なんでも一つ願いが叶うらしい(ただしその条件は鬼畜とする) 作:イーサン・W
たくさん評価ありがとうございます!
ランキングにも載っていて本当に感謝の極みです!
今回の話はちょっと主人公が下品だったり、もしかしたら人によっては不快かもしれないので注意を。
夜のフィールドを駆ける。
自身の目の前に迫り来るのはゴブリン3体。
俺は《投剣》スキルを用いて投げ針を連続して飛ばす。
勢いからかヒュッといった空気を裂く音がし、針がゴブリン2体の視界に直撃。視界を奪う事に成功する。
「ウギャ?!」
「ギヤアカガ?!!」
目の前が突如として何も見えなくなったゴブリン2体は動揺し、その場でのたうち回る。無事なゴブリンは何が起きたのか理解出来ずにフーリズ。つまりは恰好の的。
俺はその隙を逃さず、フリーズしたゴブリンを即座にソードスキル《スラント》で斬り捨てる。
「ギャッ……?!」
衝撃から声が溢れ、ゴブリン1体が淡くポリゴンとなって散る。
そしてその余韻を待たせる間もなく、ゴブリンもう1体を空けた片腕で、俺は体術スキル《閃打》で飛ばす。
自身の腕に伝わる衝撃。
それを感じながら拳を握り締め、ニヤリと俺は笑う。
2体目がポリゴンとなって散ったのを見届けた。
残るは一体だ。
「さあこれでタイマン。1on1だな」
「グギギギ………」
視界が回復したゴブリンが此方を恨めしそうに見上げる。
悪いがこれも俺のレベル上げの為。
大人しく俺の糧となってくれ。この世は弱肉強食なのさ。
「ウギャッアア!!」
俺を滅多刺しにしようとゴブリンは飛び掛かる。
だが所詮はゴブリン。
数が多ければ脅威となるが、1体であれば然程の脅威もない。人間である俺の方が体格からのリーチもある。
攻撃が届くよりも先に俺はゴブリンの胴を一閃。
ゴブリンは乾いた声を漏らしポリゴンとなって散る。
「フッ………またつまらぬ物を斬ってしまった……」
俺は石川五ェ門ごっこをしながら剣を鞘にしまう。
これは決まったな。写メなら好きに撮ってくれてどうぞ。
「───いやあ!アンタ凄いな!俺もそのセリフは人生で一度は言ってみたいぜ!」
「ウヘェヒャアベr?!!」
誰もいないと思っていた俺は、突然の声かけに思わず素っ頓狂な悲鳴を上げてしまう。
心臓が飛び出るかと思うぐらいビックリした。
多分人生で初めてあんな悲鳴を俺は上げたぞ。
「あの一体いつから見ていて………?」
「そりゃあ最初っからだよ。お前さんが中々良い動きしてるから、つい目で追っちまったぜ」
俺の問い掛けに意気揚々と男は答える。
そしてその男の返答により俺は顔が暑くなるのを感じる。
真夜中のフィールドで誰も居ないと思って、俺はモンスター相手に散々イキったり、石川五ェ門ごっこをしていたのだ。
それが見られていたとなるとキツい。
というか滅茶苦茶恥ずかしい。
言うなればあれだ。
自身の厨二病ノートを偶々掃除していた母親が見つけ、それを読んでいる所に鉢合わせした感覚。
普通に恥ずかしくて死ねる。
「それで 貴方は誰なんすか………」
「おお!そうだな自己紹介を忘れてた。俺はクラインってもんだ。よろしく!」
「クラインね…………クライン?!」
「んお?!急になんだ?!」
「いや、何でもない。気にしないでくれ………」
よく見れば赤いバンダナ。赤い甲冑。赤い髪。
どっからどう見てもクラインだ。
「それでお前さんは?」
「ああ…… 俺は
「おお!よろしく!」
クラインが俺に向かって右腕を差し出す。
意図を察した俺も右腕を差し出し互いの手を握る。
所謂、握手というやつだ。
(まさかこんな場所でクラインと遭遇するとはな………)
出来ればこんな場面じゃなければ良かったが、それでも俺としてはこの段階でクラインと出会えた事は嬉しい誤算だ。
いつかクラインとも関わってみたいと思っていたが、こうも早く出会えるとは。
運命とはわからない物だと改めて感じる。
「それでクラインさん……」
「おっと、敬語はよしてくれ。俺はそういうのは気にしないからよ」
「わかった。じゃあクライン。お前は何をしに来たんだ?」
「そりゃあ、レベル上げだよ」
「こんな時間に?」
今の時刻は真夜中の3時。
SAOで過ごすプレイヤーたちは殆ど寝ている頃だ。
俺も本当は寝たい頃だが、ハードスケジュールな俺は強くなる為にこうして寝る間を惜しんで真夜中にレベル上げをやっている。
