DCユニバースvsプラスチック姉さん 作:スカンジナビア半島
最強の肉体を持つと言われるクリプトン星人の肉体をもってしても、
アポコリプスの将軍カントーのフェンシングには対応に手こずった。
半身になり、一直線に突いてくる。
その動きが基本とはいえ、
彼の実力が加われば、足捌きと手首のしなり、それに身体のバネで恐るべき剣士となる。
高速で動いたスーパーマンにカントーは切っ先を合わせる。
サイドからオリジンが斬りかかった。
「脆弱。たかがロボットの刀が神に傷を創ると?」
ロッドで刃を弾き、そのまま肩でオリジンを押し出す。
相手の勢いを利用した体当たりによって、
オリジンは壁に激突した。
「無事かい!?」
「足手纏いを気にする余裕があるか?」
局所的な風の奔流。
星のエネルギーをまとった刺突がスーパーマンのマントを貫く。
ついでに脇腹も裂けてしまった。恐るべき踏み込みの速さ。
神々の一柱でありながら、
フランス貴族めいたファッションと話し方、
さらにルネッサンス文化への傾倒を併せ持つ
フェンシング使いというごった煮。
インチキフランスマンという
よくいる詐欺師が、神によって一個の確固たるパーソナリティに仕上げられている。
「ルネッサンスが何故、起きたか知っているであるか?」
「イスラム文化との貿易により豊かになり、
ビザンツ帝国が滅んだことで、
古代ローマ帝国の知識と思想が詰まった遺産を抱えた知識人が多く亡命してきたことで、
人間文化の繁栄から、再度人間中心の文化への需要が高まったからか?」
「ふむ……判を押したような答えである。よく勉強しているな。
恐らくは歴史の先生によく褒められたことだろう」
「まさか……先生を人質にとって脅すつもりか?」
予想外の人間関係を狙われたかと、
クラークは全身に冷や汗を流した。
「いや違う。そもそも誰か知らん。
もう亡くなってるのでは?」
確かにその通りだ。
どうやら、素直に称賛しただけらしい。
「人間とは、過去の権威を身に纏いたがるものである。
それが正しい、誤っているではなく、
”自分は歴史に保証されている”という自他の確信を求めるものだ。
そこに有用性は一切担保されていないことを考えもせずに」
「それがルネッサンスだと?」
「だが人間の短い命では、
ルネッサンスの膨大なる文化を呑み込みきるなど不可能の極み。
神の永遠がなければな」
またも風の流れが変化し、
カントーの周囲から無数の刺突の雨嵐が来た。
一つ一つを捌くことはできない。
とっさにスーパーブレスで氷の壁を作るも、
たちまち粉末状になるまで穿たれる。
だが両目が赤く光って、粉末を焼き、蒸気を生み出す。
それを両手で挟み、超圧縮した蒸気の槍をカントーにお見舞いした。
「なにっ!」
コズミックロッドが手から零れ、
それを逃さずにオリジンがカントーの指を斬った。
僅かな切り傷でも、細かく丁寧な動きを要求されるフェンシングでは、
指先のダメージは大きな影響を持つ。
神の治癒速度でも、
この場にいるメンバーにとっては、
数秒もあればさらに多くの攻撃を通すことができる。
「木偶人形が。マルチバースへのアクセスも、
上位存在への進化も自ら捨てた分際で神とルネッサンスに刃を向けるか」
「俺にはいらない。
それが俺なりのライフスタイルってやつだ」
カントーの刺突を、
オリジンが上半身を超高速で揺らして躱す。
それによって歪曲現象が発生し、
オリジンの腰から上が、高速で鉛筆を揺らしたかのように奇妙なうねりを見せている。
「世迷言を!」
「親の教育の賜物だ。みんなそれを基に生きていくものだろう」
「造物主だろう。ダ・ヴィンチに造られてから人間ぶることだな」
「さっきからお前の偉人知識はルネッサンス期しかないのか?
どういう理屈でアインシュタインよりダ・ヴィンチの発明の方が最先端になるんだ。
用いられている数式の数を比較してみろ」
「パリジェンヌ!!」
裂帛の気合。
オリジンの表情を見ても、
挑発しているわけではない、純粋な指摘だとわかる。
しかし、カントーには看過できない暴言だったようだ。
そして、動きがシンプルになったおかげで
スーパーマンのパンチが入った。
風を破壊するような轟音。
遅れてカントーが、
建造物を次々と破壊して吹き飛ばされた。
「スーパーマンさん!」
国木、お尻警察の声がして、
マザーボックスが投げられ、宙でキャッチした。
半壊した建物から国木が器用に首だけを伸ばしている。
スーパーマンの聴力によって、
彼の首から下は、カリバックと激しい肉と肉のぶつかり合いをしているのがわかる。
音から判断するに、合意のようだ。
それならば、とクラークは安心した。
どうしてカリバックがこんなところで男子高校生と愛し合っているのかわからないが、
神だろうとも悪事を成していようとも、合意のない行為をすることはない方がいい。
「カリバックのマザーボックスです!
それを使ってダークサイドの所へ行ってください!」
「しかし、君達を置いて行くわけには……!!
