なんでも一つ願いが叶うらしい(ただしその条件は鬼畜とする) 作:イーサン・W
2023年12月24日
しんしんと雪が降る今日この頃。
本日はクリスマス・イヴ。
キリスト降誕祭と知られるクリスマスの前夜。
この時期は人々にとって特別な日。
この日ではSAO内でも、たくさんのカップルがイチャイチャして楽しそうに過ごしていたり、友人たちと楽しそうに過ごしていたりする。
そんな中、俺はただ一人剣を持って突っ立っている。
12月24日。この日の深夜。
35層の《迷いの森》にて《背教者ニコラス》というイベントボスが出現する。
このボスは特別だ。
死んだら終わりのこのデスゲーム内で、唯一の蘇生アイテムをこのボスはドロップする。
蘇生アイテムの仕様はプレイヤーが死んでから10秒以内なら使用可能というゴミ仕様だが、それでも使い所があるレアなアイテムだ。
本来ならこのボスは原作通りなら《月夜の黒猫団》が壊滅した病み病みのキリト君が討伐する。
だが今のキリト君は《月夜の黒猫団》が壊滅していないので、このボスを倒す必要もなし。キリト君は今は元気にギルドでクリスマスパーティーだ。
なのでこのボスを今回は俺が討伐する事にした。
もちろん、ソロである。
え?何でソロでやるのかって?
皆さんの今日の予定を見ていこう。
アスナはギルドで忘年会的な物がある。
クラインはギルドでクリスマスパーティー。
エギルさんはクリスマスの影響で店が大繁盛、大忙し。
そして何もない俺。
周りではカップルがイチャイチャ、イチャイチャ。
ギルド仲間と楽しそうにワチャワチャ、ワチャワチャ。
そしてボッチで一人寂しい俺。
なんだろう。
どうして毎日頑張っているのに、俺にこんな酷い仕打ちをするんですか?
普通に涙出てくるわ。俺をもっと敬えよ。訴えるぞ。
「何が楽しくてこんな事してるんだ……?」
つい心の声が溢れてしまう。
なんでクリスマス・イブの日になってまで、俺がこんな事しなくてはいけないのだろうか。
分かりきってはいるがミッションのせいである。
俺を癒してくれるお姉さん。お姉さんは居ませんか?
贅沢は言いません。
胸と尻が程良い美人で優しいお姉さんがいいです。
「───こんな日に何してるの?」
「あ………?」
女性特有の高い声が背後から聞こえた。
その声は何回も聞いた事がある慣れ親しんだ声。
誰だかはすぐ分かった。
「チェンジで」
「何言ってるの?」
「出来ればこう……もう少し胸と尻のあるお淑やかな他のお姉さんがいいです」
「張っ倒すわよ?」
そこには笑顔で拳を俺に向けるアスナがいた。
胸と尻が程良い美人ではあるがアスナは駄目だ。
キリト君という夫が居るのに俺が手を出すのはギルティ。
NTRは駄目絶対。寝てないけど。
「でもなんでお前ここに居るの?ギルドで忘年会みたいなのがあったんじゃないのか?」
「うーん、面倒くさいから抜け出してきちゃった!──あ、勿論団長からは許可は出てるわよ」
「は?」
アスナの衝撃発言に俺は動揺の余りに思考が停止する。
大型ギルドのKoB副団長が抜け出してきたら駄目だろ。
絶対周りの団員から止められる。副団長となれば尚更だ。
それをなんでヒースクリフは許可出してんねん。
しっかりしろやラスボス。
「だってしょうがないじゃない。周りからは他愛もない退屈な話ばっかりだったし、私を口説こうとするとする人も多いしで大変だったのよ」
「モテる女は大変だな。それでなんで俺のとこ来たん?」
「アルゴちゃんが
「あの鼠………」
鼠のアルゴ。
SAO内で情報屋をしているプレイヤー。
俺はSAO内でアルゴと一度も顔を合わせた事がないが、何故か俺の情報を知っていたりしている。俺の生活が何処かで彼女に見られていたという事か。何かあるとよくアスナに伝えられている。
