なんでも一つ願いが叶うらしい(ただしその条件は鬼畜とする)   作:イーサン・W

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めっちゃ遅くなったゲド、生きてます。
不定期にはなるが《アインクラッド》完結までは持っていきたい。


心を砕くアスナ

 

 

「───今日は呼びかけに応じかけてくれてありがとう」

 

 広場の中心で響く爽やかな青年の声。

 自信の感じられる芯の通った声。それにより先程まで雑談などしていた人々の口が止まり、自然と声の主へと視線が集中する。

 

「俺の名はディアベル。職業は……気持ち的に《ナイト》やってます!」

 

 広場での《ボス攻略会議》を呼び掛けた人物であるディアベル。刻は午後3時を指しており、予定通り彼の元、会議が始まった。

 

「……さて。今日はみんなに集まってもらった理由は言わずもがなだけど……俺たちのパーティーがボスの部屋を発見した。俺たちはこのボスを倒しこのデスゲームもいつかクリアできるんだって事を皆んなに伝えなくてはいけない!」

 

 この二ヶ月。ボスの部屋自体が見つからず第一層を攻略出来ていない状況が続いていた。

 その状況が変わるかもしれないという情報は、人々に衝撃を与え、辺りをざわつかせる。彼等にとっては現実への帰還へと繋がる、やっと見えた一筋の希望の光。それをディアベルのリーダーシップを発揮した演説の元、自然と人々の気持ちを高揚とさせる。

 

 

(ディアベル………か)

 

 そんな彼等を尻目に俺は静かにディアベルを見つめる。

 今までは画面越しで見ていた彼が振る舞う仕草の一つ一つ丁寧に。

 

 俺は彼のこの先について考えていた。

 

 彼を待っているこの先の運命は、酷く呆気なくそして残酷な物だ。LAボーナスを狙い、一人ボスに突撃し、そのまま一太刀浴びせられ殺される。

 

 出しゃばってしまったが故に、彼は殺された。

 出る杭は打たれるようにディアベルは殺されたのだ。

 

 だが彼がそんな事をしたのには訳がある。

 ディアベルがLAボーナスを狙ったのは、ただ個人の利益の為ではない。このSAOで今尚訳も分からず混乱する人々を導く騎士としての力を望んだ為の物だった。ベータテスターである筈の彼はビギナーを見捨てず、導き戦おうとしていたのだ。

 

 だからこそ、俺は彼を理解しなければならない。

 

(コイツが死んだら俺が帰れんくなるかもしれんし)

 

 ディアベルが突っ込んで死ぬ。

 ミッションクリア失敗。

 俺が帰れなくなる。

 

 こんなので俺が帰れなくなったらたまったもんじゃない。

 頼むから大人しくしていて欲しい物だ。

 

 

 ふと視線を横に傾ける。

 そこに映るのは黒髪の少年とフードを深く被った少女。

 

 キリトとアスナ。

 

 原作通りにいけば彼ら二人が今後のキーマンとなる。

 彼等も決して死なせてはいけない。あの二人が死ぬということは、この先に地獄が待っているということだ。希望も未来もない。そして俺も元の世界に帰れない。

 

 だから絶対に死なせてはいけない。

 

 

「────ちょお待ってんか!!」

 

 ディアベルが攻略会議を進めようとするその時、低い男の声が会議を中断する。目を向ければそこには独特なトゲトゲ頭をした男、キバオウが居た。

 

「ワイはキバオウってもんや。ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある。よく聞け!この中に今まで死んでいった1800人にワビを入れなあかん奴らがおるはずや!」

 

 キバオウの発言に周囲がどよめく。

 キバオウの言うワビを入れないといけない人物。

 すなわちSAO内にいる一般プレイヤーではなく、ベータテスターを指して言った言葉。

 

 それにキバオウはいきなりワビを入れろと言ったのだ。

 

(お〜遂に来たか。この後のなんでやっ!!も聞けるかな?)