デリカシーがないことを聞くようで申し訳ないけれども、
あとどれくらいで終わるかな!?」
「それが抜かずの30発は必要のようです」
「なんてこった……!!」
国木はここから動くつもりがないことがわかった。
こんな危険な場所でニューゴッズのお尻に腰を振っている
男子高校生を置いていけというのか……クラークは葛藤した。
「俺も残る。行くといい」
オリジンが、クラークの掌中にあるマザーボックスを操作し、
PINGという音を奏でてブームチューブが現れた。
「待つんだ。カントーを君だけで倒すのは──」
言い終わる前に、オリジンの胸に大きな穴が穿たれた。
カントーが遠距離から闇雲に放ったエネルギーが、不運にも直撃したのだ。
ブームチューブの発現を知り、勝負を急ごうとしているのだろう。
「さあ、行くんだ」
「ちょっと!」
首根っこを掴まれ、ブームチューブに放り込まれ、
スーパーマンが虚空へと消えていった。
「愚かな選択をしたであるな」
胸の穴から溢れる配線と部品を、
可能な限り繋ぎ合わせて、
応急処置を終えたロボットがスーツの胸元を緩めた。
「吾輩に一人では勝てん。
そして、お尻警察はカリバック様と……まあナニかをしていて、
他の仲間にはパラデーモンを差し向ける。
仕留められずとも、貴様を破壊するまでの時間稼ぎには十分だ」
「かもしれないな。だが、そういうものだ。
金に困って、身体の調子に悩んで、仕事の給料を気にしながら、少しでも善いことをする。
それがちゃんと生きるっていうことだ。しょうがない」
「ならばそのまま死ね」
コズミックロッドを撓らせ、
さらにスピードを速めた突きの嵐を繰り出す。
だが、オリジンは付いていく。
これまでは神によるフランス文化とルネッサンス文化の融合が乗ったフェンシングに
対応が遅れていたが、やっとデータが揃った。
反応速度、選択する戦術、動きの癖、
どれもが手に取るように理解できている。
「パラデーモン! こいつを押し流せ!」
一対一では埒が明かないと判断し、
カントーは躊躇わずに雑兵の群れを召喚した。
次から次へとやってくる昆虫型怪人の群れに
オリジンは動きを止められた。
「そのままだ! なんとかして足を止めろ!」
「歴史を背負うと言ったな」
パラデーモンに羽交い締めにされるのは避け、
距離を取ったオリジンを、
怪物の群れがさらに追いかける。
冷静さを維持し、淡々とオリジンは呟く。
「芸術を背負う、文化を背負う。そうして強さとするのもいいだろう。
だが、人間にはもっと原始的かつ根源的な強さへの欲求がある。
暴力的で、一方的で、残酷な願いが」
カントーがコズミックロッドにエネルギーを詰めるより先に、
砕かれた瓦礫で作製した有り合わせの投石具、
スリングショット。ゴム部分には自らの人工筋肉を用いている。
「それは”もっと速く、強く、遠くの敵を一方的に殺したい”だ。
───刀、発射」
かつてのオリジンなら正確に焦点を定めるのに
初弾を捨てる必要があったが、
あれからかなり成長したという自負を、彼は持っている。
その通りに、即席スリングショットで投擲された刀は、
逃すことなくカントーの額を貫き、縫い止めた。
「馬鹿な……! このアポコリプスの将が……!」
「お前の誤算は二つ。俺の胸にはとっくの昔に穴が空いている。お前が開けたものは耳穴程度のものだ。
それともう一つ、お前が侵略したこの土地には、父さんと愛する人が眠っている。
俺はいつもよりテンションが上がっていたんだ」
「この……ブサイクな人形が……!」
「ぶっ放したぜ──この間、エロマンガに使ったセリフだ」
###########
黒い太陽の上、クライシスの中心点。
ダークサイドは後ろ手に指を組んで悠々と舞い降りる。
足の向かう先に迷いはない。
しかし、そこにはヒーロー達が待ち受けていた。
「さあ。観念して姿を見せるがいい、ピンチャンのタカよ。
我がダメ出しより逃げられると思うな」
「先にこちらの相手をしてもらおうか」
ダークサイドが執着を燃やす
髙羽史彦はその舌攻の犠牲にならないように隔離されている。
間に入るのはジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ、
そして特別参戦のマン。
ジェイ・ギャリック、初代フラッシュがダークサイドの周囲を繰り返し回転し、
暗黒惑星の王の攻撃を誘う。
「それで走っているつもりか」
ダークサイドの灼熱の視線がジェイを軽々と捉える。
しかし、初代は世界大戦から活動を続けるベテランの極み。
経験が齎す技巧があっても、
全盛期のスピードスターにあるような最高速度の爆発がない。
それではダークサイドから逃げるのには足りない。
巨大な腕、ジェイの胴体を覆えるだろう掌が
真紅を掴む前に、緑色の炎がフラッシュを守った。
初代グリーン・ランタンのアラン・スコットが
彼特有の光で仲間を保護する。
「行くぜ、マン」
「へぁっ」
ヘヴィ級チャンピオンのワイルドキャットが
ダークサイドの顎にアッパーをお見舞いした。
いくらヘヴィなパンチといえど、
ダークサイドには如何なる痛痒にもならない。
しかし、野良猫のパンチの後ろに、愛の拳が控えていれば別だ。
「へあっ!!」
暗黒都市The市に秩序を齎したマン、
世界有数のヒーローのパンチが神の後頭部を揺さぶる。
揺さぶられ膝が折れたのを、
身をかがめたワイルドキャットが膝にラッシュをお見舞いした。
仰向けに手をついて倒れかけたところに、
フラッシュがスピードを乗せたジャンプキックをし、押し倒す。
緑の炎で構成された文鎮がダークサイドの脳天に直撃する。
「そんなに密集していいのか?」
ダークサイドの両目に真紅の光が集約され、解き放たれた。
不確定な幾何を描いて突き進む赫色の視線。
通常ならば誰もが追いつかれるまで逃げ惑うしかできないが、
ジェイ・ギャリックは翼の生えたヘルメスの兜を常に身につけている。
スピードフォースをコーティングした兜を投げると、
視線を受け止めて回転し、兜に溜まったΩのエネルギーをダークサイドに向けて放った。
「ふううぅんっ!!」
両手で己の攻撃を受け止める。
Ωは神も屠る絶対確殺のエネルギー。
放った当人でもまともに防げばひとたまりもない。
「やるな……! 流石はあのジャスティスリーグの先人。
たかが100年にも満たぬ年月の長でも、
このダークサイドに届いてみせるか。
セックスクリプトナイトの影響もなき身で大したものだ」
「まだだ」
初代グリーン・ランタンが矢継ぎ早に
緑色の炎の隕石を降らせていく。
腕の使えないダークサイドは剥き身でそれを引き受ける。
あのダークサイドにようやく歯を食い縛る様子が見られる。
「奴の居場所へ飛ばせ」
「しまった!」
「逃がすか!」
所有するマザーボックスに囁き、
ダークサイドが別の位置に転移した。
飛んだ先には、
先に到着していたスーパーマン達とニューゴッズの熾烈な争い。
ダークサイドがスーパーマンになった以上は、
善神ハイファーザー率いる者達さえも、アポコリプス側にいる。
「クソッ、来やがったな、ダークサイド!
