なんでも一つ願いが叶うらしい(ただしその条件は鬼畜とする)   作:イーサン・W

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沢山の人に読んでもらってマジ感謝です!
寝て起きてランキング見たらビックリして、朝飯が消えました!


過労死しそう

 

 

「───攻略組第27層突破……か」

 

 新聞に書かれた内容は、今回も攻略組によって層が突破されたという報告。その際の『今回も死者なし』という報告も見慣れたものだ。

 

 俺はそうデカデカと書かれた新聞を見ながら酒場で一休みをする。

 

「あー……多分アスナ怒ってるだろうなあー」

 

 こうやって酒場でダラダラしている時点で察せるかもしれないが、俺はここ最近のボス攻略には参加していない。

 

 ここで勘違いしないで欲しいのが、俺がミッションクリアを諦めたとか、SAOクリアを諦めたとか、そうではないのを覚えておいてくれ。

 

 まああれだ。俺がボス攻略に参加しない理由としては、40層ぐらいまではボス攻略において死者が出ないからだ。というかクォーター・ポイントである50層までは死者は出ないんじゃないだろうか。

 

 俺のミッションである『多くのプレイヤーの救済』。

 最初のうちは死者を出さない為にボス攻略に参加していたが、死者が出なくなれば俺が参加する理由はなくなる。

 ボス攻略をしている間に下層の人たちの人助けをやった方が俺としては有意義なのだ。

 

 無論、それに甘えてサボっている訳ではないぞ。

 レベル上げは毎日寝る間を惜しんでやってるし、ラスボス対策の()()()の研鑽も毎日やっている。

 

 だが側から見たらサボっている様にしか見えないので、攻略の鬼と言われる様になってしまったアスナさんは激怒だ。

 今日だってボス攻略に参加しない旨を伝えたらアスナから怒りの言葉が飛んできた。

 

 俺の性根は、ミッションがなかったらキリトたちに任せて、一層に籠るような臆病者だから勘弁してほしいね。

 

「───命の恩人に乾杯!」

 

 横からそんな声が聞こえたので、バレないようチラリと横目でその声の発声主を見る。

 

 そこを見ればあら不思議!

 月夜の黒猫団リーダー、ケイタさんではありませんか!

 

 ということは命の恩人は誰か皆さんもう分かりますよね!

 そうですキリト君です!

 

(あちゃー……遂にこの日が来たかー。やだなぁ……)

 

 キリトには、まだ俺がこの場にいる事はバレていないのでヒッソリと息を潜めながらキリトたちを観察する。

 

 そして出来ればこの日が来ないでほしかった、そんな思いが、胸を駆ける。

 

 月夜の黒猫団はキリトのトラウマとなる存在だ。

 

 キリトはこの日にこのギルドへと加入する。

 

 その際にキリトがレベルを隠して低く伝えた為に、ある悲惨な事件が起こったのだ。

 

 月夜の黒猫団の人たちはキリトを見て「同レベルぐらいのキリトがこのくらい戦えるなら、自分たちも戦える」という勘違いから、危機意識を欠いてしまう。

 その結果、安易に隠し扉のトラップ部屋に入り込んだ月夜の黒猫団はキリト以外全滅。偶々その場に居なかったリーダーはキリトに恨言を言って目の前で自殺。

 

「このレベルで、戦えるのはせいぜいこのくらいまで」

 

 この慎重さを持っていれば、安易に隠し扉の向こうに足を踏み入れたりしなかった。

 

「同レベル程度のキリトが全然余裕で戦っている」

「なら自分達だってこのくらいはイケるはず」

 

 キリトが最初から自分のレベルを明かしていれば、そういう勘違いはしなかった。キリトはその罪悪感から自殺紛いのレベル上げをして一時期病んでしまう。

 

 というのがこの事件の大方のあらすじだ。

 

 俺はこれをなんとか阻止したい。

 だがここで一つ問題がある。

 

 それはいつ月夜の黒猫団が全滅する日なのかが、わからないのである。大まかには予想出来るが、確定は出来ない。

 

 俺は所謂、にわかというやつだ。

 アニメとか漫画を少し齧った程度の知識しかないので、細かい設定とかは全く覚えていない。

 今回のキリトと月夜の黒猫団の初会合だって、無駄に勘のいいキリトにバレないようストーカーをしてやっとわかったのだ。

 

 

 そんな面倒な事しないで、月夜の黒猫団とキリトに直接関わればいいって?

