ヒストリア、結婚してください   作:すしぴょ

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6話

いや〜来たねぇ雪山、冷え性なのに雪山に来ちゃったってこと。

 

険しい雪山、道中には多くの苦難が兵士の卵をいまかいまかと待ち侘びている。

精神も肉体も限界の状況下、さらには寒さによる思考の鈍りで問題が発生しないわけがない。

つまり吊り橋効果により、新しい恋心が芽生えたりするかも…

 

安心してください、芽生えませんし発展もしません。

 

まず大前提とし一途だから、とうの昔に芽生え重機なしでは伐採不可の大樹になってしまっている。

そして、男だけでメンバーが構成されているからだ。

紹介しましょうか?してほしいんでしょ?今回の雪山訓練のパーティーメンバー、役職を添えて。

まぁ、いつメンなんですけどね…

 

前衛を担うのは屈強な戦士、鎧を身に纏い味方を守る不動の兄貴肌、ライナーの兄貴。

二番手は自分の信念で進み続ける姿はまさに勇者、物語の主人公ポジションのエレン君。

少し離れた三番手には素早さだけが取り柄、役職は盗賊がピッタリ!はいこれが自分です。

また少し離れた四番手には博識高く、仲間のピンチに風穴開けるチームのブレイン、賢者アルミン君。

 

国民的rpg風に例えてみたが盗賊だけ犯罪者じゃない?

 

「あっ君、もう少し頑張ろう…手伝いたいけど…」

 

いつメンの3人はあだ名で呼んでいる。

兄貴(ライナー)、あっくん(アルミン)、エッち、エレッちは響きが良くないのでで、えっちん(エレン)にした。

 

突如天候が変わり猛吹雪に見舞わた。

本当は手を貸したいが声をかけるので精一杯の状況。

 

「さっくー?ありがとう…僕の気持ちを想ってくれて」

 

ちょっと何言ってるかわからないけど、あっ君からの評価がうなぎのぼりに上がっていく。

 

再びゴールの見えない雪道を歩きながら今回の訓練の目的を思い出す。

悪天候の中での巨人との戦闘に備えるか…

 

現実逃避の時間も終わりにしないと。

この世界には、巨漢もいるし巨人もいると現実を見ないといけない。

だってそうだろう、こんな雪山で巨漢との戦闘に備えて何になる?

 

でも現状はシュレディンガーの巨人状態。

確かに馬鹿でかいコンクリの壁はある、ブレードを持ち宙を舞う兵士が存在する、あっ君から故郷が巨人により壊滅したことを聞いた、教科書にも細かな解剖図が載っている、非科学的な存在だが十分な証拠を提示されれば信じないといけない。

 

しかし、平穏な場所で産まれ育ったため実物を一度も見ていない、絵や模型を見せられても到底信じられない。

せめて写真か動画で見せてくれ!じゃないと人を食べる巨人がいるなんて信じられないよ。

多様性の時代で育ったが無理あるって。

 

最近不安になることがある。

いざ人を捕食する巨人と相対した際、躊躇せずに動けるか。

大切な人が目の前で捕食されそうになっている時、即座にブレードを抜けるか。

 

「おい、山小屋が見えてきたぞ!あと、少しだ!」

 

「本当かライナー!一番だと嬉しいな!」

 

「あっ君、もう少しだって…それにしても兄貴とえっちんは速いなぁ…

暖かい部屋で毛布に包まって寝たら最高だよ!自分たちもいそgo〜」

 

「…そうだねっ!急ごっか」

 

アルミン君からの評価が異常に高いのはなんだろう。

いつも助けられてばかりなのはこちら、馬鹿だから座学についていけない。

 

———

 

「クリスタ……クリスタ!もう諦めろ!このままじゃ、3人とも死ぬぞ」

 

「…」

 

「お前が帰らないと、あいつはどうなる?クリスタが一番わかってるだろ?」

 

「…っ!」

 

「どうしてそこまでして助けようとするんだ?」

 

今ここでこの人を見捨てたら、今日の出来事が棘となり一生胸に刺さったまま残る。

ふとした時に思い出す、私は見捨てたんだ、サクとは違うんだって。

私は軽薄な作り笑いを浮かべてしまうだろう。

でもサクなら見抜いてくれる、気がついてくれる、心配させてしまう。

 

「きっとね…私の憧れてる太陽はね…ひーろーはね、見捨てないと見捨てれないと思うんだ」

 

