DCユニバースvsプラスチック姉さん 作:スカンジナビア半島
『スーパーマンは決して、私達と隔絶した存在ではありません。
彼はいつも私達とともに生き、私達から受けた善意を返しているのです。
彼が善意を見せている限り、この世界には良き心があるのだと、
私達は信じることができるのではないでしょうか。
引用元:ロイス・レーン』
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ジョン・ヘンリー、ハンマー使いの偉人。
文明に打ち克った黒人の労働者。
彼に纏わる英雄譚を父は息子に何度も語っていた。
息子の名はジョン・ヘンリー・アイアンズ。
幼い頃から神童と讃えられ、運動神経も抜群であり
科学の才能は大人でも太刀打ちできなかった。
父は息子に何度もジョン・ヘンリーのことを語った。
彼のようなヒーローになれ、
彼のように人の規範になる存在になれと。
だが、ジョン・ヘンリー・アイアンズは内心、
その話を鼻で笑った。
大昔、それこそ90年代であればそういう説法も効いただろう。
時は21世紀、恐怖の大王も二千年問題も通過して久しい時代。
ジョン・ヘンリーは己の価値、仲間の価値を示すためにハンマーを振るい、
機械とどちらが速く穴を掘れるかを競った。
類まれな肉体と技術を持ち、グングンとハンマーを動かしていく。
文明に勝利したが、心臓発作で倒れた。
彼は人間の力というものを生命をもって示したのだ。
熱の入った父の語りを聞き、
今思えば子供らしい傲慢さだったが、
ジョン・ヘンリー・アイアンズは無邪気にこう言った。
「それならジョン・ヘンリーが科学をマスターしたらもっと超人になるだろ」
さぞ怒られるかと思ったが、父は大笑いして言った。
「だから彼の名をお前につけたのさ」
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世界には常に争いごとがある。
以前に、バットマンが現代の世界は分断されていると言った。
しかし、スーパーマンにしてみれば、そもそも世界が1つだった時代を知らない。
だがそれでも動き続けていれば後に続くものは出てくるものだ。
広大な海。陸までは300kmある孤立した貨物船が横倒れになり、重油が海に広がっている。
幸い、まだ人が落ちてはいなく、乗組員は船上にいた。
浮かんでいるスーパーマンの横を2人の影が通り過ぎていく。
どちらも年若く、十代の細さを持っていた。
スーパーボーイ、コン・エルとスーパー・マン、コン・ケイナンが
乗組員を次々に救助ボートに載せていく。
「大丈夫だ、すぐに助ける」
「みんな! 助けに来た!
英語わかんないから用があったらスマホ通してくれ!」
非常に手際が良く、
乗組員にも細かく声をかけているのがスーパーマンにも見える。
「よーし、それなら」
そう言ってスーパーマンは海に広がる重油をスーパーブレスで凍らせた。
凝固させた重油は極めて広く、重いが、こうすれば広がることもない。
持ち上げると周囲に黒い影がかかり、
貨物船を上回る面積の氷盤を持ち上げた。
救助ボートに乗った乗組員が歓声をあげてこちらに手を振ってくる。
スーパーマンは彼らに特に何もしていないが、
手を振られている以上は、笑顔で手を振り返した。
後はこの氷塊を然るべきところに持っていって処理をすればそれで解決だ。
「手伝うよ」
「俺も!」
そう言って救助を終えたスーパーボーイと
スーパー・マンも下に支えに来る。
スーパーマン一人でも運べるが、手伝ってくれる善意はとても嬉しい。
クラークは人と話すのが好きであり、
同じSの字を胸に刻む少年たちとは
どんどん打ち解けていきたいと考えている。
黒縁眼鏡にセーターが私服のクラークでも、
本気を出せば若者とも打ち解けられるのをバットマンと妻に示すのだ。
コン・エルとコン・ケイナン、どちらも優れたヒーローであり、
どちらもレックス・ルーサーがオリジンに関与している。
コンは遺伝子の半分がルーサーであり、
ケイナンはルーサーの技術でヒーローになっている。
だがどちらもそんな呪われた生まれを物ともせずにヒーローを続けている。
曰く付きの生まれ、クラークには縁のない概念だ。
実の父が悪に堕ちて孫をどこかに連れて行ったことはあるが、
それはそれとしてカンザスの両親が極めて素晴らしいので
体感としては何も問題がないも同然である。
「助かるよ、ふたりとも」
「なに言ってんスかあ! 俺、マジペーペーなんで!