 

 そんなキバオウを他所に、俺はというと実際にネットミームとなるキバオウのセリフを聞けて感動をしていた。

 動画とは違い、実際に間近で見るとなるとやはり心に響く物がある。キバオウの発言はきっと名言だったに違いない。ん?迷言の間違い?名言に決まってるだろ!

 

「キバオウさん。君の言うやつらとはつまり……元ベータテスターの人たちのことかな?」

 

 ディアベルが冷静にキバオウの言葉に対応する。

 ディアベルもベータテスターの筈だが、顔にその事を悟らせるような物を浮かべないのは流石と言った所。

 彼がリーダーとしての度胸と手腕を持ち合わせていることが再確認できる。

 

 堂々とシラを切るその魂胆は見習わないといけない。

 

「その通りや!やつらはウマい狩り場やクエストを独占しくさった!ビギナーを見捨てたんや!!こん中にもおるはずや!そいつらがワビ入れて独占したモン差し出さんとパーティーメンバーとして命は預けられん!」

 

 キバオウの支離滅裂とは言わないでも暴論な主張。

 

 実際にベータテスターたちにはビギナーたちにはないこのSAO内での色々な知識がある。なので当然ベータテスターたちはビギナーたちを置いて先へと行ってしまう。

 それによりベータテスターたちはどんどん先へと進み、ビギナーたちはどんどんと置いて行かれる。

 

 キバオウはその不公平に不満が溜まっていたのだろう。デスゲームとなればなおさらだ。

 

(はあーーやってらんね!マジお家に帰りたい!)

 

 だがぶっちゃけるとそんな事は俺からするとどうでもいい事だ。

 

 ベータテスターたちはこのSAOの狩り場やクエストを独占してるとキバオウは言っているが、ビギナーたちだって情報や狩り場を手に入れようと思ったら、情報屋の作ったガイドブックでいつでもそれらを手に入れる事が出来た。

 

 だが実際には死を怖がり街に引き篭ったりするビギナーが多数だ。

 

 それなのに多くのプレイヤーが死んでいるというのは、それはキバオウの言うベータテスターのせいではなく、そいつ等自身の責任だろう。少なくとも俺はそう思ってる。

 

(あっ……エギルだ)

 

 俺がそんな事を考えていると、キバオウの言い分に発言を申し立てる褐色の大柄な男が出てきた。

 

 原作登場人物である作中切手の善人であるエギルだ。

 

「───発言いいか?」

「なっなんや!!」

「俺の名はエギル。キバオウさんあんたの言いたい事はつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったからビギナーが大勢死んだ。その責任をとって謝罪・賠償しろということだな?」

「そ……そうや!」

 

 キバオウの言った事をエギルは棘はあるが分かりやすく簡潔にまとめる。

 そしてそのエギルのガタイのよさと威圧にキバオウはたじろいでしまうも、なんとか声を張り上げ虚勢を張る。誰だっていきなりあんな大男を前にしたらビビるだろう。原作知識がなかったら俺だって余裕でビビって逃げていた。

 

「……あんたはそう言うが金やアイテムはともかく情報はあったと思うぞ」

 

 エギルがそう言いながら懐から一冊の本を取り出す。

 

「このガイドブック、あんたも貰っただろ…?道具屋で無料配布しているモンだが、配布していたのは元ベータテスターたちだ」

 

 周囲の人々が驚愕し辺りが騒つく。

 大方このガイドブックは元から道具屋で無料配布されていた物だと殆どの人は思っていたのだろう。

 

 だが実際には、このガイドブックは情報屋の《鼠のアルゴ》によって作られている。彼女の元ベータテスター時代の知識を利用して作られたこのデスゲーム第一層の攻略本の筈だ。このガイドブックによって救われた人はこのSAO内では数多く居るだろう。

 

「情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのに、大勢のプレイヤーが死んだ。……だが今はその責任を追及している場合じゃないだろ。生きている俺たちは、これからどうボスに挑むべきなのか、それがこの場で論議されると俺は思ってたんだがな」

 

 彼はキバオウの主張を上手く丸め込み、話題の逸れていた攻略会議本来の目的へと話を主導して戻していく。

 