 

 その答えはNOだ。

 

 このキリトと月夜の黒猫団の会合は、キリトの成長となる一種のターニングポイント──と俺は考えている。

 

 だからそれを邪魔することはなるべくしたくない。

 俺の存在を悟らせる事なくこれを阻止したいのだ。

 

『ミッションを遂行する』

『バレる事なく月夜の黒猫団を守る』

 

 両方やらなくっちゃあならないってのが俺のつらいところだな。泣けるぜ。

 

 まあ、とりあえずここ一か月は様子見だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 安全地帯。

 人通りの少ない道端の草原。

 

 そこで一眠りするプレイヤーの周りを彷徨く一人の影。

 その人物である男は慣れた手つきで寝ているプレイヤーの腕を操作し、デュエルの《完全決着モード》へと寝ているプレイヤーの腕を誘導する。

 

 自身の目の前にデュエルの認証メッセージが出てくる。

 男は勿論《YES》を押す。

 

 後は簡単、いつも通り寝ているプレイヤーをそのまま痛ぶり、その命を奪い取る。睡眠PKの常用手段だ。

 これならオレンジ(犯罪者)にならずにグリーンプレイヤーのままとしていられる。犯罪者ではなく、ごく普通のプレイヤーとして。

 

 その男はこれから命を奪うという感覚に酔いしれ、顔が歪んでいく。

 ますは部分欠損させてやろうか、そんな男の中の愉悦。

 相手がじっくりと何も出来ず殺される様を見たいというサディスト精神から男はゆっくりと剣を振り上げる。

 

「───させねえからな?」

「なッ?!!」

 

 突如として歪んだ顔が驚愕の表情へと変わる。

 なんせ先程までグッスリと寝ていた筈のプレイヤーが突如として飛び起き、自身の腕を掴んだのだから。

 

「いやー苦労したぜお前。俺が2時間ぐらい寝たフリしてやっと近づいてきたもんな。本当に寝ちまうかと思ったわ」

 

 ヘラヘラとした薄笑いを浮かべながら、寝ていた筈のプレイヤーが剣を掲げる。男は何が何だか理解が出来ない。こんな事は初めてなのだ。

 

「俺はさ、健全なグリーンプレイヤーなのよ。お前等PK(プレイヤーキル)するプレイヤーと違ってな。───ただお前等さ、やってる事はオレンジプレイヤーと大して変わらん癖に、こんな姑息な方法でPKしてるからオレンジじゃなくて、グリーンのままなんだよな」

 

 男は目の前の存在の言葉で、突如の衝撃で忘れていた優位性を思い出す。自身はグリーンプレイヤー。他のグリーンプレイヤーが己に攻撃でもしようものなら、相手の方がオレンジプレイヤーとなってしまい犯罪者となる。

 自分が慌てる必要なんて何一つないのだ。

 

「…お、俺はグリーンプレイヤーなんだ!俺を攻撃したらお前の方が犯罪者になるぞ!」

「そう。だから俺は、お前が来るまでわざわざ寝るフリまでして待ってたわけ。今の状況分かる?デュエルの《完全決着モード》。今の俺ならオレンジになる事なく、全力でお前の事をボコせるのよ」

 

 男にただその睡眠PKの事実を突き付けたとしても、自身がグリーンプレイヤーなのを免罪符に逃げられてしまうだろう。

 

 相手がオレンジプレイヤーでなければ、安全地帯では動かす事も攻撃することも出来ない。もし相手が街にでも引き籠ってしまったら、どうしようもないのだ。対処の仕様がなくなる。

 

 だがこの《完全決着モード》は自分自身が始めてしまった物。飛んで火に入る夏の虫の様に自分から逃げられないフィールドへと入ってしまったのだ。

 

「さて今からお前に三つ選択肢をやる。

 一つ目はこのまま大人しくこの回廊結晶で牢獄に行くか。

 二つ目は俺にボコボコにされて牢獄に行くか。

 三つ目は俺とお前で最後まで戦うか……だ。

 好きなのを選びな」

 

 やるしかない、そう男は己に喝を入れ、剣を構える。

 いつもとやる事は変わらない。寝ている相手がただ起きただけ。殺せば変わりわないのだから。

 

「あ、因みに俺のレベルは52だから。よーく考えて選びな。俺のレベルは攻略組でも上位で………おっとリザインはさせないぜ」

「…………ッ?!!」

 