逃げろ史彦、奴はお前を狙っている。
スティーブンは史彦を守ってやれ!」
「け、けどよ……あいつ、笑いを分かってるみたいだし、
素人さんのダメ出しに背を向けるのは……」
「ですよねぇ! タカさん!!
私も実はお笑いデビューしようか、考えててえ……!!」
「耳を塞げ!!」
髙羽とスティーブンを抱えて瞬間移動しようとするのを、
ニューゴッズのライトレイが阻む。
「おめえ、良い奴じゃねえのか!」
「だからダークサイド様に味方しているんだ。
親友のためでもあるしね」
ライトレイの光速攻撃。
先程のクリスタルナイツとの戦いで消耗した悟空は対応しきれない。
後手後手となって、相手の攻撃を冷静に見極める間に、
ダークサイドの言葉が髙羽の耳に届く。
「めっちゃ面白くないですか!?
暗黒惑星の悪神のトップが、ミニスカフードでお笑い業界に殴りかかるんですよ。
コンビ相手は、もう決めてて、それは──」
「やばい!!」
何が来るか察知した髙羽が自主的に耳を塞いで背中を向けた。
だがムダだ。はみ出るタマキンと同じく、
彼の笑いを求める心は、
次の言葉に惹かれてしまう。
ダークサイドの言葉。
本来なら、髙羽の持つ術式は
彼が笑えると思わない者、笑いの概念がないと判断した化物を一発で倒す。
それは、神でも例外ではない。
故に、ダークサイドは丹念に笑いのダメ出しをし、
そして、引き出す。
「どうもー! ダークサイドとぉ〜〜〜〜」
…………ガコン。
「八握剣異戒神将魔虚羅のだっくんまっこんで〜〜す!!」
「…………ガコン」
天輪を頭上に備えた鬼神が、
ダークサイドの真横に現れた。
これこそがダークサイドが髙羽史彦を狙った理由。
本人の恐るべき圧倒的力はもちろんだが、
この男はまがりなりにも摩虎羅についての知識を持っている。
そうであるなら、ダークサイドのビジュアルとべしゃりを売り込み、
”この男と摩虎羅のコンビがあったら面白い”と思わせれば、
奴にはコントロールできないレベルで、
ダークサイドは摩虎羅と漫才をすることになる。
「はい、どうも〜〜〜〜。
だっくんまっこんの喋りとボケとツッコミ担当のだっくんです」
「……ガコン」
「まっこんも適応して挨拶してくれてますよ〜。
ごめんなさいねえ、この子、喋れないから適応するしかないんですよ。
すなわちこのスーパーマンが一堂に会した領域に適応しているということなんですね〜」
「ヘイ、スタンダップコメディはお呼びじゃないぜ!?
ホストの俺を通してもらわなくっちゃ!」
「油断するな。全力で行け!」
ソニックが摩虎羅にスピンアタックをする。
その逆方向から、ただちに危険性を認識した
カルヴィン・エリス、スーパーマン評議会のリーダーも攻撃に加担した。
圧倒的な耐久力を備える摩虎羅でも、
この二人に挟撃されれば体のあちこちが爆発する。
「…………ガコン」
「何!?」
「怯むな、攻撃を続けよう!」
天輪が回転し、
摩虎羅のボディがただちに回復していく。
再生し切るのを待たずに
ソニックとカルヴィンが同時に攻撃していくが、
摩虎羅の反撃によって二人ともに負傷をしてしまった。
「何故、攻撃が効かなくなった?」
「お前たちの大きな弱点。
それは、パワーエネルギーや攻撃がシンプルな傾向が強いということだ。
この摩虎羅にかかれば短期間で適応できる程度のものだ。
ですよねまっこん! 合ってたらガコン一回、間違ってたらガコン二回いこか!」
「ギギ……ガコン」
「はい、ガコンいただきましたー!
冴えてるよ適応! ガコン一個でスーパーマン一人殺そうか!」
「ふざけ──」
「よせソニック!」
カルヴィンがソニックを抑え、
その真ん前をΩの赫線が通り過ぎる。
止められなければ、ソニックは成すすべなく消失していたことは、
視線が直撃したスーパーマンの一人が死んだことからもよくわかる。
「お前達に適応した摩虎羅という盾、
それを使いこなす頭脳とΩの力。
だっくんまっこんの牙城を打ち崩せるか?
ジンクスに倣ってコンビ名に”ん”も入っているぞ」
日本のお笑い業界に囁かれるジンクス。
コンビ名に”ん”があるとブレイクしやすい。
覚える価値もないような情報さえ押さえて侵略に転用するダークサイドの恐ろしさが伝わる。
「警戒すべきは伏犠の太極図だが……
ひっくり返しババアの術式にも干渉しかねない技を使うリスクは把握しているだろう」
「貴様……どれだけ私たちのことを」
「物語とは、異世界への扉。
我らの武力にかかれば侵略世界のエンタメをすべて把握するなど、容易いことよ。
厄介そうなのはオベロンと会話をしながら把握する。
これをすることによってクソゲー、クソマンガ、クソ小説、クソアニメも網羅した」
次から次にだっくんまっこんに、
スーパーマン達が攻撃を仕掛けていく。
だが、どれもが摩虎羅を消滅させられず、
滅ぼしかねない攻撃はダークサイドの妨害を受けることで、
二人がべしゃっているだけで次々に倒れていく。
「まっこんはバイトしたことある?
ずっとアポコリプスで王をやってるんだけどさあ、
たまにバイトやると結構面白いんだよねえ。
いつもとは違う視点で物事を見れるっていうかさあ、
まっこんはどのバイトしたい?」
「……ガコン」
「もう〜〜〜〜まっこんはおぎゃあと生まれてから、適応ばっかし!
そんなんじゃ女の子にもモテないぞ!