こういうのどんどんやりますから!」
「うちそういうの関係ないけど」
「そりゃ先輩はアメリカ生まれだけど、うちはそうだから!
先輩、後輩の関係は絶対だから!
んで俺、スーパーマンの三代目狙ってんで!」
中国人のスーパー・マンがハキハキと話す。
クラークとコンは面喰らう勢いだ。
スーパーマンの関係者にこのような真っ向から明るい人物は非常に珍しい。
「そう、頑張ってね」
「まあやりたきゃやればいいんじゃないの」
「おいおい白けてねっスか先輩!
そんなんじゃ中国5,000年の歴史に勝てねえぜ!?」
「べつにそういうの気にしないからなあ」
売り言葉に買い言葉を期待しただろうケイナン。
しかし、コンの反応は至って冷静なもの。
「まあ……俺も正直どうでもいいけど」
「じゃあなんで言ったんだよ」
「舐められないようにしようと……思って……?
俺、心底恥ずかしながら元ヤンで……
すいません、やっぱ無しでお願いします」
最初の熱気はどんどん消えていったケイナンが顔を背けてボソボソと言う。
呆れたコンが首を振っている。
「つか、なるとしてもお前は4代目になるよ」
「え、そうなの!? まだ俺の知らないスーパーマンがいるのかよ」
「後で紹介するよ」
スーパーマンにしてみれば微笑ましい光景だ。
二人が顔を合わせたのはこれが初めてのはずだが、
親しくなるのに問題はないようだ。
もちろんスーパーマンにも
同年代の親しいスーパーマンがいる。
少年たちの間に入るのは勇気がいるが、
スーパーマンの友達であるスーパーマンもここにいれば、
若者にも「へえ、スーパーマンってイケてる大人じゃん」
と思ってもらえること間違いなしと確信している。
なにせスーパーマンの友達のスーパーマンは都会生まれだ。
どうせならスーパーマンがもうひとり来ないものかと
クラークがボンヤリ考えていると
コンがなにかに気づいて眉間に皺を寄せた。
本人には絶対に言わないが、こういう仕草は無性にルーサーに似ている。
「なにか来るぞ」
「そうみたいだね」
「え、ちょっと待って!」
遅れてケイナンが丹田に氣を集中させ、
八卦に氣をまわす。
スーパーマン/クラークの氣を注入されることで
超人の力を得たスーパー・マンは氣を八卦に移動させることで
乾(飛行)・離(熱線)・坤(鋼体)・兌(氷息)・
坎(超聴)・艮(剛力)・巽(透視)・震(高速)の力を発揮させられる。
乾から坎に氣をシフトさせ、超聴力を活用すると、
ケイナンにもなにかの接近がわかった。
人間大のサイズの昆虫めいた怪物、
パラデーモンの群れがこちらに飛んで来た。
「これなら俺一人で大丈夫そうだ。
少し待ってて……」
「ちょい待ち、先輩。もっとドデカイ氣がある」
氷から手を離したコンが、敵を引き受けようとするのを
ケイナンが呼びかけた。
一拍置いて、大気が轟音に撹拌される。
直感で避けたコンがいた場所に、
メタルの質量が超音速で飛んできた。
「何こいつ……何こいつ!?」
現れた何者かの正体を確認し、
あまりの異様な風貌に中国の超人が腰を抜かしそうになった。
「お前、三代目とか言ってたのに知らねえのかよ!!」
「え、有名なんスかこのけったいな妖怪!?」
そういって指差す先にいるのは半分はクラーク・ケントの顔と体、
もう半分は機械の顔という完全な異形。
かつてスーパーマンの後継者を名乗ったサイボーグ・スーパーマン、
またの名をハンク・ヘンショウがいた。
「おい気をつけろ。あいつ、めっちゃ強いぞ」