 男は相手のレベルを聞き、即座に負けを確信し、リザインをして逃走を図ろうとする。だがその瞬間、自身の腕が斬り飛ばされてしまう。

 これではタッチパネルを操作する事は出来ない。積みだ。

 

「さあ、とっとと大人しく牢獄に行きなクソ野郎。それとも俺とまだやる?ボコボコにするけどな」

 

 

 

 

 

「───はぁ。しんど………」

 

 睡眠PKをしていたプレイヤーを牢獄に送り届けた俺はその疲れからか、ため息を吐く。

 これで()()()だ。睡眠PKや圏外殺人をしていたプレイヤーを牢獄に送り届けたのは。

 

 この序盤の段階で殺人プレイヤーがこの人数となると、原作通り時間が経てば、殺人プレイヤーの数はもっと多くなるだろう。そうなれば被害は絶大だ。多くのプレイヤーが死ぬ事になる。

 

 故に俺はこれも阻止しなければならない。

 

 下層での見回り。

 月夜の黒猫団の監視。

 PKを阻止、或いはPKプレイヤーを捕縛。

 攻略組に置いてかれないよう必死のレベル上げ。

 ラスボス対策の研鑽。

 

 今の俺がやるべきこと。

 

 あー本当に無理ゲー過ぎるだろ、キツすぎる。

 

 俺の睡眠時間どこ行った?

 もう、まともに寝れてないよ。今日で二徹目だ!ハハハ!

 

「───それでいつまで見てるつもりだ、アスナ?」

 

 俺はその場にあった丸太に腰を置きながら、近くの草むらに向かって話しかける。

 あれで隠れているつもりなのだろうか?

 索敵スキルにめっちゃ反応してたからバレバレなのだ。

 

「………バレてたの?」

「当たり前だろ。俺の索敵スキル舐めんな。もっと隠蔽スキルの熟練度を上げてから来やがれ」

 

 俺が話しかけると予想通り、アスナがその姿を現す。

 そろそろ、ボス攻略に参加しない俺にカチコミを掛けて来る頃合いだと思っていたのだ。

 

 だがアスナのその顔は何やら不服そうな顔をしていた。

 

「それで何の用なんだアスナ?」

「ボス攻略に参加しない貴方を無理矢理にでも連れて行こうと思ってたのよ───ただ」

「ただ……?」

 

 アスナが言葉を繋ごうとして途中で言い淀む。

 何やら不安そうな表情だ。

 

 おいキリト。今すぐ来い。お前の未来の嫁が困ってるぞ。

 

a(エー)君が、さ。今ボス攻略に参加しない理由はコレ?」

「うーん………そうでもあるし、そうでもないと言える」

 

 だって俺やる事多すぎるし。

 今、ボス攻略してる暇ないんじゃ。

 ホント、困っちゃうわよね!

 誰かしらこんなクソミッション課した奴。

 

「あの人は……人を殺してたってことよね……」

「まあ……そうだな」

「この世界で人を殺してる人がいる。知ってはいたけど、いざ目の前にすると………」

「怖いか?」

「────」

 

 アスナは自身の心情を当てられた事に驚きながらも、無言でコクリと頷く。

 

 まあそれもそうだ。

 いくら物語の主要人物でもあるアスナもこの時は15歳。何ら普通の少女と変わりはない。このSAOがなければ彼女は普通の高校生だった筈なのだ。

 

 俺は今もそうだが、元の世界の『ソードアート・オンライン』の物語と今の世界を混在させて認識している。

 いや、()()()()()()()()と言った方がいい。

 

 明らかにこのSAOの世界は原作とはもう違うリアルの世界だと頭では理解出来るが、感覚的にはどうしてもこの世界をリアルではなく、フィクションだと思ってしまう事がある。

 キリトやアスナを原作主人公、原作ヒロイン、原作主要人物だと認識しているのがその節だ。

 

 だからPKするプレイヤーを見たら、悪いことをしているゴミクソ野郎とは思うが、何処か一部ではこれがフィクションなんじゃないのかと思ってしまってもいる。

 

 要は俺が何を言いたいのかというと、この世界に現実味を未だに俺は感じないのだ。

 映画を実際に間近で見ている気分になる。

 

 故に俺はこういったPKなどに対した恐怖に疎い。

 

 だがアスナは違う。

 アスナにとっては、デスゲームに巻き込まれたというだけでも心情的にキツい筈なのに、今度は人間同士の殺し合い。

 