 流石はエギルさん!優秀!有能!そのクリーミーな頭がカッコいい!俺のミッション肩代わりして♡

 

「───よし。これ等を踏まえてレイドの構成をしよう。まずは自由にパーティーを組んでみてくれ」

 

 俺が心の中で熱い声援を送っている間に、いつの間にか会議は終盤へと来ていたみたいだ。

 ディアベルの指示により次々に周りの奴がパーティーを組み始める。

 

 だがここで慌ててパーティーを作る必要はない。

 

 俺は既にパーティーを組みたいと思っている人物には目星を付けている。

 何処かの主人公とヒロインのようにコミュ障でアブれるようなやわじゃないって事だ。

 

「エギルさ〜ん!良かったら俺と一緒にパーティー組みませんか?」

 

 俺は純粋無垢な爽やか青年のようにエギルの元へと駆け寄り、パーティーを組まないかと提案する。

 理由としては、個人的にエギルと交流しておきたいという思いもあるが、彼とは今後の事も考えると色々とお世話になると思うのでこの場で媚を売っておきたいというのも本音。

 

 俺は全力でゴマを擦りながらエギルへと媚を売る。

 

 これにより俺がアブれるという事はなくなり、キリトとアスナのパーティーに行くという事もなくなるだろう。流石に俺もあの将来夫婦になるであろうあの二人に割って入るのは色々とキツい。傍観しているのが一番なのだ。

 

「あー、すまんなあんちゃん。悪いが既に俺はパーティーを組んでてな。定員オーバーなんだ。悪いが他を当たってくれ」

「え?」

 

 予想のしてなかった返答が返され俺は思わずフリーズしてしまう。断られるなんて微塵も考えてなかった故に思考が停止してしまう。

 

「えっ?マジっすか?」

「ああ。もう6人でパーティーを組んじまった」

 

 俺は深呼吸をして冷静に周囲を見渡す。

 周りを見渡せば既にパーティーを組み終えている人々の数々。そして残っているのはアブれてしまった俺とコミュ障ズ。

 

 これがパーティーを組む時の闇。奇数の人数しか居ないのに偶数のペアを作れとか言う先生の残酷さ。

 

(こんなことがあっていいことなのか?!許さんぞ!茅場晶彦!!)

 

「あ、あんたもアブれたのか?なら良かったら俺たちとパーティーを組まないか?」

 

 俺が呆然として一人突っ立っていると後ろから声が掛かる。

 振り返るとそこにいるのは、憐れみと同情を含む視線を向けたキリト。どうやら一緒にアブれた仲間認定されたみたいだ。全く嬉しくない。

 

「是非……よろしくお願いします……」

 

 キリトたちと組むしかなくなった俺は泣く泣くと首を縦に振る。

 

 畜生!結局キリトたちのパーティーかよ!

 しかもさっきからなんかアスナさん凄い睨みつけてきてるし! 

 

(俺何かした心当たりはないと思うけど…………あっ)

 

 俺が過去の記憶を遡っていると一つ心当たりのある記憶が思い浮かぶ。

 そういえば俺が前、散々馬鹿にして助けたプレイヤーも丁度アスナのようなフードをしていた筈だ。そうこのような記憶に残りやすい赤色のフード。

 

 

 Q あれってアスナさん本人だったんですか?

 

 A 本人だったみたいですね。

 

 

 うん。バリバリ心当たりあるわ。

 

 やべぇよ。調子乗って説教じみたこと変に言っちゃったよ。後で泣いて詫びたら許してくれるかな?

 

「えーと、もう一人の方もよろしく?」

「……………」

 

 無 視!!