「いやあ余裕っしょ。あんな時代遅れなフォルムのメカ、
今はナノマシンの時代だって俺が教えてやりますよ!」
ケイナンも氷から手を離して肩をぐるぐる回す。
彼は中国拳法の名手であり、世界最強の拳法家イー・チン老師の弟子だ。
近接戦の技巧なら全スーパーマンでもトップクラスだろう。
そんな彼に勝利するのは並大抵のことではない。
しかし、相手はあのサイボーグ・スーパーマンだ。
「気をつけて、スーパー・マン」
「ッス。気を引き締めます」
「おい、後輩!!!」
やむを得ず、氷をヒートビジョンにて一瞬で蒸発させた
スーパーマンも背後で臨戦態勢に入る。
次にはスーパー・マンの姿が掻き消えて
サイボーグスーパーマンの拳が振るわれた。
メタルの体の背後にまわったスーパー・マンが
腰を回して突きを放った。
直撃。しかし、ダメージはない。
そこにスーパーボーイも殴りかかるが、
機械の目から放たれたヒートビジョンが直撃した。
海面を数度跳ねてコンが海に浮かぶ。
ケイナンが追いかけるも、指が届かずに
ヘンショウのメタルの腕が海を割った。
スーパーマンが駆けつけようとすると、
パラデーモンが二十、三十と群がり、身動きが取れなくなった。
スーパーボーイとサイボーグスーパーマン。
彼らの両横に海の壁が立ちはだかり、
さらにヘンショウが追い打ちをかけんとする。
「隙ありぃ!」
ケイナンによる見事な体勢の飛び蹴りが斜めの角度で
ヘンショウの延髄に突き進む。
機械の頭部が180度後ろに周り、口からヒートビジョンを出す。
眼球よりも口から出す熱線の方が当然だが口径が大きい。
「うわあっ!?」
ギリギリのところで両腕を固め、
氣を坤(鋼体)にシフトさせる。
熱線に両腕が焼かれたケイナンの前に
もっと巨大なミサイルが射出された。
両腕が治るには時間がかかる。
丹田に八卦を置いて氣をシフトさせて
力を引き出すのがスーパー・マンの戦い方。
そして、八卦のトリグラムは隣接し合う属性との相関性がある。
鋼の体にするトリグラム、坤に隣接するのが
離(熱線)・兌(氷息)の遠距離能力。
腹式呼吸で腹部から氣を練り上げ、
老師イー・チンに伝授された印を結ぶ。
腹回りを5mほどに膨らませてから
巨大な冷たい息吹を吐き出した。
5本の鮫並みのミサイルが氷柱になり、
ヘンショウがそれらを薙ぎ倒して体当たりしてきた。
ケイナンはまだ実戦経験が不足気味だが、
いじめっ子の性根をイーチン老師に根本から叩き直され済みだ。
冷静に、遠距離からのシフトとして、剛力の艮に氣をやっている。
間合いにサイボーグスーパーマンが突進してきた。
ケイナンが拳法の突きをする距離は速くもない。
スーパーマンやスーパーボーイならここから取っ組み合いに移行する。
だがケイナンには幸いにも世界最強の拳法家に手取り足取り指導を受けている。
近距離の相手でも寸勁を使うことで、
他のスーパーマンにはできない近距離からの有効打を入れられる。
「そこまでだ」
両手を組んだ槌の形にし、
スーパーマンがヘンショウ後頭部を殴りつけた。
後ろには蹴散らされたパラデーモンの群れが海に浮かんでいる。
「何故、いきなりに襲ってきた、ヘンショウ。
また私を陥れるつもりか?」
同じ顔同士が至近距離で睨み合う。
だがヘンショウの顔、肉の部分であるはずのクラークの顔には
一切の表情も感情もない。
露出した機械こそが激しい怒りと憎しみを燃やしている。
「お前を恨む者はごまんといるぞ」
「わかっている。
だが、目的はなんだ?
