綾小路清隆ガチ恋勢がむちゃくちゃする話 作:ちなみに私はひより派
本作はアニメ版と原作のハイブリッドくらいの気持で執筆を……いや、どうせ原作破壊されるので関係ないか。
学校を巡りたい気持は山々だが、原作通り——という言葉はこれからは機能しないと思ってよいが——まずはコンビニに寄ることにした。
清隆くんは、コンビニをこれまで見たことのない……いや、そもそもその存在すら知らなかったであろう程の箱入り息子(尤も、その箱とやらは鉄筋コンクリートで頑丈に固められ施錠された真っ白な箱らしいが)だ。コンビニに興味津々で今か今かと道すがらわくわくしていた。
くっそ可愛いな♡ なんでも買ってあげるね♡
おっかなびっくり自動ドアをくぐり、清隆くんはコンビニのコンパクトにまとまった商品棚の列に目を輝かせる(ように私には見えた)。だが、すぐに平静を装って、物色を始める。
しかし、すぐに分からないことだらけになってきたのか、カップ麺のことを中心に清隆くんは私を頼って色々と質問してくれた。全然世間慣れしてないこと隠せてないね☆
……いや本当になんであんな愉快なキャラにしたの? 無理があるでしょ(急に冷静)。
私も私で必要な物は、無料商品はチラ見しただけで、ポイントを惜しまずにカゴに入れていった。主に美容品とかお風呂用品とか。堀北さんとは違って美容には人一倍気を遣っている。
その堀北さんといえば、勿論、コンビニに居たが……私の方を一瞬見ると、離れるようにさっさと去って行ったので、話すこともなく、何のイベントもなかった。私のことが苦手なんだろうか?
まぁ、さっきは教室でクラスを荒らすだけ荒らしたからね……。
ちなみに清隆くんとの会話は原作同様、ド下手でモノサシを忘れたような会話だったのでカットです。カット。詳しくは原作を読んでね!
アニメ版くらいになるように清隆くんによ〜く言い含めておきましたんで今後は大丈夫かなぁと思います。……いや本当にナンデ? 君、本当にそのキャラで上手くいくと思ったの??
私の「上手な会話の仕方」の教え(お説教)を懸命に聞いてくれる、ある日突然感情を学んで来いと放り出された機械のような挙動をする清隆くんを見つつ和んでいると、突如、大きな声が店内に響いた。
レジの方からの大きな声……そちらを向くと、やはり、須藤くんがレジで揉めている。
おお! これが例の! ……とはならないが、原作イベントだ。
原作ブレイクをもう既に始めてしまっている今、貴重な原作イベントの筈だが、現実で相対するだけ揉め事なんて面倒なだけでしかないってこれ……。
こういうことはさっさとスキップするに限るので、私はレジの方に駆けた。
「へいへい〜須藤くん? お困りかにゃ〜? 見た感じポイントが払えないとかでカップ麺を買えない感じ? 初日だもんね仕方無い。ここは私が立て替えしてあげましょう」
さっさと捲し立てて、須藤くんのカップ麺代を、後から追い掛けてきた清隆くんの分も一緒にして代わりに払うことにした。
しれっと清隆くんに貢ぐことに成功☆ 天才だね私。今後も貢がせて♡
「お、おう……助かった。にしても、お前そんなキャラだったのか?」
「細かいことはいーの。…………はい、次からはポイントの使い方を覚えて、忘れ物もしないで、そして、そもそも揉めないようにしてね。コンビニの奥に居たのに大きな声で清隆くんと一緒にびっくりしちゃったよ」
「悪かったよ……」
須藤くんも中々しおらしいですね。
怒らせなければ、あと、バスケを話題に出しておけば、須藤くんという人間は実に素直で、情熱溢れるヤツなのですよ。
根っからの不良ではないからこそ、Cクラスの人達と違って更生できるわけで……。まぁ、現状は問題児なことに変わりはないのだけれども。
「須藤くんって体がっちりしてるよね〜。自己紹介でも言ってた通り、バスケットで鍛えてるの?」
「おう、そうだ。俺はバスケにはガチだかんな。練習をしない日はないぜ! 今日も時間がありゃトレーニングだな!」
「へ〜そうなんだ。ということは、もしかして、プロとか目指してたり?」
「もちろんだぜ! 俺はNBAを目指してんだ」
「へ〜。だから高育を選んだの?」
「? おう……?」
横で完璧な会話のキャッチボールをしている私と須藤くんを眺めているしかできない清隆くんが可愛いね♡ ……会話とはこうやってするんだよ! よく学習してね!
