世界の配管工に強制就職させられました   作:ゆらゆられたす

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1.なんか死んだと思っていたら、ゲーミング折り鶴が目の前にいる件

 ―――暗闇の底に沈んでいたはずの意識が表層まで浮上する。肉体の感覚が少しずつ戻ってくるのを感じる。まだ、瞼は開かない。意識が途絶える直前まで抱きしめていたはずの桜の感触もなくなっている。口も開かない。さっきまでいたはずの教室の匂いもない。自分の拍動すら感じられない。私は死んだのか?でも肉体感覚はある、意識もはっきりしてる。じゃあなんだ?どっかの馬鹿が無差別に転移門でも、暴走させたのか?それが、偶々、私たちの部室だったと?いやいや、どんな確率よ…

 

「んー、当たらずとも遠からず、といったところなのです」

 

 ――っ!誰?

 

 穏やかで、少し楽し気な、妙に頭に残る声が頭上から聞こえてくる。

 

「ん?あぁ、まだ身体機能を許していなかったのです。少々お待ちを―――【賦活】」

 

 声の主が何かを唱えると同時に自分の体に体温が戻り、血液が巡る感覚が感じられる。うぉぅ、一度血流を停止させていたからかは知らないけど、何かが全身の血管を通っていく感覚がめちゃくちゃ鮮明に感じられるわね。正直不快、とまではいかないけどゾワゾワして落ち着かないわね。

 

「一度機能停止してたのです。ちゃんと血液が巡ったらだんだんと体を動かせるようになるはずです」

 

 謎の声の主から唐突に死亡通告されたんだけれど………どう反応したらいいのかしら、これ。まぁ、生き返る?らしいからそこまで気にすることでもないのかしら?

 そうこうしているうちに顔周りが動かせそうになってきたわね。まずは声の主のご尊顔を拝もうかしら………ぅぁっ!油断したわね、目の前が白光に染まって焼けるよう。これはどこぞの天空城の大佐のように目を抑えてのたうち回るシチュエーションね。体動かないけど…はぁ、体が動くまでにしばらくかかりそうだし、少しづつ慣らしていきましょうか。

 

 「ふぅ、まさか目が明けられるようになるのに1時間かかるとは思わなかったわ」

 

 強すぎる網膜からの刺激に耐えられず、未だズキズキと痛む頭を押さえながらぼやく。

 

「お、そろそろ大丈夫そうです?えーっと、櫻島《さくらじま》百合奈《ゆりな》さん、ですよね?」

 

 そう言いながら、私に目線を合わせるように下降してきたのは発光する極彩色の折り鶴だった。それも、身長が164センチあるはずの私より一回り大きいサイズのやつ。正直、マジでまぶしい。光らないでほしいわね、目に悪すぎる。ほんと何なのかしら、このゲーミング折り鶴。何でもかんでも光らせればいいってもんじゃあないってことが、分からないのかしら?

 

「別に自分も好きで光ってるわけじゃあないのですよ。でも、折り鶴型で売ってるのが光ってるのしかなかったので、仕方なく、本っ当に仕方なくなのです。まったく、最近の何でもかんでも光らせとけばいいっていう風潮には困ったものです」

 

 ”はぁ”っとため息を吐きながら、最近の風潮に文句をいうゲーミング折り鶴。あまりにも現実離れした光景に少しおかしさを感じて、気づく。

 

「…身体的接触なしで思考が読めるの?それも私が許可してないのに一方的に?」

 

「あー、あなた方の知るものとは少し違うのです。あくまで表層で言葉として出力したものに限定されるものですし、それにこの空間のみの限定的なものなのです」

 

 ゲーミング折り鶴の思考盗聴はあくまで表層までらしい。身体的接触と当人の許可、そしてある条件を満たしたうえで双方向な私の知るものとは異なるようね。………でも、私の知る限り思考盗聴の術は後者のみのはずなのだけれど。まぁ、ゲーミング折り鶴の時点で常軌を逸しているのだから、その辺は気にしたら負けっぽいわね。

 

「そうですね。その辺はスルーしてもらえると話がスムーズに進むのです」

 

"うぉっほん"と一つ咳ばらいを挟んで、対面のゲーミング折り鶴は言葉を続けた。

 

「櫻島百合奈さん、あなたは不慮の転移門暴走事件に巻き込まれ、魂魄のみがこの境界に送られてしまいまったのです。当然、元の肉体はその場で機能を停止し、そこに戻ることもできませんでした。なので、()()わざわざ境界まで出張してきてあなたにもう一度肉体を与えたというわけなのです」

 

 ――一緒に巻き込まれたであろう他のみんなは無事なのかしら?

 

「もちろん、起点となる教室にいた白峰《しらみね》葵《あおい》、月城《つきしろ》美咲《みさき》、橘《たちばな》花梨《かりん》、久遠《くおん》リィン、久世《くぜ》桜《さくら》の5名もあなたと同じ措置をしているのです」

 

――よかったわ。でも今すぐに合わせてはくれないのね?

 

「私のほかにも一人につき一体ずつ、私と同じような存在が付いているのです。蘇生措置は各自で行っているので、完全に終了するまでは合わせることはできないのです」

 

――あなたの他にもゲーミング謎物体がいるの?

 

「………まぁ、姿形は異なりますが皆似たようなものなのです。」」

 

 ………いるらしい。

 

「ん゛ん゛っ、さて、こうしてあなた方を蘇生させたわけなのですが、一つその対価に頼まれごとをしてもらいたいのです。それは、このまま別の世界に行ってもらって、その世界で滞ってしまっている魂魄の巡りを良くする。言ってしまえば魂魄路の配管工のようなことをしてもらいたいのです。」

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