普通にプライバシーの侵害だろ。
「それで
「何をするって………そう思った根拠は?」
「だって貴方の準備格好がボス討伐のそれだもの」
そりゃそうか。
皆んながラフな格好をして楽しそうに過ごしている中、ただ一人だけボス討伐のガチガチ装備。今から自分は戦闘をするつもりです!と言っているような物だ。
「──イベントボスの討伐だよ」
「それって蘇生アイテムを落とすって噂の?」
「そう。そいつ」
俺は大人しく何をするつもりなのかをアスナに白状する。
別にわざわざ隠しておく程の事でもないからな。
「ガセネタとかじゃなかったんだ………」
「なんだお前のギルドは捜査しなかったのか?」
「事実かどうかもわからないのに力を注げる訳ないでしょ」
「そりゃそうか」
確かに今まで、隠しログアウトスポットだったりと色々と情報は出てきたが、そのどれもがガセネタだった。
大体の人はその経験則から蘇生アイテムなんて物もガセネタに思えたのだろう。
だが今回のはガセネタではないので御安心を。
ソースは原作です。
「目処は立ってるの?」
「ああ。あるモミの木の下に現れる」
「ソロで討伐するの?」
「そうだが?」
アスナがそれを聞いた後、顔を顰め何か考え出す。
どうせアスナの事だ。
ボス討伐となるとやる事は一つ。
「なら私も協力するわ。最近動いてないし」
「バーサーカーめ………」
「何か言ったかしら?」
「イイエ」
キリトを戦闘狂と言っていたが、アスナも大概戦闘狂だと俺は思ったのでした。
「ギィ、ギィ……ギャギィ……ギェ!ギャァ!!」
目の前には赤い帽子に赤い外套を着たサンタさん。
だがその全貌は明らかに目が逝っちゃってる大柄の男。
こんなサンタを見たら子供は確実に泣いてしまうだろう。
「背教者だからこそ、この日に現れたのかしら?」
「というと?」
「背教者っていうのは、簡単に言うと宗教を信じない裏切り者。宗教の敵対者みたいな存在なのよ」
「キリスト教を否定する為に現れたって事?」
「多分」
「俺仏教だから見逃してくんねーかな?」
「無理ね」
宗教の敵対者。つまりはキリスト教の敵。
このボスが居ればキリスト教がなくなる。
つまりはクリスマスがなくなる。
つまりは女の子のクリスマスコスがなくなる。
つまりは聖なる夜(意味深)がなくなる。
これは何としてでも食い止めなければ……!(鋼の意志)
「女の子のクリスマスコスを護らねば……!」
「とりあえず最低なのは分かったわ」
「失敬な───ッ来るぞ!」
俺たちのいた場所にニコラスが勢いよく斧が振り下ろす。
その威力は絶大で積もった雪が辺りに飛び、粉塵を撒き散らす。
当たったら死にはしないが手痛い一撃。
地味に嫌な攻撃力だ。
「アスナ!先に俺が出る!後に続いてくれ!」
「ええ!」
白い吐息を吐き出し、脚部に力を入れ前へと前進。
ニコラスと向かい合う。
「ギィェェェ!!」
ニコラスによって放たれる力強い横払いの一閃。
当たれば痛いが、その分動きは遅い。
走った勢いのままスライディングをし、攻撃を掻い潜る。
「せーのッ!」
「ギイャアヤァュア!!!」
ニコラスのリーチの内側に入り込んだ俺は股から腹目掛けて縦に一閃、そのまま力強く押し蹴る。
俺の第一の役目は攻撃のチャンスを作ること。
追撃はアスナの役目だ。
「スイッチ!」
アスナの掛け声と共に後ろへと飛ぶ。
すると入れ違うように前へとアスナが飛び出し、バランスを崩したニコラス目掛けて鋭い連続とした突き。
ニコラスのバランスが完全に崩れる。
追い打ちをかけるよう更に、完全にバランスを崩したニコラス目掛けたアスナのソードスキルによる追撃。怒涛の攻撃ラッシュ。流石は閃光だ。
「ギィィィィ!!」
バランスを取り戻そうとニコラスは体勢を整え始める。
だがそこで素直に整え始めさせる訳がないのが俺たち。