ルーサーか、ダークサイドの指図か?」
その言葉にヘンショウは嘲ったように顎部分が振動した。
もしくは怒りに打ち震えているのかもしれない。
口部分が激しく開閉し、金属音が不規則なリズムで鳴っていく。
「彼はお前とは違う。
私をスーパーマンと呼んで、力を求めてくれた」
「誰だそれは!?」
胸ぐらを掴んで、スーパーマンが続きを話すように急かす。
サイボーグスーパーマンがクラークの腹を蹴り飛ばし、
腕を射出して心臓を狙いに来る。
両腕でロケットパンチを止めたスーパーマンに
海水を吸ったサイボーグスーパーマンが
直径300mを超える水の球を連続で撃ってきた。
質量に速度も載せた攻撃に
スーパーマンは背後に飛んで逃げた。
そこを掴んだままだったヘンショウの腕が、先端が爆発を起こす。
ダメージと視界を奪われたスーパーマンが透視をしようとするも
鉛の粉末が撒かれていたことで視界を奪われる。
ヘンショウが動く前に、氣を陰の形にして全身を漆黒にしたケイナンと
スーパーボーイが挟撃を仕掛けた。
フォースフィールドを展開させたヘンショウにコンの攻撃は通らない。
だが陰陽を胸に司るスーパー・マンは陰に氣を傾けることで
攻撃力と攻撃性を激増させることができる。
フォースフィールドを砕いたスーパー・マンが
サイボーグスーパーマンの腕を砕いた。
ヘンショウの両脚からアームが枝分かれし、腕の代わりになろうとするが、
それらはコンが砕く。
「やったスよ、スーパーマン!」
「怪我はないか!?」
スーパーマンが口を開いた次の瞬間、
虚空が裂ける音がし、何者かが現れる。
クラークの肩を掴み、謎の少年が空間の向こうに連れて行った。
「スーパーマン!」
「おい、どこに連れて行った!?」
ヘンショウの首に両手をまわして持ち上げたコンが
眉間に皺を寄せて激しく恫喝する。
「サイボーグはどれだけ壊したら死ぬか試してやろうか!」
コン・エルは傷心の時代、
そして自らの出自を知った時代にケント夫妻のもとで暮らし、心を癒やした。
ケント夫婦はレックス・ルーサーの血を引く彼を
クラークの弟同然に接し、少年も二人を親のように慕っている。
「おい、やり過ぎんなよ」
「お前たちは紛い物だ」
「ああ!?」
先走らないように諌めたケイナンも、
ヘンショウの言葉に怒りを示す。
「彼はあの日、私を救けなかった。
だから、彼はスーパーマンではない。
彼の後を追うお前たちもそうだ」
「その体になったことは同情するが、
何をしてもいいと思うなよ……!」
「もっとやっちまえ先輩!」
強制されようとも話す気配のないサイボーグスーパーマンを
さらに脅すべきか二人は考えた。
だが、サイボーグスーパーマンは痛みを感じない以上、
どれだけ働きかけても無駄だ。
「クソッ! こいつの記憶を分析できるところに行くぞ!」
「よっしゃ、行くならさっさとしましょう」
そんな話をしていると、
スーパー・マンの意識が急激に遠くなった。
体内に充満していた氣が削がれ、力を無くした少年が海に落ちていく。
スーパー・マンが急に眠気に襲われたわけではない、
何者かに力を奪われた。
「新手かよ!」
ケイナンを掴むのを優先したせいで、
ヘンショウの拘束が外れてしまう。
高速で飛行してきた何者かの影がコンの手を叩いた。
「お前は……!?」
「はじめましてだね、スーパーボーイ」
後ろになでつけた腰まで届く美しい金色の長髪をなびかせた美青年。
4次元のスーパーマン、ユリシーズが腕組みをし、
冷然と少年を睨みつけていた。
