なんでも一つ願いが叶うらしい(ただしその条件は鬼畜とする)   作:イーサン・W

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 こんな小説に評価をしてくださってありがたい。
 地道に頑張っていきます。


ボス攻略

 

 

 迷宮区の最奥。

 重厚の扉の前で揺れる松明の灯りに燈されながらディアベルは覚悟を決める。

 

「───聞いてくれみんな。俺から言うことはたった一つ……勝とうぜ!!」

 

 行くぞ、という掛け声と共にボス部屋の扉を開き、ゾロゾロと大人数で中へと進入する。

 

 目の前には此方を鋭く見据えるこの第一層のフロアボス《イルファング・ザ・コボルト・ロード》。ディアベルの命を奪い取った始まりの層のボス。

 

 その壮観な巨体と威圧、雰囲気からこのフロアを統べるボスだということを肌でピリピリと感じさせる。

 

 あ〜もうやだやた。もうお家帰りたい。

 

 コボルトの王は堂々と侵入して来た不届者である俺たちに制裁を与えるべく、その重い腰を上げた。

 

『ガァアァアア!!!!』

 

 ボスの怒号の咆哮と共に護衛兵(センチネル)が三体召喚さる。

 向こうは此方を殺す気満々。

 

 戦闘の始まりは、護衛兵(センチネル)が襲い掛かって来たのを合図に始まった。

 

「さっすが主人公……やるねぇ」

 

 真っ先に敵へと飛び込んだのはキリト。

 目の前にいる護衛兵(センチネル)を蹴散らさんと先制攻撃を仕掛け、見事に縦一線に斬り込む。俺はそんなキリトの後に続き、スイッチをしてソードスキルで追撃。アスナには他の護衛兵(センチネル)のカバーを任せた。

 

「皆んな!彼らに続けー!!」

 

 ディアベルたちが一歩遅れて俺たちに続く。

 ボス攻略の障害となる護衛兵(センチネル)はキリトたちや俺が足止めしてる。邪魔となる障害がないディアベルたち複数の部隊は早速ボスへと突撃し、戦闘を開始した。

 

「スイッチ!」

 

 アスナの掛け声と共に後ろへとバックステップする。

 するとアスナはバッと目の前に飛び出し、閃光の様に鋭い突きを護衛兵(センチネル)へと滅多刺し。早々に三体の内の一体を始末した。

 

「流石だな。惚れちまいそうだ」

「貴方に褒められても何も嬉しくない。それに貴方に惚れられるとか本当に最悪だからやめて」

「なあ、俺そろそろ本当に泣いちゃうよ?」

 

 相変わらずのアスナの好感度だがこの際は気にしない。

 今後このまま仲良くキリトとイチャコラしてくれていればそれでいい。

 

 だが本音を言えば、仲良くはなっておきたかった。

 しかしここまで嫌われているとなると致し方ない。美少女に嫌われるのは普通に堪えるが、まあ慣れだ。

 

「うおおおお!!!」

「これでも喰らいやがれ!」

 

 護衛兵(センチネル)を捌きながら、横目にボスの様子とディアベルの様子を見張る。ボスのHPはまだ中間も切っていないレベル。だがこのまま順調に行くと後数分もしない内に、ボスの残りHPは少しとなるだろう。

 

(ここからが正念場だ)

 

 このまま原作通りに行くとディアベルがラストアタックボーナスを狙いに、ボスへと単独突撃をする。ボスはそれと同時に武器を《野太刀》へと切り替え、全体スタン攻撃をする筈だ。そして動けなくなったディアベルに重い一撃を叩き込み、その命を刈り取る。

 

 俺はこれを阻止しなければいけない。

 

「待って。貴方何をするつもりなの?」

 

 俺がいつでも駆け出せるよう準備していると、横から不審な顔をしたアスナが問い掛けてくる。どうやら俺が何かしようとしているのがバレたみたいだ。

 

 うーん、なんでバレたん?コワ。

 

「別に?何もする気はないけど?」

「嘘よね、それ」

「なんで分かるんだ?」

「だって貴方ずっとボスの方を気にしてるじゃない」

 

 適当に誤魔化そうと思ったが観察眼の鋭いアスナには通用しない。バレないよう心掛けていたのだが、爪が甘かったのか。ここでの変な誤魔化しは無意味そうだ。

 

「それで何をするつもりなの?パーティメンバーとして迷惑をかけられるのは困るのだけれど」

 

 アスナの中では、この後俺が何かをするというのは確定事項なのかそれを前提とした話をする。俺の事を嫌ってるくせに、こういう所は理解してくるのは謎だ。

 

 俺はボスを横目にチラリと見る。

 HPは残り後少しで一割、この後すぐに武器交換とスタン攻撃が襲い掛かって来る。猶予はもうない。

 

「何をするつもりなのかだったよな、アスナ?」

 

 ディアベルがボス目掛けて駆け出していくのが見える。

 だがここですぐ追いかける事はしない。慌てて追いかけてもディアベルと一緒に仲良くスタン攻撃でお陀仏だ。

 

 ならどうするか?