「ひーろー?」

 

「そっ!ぱっと現れてさっと助けるの…誰かれ構わず照らしちゃて心にすっと入り込んで居座っちゃう人たらし」

 

「そいつになりたいのか?」

 

「うーん…ただ、その人の隣に胸を張っていたいのかな?」

 

大切な人の一番尊い表情を私自身で穢したくない。

 

ユミルに声を出して笑われた。

今回は匿名で遠回しに伝えたのに、ユミルにサクの話をするといつも嘲笑されるから嫌だ。

 

「頬を膨らませてかわいいな〜…ダズは私に任せろ、ここまで運んできたのは、こいつを助けたのは間違いなくお前だ」

 

ユミルに斜面方向に強く押され、ころころと転がり木で頭を打ち落ちてきた雪に覆われる。

 

耳を塞ぎたくなる轟音と、稲妻のような発光を目にした。

 

眩暈のする中起き上がるが雪から這い出るが、ユミルとダズの姿は既にない。

 

———-

 

山小屋に着いた頃には雪は止んでいた。

 

「ユミル!ダズに何かあったの?」

 

吹雪は止んだが気温は変わらない。

 

ユミルが山小屋に入らず凍てつく寒さの中で待っていることに不穏な気配を感じる。

 

血の気の引いたユミルの顔に鼓動が速くなり、脂汗も出てき始めた。

 

「中にいるさ」

 

「えっ?…なら…」

 

「サクがお前を探しに行ったって…おい、どこ行こうとしてるんだ!」

 

聞き終わる前に走り出そうとしている。

 

ユミルに手首を強く掴まれ、後ろに引かれ尻餅をつきようやく自分が息をしていないことに気がつく。

 

「離して!離してよ!…私がいてあげないと…泣いちゃうかもしれないから…寒いのも苦手だからね…温めてあげないと」

 

寒さに弱い一人が苦手な寂しがり屋さんはきっと泣いてる。

昔の私みたいに一人暗い世界で凍えてる。

だから、私が迎えに行ってあげないといけない。

 

「ダズの時とは大違いだな?」

 

「だってサクは…私の…だって…」

 

「熱いこって、こっちがキュンキュンしちゃうぜ…本当にクリスタもサクもかわいいな、そんな姿を見るためには仕方ないか…探しに行って来い、言い訳くらい考えといてやる」

 

———

 

探し始めて数時間が経った。

 

吹雪はますます強くなり、数歩先も見えないほどに視界は乱れている。

 

荒れた天候の中、広大な雪山から人一人を探すのは無謀だろう。

脳裏に過ぎるのは両者の死、諦めてしまえば楽になれるかな。

私だけ生き残るのは耐えられない、サクだけが生き残るのも胸が締め付けられるから嫌。

なんでだろう、誰よりも幸せになってほしい人なのに。

 

「いたっ!」

 

ただ答えのないことを考えながら歩いていると顔に何かが当たった。

心地のいい感覚にお日様のような匂い。

唇に何か乾燥した感触、舌をぺろっと出してみると甘い。

 

「いってぇ…ぬるっとしたなにか!?」

 

「……」

 

はい?…今なんて言った?

ずっと一緒にいる幼馴染とはいえ女の子に口にしていい言葉?

心配した時間を返して。

もう私が泣かせてあげる。

 

「リア!しんぱっ…」

 

「ひとまず休めるとこ探そっか?…話はそれからにしよ…サク、わかった?」

 

———

 

岩肌沿いに歩いていると手頃な洞窟を見つけサクを連れ込んだ。

 

焚き火に火をつけ、しばらくの沈黙が続いた。

どちらも寒さが限界に達している、ひとまず体を温めてから長々と文句を言ってあげる。

 

「みんなにも、監督官にも止められたんでしょ?上位10名に入れなかったら憲兵になれないんだよ!?」

 

出会ってから何度目かのサクへの憤り、選択を間違っていいのは前回が最後だったんだよ?

 

私を探すためだけに上位10名の権利を放棄なんて信じられない馬鹿げてる、残された選択肢は駐屯兵か調査兵の二択だけ。

 

憲兵になり裕福で幸せな日々を内地で送ってほしい、誰かと結婚をして奥さんと子供と手を繋ぎ……うぅ……

 

「そんな名誉より大切なもんがあんねん、男にはあんねん」

 

「また馬鹿なこと…んっ…」

 

背の岩壁に前腕を当て追い詰められる、身動きを制限し鼻と鼻が触れる距離まで顔を近付けらてしまった。

目が逸らせず見つめ合いを強制され、ドクドクという胸の高鳴りが絶対に聞かれている。

 

何!?この時間!無言で見つめないでよ!