「クソっ、なんなんだこのヴィランのオールスターぶり……」
「今日がお前達の命日ということだ」
腹部から巨大なカノンを展開し、
エネルギーを充填させていく。
飛んで逃げようにも、ケイナンを連れたままでは
振り切ることは到底不可能だ。
「どうする……!」
「僕達は今日、僕達こそがスーパーマンになる」
「これはスーパーマンへの革命だ」
歯ぎしりして、頭を動かすコンだが、
なにか思いつく前にキャノンからレーザー砲が放たれんとする。
籠められているエネルギーから、おそらくは反物質砲。
直撃すればスーパーマンと言えどもタダでは済まない。
おまけに今はコン・ケイナンが力を喪っている。
どうすることもできないままに
コンが脂汗を流していると、
サイボーグスーパーマンの全身が突如爆散し、
ユリシーズの頭に鋼鉄の物体が直撃した。
それが何なのかを知っている
コンの顔に安堵が広がる。
長い柄の先端に槌のついたハンマーが回転しながら、
来た方角へと戻っていく。
掴んだのは鎧の手、鋼鉄にて白銀の鎧に、
スーパーマンのマントをつけた者。
「スーパーマンに呼ばれて来たが……
何が起きている?」
「スティール!!」
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大人になったジョン・ヘンリー・アイアンズは
卓越した兵器エンジニアになった。
彼が開発したBG-60はルーサーの興味を引くほどであり、
事実として、彼のアーマーに取り入れられた。
兵器産業界で頭角を現す彼だったが、
気づけば自分の兵器は罪のない人々を殺戮するだけになっていた。
亡くなった父が自分の名に籠めた意味を見失い、
”冷血の”ジョン・ヘンリーになったのを自覚した彼は失意の内に姿をくらませた。
メトロポリスで日雇い労働をして日銭を稼いでいたある日、
高層ビルの工事現場で、ふざけていた同僚が落下した。
迷わず救助に飛び込み、代わりに落ちようとしたジョン・ヘンリーの手を、
スーパーマンが掴み、命を助けた。
ヘンリーは笑顔で言った。
「救けられちまったな、スーパーマン」
「LIVE A WORTH SAVING (その気持ちを忘れないでね)」
スーパーマンにとっては救けた無数の生命の1つに過ぎなかったが、
唯一の違いがあるとすれば、ジョン・ヘンリー・アイアンズは
その言葉を決して忘れなかった。
スーパーマンがドゥームズデイと戦い、壮絶な死を遂げた後に、
宇宙中のヒーローとヴィランが追悼の意を示し、
世界が喪に服す間、ジョン・ヘンリー・アイアンズはハンマーを握った。
世界からスーパーマンが喪われたというのであれば、
自分がスーパーマンになろうと決意した。
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「スーパー・マンが回復するには時間がかかる」
ユリシーズに逃げられ、スティールのラボに行った一同。
力を奪われたケイナンを休ませ、検査を終えると、
ジョン・ヘンリーが眼鏡をつけて結果を確かめる。
スーパーマンが何処に行ったかは回収したサイボーグスーパーマンの解析を待つしかない。
助けを求められそうな人材に連絡をし、
後は機械の頭脳から記憶を抽出するのを待つのみ。
「おい、まだ行けないのかよ、スティール!」
コンがじれったそうに急かす。
「落ち着け。相手はかなり強大だ。
俺達だけではクラークを救けられないかもしれない」
「やってみないとわかんないだろ!