 年端も行かない少女には辛いし、怖いに決まっている。

 人間同士の殺し合いとなれば尚更だ。

 

「まああれだ……お前はこんな事を気負わなくていい。早いうちに忘れろ。こんなしょーもないことなんか」

 

 アスナは今後のボス攻略で必要な存在だ。

 SAOの物語でも必須の存在。

 余計なお世話かもしれないが、アスナにはこんな事で変に不安や恐怖を持たせるべきではないのだ。

 

a(エー)君は怖くないの………?」

「怖いか怖くないかで言えば、怖くないかも」

「そう……貴方は強いのね………」

 

 アスナの顔がシュンと沈む。

 だがそんな事より、俺からしたら先程のアスナの「私は弱いけど、貴方は強いのね」みたいな台詞は心外だ。

 

「いやそうでもないぞ?俺からしたらアスナの方が強いと思うぞ」

「───え?」

「このデスゲームの中を抜け出そうと誰よりも毎日毎日闘ってるし、25層でアインクラッド解放軍がボロボロになった時も攻略体勢の立て直しに尽力したのはお前だろ?何よりお前、俺より普通に強いじゃん」

 

 俺からしたら、アスナやキリトたちは戦闘技術や知識、組織を纏めるリーダーシップなど、挙げればキリがないほどの力がある。羨ましいぐらいに才能がある。

 俺はそれを直で見てやっぱ天才は違うな、と毎日才能の差を感じていた程である。

 

 アスナとキリトは強い。

 俺はそれに必死に喰らい付いて行っているだけ。

 もし何方かと戦う事になったら、俺は両方に何度もボコボコにされるだろう。というかもうボコボコにされた。

 

 だから俺からしたら、アスナが俺より弱いなんて事はないのである。ただの嫌味にしか聞こえない。

 

「そう……なのかな…」

「俺を何度もボコボコにした奴が弱い筈もないだろ」

 

 アスナがそう聞き返してきたので、俺は真顔で即答する。

 俺を訓練と称してボコボコにした奴が弱い筈ないだろ。

 

「───ふふ。そうだったわね。私は貴方より強いもんね」

 

 アスナは少し目を見開いた後に静かに微笑む。

 どうやら先程までの不安などは無くなったようだ。

 

「どうする?オレンジプレイヤーが怖いなら俺がギルドまで送ってやろうか?まぁ、冗談だけd───」

「そうね。お願いしようかな」

「ん?……え?」

「何、驚いた顔してるのよ。言い出しっぺは貴方でしょ」

 

 アスナはそう言って歩き出す。

 俺もそれに困惑しながらも着いて行く。

 

「そういえば貴方にまだご飯を奢って貰ってないわね。なら丁度いいから今日奢って貰おうかな?勿論高い所でね?」

「ん?……ん?……ん?」

 

 衝突の事過ぎて脳が理解を拒む。

 アスナってこんなキャラだったっけ?

 後、俺全然お金ないんだけど。

 

「ほら、ボーっとしてないで行くわよ!」

「あ、ああ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜おまけ〜〜

 

 

 第26層の迷宮区にて

 怒りのアスナとa(エー)

 

「─── a(エー)君!私とモンスター狩りで勝負よ!」

「それまたどうして?」

「私知ってるのよ!貴方が、攻略の鬼とか!バーサーカーとか!閃光のアスナ(笑)とかの二つ名を真っ先に広げたのを!!」

「俺がそんな事する訳ないじゃないか!」

「嘘ね!情報屋にお金を払ってまで広めたのを知ってるんだから!」

「I don't know」

「御託はいいわ!貴方にはこの勝負で負けたら今の所持金全財産、私にはたいてもらうから!後、デュエルでボコボコにしてやるわ!」

「I don't wanna know」

「喧嘩売ってる?」

「I don't understand Japanese」

「殴るね?」

 

 この後、勿論勝負には負け、所持金はほぼ無くなった。

 デュエルでも勿論ボコボコにされた。

 

 因みにキリトにも同じことをやったので、アスナの次にはキリトが襲来する。

 

 

 

 終わり!!

 

 

 

 

 





 プログレッシブは(色々と話があって長いので)ないです。
 もしかしたら番外編でやるかも。

 よかったら感想・評価をよろしくお願いします!

 後、誤字報告してくれた人マジ感謝!!
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