Tail of Twin   作:グラコ口

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第2話:学校に痴女、会場に修羅

 

 

 

「今日は、転入生を紹介します~」

 

 

 

 朝のHR、担任がいつも通りの間延びした声で告げるのは、いつもとは違う新たな日常の始まり。教室が一瞬期待と戸惑いのざわめきに包まれ、そしてゆっくりと開いた教室の扉の音と共に、それらは感嘆の声に変わった。

 

 

 

 煌めく銀髪を靡かせた、透き通った白い肌の美少女。

 どこかリィリアを彷彿とさせるようでありながら、全く別物の抜群のスタイル。男子だけではなく女子までも釘付けにする、そしてツインテール馬鹿の俺でも分かる美少女だった。

 

 

 

 ただ、次の瞬間にはそれどころではなくなったが――――。

 

 

『観束トゥアール』

 

 

 黒板に書かれたその名前に、一斉に総二に視線が集中する―――が、きっと俺の視線は他のクラスメイトたちのそれとは違っていただろう。

 

 

 

(――――トゥアールって、リィリアの師匠の…? なんで、総二と同じ…!?)

 

 

「「「観束だって!?」」」

 

 

 その視線の豪雨に、総二は意外にもさほど動揺した様子を見せず、少しだけ困ったような表情を見せ。そして渦中のトゥアールさんは――――。

 

 

 

「ソウデス コノハンノウガ ミタカッタンデス」

(なんか口元に涎がぁぁぁっ!?)

 

 

 

 30秒前の「凄まじい美少女」の表情がなくなり、なんかちょっと危なそうな感じの顔になってる!? これは噂のトゥアールさんとは別人に違いない。……そうであってほしい。

 

 

 

「トゥアールさんは~、観束くんの親戚で~、海外から引っ越してきて今は一緒に住んでいるそうで~す」

 

 

 

 ……簡潔な説明だが、本当に親戚なのか…?

 と、煮え切らない疑問を抱いていると、そのトゥアールさんが先に担任を糾弾した。

 

 

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! なんですかその侘び寂びのない説明は!? ここは私から『総二様の親戚です』って説明して更にこまごまと誤解を受けてしまいそうな発言をした後、ようやく誤解を解くと見せかけて更に誤解させる流れでは!?」

 

 

 

 いや、どんだけ誤解されたいんだよ。どんだけラブコメしたいんだよ。

 が、担任は全く悪びれずに言う。

 

 

 

「実は~、もうお一方紹介する人がいるので、時間をあまり割けないんですよ~」

「え!?」

 

 

 想定外のことに驚くトゥアールさんに合わせるかのように再び教室の扉が開き―――現れたのはいつぞやのツインテールなメイドさん。当然のようにメイド服着用。

 

 

「本日から陽月学園の体育教師として赴任された、桜川尊先生です~」

「うむ、よろしく」

 

 

「「「「………」」」」

 

 

 見事に教室が静まり返ってしまった。

 ……ある意味、教師の才能があるのかもしれない……。

 

 ただ、メイド服を着た教師を認めてしまうこの学校はどうなってるんだろう。

 

 

 

「フッ、しかし君たちは大人しいな。普通、美人の先生が赴任してきたらスリーサイズや彼氏の有無など、これでかと質問攻めにするところだろう。遠慮することはないぞ」

 

 

 

 強いていうなら、「なんでメイド服なんですか」と聞きたいところだが「メイドだからな」とか侘び寂びもない返答が返ってきそうだ。なんかこの人空気読めない人っぽい空気が半端じゃない。

 

 

 

「待ってください! 後から来て何を仕切ってるんですか! ここは、私の戦場です!」

 

「ほう、いい心意気だ! ようし、公平に、二人同時に質問を受けようじゃないか! さあ、質問はないか!?」

 

 

 

 気になることはいくらでもあるが、なんというかガトリング砲の銃口が見えているようなこの状況で飛び込むのは自殺行為でしか無い気がする。テイルホワイトならいざしらず、残念ながら俺に適当に喋っておけば勝手に理解してもらえる無口キャラはないのだ。

 

 

 

「む、熱い視線を感じるな……君は……おお、観束君じゃあないか!」

 

 

 

 あ、総二終了のお知らせかな…。どうやら総二はツインテールに見とれていた模様。

 追い打ちを掛けるかのようにクラスメイトA(すまん、名前は忘れた)が総二のツインテール好きを密告。俺も若干メイドさんのツインテールに見惚れそうになったが、意識してテイルリングに属性力を溜めると、その感覚が落ち着いてきた。

 

 

 

「そうかそうか、ならばこれをあげよう! ツインテールを好きだという君に、私からのささやかな贈り物だ!」

 

 

 なんだろう、少し気になる。

 と思ってしまったのもつかの間。なんと渡されたのは婚姻届だった。……婚姻届?

