ヒストリア、結婚してください   作:すしぴょ

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3話

立体機動適正試験に合格し束の間の平穏な訓練兵生活を……過ごせてねぇよ!

 

さわさわ……ガチャガチャ………

 

すっごい生活音。

 

早寝早起きは習慣化しつつあるが今日は一段と早くない?いつもは日の出と共に起きてるよね?まだ外真っ暗だけど大丈夫そう?

 

前世なら二度寝は容易にできただろう…しかし厳しい生活に体を塗り替えられてしまったのだ、もう二度と背徳的なあの快楽は味わえない。

 

だが布団からは出られない!足をピッと出すだけでわかる、こりはダメなやつだと。

 

この部屋は寒すぎる!隙間風に薄い布団、暖房器具なんてものは知らん。犯罪者ですか?ここはプリズンかな?住めば都ということわざほど信じられないものは他にない!

 

湯たんぽ代わり、いい匂いのする日記帳がなければ凍死確定だったな。

 

ありがとうリア、また助けられた…

 

好きだぁ。

 

「サク君、そろそろ起きて準備しないと…朝ごはんも食べないと訓練中に倒れちゃうよ?」

 

声をかけ心配してくれるのはアルミン君。すっかり仲良くなった、友達も増えつつあるのだ!サラサラ金髪碧眼とは相性がいいのだろう、サラ金コレクターになれそうだ。

 

「サク君は余裕そうだね…僕は今日の立体機動装置での長距離移動、ちょっと心配…」

 

「アルミン君!行こっか!」

 

「うん…急に元気になったね」

 

そりゃそうさ!

あんなに嫌いだった立体機動装置にどんどん惹かれていく。一度できたらすっかりハマってしまった、勉強と同じである日を境にどんどん体に染み込んでくる。

 

前世は未成年で酒やタバコも知らないガキだった。もちろん◯◯も知らないよ?中毒になんてとたかをくくっていたのだが、今世でなってしまった。

 

立体機動中に…

 

「ふっ…」

 

———

 

「今から立体機動でゴール地点に向かってもらう!この前とは違い距離も長い、最後まで集中力を切らすな!」

 

立体機動の訓練は実戦での動きを想定した段階になった。道中には模型が多数設置されていて判断力と集中力が大切になる訓練だ。

 

この試験での評価のポイントは模型巨人の討伐数、および目的地への到着タイムを合わせたものだった。

 

しかし、キース•シャーディスには一抹の不安があった。

 

「おい、サク…貴様、今日はブレードを装備しているだろうな?…」

 

少年はスピードのためなら全てを削った、空を舞う気持ちよさに焼かれ、速さに取り憑かれた。スピードの悪魔になりつつあったのだ。

 

細い骨格につくしなやかな筋肉、軽量の体は立体機動においてプラスに働いた。

 

そして前回のタイムでは人類最強の男も上回る速さでゴールに辿り着くが、巨人模型の討伐数は0という記録を叩き出す。

 

「なんだ、その顔は…」

 

苦虫を潰したような顔を見て、圧倒的な才能を前に奮起した数日前の自分を嘲笑った。天才と馬鹿は紙一重なんだと寒い冬の日に学んだキース•シャーディスである。

 

———

 

ユミルは目の前を飛ぶサクという少年を見て思う、人間の出せるスピードではないと。

 

まず加速力が違う、0から100になる早さの異常性。そして、最高到達速度が違う、空気抵抗を減らす無理な姿勢を柔軟性が生み出した。

 

紛れもなく天才、本当にワイヤーに吊るされるのを苦労していた少年か?と疑問に思う。

 

少年は何かを極めようとしていた、一点特化型の人間は時として無限の力を発揮する。

 

何がそこまで彼を駆り立てるのだろうと野暮なことは考えない、少年を愛の籠った目で見つめるクリスタのためだろう。

 

しかし少年は守るために命を燃やし、身を滅ぼしそうで心配になる。こっちの死に急ぎは本物すぎて本当に笑えない。私でも感じるくらいだからクリスタは……この子を泣かせる悪い男になりそうなのが最近の一番の悩みだ。

 

守りたいのが一人から二人に増えた…勝手に守ると誓う寒い冬の日。

 

—ユミルにだけは教えてあげよう!クリスタの昔話!愛くるしいなぁ、愛くるしいなぁ—

 

「死んだらダメだよ、本当に……サク、前方の巨人を頼めるかい?」

 

「わかった!行ってくる!」

 

カスっ……

 

え…斬撃の痕浅くない?これ討伐数にカウントされないでしょ。

 

———

 

午前の立体機動訓練はイマイチだったな。あまりスピードは出せないし、斬るタイミングで力を入れるのが苦手で斬撃が浅く討伐数にカウントされなかった。グループのユミルとリアに助けられなんとか合格をもらった。

 

この憂鬱な気持ちに拍車をかけてくるような午後の訓練内容。一番苦手な対人格闘訓練が待っていた。

 

自分は速いだけの雑魚と無慈悲にも突きつけられる訓練を好きになれるはずがない!