それに、こんな変な技いつ覚えたの!?アニとの特訓でこんな艶っぽい技を習ってるの!?壁ドンってする技!

今度見学しよう…

 

「守りたいってネタで、冗談半分だと思ってる?」

 

聞き慣れたサクの声が洞窟の反響のせいかいつもより低音でドキッっとする、息が乱れ苦しくなる。

 

私の吐く白い息が全部サクに当たってる…早く離れてよぉ。

低音の声だから体がビクッて反応するの生理現象だから、教官に怒られた時と同じ特別なんかじゃない。

…ってなんでサクに怒られてるの?私だから、怒る権利を持ってるの。

 

「私は上位10名にもなれないし、行ける兵団は決まってる!その上で調査兵になる、壁の外に出て巨人と戦うの、いつ死んでもおかしくない世界に行く!」

 

くすくすと笑う声と焚き火の音だけが洞窟に響いている。

心を見透かされている気分、手のひらの上で転がされているようで屈辱的。

 

「言うと思った…何年一緒にいると思ってるのさ…」

 

サクはため息をつきながら鼻を啜る。

なんか可愛く見えちゃうなぁ…違う!違う!違うよ!

 

「昔の約束、覚えててくれたんだ」

 

目が離せなず見入ってしまう、別人のように感じる。

こんな、よくわからない雰囲気を醸し出す人知らない…誰?この人!?

 

忘れられるわけない、意地悪なこと言わないでよ。

サクが私を絵本に登場するような女の子にしてくれたんだよ?

 

「んっ?何が!?全然覚えてないよ、別に海で一緒に泳ぎたくもないし!?一緒に世界中を旅なんてしたくないよ!?二人で遠くまで逃げなくても大丈夫だよ〜」

 

「最後のはやめて、本当に黒歴史だから」

 

—リアを苦しめる人たちから逃げよっか、二人でどこまでも、どこまでも—

 

冗談でも嬉しかったのに、一度私をいじめる人たちに立ち向かい返り討ちにされてからは二人で逃げ回ったな…

 

少し格好悪いけど、サクらしさが詰まった魔法の言葉。

一緒に逃げようという言葉は私のおまじないでお守りだから忘れてあげない。

 

再びくすくすと笑いだしたサクの背後に回り抱き締める。

アニの格闘技は確かに凄かった、お返しにミカサに習った格闘技を体験させてあげるね?

この体勢なら技も決められるし温まれる、一石二鳥だからおかしな点はないと心の中で反復していないと耐えられない。

 

寒さのせいか思考も鈍っている、それに心臓の鼓動の音がうるさい。

私だけ異常な心拍数なのはいたたまれない、サクの背中に耳を当て鼓動を確かめないと。

 

ドドドドドドドドドド

 

えぇ…それなら許す。

 

「でも、答え言ってるようなもんじゃん…男に産まれたなら好きな子くらい守らせてくれ、調査兵になるよ自分も」

 

「なにそれ…好きとかわかんない!よくそこまで真っ直ぐ生きられるね!?」

 

モヤモヤするしイライラするし……ドキドキする。

人の心をかき乱しておいて、のほほんと焚き火に手をかざしているのが許せない。

後ろから抱きついてるのに、動揺を声にも顔にも出さなのが不愉快。

こちらは胸が破裂しそうな攻撃を喰らってるのに、サクは無傷。

 

「ほんと、なんでだろうね…まぁ、まだリアお嬢ちゃんにはわからなくていいよ」

 

はい?…

何偉そうに大人ぶってるの?

雪山で迷子になる、一端の訓練兵のくせに!

 

「リア?…いつもより鼻息も息も荒い?抱き締める力も強いよ?もしかして照れてるん?さっき、キスした仲じゃ〜ん、さらけ出しちゃえ〜」

 

は?…

絶対に許さない…

 

…キ、キス!?

ん?そう言えば、ぬるってしてるって言ってたよね?

 

締め付ける強さが増していきサクは慌て始めた。

こそばゆいし擦れるから動かないで!