じゃあバイトの良さ教えてこか。まっこん、お客さんね、バイトとして接客するから。
あ、いらっしゃいませ〜〜〜〜!!」
「クソッ、なんてこった、目が離せねえ!!」
本来はダークサイドへの最強の対抗策になりうる髙羽だったが、
完全に後手に回ってしまい、
だっくんまっこんのシチュエーションコントを凝視してしまっている。
彼を託されたスティーブンは、
どうすればいいかわからずに
オロオロしてしまっている。
「どうしよう。目と耳を塞ぐとか……?」
「俺様がなんとかするぜ〜〜」
髙羽とスティーブンの足下に黄色い山が盛り上がり、
そのまま二人を運んでいく。
ジェイク・ザ・ドッグが体を伸ばして二人を運び、
少しでもダークサイドから遠くに引き剥がそうとする。
「みんな! 三人を援護するんだ!
ダークサイドから引き剥がせばじきに摩虎羅も消えるに違いない!」
カルヴィンの指示でスーパーマン達が
髙羽の周囲を固め、
ダークサイドと摩虎羅がどこから来ても対応できるようにした。
だが、マザーボックスが生み出すブームチューブが、
だっくんまっこんから、距離と空間のハードルを消す。
「ええ、アイス一点、タバコ一箱、カップラーメン十個、
ポイントカードはありますか?」
「ギギギ…………ワオン」
「って喋れるんかーい!」
現出したのはジェイクの背中。
スティーブンが決死の覚悟で盾を構えて、
ダークサイドに突撃した。
「君、危ない!!」
髙羽が後を追うも摩虎羅が
巨拳をスティーブンの腹部、
ピンクダイヤモンドのジェムがある腹部に突き刺そうとしていた。
「そこまでだ」
摩虎羅の腕が八つに裂かれた。
すでに周囲のスーパーマンへの適応が終わっていたところに、
紙切れのように斬られたことで、
神将が動揺したように距離を取った。
「ほぉ……これは予期せぬ参戦だ」
「お前達の相手は俺がしてやるよ」
薄く、だが信じられないくらいに長い日本刀を、
ダークサイドに突きつけ、
足にも届きそうなほど長い銀髪をたなびかせ、
新たなスーパーマンが首を傾げた。
「どうした、俺では不満か?」
「貴様もスーパーマン評議会にいたか、セフィロス」
「いや、あいにくと誘われただけだ。
社畜が参加するには時間のやりくりが難しかった」
飄々とした振る舞いでダークサイドと摩虎羅を一度に相手できる位置に移動する。
「おい、君」
小声でスティーブンに呼びかける。
「スゴイ……セフィロスだ……パパのゲームに出てた」
両頬に手を当てて、青年が感嘆した。
評議会に元から参加していた悟空やスーパーマン、ソニック、リュウケンには慣れていたが、
在籍していない知っている存在の登場に、心が躍った。
「聞いてるか? この犬……犬なのか?「犬だぜ〜!」じゃあ、犬から降りるんだ。
負傷者の治癒に回ってくれ」
「でも……あいつらを一人でやるの?」
「心配いらない。これでも俺は結構強いんだ。
さあ速く、急いで」
急かしていたセフィロスの姿が掻き消える。
摩虎羅の全身が斬り刻まれ、
生まれた肉片に巨大な炎が纏わりつく。
Ωの視線が無数の垂直と幾何学を描きながらセフィロスに突き進むのを、
刀で容易く切り払った。
正確にはΩで刀、正宗に消失が見られても、
欠落部分がすぐさま埋まっていく。
「見事なものだ」
「喋るな。舌を噛むぞ」
ダークサイドの頭上に移動したセフィロスが
脳天めがけて刀を振り下ろす。
パラデーモンが間に挟まり、急降下を阻んだ。
「空からの来訪者を宿して生まれた英雄。全盛期はそのレベルか。
まったく、スマブラに参戦した者とは格があまりに違う。
振るいし斬撃の重み、今の貴様と比べればなるほどまさにピカチュウ並よ。
だがスマブラに参戦した貴様のバランス調整は、DLCキャラのお手本と言うべきものだった。
攻撃力とリーチに優れ、インチキのような立ち崖下メテオを持ちながらも、
ピカチュウ並の軽さしかないことによって、普通の強キャラ相当に留まっていた。
特に崖下巣ごもりしてる奴へのメテオ特化はもっと真似するキャラがいていいと思う。
スティーブ、カズヤ、ホムヒカ……道を大きく外れし外道どもとは違う丁寧な仕事だった。
スティーブとカズヤ、真の悪神とは奴らのことを言うに違いない」
「…………何を言っているかまるでわからないが。
余所行きの顔で、俺の強さがわかるわけないだろ。
これでもメディア受けは気にするタイプだ。会社もうるさいからな」
ダークサイドの赫き熱線とセフィロスの剣閃が
至近距離でぶつかり合う。
白銀の弧線と赫の画線が正面から拮抗し、
ジェイクの皮膚にも傷が次々と走っていく。
「イテテテ! 痛えっ!」
「今、こいつごと降りるから
スティーブンみたいな若手がいたら回収してくれないか。
未来がある奴らは後方に回しておきたい」
「わかったぜー!」
セフィロスが顔の横に刀を構え、
足を開き、重心を沈める。
本気の一撃を放つ時の構えだ。
後ろ足でジェイクの背中を蹴り、
赫い視線は、首だけ横に倒して避け、
ダークサイドの胸元に突きを放つ。
両腕で正宗を掴まれたことで、
攻撃は留められたが、勢いは止まらない。
ダークサイドを巻き込んで、ジェイクの背中から、
飛び降りるように落ちていく。
その間も暗黒の悪神による殴打、視線は止まらないが、
全てを捌き、落下速度をさらに加速させ、
袈裟斬りにダークサイドを斬った。
「ぐっ…………!!」
傷口を押さえたダークサイドが眉間に皺を寄せた。
だがそれはセフィロスも同じだ。
戦いの最中に脇腹を抉り取られ、
悪神の掌の上で、肉片が異常な挙動を見せている。
「ジェノバ細胞が活性化し、翼となっているぞ。
本来なら、人間の肉体で抑えることなど、到底不可能なほどの負荷がかかっているはずだ。
なにせ、内臓が次々に片翼に置き換えられているのだからな」
その通りに、
英雄から毟り取った血肉は、
粘体生物の蠢きをしつつも、あちらこちらが
純白の翼に変化している。
通常の人間ならば、絶対に有り得ないことだ。