 

—やってられないよ、と思ったとき、でも俺頑張ってるなって呟いてみて—

 

「頑張ってるね、出会った日から恋した日から。でも…もっともっと強くならないと」

 

ありがとうございます!心の中の熱血テニス指導者さん、午後からも頑張れそうです。

 

視線の先にいるのは汗を流し訓練に励む一人の女の子。

 

あ…ウインクされた。かわい。

 

———

 

対人格闘の相方はもちろんアルミン君だ。まずは自信をつける段階、アルミン君ごめんなさい……強くなるための礎になってくれ!

 

普通に背負い投げされた。

 

「サク君、力任せじゃダメだよ…君や僕は特にね」

 

じゃあ、どうしろってんだ!もしリアが攫われたとして……さ、攫われる!?まぁ、攫われたとして…う…うぅ、胸が張り裂けそう。

 

そんな時の自分の役目は犯人を追いかけるだけの存在、役目は追尾だけですか…後は俺たちに任せろってか、ヤダヤダヤダ!

 

華麗に救出するため早急に強くなる必要がある、負けを恐れず一番強い人と戦うしかないか…

 

イマジナリー師匠も言っていたじゃないか、強い人と戦っていれば知らず知らずのうちにレベルが上がっていたと。

 

「アルミン君、強い人に習おう」

 

「それ、いいと思う!誰に習おうか?」

 

強そうな人を探すため辺りを見渡し…ロックオ〜ン!ガタイのいい強そうな金髪発見!金髪と相性がいいから仲良くできそう。

 

一緒に訓練してるのはエレン君だった。アルミン君の親友で、友達の友達ということで即仲良くなった。周りからは似た者同士、相性がいいと言われてたが金髪じゃないのに相性いいかなぁ?…それに似てないと思う。

 

「エレン、ライナー!僕とサク君に格闘術を教えてくれない?」

 

「あぁ…いいぞ…アルミンに……サク」

 

なんだい?その不自然な間は。

 

「どうしたんだよ、ライナー…アルミンとサクが来て益々やる気じゃねぇか!」

 

「あ、あぁ…そうだな、まずは自信をつけるのが大切だ!勝利の味を知る必要がある、そこでだ…」

 

ん?デジャヴかな?タイムリープしてはないよね?

 

ライナーが指を刺すのは訓練をサボっている一人の少女、これまた金髪碧眼ときた!これはフラグがビンビンしますなぁ、仲良くなれるフラグが!

 

「不真面目な奴だ、一度痛い目に合わせないといけない…サク自信をつけろ今ここでぇぇぇ!」

 

熱血系だったのか!嫌いじゃない!この金髪!

 

———

 

男四人で少女を囲んでる状況、周りから見たら結構ヤバくね?

 

「教官の頭突きは嫌か?」

 

「嫌だよ、あれ痛いもん」

 

「それ以上、身長を縮めたくなかったら…」

 

「それはもっと嫌だ!一番いい身長差だから今!」

 

「サク君、ライナーはアニに言ってるんだと思うよ?」

 

え…でも目がずっとあってるんですけど…にしても女の子にそんな酷いこと言うか?リアにも心ないこと言わないか心配だ、やっぱ徹底マークいきです。

 

「そら!始めるぞサク」

 

———

 

アニ•レオンハートにとって対人格闘の訓練は意味が見出せないものだった。

 

ただ訓練を終わるのを待つが、嫌いな時間が流れるのは遅い。そんな虚無な時間に小さなイベントが発生した。

 

男に囲まれ声をかけられたのだ。一人は昔馴染みの顔、あとは関わるつもりもなく名前も覚えていない同期。

 

苛立ちをぶつけるのは昔馴染みに突き出された相手、特徴と言えば顔がいいことくらいだろうか。

 

アニは自分のファイトポーズを真似る少年にイライラが増していった。

 

「自分が痴漢役やりますね…行きます!」

 

猪突猛進。何の捻りも芸もなくナイフを持ち突っ込んでくる少年。強いて言えばスピードがあるくらいだろうか。

 