そして、須藤くんは、「だから高育を選んだの?」という言葉に疑問符を浮かべているようだった。
それもそうだろう。元々、須藤くんにはバスケットボール強豪校への推薦があった。しかし、暴力事件を起こしてしまい、推薦が取り消された結果、高育に来ることになったのだ。
須藤くんにとって、高育とは妥協で選んだ進学先。そんな妥協の進学先の何が良いのか……何故「だから」なのか、須藤くんは疑問に思っている。
「だって、大抵のプロ選手は大学バスケットボール部を足がかりにプロになるわけでしょ? 高育なら進路を自由に選べるから、よりプロになりやすい大学、設備の整った大学を吟味して進学することができるわけだ。選り取り見取り、そのまま国内のプロになるという選択肢もないわけではないわけで……」
「……つまり、どういうことだ?」
「行きたいところに行けるって、それだけで夢を叶えられるまでの道程がいっきに短くなるわけじゃない? だからそれができる高育に来たのかな〜って」
「おう……そう言われると、そうかもな。正直、受かるとは思ってなかったからよ……」
「なるほど、そうなんだ。でも、須藤くんの夢を考えたら、悪くないどころか良い進学先だと思うよ! 高育は」
そう分かりやすく言うと、須藤くんは少し希望を持ったような顔でこちらを見返してきた。
推薦白紙という絶望した状況下だったのから一転、悪くない、寧ろ、良い状況であると分かるのは、それを教えてくれる存在が居るというのは、須藤くん的には本当の心の救いであろう。
……これで、原作のような、右も左も分からなくなり、半ば自暴自棄になってしまうという事態は回避できただろうか。
「ただ、勿論、それにあぐらを搔かないように……さっきみたいにレジで叫んだりするようなことはやらないように、ちゃんと"実力"を付けていかないといけないんだけどね。ポイントのこともあるし」
「最後は説教かよ……。ったく、分かったよ。俺もポイントを減らしたいとは思わねーしよ」
正直、「進路選びたい放題! あなたの将来に最適です!」ということを伝えたのは、4月中に限れば「進路はどうせ選びたい放題だし……」と勉強のやる気を削ぐだけなので、その視点から見れば良い手ではないだろう。
5月初頭のクラスポイントを大きくしたいのなら、4月の小テストで赤点を取らせないことも重要な筈であり、勉強をするように説得するなどをした方がよい筈だ。
だが、そうはしない。
須藤くんは、これまで中学レベルの学習もできないような悪い環境で育ってきた。そんな環境から一転、自主性・自立性の高い、ハイレベルな人も多く在籍する高育に放り込まれることになる。
当然、そんな須藤くんは、これから何をすれば良いのか、何から手を付けたらよいのか、道筋は見えていないどころか足下すら全く覚束ない状態になる。
そして、どうすればよいのか分からないということに、自分自身気が付けないままになってしまう。いや……気が付きたくないのだろう。そして、そのプライドからおおっぴらに施しを受けようとはしないし、誰かに頼ろうとできない負のループに入ってしまう。
関係値のない時点では、その負のループを確定させるだけだ。であれば、最初から小テストの赤点の回避は諦めて……1学期
……——まぁ、それでも、勉強の話題は定期的に出しておきたいし、雑談の流れで軽く触れるくらいはいいだろうと思うのでポイントのことに絡めて出すと、須藤くんはバツが悪いのか……丁度、カップ麺が出来上がり、これ幸いと会話を打ち切るようにしてカップ麺を持って先にコンビニの外に出て行ってしまった。
私も清隆くんと顔を合わせて、苦笑してから、一緒に外に出た。
だが、面倒くさいイベントはまだ終わっていない。今度は、上級生にコンビニの前で絡まれるというこれまた面倒くさいイベントだ。
須藤くんと清隆くんのたどたどしい雑談を横目に、コンビニの道の方にも意識がいってしまい落ち着けないのだが……。
程なくして、例の上級生三人が現れた。
く、来るっ! よし、このまま十年前から考えに考え抜いてきた上級生撃退話術法を武器にして……——
と思うのも束の間、普通に上級生は私達を一瞥しただけでそのまま通り過ぎ、何事も無かった。
はにゃ?
まぁ……普通はそうか。私達は三人で楽しく雑談しているわけで、そこに、突っかかりに行く方がどうかしているのか。原作は須藤一人だからいけたのか……そうか、そうだよな…………。
二人は異常(正常)に気付かず(気付くわけねえだろ)、普通に雑談をしていた。いいね。私はやや不完全燃焼だけどね。
結局その後は、なんだかんだで楽しい雑談でこの場を終えることができ、須藤くんとの関係構築の第一歩は歩めたのだろう。
そして、本題の二人で学校探検(と言えば聞こえはいいが、Sシステムに侵された学校の闇を暴く)デートだ♡
須藤くんと分かれた後、荷物だけ寮に置いてからまた学校に戻ってきた。
いざ、探検!!