ジョナサンお父さん達が待ってるんだぞ!!」
スティールとスーパーボーイは同時期にヒーローデビューし、
それ以降も事あるごとに交流がある仲だ。
いつも以上に遠慮なく意見を言ってくるが、
彼がどれだけケント家を大事にしているのかがわかる。
「ジョン・ケント、スーパーマンに連絡をしたが
他の事件で手が離せない。
念の為アポロにも連絡したが同様だ」
「じゃあ、誰が来るんだよ」
「ビザロ、いない」
天井に当たるほどの資材を抱えた灰色の肌の巨漢が部屋に入ってきた。
「なんでここにいるんだ!」
コンが警戒するのも当然だ。
ビザロは顔の造形そのものはクラークと同じだが、
知能があまり高くなく、ヴィランに利用されやすい気質を持っている。
基本的には無害と言えるが、頭痛の種になりやすい。
「近くを歩いていたところを保護した。
安心しろ、そのビザロは何もしていない」
スティールが頼んでいた資材を部屋の隅に降ろし、
スーパーマンの逆さ存在が首を横に振る。
「ビザロ、悪い子、気をつけて」
「なんだ野良のビザロか。
じゃあ仲良くしようぜ、いや敵対しようぜ」
「嫌だ、お前、ビザロの敵」
スーパーボーイとビザロが握手を交わし合う。
クラークに比べると感情が動きやすいが、
人懐っこさは彼とよく似ている。
「お前も手伝えばもっと終わるかもしれないぞ」
「いやあ、難しいこと考えるのそんなに得意じゃないからなあ」
頭を掻いてコンが笑う。
才能は間違いなくあるが、少年はあまりそれを活かそうとしない。
「頭を使うと髪の毛が抜ける体質」とジョークを飛ばしていたが、
本人にとっては笑い事ではないだろう。
彼に眠るルーサーの遺伝子が目覚めると、
事実として頭部から毛髪が消えてしまうのが確認されている。
「まあデータを整理するくらいはできるだろう。
作業をすれば待つ辛さも薄れるはずだ」
「ビザロも、怠ける」
計器類には雪崩のようにデータが表示され、
それを愚直にスティールが確認していく。
彼にはバットマンやMr.テリフィック、ブルービートルのような
文明や歴史そのものを跨ぐ類の頭脳の飛躍はできない。
一つ一つ確認し、積み上げていくアプローチのみがある。
ハンク・ヘンショウの記憶の隅から隅まで洗う地道な作業が
たっぷり3時間も続いていく。
「こんにちはー」
無機質で重々しいラボの空気が
活発さと瑞々しさの強く香る声で柔らかくなった。
カーラ・ゾー=エル、スーパーガールが窓から入ってきた。
「呼ばれたから来たのにずいぶんね。
何があったか、誰か教えてくれない?」
いくら呼びかけても返事がなく、
やむなく窓をヒートビジョンで灼いて入室した彼女だが
極度の集中状態にあるスティールとスーパーボーイは顔を上げない。
「あら、ビザロもいるのね。
どこの実験室から逃げてきたの?
それとも別アースからのお客さん?」
「スーパーボーイ! さよなら!」
「ちょっと、そこを反対させるのはいただけないんだけど!?」
「ありがとう……」
ぷりぷり怒ったカーラだったが
ビザロがしゅんとしたのを見て頭を撫でる。
「いいのよ。あなた何処のビザロ?
素直で良い子ね」
「ビザロ、悪い子?」
ニコニコ笑うビザロに
カーラの手が勢いを増す。
「ええ、そうよ。
ハァーーーーー、当たりのビザロって本当に可愛い!
クラークもこんなだったらなあ。
みんな忙しいみたいだし、あっちでパイでも食べましょ」
「パイ、嫌い!!」
「あたしも好きーー」
手を繋いで冷蔵庫に向かう二人の背に
コン・ケントの勝鬨が浴びせられた。
「あった!!
おい窓無くなってるぞ!」
「久々ね、コン」
急いでジョン・ヘンリー・アイアンズの冷蔵庫から
アップルパイを持って戻ってきたカーラが挨拶をした。
「カーラ! 良かった。お前が来たのか!」
ハグし合う二人に遅れて、
スティールにもカーラが抱きついた。
彼にとっては、こうして会うのは実に久々なことだ。
スティールとスーパーボーイがデビューした時期は、
残念ながらこのスーパーガールではなかったが、
コンはもちろんのこと、スティールにも屈託なく接してくれる。
「スーパーマンの後継者が勢揃いね」
「お前も今から名乗り出る?」
「なんでよ、あたしあの子のオムツも替えたことあるのに。
それで今日は何があったの。待って、当てるから。
えーーーーーーっと……閃いた! ティムの乳房が膨らんで8つに割れて
各種カラーのレッドロビンが生まれたんでしょ」
「クラークが誘拐されてユリシーズやサイボーグスーパーマンが絡んでる」
「まあ大変ね!」
「みんなの分、凍らせてきたよ!」
スティールが夜食用に取っておいたパイを全てこんがり焼き、
山積みになったパイとアイスを持ってビザロが飛んできた。