だがクラインにはそういった理由はない筈だ。
クラインの所属しているギルド《風林火山》のメンバーを誰一人連れず、一人でレベル上げというのは、何か怪しさを感じさせる。
原作からクラインがそんな奴じゃないというのは分かり切っているが、だがらこそ理由が気になった。
「いやちょっとな。俺の
(あー……キリトの事か………)
クラインの友達。
それはきっとクラインの所属しているギルドメンバーを指した言葉ではなく、キリトの事を指した言葉だろう。
この時のキリトは確か第一層でクラインを見捨てた事に負い目を感じ、クラインを薄っすらとだが避けていた筈だ。
クラインは全く気にしていないんだが、キリトは負い目を感じてるので避けてしまう。
ちゃんと話せば分かり合える筈なのにだ。
故に今の二人の関係は気まずいものとなっている。
そんな中でもクラインはキリトの事を気にしてモヤモヤしていたのだろう。確かクラインはキリトをソロにさせた事に責任を感じていた筈だ。
「───よしクライン。親交を結ぶ為に俺と一緒に少し別の所でリフレッシュに行かないか?」
なら俺の手によってクラインのモヤモヤを解消させてやろうじゃないか。
「───いや、お前とは趣味が合っていいな!」
「ああ!お前と語り合う事が出来てよかったよ!」
とある酒場にて、俺とクラインは夜を耽っていた。
もしかしたら俺はブラザーを見つけたのかもしれない。
この世界でここまで自分を解放して話せるのは久々だ。
「やっぱり胸はデカい方がいいに決まってるだろ?あの大きい包容力に包まれるのを想像してみろ!特に綺麗なお姉さんだったら最高だ!」
クラインが、熱い情熱を込めて自身の論を説く。
その瞳には譲れぬ欲望と自身の熱い想いが籠っていた。
「いや……!それよりも俺は尻を選ぶね!」
「なっ?!お前!裏切るのか?!」
確かに胸がデカいのは良いと思う。
だが俺はオールラウンダー。小さいのでも、普通のでも、デカいのでも俺はイケる。
「ならお前も想像してみな。綺麗なお姉さんの桃源郷をこの手に掴みそれを自由にするのを!あの魅力的な肉付きを!」
俺は胸も好きだが、それよりも更に尻が好きなのだ。
自身が掴むのは綺麗なお姉さんの桃源郷。
あのプリっとした肉付きとつい反射的に目で追ってしまう魅力。そして何よりセクシー。
男の子なら唆るだろ?少なくとも俺はそうだ。
「確かに…………それは唆るな」
「だろ?」
先程のモヤモヤなんてなかったようにクラインは、俺と女の趣味や下ネタで話が盛り上がる。
男同士の会話と言ったらまずはこれだ。こういった話題が一番盛り上がる。
やはり下ネタ。下ネタが世界を救うのか。
「クライン。この後にイイ店に行かないか?」
「ほーう。そのイイ店とは?」
「綺麗なお姉さんたちが居る店だな」
「勿論行きます!」
こうして俺とクラインは朝になるまで語り合った。
そしてフレンド登録をし、また語り合う約束をした。
今度は好みの髪型について語り合おう。
2023年6月12日
第27層迷宮区
俺がキリトたち《月夜の黒猫団》をストーカーすること一ヶ月と少しの日。遂にその日が訪れた。
今まで多くの事があった。
なんかサチが失踪したり、キリトに俺の事がバレそうになったり、アスナが幽霊怖がってるの馬鹿にしたらボコられたり、盗み聞きされていたのか俺の女の好みが《鼠のアルゴ》に売られてたり、それを知ったアスナがゴミを見る目で見てきたり、周囲に女性が近づかなくなったり───とまあ、とりあえず色々あった。
だが最早そんな世迷言などどうでもいい。
遂にこの一ヶ月毎日神経を削ってやっていたキリトたちのストーカーが終わる。俺の睡眠の時間と自由時間を削ってまでやっていた事が遂に終わる。
俺は遂に地獄から解放されるのだ。
毎日朝早くから起きてキリトたちを太陽が沈むぐらいまで見張り、夜は遅れている分を取り戻す為の必死のレベル上げ、そして睡眠時間3時間というサイクルの生活。
これが遂に終わる。
(なんて最高の気分だ!ハハハハ!……ハハ!………ハハ)
わりい、やっぱつれえわ。
普通に俺の周りに女の子が近づかなくなったのが、大変・凄く・滅茶苦茶・マジで、心苦しい。
俺とクラインがちょっと過激に女体について語り合っただけなのに、こんなのはあんまりだ。
俺が必死の人命救助をしているのにこの仕打ち。
許さん。許さんぞ。茅場晶彦!