反撃が終わるまで絶対に逃さないよう力を強める。

 

私ばかりが責められるのは不公平だ。

 

「から〜愛してるだっけ?」

 

「っ!…」

 

私が寝てるとばかり思ってべらべら自分語りをしてたマセガキさん。

いきなり手を離されたら不安で目も覚める、あなたは目を離せば消えてしまいそうだから。

起きていることを勘付かれないように髪を撫でれられるのも大変なんだよ?

 

次の日はお昼まで寝坊しちゃうし、夜はみんなから好奇の目を向けられ質問攻めにあってからの雪山訓練、へとへとだよ。

 

後ろから抱かれるだけだったサクは慌て抜け出し振り返る、顔の紅潮の原因が寒さでないことくらい私でも理解している。

 

思い出すだけでこちらも恥ずかしくなり、痛み分けになったが背に腹は代えられない。

 

「ごめんリア…なんにも返してあげられなくて〜?」

 

「おいいいぃ!それ以上言うなよ?」

 

「なんにもないなんて…」

 

「こんの…メスガキ」

 

顔を紅くし私の口を両手で塞ぐサクが愛おしい、初めての勝利により自分の殻が剥がれたような気がした。

 

私はサクの前でも本性を隠し自分を演じていたのだろうか、一番大切な人に嫌われるのだけは耐えられないから。

自分自身を曝け出すのが怖い、昔みたいにいらない子と突き放されるのが怖い。

 

あなただけは違うのにね…

 

「何を知られたくないのかな〜?知ってほしいのかな〜?サク〜?勇気出してみよっ!頑張れっ!」

 

「…可愛すぎるのが、なんか今日は腹立つ……あかん、まじで張っ倒しそう」

 

サクの泣きそうな顔にゾクゾクする、目を細め私を睨むなんて初めて。

なんか病みつきになりそう、この胸から溢れそうな気持ちは知らない。

意地悪した後になでなでしして甘やかしてあげたいなぁ…

でも今は我慢しないと、可愛い子に旅をさせるため今は悪い女にならないといけない。

 

「リアを前世の空白を埋める玩具としてしか見てなかった…いらなくなったら元の場所に返したら、捨てたらいいやって思いながら接してた、救いたくて声をかけてない」

 

「なんだ…そんなこと?」

 

「そんなことって…リアを苦しめた人たちと似た考えだよ…」

 

ずっと気にしていたのだろうか、悪い人に引っかかりそうで心配になる。

愚直だから引き摺っていたのかな、時効はとうの昔に過ぎている。

サクは変わらないなと安心し体も心も温まる。

 

だから、もっと意地悪をしたくなっちゃった…

もっともっと私を知ってほしい。

 

「サクもあの人たちと同じだったんだ!私のこと必要ないって、生きてても…」

 

「そこまで思うわけない…だってリアは…」

 

拳をぎゅっと握りしめ下を向いてしまった、意地悪はしたかったが私が耐えられない。

 

「じゃあ罰を与えます!…………ずっと私の隣にいること………私だけのサクでいてください!」

 

素直になってみよう、自分自身を大切にしてみよう。

誰しも譲れないことがある、私にだって誰にも譲れない人がいて想いがあった。

それは目の前で泣きそうになっている男の子、私を救ってくれた男の子。

誰にも渡したくない、手放せない。

出会った日に運命は決まってたのだろう。

ずっと孤独な思いをさせてごめんね、認めてあげないと受け入れてあげないと。

最初で最後の私の恋心を。

 

溢れ始めた想い、でも心の準備ができるまでは言えない…

 

「いてもいいの?」

 

「胸を張っていなさい、疑問系じゃ私のこと守れないよ?」

 

サクは目元を拭いながら何度も頷いた。

手を広げ待っていると、ゆっくりと近づいてきて胸の中に収まり震えている。

片手は背中を撫で、余った手はサラサラの青黒髪を撫でる。

ほらくすぐったいでしょ?味あわせてあげる、私の気持ち。

男の子はどんどん成長して大きくなってしまう、あと何回サクの体を包み込み温めてあげられるだろうと考え寂しくなる。

 

「それで…私はサクに何をしてあげれたのかなぁ?」

 

耳元で囁くと体がビクッと反応するのが楽しく、息も吹きかけてみる。

巨人はうなじだがサクは耳。私だけが知っている、知っていい秘密の急所。

髪がサクを守る壁かな〜、耳にかけ直で甘く噛んでみる。

なんか、危ない趣味に目覚めそう…

 