 

 スタン攻撃を回避出来るギリギリの範囲。それをアドリブで見極め、ボスとの間合いを一気に詰める必要がある。

 

 一か八かの一回だけの賭け。

 失敗すれば俺も死ぬ可能性もあるだろう。

 

 だがそんなことは気にしない。気にしてはいけない。

 

 俺が元の世界に帰る為に。

 

「じゃあ今から少しディアベルの救済に行ってくるわ」

「ちょ、待ッちなさい!!」

「カバーよろしく!」

 

 突進技であるソードスキル《レイジスパイク》を発動しながら超スピードでフィールドを駆ける。ボスのスタン攻撃の範囲は見誤りがないよう細心の注意を払いながら、ボスとの距離を縮める。

 

 ディアベルがスタン攻撃で動けなくなるのが見える。

 周りが息を呑むのが見える。

 キリトのディアベルへの「後ろに飛べ」という叫び声が聞こえる。

 

 

 ボスの咆哮とスタン攻撃。

 

 俺はギリギリ、スタン攻撃の範囲外。

 このままのスピードで駆け抜ければ間に合う。

 

「そこを退けェー!!ドブカスがああ!!」

 

 己を奮い立たせんと叫びながら、ディアベルに今振り下ろさんとするボスの攻撃を発動中のソードスキル《レイジスパイク》でパリィする。

 

 だがここで終わりじゃない。

 

「ガアアァアア!!!」

 

 邪魔をされた怒りからか更に重いニ撃目を、俺とディアベル目掛けてボスは振り下ろす。ソードスキルの硬直時間はボスが叫んでいる内に溶けた。

 

 俺は即座にソードスキル《スラント》を使い、ボスの二撃目もパリィする。

 

「アスナ!」

「スイッチ!」

 

 バランスを崩したボスに追撃を仕掛ける。スイッチをしたアスナのソードスキルによる突きのお見舞いだ。

 

「勝手に突っ走らないで!」

「そりゃすまんな!」

 

 アスナがソードスキルの硬直時間で動けない間のカバーをしながら、俺が再度ボスのヘイトを稼ぐ。そして後ろで尻もちをついて動けなくなっているであろうディアベルに背を向けたまま言葉を投げかける。

 

 背中で語る漢ってやつだ。実際は違うけど。

 

「ディアベル。LA狙うのはいいと思うが急ぎ過ぎたな」

「君は……どうしてそれを……」

「さあ、なんでだろうな?まあとりあえず早く立ってリーダーとして指揮してくれや。このままじゃ俺が死ぬ」

 

 現状、先程の情報にないボスの行動とディアベルが死にかけたという事実に俺とアスナたち以外の他の攻略組は動揺や不安で動けない状態にある。

 気付いたらキリトも参戦してくれているが、流石にボス相手では三人では限界がある。二度目のスタン攻撃が来たら他からのカバーがなければ即お陀仏だ。

 

 俺としてそんなのはごめんなので早い所、ディアベルには戦線復帰してもらいたい。というか早くして欲しい。このままだと僕ちんボスに殺されて死んじゃう。

 

 うぇーん。そんなの嫌だよママー。

 

「おいキリト!スイッチ!」

「すまん……!」

「気にすんな!」

 

 キリトをカバーする形で前に飛び出し、ボスの懐目掛けて身を寄せる。そしてそのまま腹を一文字に切り裂き、そのまま流れるようにソードスキル《ホリゾンタル》で一閃。ボスの腹を二回も剣で切り裂く。

 

 お前の腹わたを見せて♡(物理)

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!!」

 

 自身の周りを彷徨く小賢しい虫ケラに、二回も腹わたを切り裂かれた怒りからか、ボスは怒号の咆哮を上げる。

 そして野太刀を真上へと振り上げ、再度スタン攻撃を発動しようとする。

 

「ッ?!まっず!……アスナ!!」

「きゃ?!急になに?!!」

 

 キリトは先程のスイッチでギリギリスタン攻撃の範囲外に居る。だが俺とアスナはボスの有効射程ドンピシャ。このままでは仲良くスタン攻撃を喰らうことになる。

 

 このまま仲良く大人しくやられるのは癪だ。

 

 ならどうするか?