しかしそのスピードはアニに助力した、運動エネルギーは全て背負い投げに周り結構な飛距離を叩き出した。

 

「もう行っていいかい?」

 

———

 

体中が痛い、アスファルトみたいな土の上でする訓練じゃないだろ!柔らかいマットかなんか用意しろやスキンヘッド!……なんて言わないよ?こっちを瞳孔かっ開いて見てるからね。

 

それにしても強いなぁ、格闘センスの塊だと素人雑魚にもわかる。格闘技は好きで見る専だったから、プロみたいな人の技を喰らえるのは少し嬉しかったりもする。名誉のために言っておくがドMじゃありません。

 

「すっご、今のカーフキック」

 

あれに蹴られたら弁慶複雑骨折確定だ、エレン君はズボンの下にボルトか鉄板でも仕込んでる?

 

「こんなことやったって意味ないよ、こんな技術に……」

 

「何言ってんですか!アニちゃんの技術があれば守れる!助けられるじゃないか犯人から!師匠、教えてくださいその技を!」

 

「は?……とにかく—こんな茶番になると思う?」

 

おらぁ馬鹿だからよ、言ってること9割わからん。巨人とは巨漢のことか?巨漢と戦うのになんで対人格闘に意味がないんだよ!

 

「意味がない?じゃあ自分がもう一度痴漢役やりますから、師匠は襲われる側してくださいね?」

 

吊り革を持たせるように師匠を立たせてからの記憶はない。

 

———

 

「サク君、大丈夫かな?医務室に運ばれたけど」

 

「アニ、顔真っ赤にして怒ってたからな…今日は大丈夫でも次の格闘訓練は…」

 

「俺も信じられない…あんなことをアニにできる勇気あるやつが存在するなんて、見直さないといけないな…サク…」

 

触ったのだ、迷いも躊躇もせずアニの臀部を。

 

もちろんカーフキックされ、押し倒され締められる地獄を味わっていた。

 

そしてサク君は言った。

 

—意味あるじゃん、無駄なんかじゃないじゃん

自分を守れる、誰かを守れる立派な素敵な力だよ

それが自分も欲しいんです—

 

かっこいいのか悪いのかいまいち微妙だが、恋する子のためなら真っ直ぐで眩しい人なのだと改めて思ったアルミンだった。

 

———

 

エレン君の弁慶にはやはり何か入っている、今度聞いておかないと複雑骨折するな。

 

次からは師匠が直々に訓練してくれると約束した。やはりサラサラ金髪とは仲良くなれる!

 

今度はイマジナリーではない本物の師匠。

目指すは立派なカーフキッカー、史上最強の格闘家に自分はなる!

 

「サク!大丈夫!?アルミンたちに聞いて、心配したんだよ?」

 

リ…リア!?まっぶ直視できない、発光体すぎる。

 

「大丈夫ぶぃ!リアの顔見たから」

 

「大丈夫ならいいんだけど…それよりサク、何でアニに怒られたの?」

 

「それは…」

 

い、言えねぇ。お尻触りましたって好きな女の子に言えるか!女の子の襲い方なんて知らない、解像度が低くて悪かったな!

 

「お尻触ったんでしょ?」

 

「う…はい…訓練の一環で自分が痴漢者役をしました」

 

「よくわからないけど……触って…私のお尻も触って!!」

 

…ん?

お尻を触ってだと!?そんなこと許されるはずが…昔おんぶする時さりげなく触ってましたぁ、拘禁刑ですみますか?……好きな子に、恋してる子にお尻を触ってと言われる世界線が存在するんですか!?

 

でも悩みません、リアの願いはなんでも叶えます。

 

「じゃ、じゃあ…触るね」

 

もちろん両手で!柔らぁ……

 

—ばたぁぁぁん—

 

視界に広がる満点の星空、投げられたのか?

 

そしてリアに馬乗りされる。息は上がり、顔は紅潮してしている。

 

「私も強くなってるんだからね?サクをこうするのなんて、いつでもできるんだよ?……サク?女の子を揶揄っちゃダメっ、わかった?」

 

鼻と鼻が触れる距離までリアは近付く、そして耳元で囁くように促される。

 

「返事して?サクの声聞きたいな?」

 

「ぅ……うゅ」

 

恋した女の子が魔性すぎる件について…

 

 

甘ったるい胸焼けするような光景、見てられないと思いながらも目が離せない男が一人いた。

 

それは一連の流れの黒幕、ライナー•ブラウンだった。




馬鹿だからよぉ、アニの言ってることほんとにわかりません。
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