 

 

 

 ―――なんだこの先生、怖いんだけど!? 最近風紀が乱れてるからって送り込まれた学園側からの刺客か何かなのか!?

 

 その後も総二を守ろうと参戦した津辺さんを交えて激しい戦い(物理含む)が繰り広げられ、HRが終わった頃には津辺さんによって破られたメイド服と婚姻届の破片ができていた。

 

 

 

 そして後は、その狂気の婚姻届攻撃から逃げようと受験直前並みの必死さで勉強を始めた男たち。

 

 

 

「嫌だ……俺はテイルレッドたんと結婚するんだ……婚姻届なんて、目に映しただけでもテイルレッドたんが悲しむ!」

「……そうか。婚姻届を渡せばいいんだ。俺、もしホワイトたんに出会えたら―――」

 

「やめろ、死ぬぞ! 社会的に死ぬぞぉぉぉぉっ! だがもし受け取ってくれたらと思うとやらずにはいられねぇえええええ!!」

「ふはは、もしレッドたんに渡してホワイトたんに蔑みの目で見られたらと思うと堪らねぇぜ!」

 

 

 

 おまわりさん、あとメイドさん。あいつらです。あいつらがいいと思います。

 ツインテールを愛しながらも幼女には手を出さない素晴らしい常識人な総二じゃなくあのバカどもに婚姻届を渡せばいいよ…。

 

 ……というか、あいつらの反応がどんどん悪化してる気がするんだが、世界を守った代わりに凄い危険な属性をバラ撒いたりしてないよね。

 

 

 そして、こうして見るとトゥアールさん(仮)は単純に総二に好意を持ってるだけの普通の人に……見えないことも、ない……かなぁ?

 

 

 

 

―――…異世界の科学者であるトゥアールさんと、ツインテール大好きな総二。

 

 

 

 もしもトゥアールさんがツインテールなら――――…ん?

 

 

 

(……なんか、どっかで聞いたような状況のような)

 

 

 

 

 なんとなく、何かに気づきそうな――――そんな感覚は、机の上に置かれた紙によって中断された。呪いの紙―――もとい、婚姻届である。

 

 

「――――どれ、君は暇そうだな。お近づきの印にこれをあげよう」

「……すみません、押し売りとセールスと婚姻届の類はお断りしてるんですが」

 

 

 

 というか普通に怖いんだけどこのメイドさん。

 

 

 

「なに、気にするな。間違いなく無料だ。あと、もし破れたり焼けたりしてしまってもすぐに新しいものをあげるから心配はしなくていいぞ」

 

 

 

 何ティッシュ配るみたいな雰囲気でとんでもないもの配ってくれちゃってんの!?

 嫌だよ! いくらツインテールでもこんなぶっ飛んでる人とは関わりたくない! と、ちょうど携帯電話に自宅から電話がかかってきたので喜び勇んで席を立った。

 

 

 

「………も、もしもし!」

『あ、葵さん――――…って、どうしたのですかっ!?』

 

 

 

 なんだか怨霊にでも会ったみたいな声ですけど…。と言うリィリアだが、ある意味それも的を射ているのかもしれない。正直、婚姻届があんなに恐ろしいものだとは思わなかった。結婚とか考えたこともなかったけど、当分はいらない……。

 

 

 

「……い、いや、まぁ、色々あって…。というか助かったけどリィリアはどうしたんだ?」

『いえ、実は新型テイルギアの設計図を見ていたら、テイルリングの強化案を思いついたので葵さんの好きな属性玉を一つ選んでほしかったのですけど……』

 

 

 