「───お?ここに何かあるんじゃねーの?」
《月夜の黒猫団》のダッカーの嬉々とした声が響く。
目を向ければそこには危機感なんて欠片もない表情で隠し扉を開く、キリトたち《月夜の黒猫団》の面々。
駄目よ!そこは貴方達の地獄の片道切符よ!
俺はもう隠れる必要もないので、即座に堂々と地面を蹴り駆け出す。
「あれは………トレジャーボックスだ!まだ誰も開けてない!」
ダッカーが興奮した様子で隠し扉の中にあった宝箱を開けに行く。
もしそれを開いてしまったら最後。
扉は閉ざされ、大量のモンスターが狭い空間に湧き、転移結晶を使おうにも《クリスタル無効化エリア》になり使えない。そこを脱出するには大量にいるモンスターを全員倒すしかないという、初見殺しのトラップが発動する。
「はい!ごめんねー!この宝箱は開けさせないよー」
「ウベッ?!」
だがそれをさせない為に俺は居る。
俺は宝箱を開けに走っているダッカーに足を引っ掛け、見事にそれを阻止する事に成功する。
パンドラのボックスは開けないに越したことはないのだ。
「何なんだ……って
キリトが驚いた表情で此方に駆け寄ってくる。
お?命の恩人だぞ?感謝しな!
「いきなり何するんだお前!!」
俺に足を引っ掛けられたダッカーが怒りの表情で抗議してくる。まあ側から見たら、俺はトレジャーボックスを横入りして盗もうとしてる輩だからな。
だが俺からしたらそんな事はどうでもいいのだ。
「まあまあ、落ち着け。俺は命の恩人だぜ?教えてやるよこのトレジャーボックス罠だぞ」
「え、そうなのか?!」
「そうそう」
マジ感謝しろよー。
俺がこれ阻止しなかったらお前ら今頃あの世だぞ。
「それで少しいいか?俺はコイツを少し借りたいんだが」
俺はキリトを軽く指差しながら《月夜の黒猫団》の面々に問い掛ける。サチは何だか不安そうな表情をしてオロオロとしているが大丈夫だろうか。あっ、俺のせいか。
「大丈夫だ。別に何か悪さするって訳じゃない。ただコイツと話がしたいんだ。そのお詫びにこれ渡すからさ」
俺はキリト以外のメンバー全員に転移結晶を投げ渡す。
転移結晶はモンスタードロップやトレジャーボックスからしか入手出来ないのでSAO内では大変貴重な物だ。
それを俺が四つも一気に譲渡した事にサチたちは驚きの表情を浮かべる。
おかげで、俺の懐がスッカラカンになったが、これもキリトの成長の為。俺の何日間の努力が消えたかは考えないようにする。
「キリト……大丈夫そう?」
「あ、ああ。……悪い、すぐ追いつくからサチたちは先に帰っててくれ」
「……本当にいいの?」
「大丈夫だ。コイツは俺の知り合いだ」
「わかった………」
何が何だかわからない状態のまま、サチたちが帰って行くのを俺とキリトは見送る。そして完全に姿が見えなくなってから俺たちは口を開いた。
「よしキリト。剣を構えろ。あのトレジャーボックス開けるぞ」
「な?!