駆け出し、その勢いのまま俺は身体を雑巾のように捻る。
そして脚で地面を蹴り上げ、一気に身体を回転させ、流れるようにニコラスへと三連撃を叩き込む。
「アスナ!この後スイッチ頼む!」
今の自分が発動出来る最大のソードスキルを使用する。
《プレダトリー・ガウジ》。
後方回転から逆袈裟に斬り下ろす単発の重斬撃。
単発で威力が高い分、硬直時間が少し長いスキルだ。
「オラよっと!!」
「ギャァアアァァ!!」
余談だが片手剣士使いの女性はこのスキルを余り使いたくないらしい。
何故かって?スカートの人はパンツが見えるからだよ。
スカート履かなければいいのに。
「ハアアア!!」
アスナがヘイトを稼ぐ為にニコラスへと追撃。
ボスのHPバーも残り少し。後少しの辛抱だ。
「ギィッェ!!」
「きゃっ……ちょ?!」
ニコラスが最後の抵抗と言わんばかりに斧をアスナ目掛けて一心不乱に振るう。
それにアスナは動揺するものの、持ち前の反射神経と的確な判断により、攻撃を避ける形で円を描くように後方へと宙を回転する。
だがそれがいけなかった。
ニコラスは宙にいるアスナの脚を掴み、逆さに宙ぶらりんにする。
すると重力によってアスナのスカートは真下へとハラリ。
本来隠されるべき場所が露呈する。
アスナはスカートを空いている片手で必死に押さえているが、時すでにお寿司。
「ふむ………白か」
目の前のアスナから見えた絶対領域。
それを俺はしっかり脳へと保存してから剣を構える。
元の世界に帰れたら思い出にしようと思う。
「これでゲームセットだな」
キンッ!と甲高い音が鳴り響く。
斧と剣の鍔迫り合い。
ニコラスの体勢が悪いのと、片手でアスナを持っている為か、力は今は俺の方が勝っている。
すぐにニコラスの斧を弾き飛ばし、パリィする。
残るは隙だらけのニコラスだけ。
遠慮なくソードスキルを打ち込ませて頂く。
「アリーヴェデルチ!」
ソードスキルによる三連撃。
それをニコラスの胴体全てに叩き込む。
ニコラスのHPバーはそれによりゼロになる。
俺たちの完全勝利だ。
「ギィ………ギィア………ァァ」
ニコラスがポリゴンとなって砕け散る。
そしてニコラスがいた場所に目的のアイテムが落ちた。
「よし!俺の知ってる通りのアイテムだな」
ニコラスが落としたアイテムは蘇生アイテム。
仕様も前に説明した通りで変わらない。
「でもこれ俺が持っててもなあ…………」
ソロでやっている俺が蘇生アイテムを持っていても、宝の持ち腐れだ。
ここはやはりギルドとして活動しているアスナに渡した方が賢明と言えるだろう。
彼女ならきっと有効活用してくれるに違いない。
「アスナ。お前にこのアイテムを任せたいんだが…………どうした?」
アスナに蘇生アイテムを渡そうとするが、何やら様子がおかしい。
先程から顔を俯かせてプルプルと震えている。
「見た……のよね」
「何を?」
「言ってたじゃない。白か、って」
あれ聞こえてたのか。
戦闘中だったし、何より小さく呟いただけだったから気づかれていないと思っていた。
「あーあれね。………そんな服装なのが悪いよ」
「やっぱり見たのね!」
「あれは事故だ。悪気はない」
「うるさい!さっき見た物を忘れなさい!」
アスナが拳を構えジリジリと詰め寄ってくる。
理不尽だと思うものの致し方なし。
女子のパンティーを見てしまったのだ。
ここは大人しくやられよう───なんて思うか!
「この際だから言うが、下着は黒だったり、赤、青だったらきっと男の子は喜ぶぞ。後、大人っぽかったら百点満点だ。未来の旦那のために役立てな」
キリト君、黒色が好きだしね。
きっとアスナに掛かれば骨抜きだ。
これからキリト君のハートを掴むだろうアスナへと向けた、俺のささやかながらのアドバイス。
やだ!俺って出来る男!