 強化案! なんだろう、ゲームで好きな化石をひとつ選んでいいよって言われた時のような高揚感がある。沈みきった気分が救われた気がする……どんな属性玉があったかあんまり覚えてないけど。

 

 

 

「じゃあ、髪紐属性(リボン)?」

 

 

 なんとなく、フォクスギルディ戦が一番印象に残ってるし。ドラグギルディのツインテール属性は使えないって言ってた気がするし。

 

 

 

『わかりました。それじゃあ葵さん、授業頑張ってくださいね』

「……いや、ちょっと待って。悪いんだけどちょっとトゥアールさんに電話で今何してるか聞いてくれないか?」

 

 

『……? いいですけど…』

 

 

 

 

 というわけで通話を切り、待つこと数秒。

 再びメイドさんと津辺さんも合わせて総二を囲んで三つ巴の戦いを繰り広げていたトゥアールさんの携帯が鳴り、一瞬だけ顔を顰めたかと思うと画面の表示を見るなり嬉しそうに通話し始めた。

 

 

 

「――――もしもし、リィリアですか!? ええ、私は今ちょっと学校に通うことになったので……」

 

『そう、なんですか? 転入してすぐだと色々大変かもしれないですけど、がんばってくださいね。トゥアールさん』

 

 

「ええ、頑張ります! ありがとうございます、リィリア!」

 

 

 

 

 さりげなく、いつも通り総二に話しかけに行くと見せかけてトゥアールさんの横を通ると、聞こえてきたのは聞き覚えがありすぎる声と名前。

 

 

 

――――あ、これ確定だな。

 

 

 気づきたくなかった真実は、あっさり明らかになった。

 ……リィリアの憧れの女性(ヒト)は、割と残念な人だった模様。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 というわけで、そんな猛烈に不安な新たな日常が始まった日の放課後。例によって例のごとく現れたアルティメギルだが、今回はなんともストレートにグラビアアイドルのオープンコンテスト会場に現れた。

 

 

 

「……胸か、水着か」

 

 

 それが問題……ではないんだが。

 属性力を聞けばある程度相手の能力の目星も付けられる……かもしれない。

 

 

 

『どちらにしても凄く迷惑なのです』

 

 

 リィリアがなんか心なしか不機嫌そうな感じがする。

 ……もっとも、俺の隣にはもっと凄まじい空気を放っているお方もいるのだが。

 

 

 

「胸くそ悪い、空気の悪い場所だわ。とっとと片付けて帰りましょう」

「いや、早く終わらせたいのは同感だけど……」

「……ビー、クール」

 

 

 悪鬼……もとい、ブルーの放つ殺気に、レッドと顔を見合わせてため息を一つ。

 どうやら逃げ惑う人たちの、その胸に揺れるものを仇のような目で見据えている模様。

 

 

 

『……ブルーはいいですよね、まだ背があるんですから。ファミリーレストランで普通にお子様メニューを出される虚しさがわかりますか…っ?』

 

 

 

 ……やばい、なんかリィリアが半泣きだ。

 とりあえずブルーがコレ以上なにか言う前に釘を差しておこう。

 

 

 

「……ブルーは、お子様メニューを出されないだけマシ」

『……ぅ、ううっ、なにもわたしにトドメを刺さなくてもいいと思います…っ』

 

 

 あ、ごめん。

 ついでに何か勘違いしてしまったのか、レッドとブルーが申し訳なさそうにフォローしてきた。

 

 

 

「……いや、ほら! 大丈夫だって、ホワイトのツインテールなら!」

「ご、ごめん。まさか会長と同じような人がいたなんて……」

 

 

 あ、会長ね。確かにリィリアと会長は似てるかもしれない…。

 そんなことを考えつつ、縦も横も大きな牛……闘牛? のエレメリアンと対峙する。というかわざわざこんな会場を襲った割には女の子たちに興味を示してないようだが。

 

 

 

「はったりばかりで見かけ倒しの者ばかりよ! やはり真の巨乳はここにもおらぬか!」

 

「……質問。巨乳ってなに?」

 

 

 ちょっと気になっただけだったのだが、虚言之言霊(シーカーさん)の効果で気が付くと俺はその質問を飛ばしていた。……調整、ちょっとピーキーすぎませんかリィリアさんや。