「このダークサイドに手傷を負わせたとて、
屠れるとは思わないことだ」
「どうでもいい」
「どうだ。このダークサイドの軍門に降らんか。
我が数学ならば、お前の心を蝕み続けるものさえ──」
「世の中、ままならないものでな。
お人好しは、お人好しだから早死にするんだ。
どうしてかをよく考えるとな。決まって、お前みたいなのがいるんだよ」
ダークサイドの提案を遮り、
セフィロスは構え直す。
自身の出自、肉体を把握していれば、
アポコリプスの王が持つ数学力は、極めて魅力的なもののはずでも。
「来い、悪者。成敗してやる」
「正義の味方を堪能しているところ、失礼するが」
ダークサイドの口元に、笑みが浮かぶ。
岩肌にマグマの切れ目が入ったようにしか見えないが、
その顔にははっきりとした悪意があった。
「周りを少しは気にしたらどうだ」
ダークサイドと戦うことに全力を集中させていたセフィロスが、
辺りを見渡し、動きが硬直した。
その周囲は、死屍累々となっていた。
セフィロスが避けた攻撃、
弾いた視線、その全ては周囲で戦うスーパーマン達を狙い、
それだけでなく世界改変に巻き込まれてダークサイドに付いた、
本来はヒーローと言うべき者達の命を奪っていた。
「確かに、英雄セフィロス。ジェノバに染まらぬ力は極めて脅威的だ。
スマブラに参戦していれば、スティーブ、カズヤ超えの圧倒的クソキャラとなっていたことだろう。
だがそれでもこのダークサイドと渡り合うには限界を超える必要があったはずだ。
ところで……お前の周りには善良なる者どもの亡骸が積み重なるようだな?」
セフィロスの表情にブレはない。
しかし、幼馴染、親友にあたる間柄なら、
彼の胸中が激しく震えているのに気づくだろう。
正宗を降ろすことはしなくとも、両手で握るのをやめ、
左手を額にやる。
「頭痛か? 無理もない。お前の身に宿るジェノバ細胞は、周囲の記憶を読み取り、
宿主の力と人格構成に活用する。だが、本来、それは人間の心には耐えられぬ膨大な情報量だ。
今の年齢まで正気を維持していることそのものが、奇跡と言っていいだろう。
だが、それも終わりだ、堕ちる英雄よ。他者のために、弱き者のために、限界を超え続けた貴様は、
誰に顧みられることなく、貴様が唾棄するもの全てに成り下がる」
さっきまでなら軽々と反論してきたはずが、
セフィロスは無言で額に手を当て続ける。
周囲からは、何ら異常がないと見えるだろう。
しかし、それは英雄として生きていたが故の所作。
「人の心は秒刻みに蝕まれ、愛する者を全て喪った世界で、
守ろうとした者共は、貴様を悪魔と罵る。
同じく細胞に呑まれたクラウド・ストライフが背負うべき汚名、
全ソルジャーの敗北の責は、貴様一人が背負うこととなるだろう。
その果てに、誰も彼もが人間としてのお前を記憶していない中、怪物として滅ぼされる。
これは推測でも予言でも、ましてや脅しでもない。歴史だ」
全力を超えて戦った英雄が内面を揺さぶられ、
心に強い干渉を受けている。
胎児の頃より共にあり、絶えず彼の頭に響いてきた声が、
具体的な精神改変によって、ジェノバ細胞の人形にせんと働きかけている。
彼の世界が狭まり、
無数の亡骸の中央に、誰と繋がることなく一人立つ。
その孤独こそが、自身の細胞を活性化させ、己を変容させる。
「……ここは?」
止まぬ頭痛によって、状況としてありえない呟きが溢れた。
すぐに認識は定まるが、
一度始まれば、当人の意志で変容を止める術はない。
「そうだ、俺はみんなの……!」
無情にも、セフィロスの頭部を
適応が完了した摩虎羅が両足で踏みしめる。
死んではいないが、内側からの侵食に耐える以外のことができない。
ダークサイドは手を翳し、静かに歩み寄る。
カルヴィン・エリス、孫悟空、セフィロス。
どれもがスーパーマンの中でも飛び抜けた脅威だったが、
ダークサイドの数式によって導かれた方程式に捉えられれば、
全てがあっけなく終わる。
今やマルチバースの中心となった悪神王の手が、
銀髪の美丈夫の頭部を容易く砕こうという時、
青と赤の閃光がダークサイドを殴り飛ばした。
「そこまでだ、ダークサイド」
オリジンに送り出されたスーパーマンが、
ダークサイドの前に立ちはだかった。
###########
「うぉっ、セフィロスがいる……!
あとでサイン貰っておこう」
助けた相手を見て目を丸くしたクラーク。
本当に色々なヒーローを見てきたし、
その中には子供の頃に小説、コミック、ゲーム、アニメ、映画で会った者達も少なくない。
だが、セフィロスまでいたとは知らなかった。
べつに自慢したいわけではないが、
サインを貰ってツーショット写真を撮って、
息子のジョンが友だちといる所にさり気なく顔を出して
今日のことについて言及しよう。
きっと「ジョンの父ちゃんすっげー!!」
「セフィロスと友達とかマジおしゃんてぃー!」と目を輝かせるに違いない。
「たった一人、スーパーマンが新たに参加したところで、
この状況をどうにかできると思っているのか?」
「できるできないじゃない。やるよ」
クラークがダークサイドを殴り飛ばす。
殴り抜いたパンチ。
頬に直撃したダークサイドは僅かに後退。
それだけだった。
スーパーマンだからといって、
飛び抜けて他のスーパーマンと比べて強いというものはない。
真っ向から全力を出し合ったとしても
孫悟空やセフィロス、カルヴィンが負けた相手に勝てる可能性は低いだろう。
クラーク自身、そのことはよくわかっていた。
昔から、自分だけが特別なのだと考えることには慣れなかった。
人々から、希望だ、太陽だ、
世界の中心だと言われるたび、
そんな大層なものじゃない、と思ってきた。
ただ、困っている人がいれば助けたい。
明日は今日より良い日であってほしい。
それだけだった。
「…………ガコン」
摩虎羅が、ダークサイドの隣に舞い戻った。
その肉体には傷一つもない。
「周りの人間に助けを求めるか?