「絶対に殺⚪︎わ!!貴方だけは生かしてはいけない!」
おっと、キリトが骨抜きにされる前に俺が地面に骨を埋める事になりそうだ。憤怒のアスナによって。
「おいおい、そんな怒るなって。せっかくの美少女が台無しだぞ。キリトに顔向け出来んのか?」
「ッ〜〜〜〜美少女って!どれだけ揶揄えば気が済むの!もう絶対!許しませんからね!」
「シワ増えるぞ」
「やっぱり貴方を⚪︎すわ!」
2023年12月24日。
この日はアスナから逃げる激動の日となるのだった。
2024年4月11日
今日はキリト曰くアインクラッドで最高の季節の更に最高の気象設定らしい。
本人曰くこんな日に迷宮区に潜ってちゃもったいない、という事で絶賛キリト君は青空の見える木の下で昼寝中。
そしてその近くにはアスナもいる。
つまり今日は何の日か分かるかな?
そうアスナがキリトに恋する記念すべき日!
───と圏内事件。
え?シリカ?知らない子ですね。
黒の剣士が勝手に救ったんじゃないんすか?
この前元気そうにピナと歩いてたし。
まあそんな事は置いておいて。
俺は人の恋路を邪魔するつもりはない。
圏内事件も放置すればキリトとアスナが勝手に解決する。
だから俺は今回の事には介入せず、迷宮区に丸一日籠るつもりでいた───のだが何故か俺はアスナとキリトに丁寧に拉致されていた。
普通、アスナから渡された飲み物に麻痺毒があると思わないじゃん?
原作ヒロインと原作主人公がそんな卑劣な手を使ってくるとは思わないじゃん?
俺は見事に痺れて動けなくなり、拉致された。
「───で何で俺拉致されたの?訴えるよ?」
「
キリトが俺を布団のような物でグルグル巻きにして拉致したことに抗議する。
せっかく人が気を利かせてキリトとアスナの二人きりの状態にしようと思ったのにこれだ。
「何で鼠は知ってるんすかね」
「さあな。そこは俺もわかりかねる」
キリトはハハハと軽い感じで笑う。
だが俺からしたら気が気ではない。
気づいたらアルゴから情報を抜かれているのだ。
普通に恐怖である。
「日中は下層の人たちを助けたりして夜中は寝る間を惜しんでレベル上げ…………
動けないことを良いようにアスナがツンッと俺の頬を指で突く。
麻痺毒のせいでむず痒い。
「今日はキリト君曰く最高の日和らしいの」
「知ってる」
「だからね…偶には
アスナが結構ガチ目の心配顔を向けてくる。
やめてくれ。俺はそういうのは弱いんだ。
「ええ……でも今日は………」
「ね?」
「でもぉ………」
「ね?」
「それでもぉ…………」
「……………」
アスナがムスッとした顔をしながら、俺の頬を突く力が強くなる。アスナからの無言の圧力というのをヒシヒシと感じる。
「わかった、わかった。今日はグッスリ休むよ」
「よろしい」
確かにこの数ヶ月、俺は食事や睡眠を蔑ろにしていた。
人助けやレベル上げ、ラスボスへ向けた研鑽。
どうやら俺はやるべきことに集中し過ぎていたらしい。
周りの人にこんな顔をさせてしまっては駄目みたいだ。
「じゃ、もう面倒だし。このまま寝ようかな?」
「俺が見張ってておくから好きに寝てくれ」
「それはサンキュー」
静かに瞼を閉じて身体の力を抜く。
思えばこのSAOの世界に来てから、しっかりと休みを取った事なんて片手で数えられるレベルしかない。
俺は気付いていないだけで無意識に追い詰められていたのだろうか?
自分でもよく分からないが、俺はそっとそういった考えを忘れるように意識を手放した。
裏話
実は主人公が気付いていないだけでアルゴとは初期の頃に一方的にですが、接点はあります。
主人公が第一層を奔走してた時に、たくさんの人たちがあるプレイヤーに救われたという事を口々にし、そのアルゴもモンスターに囲まれてピンチだった時に主人公に救われてます。
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