 

 あーこれはもうダメですね。

 試合開始どころか既に試合終了してました。

 

 何気に女子に無視されるって傷つきますね。

 俺のガラスのハートが木っ端微塵になりました。責任取って俺のミッション肩代わりしてください。

 

「と、とりあえず送るぞ」

 

 俺とアスナのギクシャクした様子を見て、キリトが若干顔を引き攣らせながらパーティ申請を送る。

 そんな顔をするなら助けてくれよと言いたい所だが、今のキリトはアスナとほぼ関わった事がないコミュ障。助けは期待できないだろう。それでいいのか未来の夫。

 

「───ん?」

 

 俺がパーティの申請を受理すると共に視線の端にパーティの成立として『Kirito』『Asuna』と名前が表示される。

 ただそれと同時になにやらキリトが怪訝そうな顔を浮かべた。

 

(あー、もしかしなくてもこれだよな………)

 

 自身のプレイヤーネームである『a』。

 神様が絶対に適当に付けたであろう簡潔な名前。

 

 キリトはそれを見て『a』ってネームつける奴居るんだと思うと同時になんて呼べばいいのかがわからなかったのだろう。

 

「あー、俺の事は好きに呼んでくれ」

「因みになんでその名前に?」

「なんでなんだろな、逆に俺が知りてぇ」

「ええ………」

 

 キリトが若干引いた顔をするが知らない物は知らないんだからしょうがない。

 自分の勝手なネームには不満しかないが、そこはもうこの二ヶ月で割愛済みだ。いつかこの世界に連れて来た奴をブチ殺したいと思っている。

 

「───君たち三人はパーティーかな?」

「……ああ」

「なら君たちには取り巻きのコボルト潰しのサポートをお願いしていいかな?これも重要な役目なんだ」

「了解」

「すまない……助かるよ」

 

 俺たち三人のパーティーを見て、ディアベルが俺たちがすべき役割を伝えに来る。ただその役割はコボルト潰しという名の戦力外通告。俺たちにはボスと戦うチャンスは与えられなかった。

 

「不満そうな顔だな」

「シワが増えるぞ」

「……どこが重要な役目よ。戦力外って言ってるようなもんじゃない。後貴方は黙って」

 

 アスナは不機嫌となっていた。

 ボスと戦えると言われてこの場所に来たのに任された役割はただのコボルト潰し。アスナにとっては本末転倒だったのだろう。

 後、更にアスナの俺を睨む眼つきが鋭くなった。

 

「3人しかいないパーティーじゃ仕方ないよ。スイッチで《POTローテ》しようにも時間が足りないだろうし……」

「……すいっち?ぽっとろーて……?」

「知らないのか?」

 

 キリトの言い分にアスナがポケッとした顔をしながら首を傾げる。どうやらスイッチと《POTローテ》の意味がわからないらしい。

 

「スイッチはアレだ……一人目が体勢を崩して、二人目が交代して追撃するみたいな感じだ。簡単に言うとな。ソードスキルを発動した後の硬直時間を守る為でもある。それと《POTローテ》ってのは前衛を交代しながら下がったメンバーが後ろでポーションでHPを回復する戦法の事だな」

「貴方には聞いてない」

「へいへい、そうですかー」

 

 アスナが分かっていなかった為、一応説明したが好感度が0に等しい俺は冷たく言葉を返されるだけ。

 あらやだ、今日は雨なのかしら。目からお水が垂れそう。

 

「ははは……、細剣使い(フェンサー)さん知らないみたいだし、丁度いいから外に出て3人で練習をしようか」

 

 

 

 

 

 

 

「───スイッチ!」

 

 俺が敵のヘイトをかい、その隙をキリトが突き、アスナがスイッチでトドメを刺す。この流れで敵を倒す事、計数十回。敵を倒しながら俺は密か感嘆していた。

 

(ははっ……スゲェな……)

 

 キリトとアスナ。この二人の剣技は速く美しく綺麗で正確。自分とは違う明らかな才能の差を直で感じ取る。

 自分もある程度の強さはあると自覚してはいたが、二人の強さはまた一皮も二皮も違った。俺が敵を流れるように倒せているのはこの二人のおかげである部分が大きい。

 

(妬けるな、流石は主人公たちって所か………)

 

 本当に本当に妬けてしまう。

 自分は必死こいて着いて行くだけで精一杯だ。

 

(アレッ?──そういえば茅場ってキリトレベルの実力者じゃなかったっけ?)