「よし!開けるぞー」
俺がキリトを無視してトレジャーボックスを開けると同時に、ブーッ!ブーッ!というけたたましいサイレン音が鳴り響き、部屋が赤く染まる。扉は固く閉ざされ、最早開くことはない。
次に開く時は、俺たちが死ぬか、モンスターたちを全員倒した時かだろう。
「───なあキリト。俺はさ、あんま説教とかする柄じゃないんだが。今回はお前に物申させてもらうぜ?」
俺たちの周りに大量のモンスターが湧く。
だが問題はない。俺とキリトのレベルはSAO内でも最上位。27層のトラップ部屋のモンスターにはステータス的には大まかに勝っている。
キリト一人だけならキツイかもしれないが、今は俺も居る。まず死ぬ事はないだろう。
「おいキリト。もし俺がお前のギルドメンバーを止めなかったら今頃お前のメンバーはこの中に居た事になったぞ」
「大丈夫な筈だ。俺たちは転移結晶を全員所持している」
「なら使ってみな。多分使えないから」
「なっ?!」
キリトが急いで転移結晶を取り出して掲げる。
だがその肝心の転移結晶はうんともすんとも言わない。
「クリスタル無効化エリアか?!」
「そう。だからさキリト、よく考えな。もしこの中にお前のギルドメンバーが居たらどうなった?」
「……………」
「全滅だ。キリト、お前以外な。頭の良いお前ならすぐ理解できるだろ。最悪の状況が」
大量に湧いたモンスターたちを相手取りながら俺はキリトに語り掛ける。
本当ならこんな面倒な事はしたくない。
今の俺は主人公を説教する痛い奴なんだろう。
だがそれでいい。これはキリトの成長となる筈だ。
自分の失敗や仲間の喪失、大きな絶望を乗り越えて原作のキリトは強くなった。
だが今のキリトはそれを経験していない。
それは何故か?
俺が未然に阻止したからだ。
だから俺はそれの尻拭いをしなければいけない。
合っているか間違っているかは、分からない。
だが俺は、この行動が正しいと思ってこの尻拭いをする。
「既に探索されまくったこの迷宮区で残ってるトレジャーボックスなんて罠に決まってる筈なのに、何でお前のメンバーは気付けなかった?そして何でお前は早く気付き止めなかった?」
「そ、それは………」
「キリト。お前はもう分かってる筈だ。その理由を」
モンスターと鍔迫り合いになる。
だがステータス的には此方が有利。
すぐに押し返して、バランスが崩れた所を一閃。
モンスターはポリゴンとなって消失する。
だがモンスターはまだまだ多くいる。
「キリト。お前が自分のレベルを隠さずに本当の事を伝えておけば、上層階に行くのを止めておけば、トラップの危険性を伝えておけば、もしもとはいえ、こんな事態にはならなかった」
大量のモンスターに囲まれ全方位から攻撃される。
防ぐ事は出来た。だが全ては無理だ。
HPバーが三分の一減った。
まだモンスターは多くいる。
「勿論、お前だけが悪いとは言うつもりはない。お前のギルドメンバーも何も警戒せずにトレジャーボックスを開けようとしたのが悪い。油断しすぎていた」
モンスターを一体一体確実に倒していく。
油断もしない。隙も与えない。
モンスターの数が減ってきた。
「俺が言いたいことは一つだ。キリト。しっかり話して来い。お前のギルドの奴と。そして今回の事を教訓にしろ。ここはデスゲームだ」
モンスターの数が減り、処理をするのが楽になる。
モンスターの数はもう少ない。
「で、でも……」
「お前の本当の事を知って拒絶なんてする奴があのギルドに居るのか?」
「………居ない、と思う」
「分かってるならしっかり今回の失敗を心に刻んで、サッサと帰りな。キリト」
最後の一体を倒してモンスターは居なくなる。
赤く染まった部屋は元の色に戻り、扉が開かれる。
これで俺の役目は終わりだ。
「…………ありがとう
キリトがそう言い残して、《月夜の黒猫団》の元へと駆け出す。キリトの中で心の整理がついたのかはわからない。ただこれがキリトの成長となる事をただ俺は祈るだけだ。
駆け出したキリトの背中が完全に見えなくなる。
俺はそれを見て大きく息を吐き出すと同時にドサリと地面に座り込んだ。
「あー………ほんと、疲れた」
やっぱり俺は説教なんてする柄じゃないみたいだ。
この後、キリト君は無事に《月夜の黒猫団》の人たちと本音で話し合い、気合いを入れ直し、受け入れられました。
この時にキリトは一時的にギルドを脱退し、攻略組に戻りました。
そして《月夜の黒猫団》の面々はキリトだけの力に頼らず、自分たちの力で攻略組になる事を決意し、攻略組になった際に改めてギルドにキリトを迎え入れる事を決意しました。
今回の話は難産で話を書くのが難しく遅れてしまいました。
次回は早く投稿できると思います。
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