 

 

 

「―――…ふむ、鋭い質問だな幼子よ! 真の巨乳とは! 己の肉体のみでその溢れんばかりの巨峰を体現する者! 成長とともに胸も大きくなるという純真な心! そして弛まぬ鍛錬の果てにのみ辿り着ける、まさに乳という大いなる山脈の頂点!」

 

「……じゃあ、どこから巨乳? どこから貧乳?」

 

「な、なんか今日はやけにホワイトが饒舌な気がする…っ!?」

 

 

 

 ごめん、レッド。だいたいウチの相棒のせいだ。

 しかしながら、一度クールダウンしたブルーの怒りのボルテージがどんどん上がってるからもうちょっとだけ自重していただけませんか、エレメリアンさん…。

 

 

 

 

「――――なるほど確かに、どこから巨乳、どこから貧乳などという明確な標はない…。我々が求める巨乳もまた、ただ大きければいいという単純なものでもない……。だがな、お主たちが髪型の中でもツインテールを特に愛するように、我も巨乳属性(ラージバスト)という夢に魅せられた1人の挑戦者――――バッファローギルディなのだ!!」

 

「……むぅ」

 

 

 

 分かってはいたけど、やっぱりエレメリアンには生半可なヤツがいない…!

 

 

『……生半可じゃないヘンタイしかいないのです』

 

 

 

 そうとも言う。

 と、そこで俺の耳にブルーの方からなにやら不穏な呟きが聞こえてきた。

 

 

 

「……巨乳属性(ラージバスト)ですって……? つまりあんたを倒せば、巨乳の属性玉が手に入るのね……?」

「お、おいブルー……?」

 

 

 あ、これヤバいヤツじゃ?

 慌ててバッファローギルディの話を中断させようと何か言おうとするのだが、「ぁぅぁぅ」とか焦ったリィリアみたいな声が出るだけで言葉にできない。

 

 

 

「なに、案ずるな……憧れる想いを胸に努力を続ければ、必ずお主の胸は大きくなるだろう。まだまだ成長期なのだ。夢を忘れるでないぞ――――」

 

「オーラピラー……んでエグゼキュートウェ―――――ブ!!」

 

 

 

 まだ戦闘態勢にもなっていない敵に、開幕必殺技……どころか開幕前必殺技という格闘ゲームだったら台パン待ったなしの一撃。そのあまりに夢も希望もなさすぎるあんまりな攻撃にバッファローギルディはなすすべなく爆発。

 

 

「ひでぇ!」

「……む、むごい…」

 

 

 

 なんか普通に子どもには優しそうな、イイヤツっぽかったのに……。

 というか鬼のような形相でバッファローギルディの消えた場所の爆煙をかき分けて属性玉をゲットするブルーさんは普通にホラーな感じなんですがそれは。

 

 

「やったわレッド! 巨乳属性ゲットよ!」

「私利私欲で敵を血祭ってんじゃねーよ!!」

 

 

「こ、これで……これであたしは……ふ、ふふ」

 

 

 

 ………うん。

 その、なんだ。さすがにその主人公を罠にはめて悦に浸る悪役みたいな顔はやめたほうがいんじゃないかなぁ……。怖くて言えないけど。

 

 

 

「……レッド、わたし帰る」

「お、おう……お疲れ」

 

 

 なんか、ドッと疲れた……。

 正々堂々と来る相手には、正々堂々と勝ちたい―――そんなのはやっぱり、本当の戦いでは必要ないってくらい理解してはいるんだけど。

 

 

 

『ホワイト……いえ、葵さん。大丈夫ですよ、巨乳の属性玉を使っても巨乳になるわけじゃないです。ブルーの凶行も今日限りのはずです……』

 

「………」

 

 

 それって、大丈夫のうちに入るんだろうか。というかなんでリィリアはそれを知ってるんだろうか。……いや、うん。聞かないでおこう。

 

 背後ではなんだかんだで喜んでいるっぽいブルーと、何やらツインテールのお姉さん方に囲まれているレッド。

 

 

 

 今日も、平和だなぁ……。

 そんなことを考えながら、俺はテイルリングの基本機能であるワープを使って殺戮現場から離脱した。

 

 

 

 

 

 

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