 

 自身の命を顧みず女を守ってこその漢。

 アスナへの好感度も稼げつつ、命の安全を保証出来る。

 

 正に一石二鳥!

 

 俺は即座に近くに居たアスナの首根っこをフードごと掴み、キリトの方へとぶん投げる。

 

「ーーー!!!」

「悪りぃな!アスナ!後でなんか奢るから許してくれ!」

 

 アスナをキリトにシューティング⭐︎

 これによりスタン攻撃を喰らうのは俺だけとなる。

 

「ッ…………」

 

 ボスの地面へと振り下ろされた一撃による衝撃波により身体が上手く動かせないスタン状態へと俺は陥る。

 それを見たボスはニヤリと顔を歪めて、俺にトドメを刺さんと野太刀を勢いよく振るう。

 

 このままでは俺の上半身と下半身はオサラバ、サイナラ、『dead end』。分かりやすく言うならば死ぬ。

 

 本末転倒──なんて事はない。

 なんて言ったって俺はあの人を信じているから。

 

 だがらここで絶望したりすることはない。

 きっと()()()が助けてくれる筈だ。

 

「ウオオオ!!!」

 

 己に振るわれる筈だった野太刀を既の所で巨漢の男が斧と怪力で弾き飛ばし、俺の命を救う。目を向ければそこにはエギルが斧を構えながら立っていた。

 

(エギルさあああん!!助けてくれるって信じてたよ!!)

 

 流石エギルさん!そのキューティーでダンディーでクールな頭も今日は一段と光って見える!カッコいい!命の恩人!アスナよりも惚れちゃいそう!

 

 自身の命を救ってくれたエギルに最大限の感謝を心の中でする。流石はSAOの中の屈指の善人だ。俺が女なら惚れていた。あっ、でも無理か。この人既婚者じゃん。

 

 NTRは悪。

 

「お前たちが回復するまで俺たちが支える!」

 

 エギルがそう言った直後、怯んで動けなくなっていた面々が一斉にボスへと立ち向かっていく。どうやらディアベルとエギルが上手くやってくれたようだ。

 

 諦めの感情が出ていた人々を再度奮い立たせるリーダーとしての力。俺には全くない力。やっぱりディアベルを救うのは正解だったみたいだ。

 

「A隊・B隊はボスを囲んで側面を突く用意!次の攻撃に備えて、C隊は下がれ!怯むな!絶え間なく攻撃を与え続けろ!」

 

 ディアベルの的確な指示の元、ボスにダメージが与えられていく。

 

 それにより俺の安全も一時的に確保され、一安心という所だ。

 インベントリから回復ポーションを取り出し、その甘苦い様な、酸っぱい様な、なんとも言えない味を感じながら、一時の安泰に浸る。

 

 うーん順調順調。

 このままキリトがボスにトドメを刺せば終わりだ。

 

「───なんで」

 

 一瞬にして奪われる俺の安泰。うーん泣けるね。

 目を向ければそこには何やら機嫌がよろしくないアスナさん。俺に何か言いたい事があるみたいだ。

 

「なんであの時、私を助けたの?……私なんかに構って死んでたかもしれないのに」

「まあ……あれだ。それは俺が()()()()()()だった。だから別に俺が死んだ訳でもないし、あんまり気にすんなよ」

「なら…なら!せめて私たちを頼って……パーティーメンバーでしょ?私はもう貴方に貸しを作るのは嫌なの」

「そんな貸しなんて忘れちまえ」

「私はそれでよくないの!」

 

 隠し切れない善人感がアスナから出ている。

 あーキリトいいなぁ。俺もこんな美少女に好かれたかったわー。元の世界だと女子とあんまり関われてなかったからなー。元の世界に帰れたらナンパでも覚えようかなあー。

 

「じゃあ俺に何かあったら一回だけ助けてくれや。それでチャラな」

「……わかったわ」

「んじゃ…俺はキリトの援護行ってくる」

「ちょ、また?!」

 

 HPがある程度回復した俺はボスと戦っているキリトの元へと駆け出す。

 流石に任せっきりってのは良くないからな。最後にキリトには決めてもらわないと。

 

 ボスが再度スタン攻撃を仕掛けようと武器を振り上げ宙に舞うのが見える。

 それを見た俺はソードスキルを発動させながら、ありったけの力を腕に入れる。

 

「そう何回も好きにやらせるかよ!!」

 

 ボスの真下へ行き、その勢いよく振り下ろした野太刀と、俺のありったけの力を込めた剣がぶつかり、相殺する。

 これでスタン攻撃はキャンセル。クーリングオフだ。

 

(後は任せたぞ、主人公たち!)