形勢は厳しいだろうがな」
事実だった。
スーパーマンの軍団。
それだけならば最強に聞こえるが、
相手があまりに悪すぎる。そして強大すぎる。
クラークとダークサイドの戦いに、
身を投じて加勢できる者はまず見当たらなかった。
ダークサイドと摩虎羅。
この、いわば二柱を相手にするのは不可能に近い。
「さあどうする? 敗北を認め、おとなしく命を差し出すか」
「まさか!」
ダークサイドへと殴りかかったところで、
摩虎羅が盾になって立ちはだかる。
音速の蹴りがクラークの横蹴りを捉えたが、
それは氷で創った鏡像。
回り込んだスーパーマンがダークサイドを羽交い締めにした。
「愚かな。こんなものは即座に解いてくれる!」
しかし、スーパーマンはそのまま虚空に飛行していく。
摩虎羅も後を追うが、
空を飛ぶということならスーパーマンの方が速く、
おまけに摩虎羅への攻撃にもならない以上は、
適応によって上回られる心配もない。
「何をするつもりだ……!」
「僕達クリプトン星人には
貯めたソーラーパワーを削って放つ裏技があるんだ!」
「愚かな。この暗黒宇宙で力をなくせば
たちまちに死ぬぞ!!」
周囲には星も宇宙船もない。
事実だろう。だが、スーパーマンに躊躇いはない。
遠くに浮かぶ蒼い故郷を見据え、
クラークは静かに頷く。
「僕の心は、いつも地球にある」
内側に溜め込んだ太陽の力を活性化させ、
目から、口から、裂傷した部分から、
次々に太陽光が外に溢れていく。
己が一個の太陽になる
スーパーマンの最終技、ソーラーフレア。
巨大なエネルギーが宇宙を埋め、ダークサイドを埋め尽くす。
摩虎羅もこれが直撃すれば、今度こそ消滅は免れない。
太陽の光が、ダークサイド達を呑み込んだ。
「──甘いな」
光の奔流が中断された。
ダークサイドの手がスーパーマンの顔を掴み、
黒い太陽に押し戻す。
失敗した。だが、摩虎羅は消したはずだ。
それならば、他のスーパーマン達が──
「……ガコン」
天輪めいた法陣が回転し、
摩虎羅の適応が終わる。
スーパーマンは瞠目した。
ありえない。摩虎羅を消し切るのに足る威力だったはずだ。
「そう思っているだろう」
ダークサイドがニヤリと笑う。
その姿は凄惨を極めるものだった。
全身が焼け爛れ、左腕は炭化している。
双眸もまともに機能しているかわからない。
「摩虎羅を庇ったのか……!?」
「奴がスーパーフレアにも適応できれば、
それで全ては終わりだ。
ならば、賭けに出るべきだろう?」
「ヒュイィィィィィ!!」
摩虎羅の法陣が超高速回転を始める。
風切り音を立て、
底知れぬプレッシャーを発している。
「どうだ。もうスーパーマンそのものへの適応もしそうだぞ」
キン肉マンにやったのと同じ攻撃。
負傷によって、Ωの重ねがけはできないが、
ダークサイドに顔面を捕まれ、地面に叩きつけられるだけでも、
相当なダメージとなるだろう。
力を使い切ったわけではないが、
パワーの大半を喪ったクラークは必死に藻掻いても、
抜け出すことができない。
ただただ落下に身を任せるしか、
遺された道はない。
そんな彼の視界にブームチューブが現出し、
二体のパラデーモンが出てきた。
こちらに攻撃を仕掛けるでもない、
ただ現れただけ。
だが、クラーク・ケントには、意味するものが一目でわかった。
「紹介しよう。我が両親だ、クラーク・ケント」
「父さん……母さん……」
「よくわかったな。証明する手順を考えていたが、不要なら問題ない。
スーパーマンになるにあたり、必須なのがケント家の育成だ。
真っ先にジョナサン・ケントとマーサ・ケントをパラデーモンにし、
オギャってチュピチュパさせてもらった」
嘲りを籠めた囁き。
耳元で告げられたことに、
スーパーマンの両目が灼熱に光る。
全身が持てる力のすべてを使ってダークサイドを殴打する。
だが、効かない。今のクラークには力が足りなすぎた。
「この……蛆虫野郎が!!!」
両親の変わり果てた姿、
ダークサイドの所業にスーパーマンの顔が憎悪に染まり、
相手の肘を砕く。
同時に、スーパーマンの両拳も砕けた。
「それが限界か。ならば、やはり摩虎羅の適応で決着がついたな。
さらばだスーパーマン、かつての世界の中心よ。
貴様が成し遂げた全ては、このダークサイドの名の下に集うだろう」
そうして、スーパーマンは黒い太陽の奥深くに叩きつけられ──
「行くぞ、テリー!」
「OK、キン肉マン!」
マッスル・ドッキング!!
キン肉マンとテリーが同時にダークサイドをかち上げ、
摩虎羅を巻き込んでのツープラトンを放った。
まだ若き頃でも互いの技の十倍の威力と呼ばれたタッグ技。
お互いに100を超える無数の戦いを繰り広げてきた今ならば、
100×100の100万倍パワーを秘めるのが道理。
摩虎羅が法陣ごと粉砕され、
ダークサイドの口からも止めどない血が溢れた。
「キン肉マン……!?」
「待たせてすまんのう、クラーク」
「ユーがキン肉マンの並行存在かい?
…………ワオ、豚鼻マスクと違って、にんにく臭くないぞ」
「なにお〜〜! 牛丼にニンニクは美味いじゃろうが!」
ダークサイドが大ダメージを喰らい、
まともに立てないほどの負傷を受けている。
それを見て、彼らの配下となった、
遍くスーパーマンの仲間とニューゴッズが集結する。
「ダークサイド様のために!」
「いいぞ、お前達。このダークサイドを守れ!
この世の正義を守るのだ!