「っん…噛むなっ!…夢をくれたんだよ、生きたいと思わせてくれたんだよ…もういい?満足した?ここで凍死した方がマシっ!離せっ!」

 

「私をおいていくの?」

 

「いかない…」

 

「離さないから、凍死はできないけどね?…でも、そっか」

 

私は誰かの、一番大切な人の心の支えになれてたんだ。

 

「うぅ……な、なに?…これ以上、聞くなよ?次口開いたら強制的に塞ぐ!!」

 

残念ながらサクの腕の上から抱きしめている、両手は動かせない。

女の子は隙を見せないんだよ?サクみたいに弱点を無防備に晒さないの。

 

「夢って…んんっ!…」

 

唇に温かな感覚と、口内に甘い味が広がる。

咄嗟に目を閉じてしまった。

緊張と羞恥のせいかサクを抱き締める手が益々強くなり二人とも悶えている。

なに、この状況…

 

「それは聞いちゃだめ…いつか教えてあげる、人生を懸けてするから…わかった?」

 

「………は…はい…よろしくお願いします」

 

…なに!?

この大人な雰囲気、誰ですか貴方!知らない人とキスしちゃったの、私?

私の馬鹿でお子ちゃまなサクを返して!

 

「言っておきます…サクが私にしてくれたことも同じです!…その…そこんとこ…ヨロシク!」

 

「お、おぅ、そぅどすか……スケバン、リアかな?」

 

「吹雪が止むまで待たないとね〜…それにしても熱いねぇ…」

 

気まずい時間が流れる、二人の時間は会話しなくても心地いい時間だったのに。

壊さないでよ!返して、サクの馬鹿!

なんで何も話さないのよ、いつもなら⚪︎⚪︎リア!?とか連呼するのに、今日は歯切れ悪っ、センスのかけらもない!

まぁ、いっか。手を繋いでいれば、なんとなく気持ちも伝わる。

 

危なっかしいから、私が責任をもってあなたの隣にいないとね。

もう譲らない。

女の子に酷いことも言うから、隣にいて許せるのは私くらいだよ?

どんどん言って嫌われたらいいよ!サクなんて。

 

にぎにぎ忙しないサクの手をぎゅっと握ると、膝に顔を埋め寝たふりをするので髪を撫でつつ耳も触ります。 

 

吹雪さん、まだまだやまないで。

 

もう少しだけ、わたしたちに時間をください。

 

絵本の女の子みたいに、恋する普通の女の子にしてくれてありがとう。

 

サク、すきだよ…

 

———

 

「戻ってきたぞ、馬鹿二人が」

 

アルミン、エレン、ライナーといったサクと仲のいいメンバー、クリスタを心配する人は沢山いるので省かせてもらうが極寒にも関わらず外で待ってくれている。

 

ランタンの微光はどんどんと大きくなり、目視でも輪郭を確認できる近さになり手元に視線が集中する。

 

ユミルは声を出して笑いそうになった、二人とも反対方向を向き会話もないが手だけは離そうとしない。

 

いじらしすぎるだろぉ…

 

なんだこの二人……

 

「ユミル!連れて帰ったよ、馬鹿サクを!怒ってあげて」

 

「あぁ、後でな…まずは温まってからだ…ところでいつまで手を繋いだままなんだ?」

 

「あ…クリスタが離してくれないんだよ、引き離してお願い」

 

「は、はい?…サクが離したくないんでしょ!私は熱くて離れたいんだけど!」

 

「…え、離れたいの?」

 

「いやぁ…もう少しこのままでいたいけどぉ…みんなが見てるからぁ」

 

「こんな感じなんですよ、手汗も…」

 

「ああぁ!!もぅ!何も話すなぁ!」

 

「クリスタ、随分変わったな?」

 

「変わってないよ?みんなには今まで通り!この、馬鹿サクだけだから、安心して?」

 

「それを、みんな羨ましそうにするんだと思うぞ?」

 

「……ん?」

 

クリスタとは思えない人を目にした周りの同期は言葉を失ったと同時に、首をこくりと傾けるクリスタが天使すぎて呼吸するのを忘れ酸欠になりかけた。

 

二人の距離が極端に変わった、雪山にはやはり魔物が住んでいる。

吊り橋効果という名の魔物により発展した二人にきゅんきゅんを抑えられないユミルだった。

 

「反対の空いてる手繋いでいいか?」

 

戦士とは到底思えないか細い声が銀世界に消えていく。




雪山溶かせなかった。
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