 

「キリト!アスナ!今だ、やれ!!」

「スイッチ!!」

 

 キリトとアスナが勢いよく前へと飛び出す。

 

 アスナがガラ空きのボスの腹目掛けて、ソードスキル《オブリーク》を発動し、高速の突きをお見舞いする。

 そして最後にキリトがソードスキル《バーチカル》で縦一閃。ボスのHPバーが0に達した。

 

 俺たちの勝利。第一層攻略完了だ。

 

「ウオオオーーッ!!」

 

 辺りから歓喜の歓声が上がる。

 この二ヶ月間、全く達成されなかったボス攻略が遂に達成されたのだ。

 

(よし!一旦やる事は済んだな!)

 

 俺はこの祝福ムードの中、ひっそりとディアベルの元に急いで向かう。

 俺は面倒事に巻き込まれるのはゴメンなのだ。

 

「ディアベル………後は任せたぞ」

「え?それは一体どういう……ってちょ?!」

 

 この祝福ムードで、誰も彼もが浮かれている中を抜けて、俺はダッシュで第二層に繋がる通路へと駆け出す。キバオウの「なんでやッ!!」はビーターであるキリトが対応してください。俺は知りません。

 

 何度も言うが俺は面倒事は嫌いなのだ。

 この俺に課せられているミッションも面倒事なのは間違いないが、それは避けられないから致し方なしでやってるだけ。避けられるやつは全力で避けるに決まっている。

 

 という訳でアデュー。

 

 後でキリトたちには何か奢るから許してちょ♡

 

 

 

 

 

 

 

 

「───フゥー……とりあえずサクッと第二層の探索しよっかなぁ」

 

 第二層に繋がる扉を開けて見えた景色は太陽の光が沈みかけている夕暮れ。されどその瞳に映る景色は美しい絶景の谷々。感覚だが空気も些か美味く感じる。

 

 気分がとても良い。

 

 キリトはいいのかって?

 ディアベルが生きてんだから平気でしょ。多分。

 

「スゲーッ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーに………よ?!」

 

 空気を勢いよく吸っている最中、視界にクリーム色の長髪が目に映る。うん。誰がどう見てもアスナさんですね。

 

「あ、アスナさん……は、早かったですね………はは」

「何処かの逃げた誰かさんと違って大変だったけどね」

「へ、へー。そりゃお疲れっした。………それじゃ」

「待ちなさい」

「ウゲッ?!」

 

 面倒な事だと予感した俺は咄嗟に逃げ出そうとするが時すでにお寿司。普通に捕まった。

 

「な、なんでしょうか?」

「貴方なんで私の名前知ってるの?私あなたに名前言ってないし、貴方のも聞いてない。どこで知ったのよ?」

 

 えー。これキリトさんとアスナさんのイベントじゃないっすか。いいのか?お前の嫁さんコッチに来てるぞー。

 

「視界の左端に名前とかステータスが書いてあるっすよ。へへ」

「その喋り方やめて」

「あ、はい」

「a……こんな簡単な名前、誰も付けてないんじゃないの?」

「だよなぁ」

「なんで貴方が共感してるのよ」

「まあこっちにも色々あるのよ」

 

 ほんと、どうせなら《joker》とか《SKULL》とか《eternal》とかカッコいい名前を付けたかったよ。なんだよ《a》って。RPGじゃあるまいし。

 

「私、貴方にお礼を言いに来たの。癪だけどね」

「別に礼なんて………」

「いいの!言わせて。貴方に助けてもらった事は事実だし、しっかり礼を言っておきたかったの」

「あ!じゃあ奢りはチャラで──」

「それはダメ。後で何か奢ってもらうから。それじゃ、またねa(エー)くん」

「ああ……またな」

 

 言いたいことを言ったアスナは背を返し、歩いていく。

 そんな背中を見つめながら俺は密かにある事を思う。

 

(俺元の世界に帰ったら絶対美少女と付き合お)

 

 尚それは自分がそれに見合うイイ男であればの話だ。

 無論それに俺が満たしている筈もない。

 

「さて、また俺もレベル上げて人助け再開といこうかな」

 





 キバオウの「なんでやっ!!」はディアベルが鎮圧しました。
 なのでキリト君はビーターでもなんでもありません。
 ただし真っ先に逃げ出した主人公は周りから印象が少し悪くなってます。自業自得だね。



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