多少のミスがあったとしてもそれぞれの世界のスーパーマンは──」
「一人だと思ったのがお主の過ちのようじゃのう」
倒れたセフィロスを抱き起こす精悍な戦士と、赤服の青年、
ジェイクの隣で剣を構えるウサギ帽子の少年、
ソニックの周りに降りたカラフルな仲間、
オムニマンや孫悟空を危機から救う息子たち。
「スーパーマンと呼ばれる存在。
おおむねの傾向はあるが、
何よりも、他の者どもと大きな違いがある」
伏犠が白いカバのような霊獣に乗って
訓戒を垂れる。
「それは”孤独を克服している”ということだ。
お主にタイマンで挑むなんて七面倒臭い作戦をワシが立てるはずもあるまい!
ニョホホホホホホ! 見過ごされている”スーパーマン”達を回収しまわったわ!」
スーパーマン、その位置に収まった一人ではなく、
その座を共有する者達。
在り様は家族であったり、仲間であったり、片割れであったりと様々だが、
共有する最も深き根幹は、ただ一つ。
「無事か、クラーク」
力を使い果たしたスーパーマンに、
鋼鉄の鎧を纏ったハンマーの戦士が膝をついて尋ねる。
肌は黒く、生まれは地球人であり、スーパーパワーの何一つもないが、
心だけでスーパーマンの後継者と宇宙に認められた者、ジョン・ヘンリー・アイアンが。
「大変なことになっているな。
世界が俺達の敵になり、存在を忘れ、ダークサイドがスーパーマンと呼ばれ、
マルチバースが奴を中心に強引に統合されている」
手を貸し、起き上がるのを助け、
スティールが鋼鉄のアーマーを人間の肉体同然に操り、
ボサボサになっていたクラークの髪を後ろに撫でつけた。
「ま、しょうがない。
俺達は”スーパーマン”だものな」
そう言って託された、
もう一振りのハンマー。
スティールの物と同型に見えるが、
日だまりのような暖かさがあった。
「こんなこともあろうかと、造っておいたんだ。
単独で太陽光を発するXクリプトナイトを内蔵してある」
たしかに、強く握れば握るほど、
喪った力が戻ってくる。
だが、それ以上に、彼の心には今、確かな活力が燃え盛っていた。
「お前の息子も、兄も、従姉妹も弟も、同じ戦場にいる。あとビザロも」
「なら、もう安心だな」
スーパーマンがハンマーを担ぎ、駆け出した。
「THIS IS THE JOB FOR SUPERMAN-S!!」
「全軍、押し潰せ!
たかがスーパーマンの数が増えただけだ!
なんら大勢に影響は与えん! このダークサイドも前に出れば……!」
「おっと、貴様の相手は俺だ!!」
悟空の瞬間移動で連れてこられたベジータと孫悟飯が
同時にダークサイドを蹴り上げる。
スピリットの強制分離が発動して
ダークサイドの体が大きく揺れた。
「これでいいんだな、仙人小僧!」
「問題ない。後は好きにせぇ!」
紫の我儘と白銀の獣に変身した者達が
敵陣の後方で暴れまわる。
どれほどの敵が来ても、実質的に挟み撃ちになれば、
動揺が走って当たり前だ。
向こうもマザーボックスで同じようなことができるが、
先手を打たれたというショックは大きい。
何せ、敵はダークサイドだけが中心に収まっているからだ。
「無数の世界を融合させていても、
それは実質的に無限の己を強引に重ね合わせたようなもの。
ならば強制的に重ね合わせを蹴り飛ばせば……」
マルチバースの中心に収まった悪神の姿が無数にブレ、
次から次へと各スーパーマンの座を奪ったダークサイドが生み出されていく。
その数は、スーパーマンの数だけ在り、
縦横無尽に敷き詰められたダークサイドが怒りを露わに
Ωの光を目から放った。
「ここまで来て雑なMAP攻撃は〜〜「余計なお世Wi-Fi!!」」
微弱でとらえどころのないWi-Fiが
黒い太陽を覆い、数式あっての力を無効化した。
次々にあらぬ方へ飛んでいくΩの力が、
ダークサイド達当人に降り注いでいく。
「すっげえ光景だなあ、見た、ケンさん?
セフィロスいたのもだけど、Gacktも一緒にいたよ。
なんだってこんなところにいるんだよ、Gackt」
「スピンオフのキャラだよ、知らないの?」
「子供の頃にやったくらいだからなあ。
ていうかズルくない? あのビジュアルで隣にGacktだろ? 爽やかゴリラみたいなお兄さんもいたし。
あの三人、並んだらもう存在が面白いだろ……。セフィロス一人でも、面白いのに……!」
「他所気にしてもしょうがないって」
「そうだけどさあ。こうして凄い奴らに囲まれると……」
意気消沈する髙羽史彦の背中を、相方が叩く。
袈裟を着て、額に縫い目のある挑発的な坊主が。
「じゃあどうする? 面白いことは凄い奴らに任せるのか?」
「なわけねえだろ! 永遠に面白いことをやり抜くんだよ!」
ダークサイドに延々とダメ出しされ、
素人に適切な指摘を受けて萎縮しきった芸人の姿はもうない。
M-1決勝コンビのピンチャンが、
戦場の中心で一発ギャグを仕掛けた。
「僕も参加しないと!」
スーパーマンがハンマーを握って周囲の激闘に参加しようと意気込む。
昆虫、パラデーモンと通じる外見特徴を持つ神、
フォレイジャーが飛びかかってきたのを打ち返して、
スティールがクラークの肩に手をやって留めた。
「お前にはやってもらうことがある。
そのハンマーには、スーパーマンの波動を集約する機能をつけた。
道中で他のスーパーマンに色々と協力してもらえた突貫作だ。
この戦場中を飛び回り、全スーパーマンの力を集めて、ダークサイドにぶつけるんだ」
「僕がそんな大任を? カルヴィン・エリスに頼んだ方が……」
「俺はその人物を知らない。
当たり前だが、俺にとってはお前がスーパーマンだ。
だから、信じるお前に最後の決め手を託す」
そう言ったスティールにパラデーモンが群がってくる。
露払いをしようとハンマーを振るい、
巨漢のニューゴッズである女神が突進してきた。
アーマーと組み合って拮抗したところに、
容赦なく怪物の大軍が襲ってくる。
