、肩書も、最後には意味を失う。
「……ッ」
部下の援護をして敵MSを撃墜した瞬間、嫌な気配と共に自分以外の時間が止まった様な気がした。
その刹那気配の方向へ目を向けると紫色の機体が目に映った。
初めてそれを感じたのは、ずっと昔の事だった。
気配を感じ、敵の動きがみえる。
──あの時と同じか─
リフの脳裏に、断片的な記憶が走る。
自分が「選ばれた側」だと信じていた時代─
地球連邦軍士官学校を首席に近い成績で卒業し、
適性検査ではMS操縦・空間認識能力ともに高評価。
その結果、彼は一年戦争終戦後も敗戦を認めず、各地で抵抗を続けていたジオン公国軍の残党を掃討することを目的に設立された地球連邦軍の特殊部隊であるティターンズに配属された。
─地球圏を守る精鋭。
─秩序を乱す反乱分子を討つ正義の剣。
そう─信じていた時代
「ザクアー、気を抜くな」
艦長の声に、リフは即座に応える。
「はい!分かっています。」
真っ直ぐで、愚直で、疑うことを知らない。
それが、当時のリフだった。
彼には守りたいものがあった。
スペースコロニーにすむ母と、まだ幼い弟。
戦果を残し、快く帰るべき場所。
そして気に食わないが地球にただ1人残り母と子を捨てた父
そんな父でも父は父だ。
死んでいい訳じゃない。
それらのために、彼は戦うのだと信じていた。
埃やシワの一つもない生地がまだ固い軍服を身に纏い、偉そうなヒゲをした上官へ敬礼をし、宇宙の寒さを知らないパイロットスーツへ着替え、傷一つないMSへ搭乗する。
「リフ・ザクアー少尉 ハイザックでます!」