雀の妖怪の仕事終わり食レポ日記   作:都木神子雀(ときがみ こすず)

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ビリヤニ

 

ーーー雀の妖怪でも飛べない日はある。

 郵便局からおうちまでの帰り道の駅、ふとスパイスの匂いが鼻をくすぐる。あまりにも配達で羽根を酷使していたためか、背中が変に凝ってしまっていた。

 

 こういう状態で空を飛ぶと、羽根の筋肉がつって墜落しかねない。身体が資本の労働者、あきらめて徒歩での帰宅をしていた。

 

 

 そんななかのスパイスの匂い。ふと目に入った南インド料理の店。普段はコンビニ弁当で済ますけど、今日はなんかスパイシーなものが食べたくて、勢いで入った。注文したのは、初心者にオススメ!との文言が書かれていたミドルクラスのディナーメニュー。注文した後、十五分ほど空腹と戦った私の前に現れたのは……金属の大きなトレイに、色とりどりの料理がずらり。視界いっぱいに広がるこの景色だけで、繰り返しの多い日常を彩る「非日常」を感じられる。

 

 まず、手前のこの煮卵みたいなのから。カレーにしっかり浸かった卵で、表面がソースにコーティングされてる。フォークで割ってみると、香ばしいスパイスの香りがふわっと広がるの。ひと口かじると、卵のまろやかさとカレーのピリッとした辛さが混ざって、口の中が幸せの渦! あぁ、これだけでご飯三杯いけそう?残念ながら目の前にあるのはチャパティとビリヤニ。このピリッとした尖兵に対して、甘い白米の援軍は来ない……。

 

 右側の手前のお皿は、辛口の南インド特有の豆入りカレーだって。豆がごろごろ入ってて、見た目からして本格的。スプーンですくうと、思いのほかいろんな具材がゴロゴロと入っている。パット見たところ…豆以外にも見たことがない食材があるみたい。食べてみたら、予想以上の辛さ。でもただ辛いだけじゃなくて、コクがあって、豆の食感がアクセントになってる。汗がじんわり出てくる。私みたいな雀の妖怪は、普段は穀物とか小さいものばかり食べてるので、汗をかきつつ食べる経験はなかなかない。ハンカチを三角巾のようにして、羽根の先につけて、うまい具合に顔の汗だけ拭きつつ食べすすめる……が、汗の量が多すぎて諦めた。配達で酷使してる羽根を休めるためにここで食べてるのに……本末転倒虫も良いところだ。

 

 そして、チャパティ! 薄いパンみたいなの、トレイの奥に三角形に折られてる。手でちぎってカレーをすくって食べるの、楽しいよね。モチモチした食感で、小麦の香りがふんわり。スパイシーな料理と一緒に食べると、味がまとまって完璧。

 

 さて、チャパティを奥のカレーにもつけてみる。その奥の薄い色の皿は、蜂蜜と鶏もも肉のカレー。蜂蜜が入ってるというメニュー表示から期待した通り、その他のカレーは本格的で絶対辛いという確信があったため保険のために入れたものだが、大正解だった。 鶏肉が柔らかく煮込まれてて、フォークでほぐれるくらいホロホロ。ひと口で、蜂蜜の優しい甘さが最初に来て、後からスパイスのキックが追ってくる。甘味のあとにくるスパイスが、異国料理らしい刺激だ。

 

 さて、真ん中はビリヤニ。本日の主役だ。 黄色く染まったご飯に、鶏肉やカシューナッツ、玉ねぎのスライスが散らばってる。実はそんなに匂いは感じなかった。カレーのほうがつよいからだろうか……。だがスプーンで混ぜて食べると、ご飯一粒一粒にスパイスが染み込んでて、ふわっとした食感。鶏肉のジューシーさと、ナッツのコリコリが混ざって、新しい味だ。……もっとも、これもスパイスが聞いているのか食べていても汗が出てくる……救いはないのだろうか。

 

 奥の方にはチキンティッカかな? 赤く焼かれた鶏肉の塊が、串に刺さってて迫力満点。ヨーグルトベースのマリネで焼かれてるみたいで、外はカリッと中はジューシー。かじると、煙っぽい香りとスパイスの爆発! これはビールとかに合いそうだけど、私はクラフトコーラで合わせてみた。爽やかな飲み物と相まって、最高の組み合わせ。疲れた体にいいかと思ったものの、スパイスで過敏になった舌にダメージが入っただけなので、名古屋に来るときはチャイなどと頼むといいだろう。

 

 左側はサラダと、甘くないヨーグルトサラダ? サラダはレタスや紫玉ねぎに、黄色いドレッシングがかかってて、さっぱり。ヨーグルトの方は、キュウリやハーブが入ってるみたいで、クリーミーだけど酸味が効いてる。これをカレーと交互に食べると、口の中がリセットされて、次の一口がまた新鮮に味わえる。コイツラが清涼訳だったわけだけど……サラダを一番先に食べてしまったので、カレーをヒーヒー言いながら食べる羽目になった。さて、ようやく終わりが見えたころ、メニューに気になる文言を見つけた

 

「え?ターメリックライス無料?」

 

 確かに、辛いものとそれを和らげるもののバランスがあまり良くない。ターメリックって辛かったっけ…?あんまりそういう印象ないし、頼んじゃおうかな…

 

……これが失敗だった。

 

「ゴユックリー!」

 

 外国人の店員さんによそわれたターメリックライスは、ざっと茶碗2杯分。全部お皿によそわれた時にようやく気づいた。

 

 …あ、これって私がもういいですって言うまでよそわれ続けるタイプだった?

 

 このあと死ぬほど食べた。雀の妖怪でも飛べない夜はある。自分のいつも食べる量の1.8倍を食べた日とかだ。

 

 …ちなみに、この写真をあすけんに投げたら26点と帰ってきた。明日はキャベツだけにしようとココロに決めた雀でした。

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