だが、上空から黄色と赤の二つの影が落ち、
オムニマンとインビンシブルが蹴散らした。
「何をぼさっとしている」
「ここは俺達がなんとかしますから。
しかし、間近で見るとやっぱパンツは必要だよな……」
二人にハンマーに触れてもらうと、たしかに
ハンマーが帯びる熱が高まった。
それから、地面を蹴って、
戦場の中を飛んでいく。
戦っている最中の人々にすれ違い様に触れてもらうと、
エネルギーが際限なく膨らんでいくのがわかった。
パラデーモンが壁となって立ちはだかるのを、
空飛ぶ相棒に捕まったソニックが風の刃を放って消していく。
「お先にどうぞ!」
ソニックのタッチを受け、
前線から後衛へと遡ると、
ニューゴッズを代表する五人組のヒーロー、
フォーエバーピープルがカルヴィン・エリスに挑んでいた。
「シッ!」
だが今のカルヴィンは万全だ。
父親仕込みのボクシングを繰り出し、
ジャブで多数を突き放し、
右ストレートで吹き飛ばす。
「希望を持っていけ!」
カルヴィンからも力を受け取り、
後衛に行くと、前線から引き離された負傷者や、
まだ若い者達が詰めており、
それを守るように鋼鉄の巨人が見守っていた。
「ジャイアント!」
「スー……パー……マン」
一音、一音を発するように、巨人が呟く。
戦いには全く不向きな精神を持つロボットだが、
守護することにおいては、アイアン・ジャイアントの右に出る者はいない。
「みんなを守ってくれてありがとう。
ここに触れてくれるかい?」
「……触レ……タ」
人差し指で突いてもらったのを確認した瞬間、
さっきまでカルヴィン・エリスがいたところに超巨大ロボットが出現した。
アイアン・ジャイアントと並ぶほどの巨体。
フォーエバーピープルが五神合体を果たしたことで召喚されるインフィニティマンがいた。
「戦わなくて良い。
ただ、少しの間だけ、彼を押し留めてくれ」
「ウン」
頷くアイアン・ジャイアントが地響きを立てて
インフィニティマンに駆けていく。
下方に降りる。
同時に、ブームチューブが現れ、
パラデーモンが次々に現れ、
その奥から多種多様な出で立ちの女性戦士達、
フィメール・フューリーズが現れた。
空手チョップで万物を切り分ける
ギロティナの攻撃を防ぐスティーブン……今はステヴォニーが
盾で攻撃を防ぎ、剣で斬り返す。
「ケケケケェーーーッ!!」
「バウバウバウ!」
奇声をあげて爪を振り回すマッド・ハリエットを、
外装甲になって少年を覆うジェイクが威嚇した。
マザーボックスが後方陣営に召喚され、
護衛役のアイアン・ジャイアントが不在。
負傷に苦しむ者達に、
フューリーズのリーダー、ラシナが放つ包帯が巻き付いた。
マザーボックスからさらに、
分裂したダークサイドが三名現れる。
「そこまでだ」
「ようやく着いた」
同じくブームチューブを通って現れたセフィロスが包帯を切断し、
真紅と銀の閃光がダークサイド達を退けた。
「ここまで追ってきたか。あれほど意識を混濁させておきながら!」
ダークサイドが正宗を受け止め、歯ぎしりした。
「立場ある社会人だからな。
コンプラ意識で若手には優しくしないといけないんだ」
「まったくよく言う。
気まぐれに任務をサボってその辺をほっつき回ってばかりのくせに」
「やめろよ、少年たちの前だぞ」
仲間に釘を刺され、
セフィロスが苦笑した。
先ほどの内面の侵食、頭痛に苦しんでいた姿とはまるで違う安定性だった。
「弱者を見捨てられずにここまで来たのだろうが、それこそが貴様の命取りだ。
周囲の情報を受け取って人格を維持する細胞を持つ貴様、貴様らは、
弱き者の前に立ち、先陣を切り開くその在り様が、そのまま孤高となり、孤独がジェノバの餌食となる」
「おい、こいつを倒したら俺が英雄だからな」
Gacktと髙羽に形容された赤いコートの青年が血気盛んに挑む。
だが暗黒の巨神と一人で戦うには、
まだ実力が足りない。
Ωの視線を切り払い続けると、
たちまちに打つ手を失う。
「待て! ええいあいつはこれだから! 俺達も行くぞ!」
「まったく、いい歳して子どもか、あいつは」
「お前も普段は人のこと言えないだろ! 部下の愚痴を聞くのは俺なんだぞ!」
親友に窘められ、
セフィロスは押し黙り、
ややあって矛先を敵に向けた。
「未来のことを言って、得意がっていたようだけどな。
ウータイには”来年のことを言うと鬼が笑う”って諺があるんだ。
鬼でもないお前に言われても痛くも痒くもない」
「加勢するぜ兄さん達!!」
「行っくぞーーー!!」
セフィロス達を追いかけて
ジェイクと、その親友のフィンも一心同体で剣を持って斬りかかる。
ラシナや、その他のダークサイドは、
ステヴォニーと、ジャスティス・ソサエティが引き受けてくれた。
「目眩ましは任せろ!」
グリーン・ランタンが緑の炎霧を出し、
スーパーマンがその場の者達全員の力を回収する。
「逃がすかああ!!」
ニューゴッズ一の相撲レスラー、
四股で地震を引き起こすストンパが、
左足を高らかに上げて、振り下ろした。
「へあぁ!!」
マンの両拳がスーパーマンを庇ってストンパの足裏を殴った。
両拳の衝撃がニューゴッズに尻餅をつかせた。
さらにスーパーマンは飛ぶ。
上に、上に、外に。
ハンマーはすでにそれ自体が黄金の光を放ち、
手元に収まるのが不可能な力量を発し続けている。
太陽を両手に、黒い太陽の上を
スーパーマンは飛行する。
目指すは最も多くのダークサイドが融合しているだろう存在、敵陣の一番奥。
最中も無数の仲間に後押しされ、
スーパーマンは飛んでいく。
黒い太陽の上にいるのが気にならないくらいの光を放って、
スーパーマンが最も強大なダークサイドに突っ込む。
「何故だ……!!」
奥歯を噛み締め、
計画の失敗を突きつけられ、
ダークサイドは奥歯を噛み締めた。
「スーパーマンは宇宙の中心だ。
このダークサイドがその場を奪った!
力も、仲間も運命も、太陽も我が味方になった