 

 ここで俺は気づく。

 茅場倒すの俺じゃあ無理ゲー過ぎるくね?

 これは本当にクリア出来るミッションなのでしょうか?

 

 ボブは訝しんだ。

 これじゃあ勝つ事なんて無理じゃね、と。

 

 ミッションのクリア条件であるラスボスの討伐。

 それは自分が倒さなければいけないのか、キリトが倒してもいいのかはクリア判定がよくわからないが、不安がある為なるべくラスボスは自分の手で倒したい。

 だがそのラスボスの実力はキリトまでとは言わずども、アインクラッドでは最強格の実力者。

 

 あらやだ。今日は多雨なのかしら。

 先の事を考えていると目からお水が溢れてくるわ。

 

「……あの人、何泣いてるの?」

「さあ……?た、多分放っといて平気だろ」

 

 仲間も辛辣過ぎて辛いわ。

 

「そろそろいい頃合いだし、明日のことについて酒場で話をしないか?」

「奢りならオーケー」

「嫌……誰かに見られたくない」

 

 キリトたちと練習を始めて早30分。

 そろそろいい頃合いかとキリトが明日のボス攻略での話し合いを提案をするが、俺たちと一緒に居る所を見られたくないアスナは即一蹴。

 流石のキリトもこうもストレートに言われると流石に傷つくのか何やら胸を押さえている。

 

「ならどっかのNPCハウスとか……でも誰か入ってくるか。誰かの個室ならカギをかけられるけど……ナシだよな?」

「当たり前でしょ」

「じゃあ俺だけが知ってる上手い酒場とかはどうだ?あそこのミルクは程良く甘くて美味しいぞ」

「嫌……。貴方と一緒に居るだけでも無理なのに」

「キリト悪りぃ。辛えから帰るわ」

「待て待て待て!」

 

 原作初期のアスナさん辛辣過ぎないですかね。本当にこの先に母性溢れる美人になるんですか?もう既に何回俺のガラスのハートを粉砕されたか判らないぞ。

 

「涙が止まらないぜ……!」

「汚れるから涙垂らさないでよ」

 

 人の心とかないんか?

 お前あれだろ禪院の血流れてるやろ。性格があかんわ。

 

「お、俺が借りてるとこは2部屋あって風呂もあるけど、どうだ?」

 

 俺がアスナ禪院家の血流れてる説を考えていると、キリトが場の空気を変えようと自身の部屋の話をし出す。

 

 するとどうだろうか。

 先程まで不機嫌オーラを醸し出していたアスナがピタリと止まり、キリトの発言に耳を集中させている。

 

「───して」

「ん?」

「貴方のとこで……お風呂……貸して……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「───なあキリト」

「なんだa(エー)

「俺はどういう気持ちでこの場に居ればいいと思う?」

「俺が知りたいかな」

 

 一つの部屋に男二人と女一人。

 そしてその女は今入浴中と来た。

 

 普通に事案案件である。

 

「まあアレだ。落ち着こう。変なこと考えるのがいけないんだ」

「そ、そうだな」

「じゃあアレだ。ますは話題から変えていこう。好きな女のタイプはなんだ?俺は(ケツ)身長(タッパ)がデカい女が好きだ」

「おい」

 

 話題を変えようとしたらツイ女体の方へと思想が引っ張られてしまう。落ち着け俺。この二ヶ月息子とご無沙汰がなかった仇がココで来てしまっている。

 すぐ近くの一枚扉の向こうでは美少女が裸になって風呂に入っている。女性経験のない俺は無論それに耐性がある訳もない。今も必死に自身の相棒を鎮めている。

 

 扉の向こうではアスナが裸。

 

 まごうことなき産まれたままの姿───

 

「まずいまずいまずいまずい。……相手はあのアスナだぞ?落ち着け、落ち着け、落ち着け。まずは神に祈るんだ。仏様、イエス様、神父様、ご先祖様、聖母マリア様、エジプトの太陽神様、天地神明様、野獣様。どうか我をお助けください」

 

 ついでにこのクソみたいなミッションからも。

 

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