と、ハイテンションで探検できたらよかったんですが……。
いざ、二人で学校を歩くと、沈黙が思ったより痛かった。人気の無い校舎も相まって、本当に静寂という言葉が似合いすぎる程の様相だ。
いやまぁ、それが至極当然のことなんだけどね。私が一方的に情報を知っているだけで、向こうは私を一切知らないということを意識しなければならない。
でも、……ガチ恋勢としてはつらいっ! 近くに居るのに話せない! これまでの人生十数年渇望し続けてきた時間が結局コレですか??
しかもこの学校は
Sシステムの全貌には気付いていないフリをしなければならないので、これも話題には出せない。
しかも、清隆くんは経歴的に過去話NG、家族の話NG、趣味無し、常識無し(譬喩ではなく)、所謂コミュ障……一体何を話せばいいのだ……。
愉快小路くんになられたらなられたで、それを見ているのは……表面だけの話と分かった状態になるから、つらい。
だが、幸か不幸か、この沈黙を見事打破するように、廊下の角から、二人の生徒が歩いてきた。
「お前達、そこで何をしている」
威厳のある低い声でそう言ったのは、3年Aクラス、高育生徒会長の
だれも居ないと思ったが……生徒会は入学式だからとかで居たのだろうか。
ここで出会う予定は無かったな……。いつかは出会っていただろうし、そのつもりだったが、それは5月以降のつもりだった。
……まぁ、出会ってしまったのならそれはそれで好都合だ。
「もしかして、生徒会の堀北学先輩と橘茜先輩ですか? 私は、新入生、1年Dクラスの折田朱菜です! 初日なので学校探検をしてました!」
「オレはDクラスの綾小路清隆……です」
「そうか……。1年の……綾小路、それに、折田……あの二人か。だが、1年が人が居ない時間に学校探検をするのは、生徒会長としては安全上推奨できないな」
……眼鏡越しで、龍すら射止めてしまいそうな鋭い眼光でこちらを睨み付けてくる学先輩。まるで、インテリヤクザに悪いことをして怒られている気分だ。
だが——Sシステムを知る私は知っている。この言葉は、学校のことをよく分かっていない一年生を、Sシステムに侵されたポイント亡者の上級生達から守るためのものだということを。
「まぁ、そうですよね〜。でも、なるべく早く、今日のうちにでも確認しておきたいことが沢山ありましたからね〜」
「ほう?」
私はその気遣いなど一切無用だと、挑発気味な返答をした。
学先輩も、無知な一年を刺激せぬように、何も知らせぬようにという姿勢から一転、試すような視線をこちらに向けてくる。
こちらも視線で返答する。
横では橘先輩がわちゃわちゃし出していて可愛い。コントラストが大きくて眩しすぎね。
「早く知っておくべき情報が沢山あるのは、生徒会長がきっと一番ご存じでしょう? もっとも、私は知りたいことの大枠はもう知ることができましたけれど」
「早いな」
「私が一体何を知ったのか、これから何を達成するのか、早ければ数日、遅くても5月1日にでもなれば生徒会長の耳にもはっきりと届くと思いますよ」
「それは大した自信だな。入学初日にそんなことを言う生徒が居るとは」
「今日は既に清隆くんとは別にもう一人のやんちゃなクラスメイトとの交流も始めましたからね。その子と交流を続ければ、或いは、クラスメイト他39人とこのペースで知り合えば——5月を迎える前に大きなことの一つや二つは成し遂げられますよ」
既に雰囲気は異様なものになっていて、橘先輩はすごく不安げな目で私と学先輩を見ている。
一方で、学先輩は私への期待を膨らませるように、その視線をより鋭いものにしていた。
——であれば、その期待に応えてさしあげましょう。
「例えば、
「上級生の方達とは違ってね」とは小声で言っておいた。
すると、先程の龍をも射止めそうな顔からは一転、その真顔を緩めて、ふっとクールな笑みを見せた。
これは期待に応えられたということだろう。
「まぁ、ご心配には及びませんよ。このまま私達は帰ることにします。生徒会の人と話せて嬉しかったです。それではまた」
私は清隆くんを連れて、やや逃げるように……この場を去った。
うん。普通に恐かった〜……。
「朱菜は生徒会長に毅然と立ち向かっていたな。オレは恐くて逃げ出しそうになったぞ」
「そんなこと言って〜清隆くんも表情全然変わってなかったじゃん」
結局、生徒会長を切っ掛けに話も弾み、そのまま楽しく帰宅することができた。
生徒会長様々だね!
難産でした。
週一ペースかもしれない。多忙もある。
中期的目標「須藤の成績を高校生レベルに引き上げる(1学期期末テスト迄)」