逃げるは敵へ   作:ジャーマンポテトin納豆

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大侵攻の後始末

 

 

 

 

 

帝国領侵攻作戦は同盟の明確な敗北に終わった。

 

それは素人が見ても明らかな結果として残ったわけだが、はいそうですかこれでおしまい、とはならないのが戦争というものだ。

要は後始末をしなければならない。

割とあっさりと決まったのがこの作戦を主導した総司令部と最高評議会議員の処遇だ。

 

まず総司令部について。

まず俺達艦隊司令官全員が軍法会議に掛けられた。

というのも撤退に際して総司令部からは撤退を許可しないと言う命令に加えて、アムリッツァ星系に集結の後に艦隊決戦を挑むと言う命令が下ったが全員がそれを無視、イゼルローン要塞に帰還したことが軍法裁判に掛けられた理由だ。

争点は命令無視に妥当性はあったか、ただこの一点に集約された。

 

結果として補給状況などを鑑みれば各艦隊司令官の撤退判断は妥当かつ当然であり、それを撤回した総司令部に妥当性、そして指揮能力は無い、と判断され俺達は全員無事に無罪放免。ただまぁ、謹慎と言う名の休暇が一か月与えられたのは仕方が無いところだろう。

 

次に総司令部の面々の処遇。

ロボス元帥は三階級降格の上で不名誉除隊。退役金は無し。

この作戦を立案したフォークは二階級降格の上で軍刑務所へ収監の上で精神状態が安定したら軍法裁判に掛けられる。ただまぁ、下手な判決を下せば各艦隊司令官の猛反発もあって最悪極刑も免れないだろう。

 

グリーンヒル大将。

降格は無かったが、各辺境星域に左遷と言う名の辺境星域のテコ入れを行う布石となることを打診。

結果、本人の了承で辺境星域に左遷(出向)。

 

 

作戦参謀コーネフ少将。

一階級降格の上、辺境星域に左遷。

 

情報参謀ビロライネン少将。

情報本部に据え置きとなったが二階級降格。

 

後方参謀キャゼルヌ少将。

兵站維持の失敗を理由に左遷されるも当初より危惧し、反対をしていたため一時的に辺境へ移動。軍の再編、再建計画に携わる為、事が済み次第中央へ呼び戻される予定。

 

とまぁ、だいたいこんな処罰を下されている。

では各艦隊司令官は、というと戦死したルフェーブル提督、アップルトン提督は二階級特進。元帥となった。

 

アル・サレム提督

大将に昇進するも重傷を負い、回復後も軍務に支障を来たすとして名誉除隊。

 

ホーウッド提督

戦傷を負われるも復帰可能。階級は大将に昇進。

 

他艦隊司令官も大将に昇進した。

 

最高評議会の面々もジョアン・レべロ、ホワン・ルイ、トリューニヒトの三人を残して辞職。恐らく今後どこの選挙区で出ても当選することは無いだろう。

それ以外の主戦論派議員も、不思議なことに何故か不祥事が次々と出てきて辞職が相次いだ。

同盟政府内の勢力均衡は大きく講和、和平派、消極的継戦派に傾いたわけだ。

 

シトレ校長は、当初辞任をする意思を見せていたが責任を取ると言うならこれから大変な時期に差し掛かる同盟軍を支える為に奔走して欲しい、と頭を下げたところ溜息を吐いて了承。統合作戦本部で同盟軍立て直しの陣頭指揮を執り、落ち着いた後に辞職するとなった。

 

作戦に参加した艦隊司令官は俺とヤンを含めて全員大将に昇進。

それ以外の将官や兵達も軒並み階級がポン、と一つ二つ上がる事となった。

 

 

が、問題はここからだった。

先ず第一に戦後処理としてやらねばならないことが山ほどある。

 

一つは作戦参加九個正規艦隊十二万隻のうち、帰還後廃棄となった艦艇も含めれば八万隻にもなる損失艦艇をどうやって埋めるか、という話。

何にしても帝国軍の反撃が予想されるということから、艦隊の体を成している第五、第十、第十二、第十三、第十四艦隊は壊滅した各艦隊の残存艦艇で補充し、取り合えず最低でも一万二〇〇〇隻程度にまでは回復させる処置が取られた。

これで前線に五個正規艦隊を配置出来る。

 

第五艦隊

一万二〇〇〇隻

 

第十艦隊

一万三〇〇〇隻

 

第十二艦隊

一万三〇〇〇隻

 

第十三艦隊

一万二〇〇〇隻

 

第十四艦隊

一万二〇〇〇隻

 

これに第一艦隊一万五〇〇〇隻を加えて六個正規艦隊がなんとか数を揃えて稼働状態にすることが出来た。

再建途上にある第十一艦隊は七五〇〇隻であるが、この艦隊も一個艦隊一万二〇〇〇隻にまで再建することが決定し、この時点で同盟軍は七個正規艦隊となる。

 

では失った第三、第七、第八、第九艦隊、そしてアスターテ会戦で失って未だ再建の目処が立っていなかった第二、第四、第六艦隊の計七個艦隊をどうするのかという話。

 

これに関しては物凄く紛糾した。

まず軍拡派や主戦論派は一四個正規艦隊体制に何としてでも戻せ、と主張しそれどころか二〇個艦隊にまで拡張するべきだと言い始めた奴までいる始末。

と言っても今の同盟政府には二〇個艦隊への拡張はおろか、七個正規艦隊を立て直せるだけの力すら、人員、金、資源、建造設備、どれを取ってもどこにも存在しない。

ましてや今回の大敗北で発生する、諸々を合わせた莫大な金銭を考えれば何をどう考えて二〇個艦隊も整備出来ると思うのか不思議で仕方が無い。

当然、軍拡路線は早々に否定され軍拡派のルグランジュ提督は大層お怒りだったがんなモン知ったこっちゃない。

そもそも軍にせよ官にせよ、民にせよ現状軍拡は出来ない、と言うのが共通認識だ。

そんな中で軍拡を主張すれば白い目で見られる。

 

そもそも帰還後すぐに艦隊の再編や再建が行われる訳じゃない。

まず作戦における総括を行わなければならないが、それよりも先にやらなければならないのはイゼルローンに蓋をすること。

ここに戦力を置かないと帝国軍の反撃が始まればイゼルローン失陥、同盟領に帝国軍が雪崩れ込むことになる。それを防ぐ為に一個艦隊を派遣する必要があった。

取り合えず、早急にイゼルローン回廊に蓋をする必要があるとして、ウランフ提督の第十艦隊におけるあらゆる決済や戦力補充を最優先で行って、イゼルローン要塞に駐留させることが決まった。

 

これに加えて、俺とヤンからの共同意見書としてシトレ校長に提出した、フェザーン回廊を通って帝国軍が侵入する可能性がある、というものから、次にフェザーン方面防備の為にジャムシード星系にボロディン提督の第十二艦隊を戦力補充と決済を済ませて配置。

これで一旦帝国軍が流れ込んでくる可能性のある三か所のうち、二か所の蓋は出来た。

 

と言ってもこれらは暫定的な措置であり、帝国軍が反撃の為に殴り返してくると想定した場合、支援体制や戦力としてどう考えても心許無い。

そこでイゼルローンには第五艦隊をエル・ファシルに増援部隊として配置、数日以内に駆け付けられるように対処した。

 

フェザーン方面に対しては、危険はあるがイゼルローンに比べれば危険性は低いということで、第十一艦隊を訓練兼増援として配置することが決定した。

再建途上にはあるが、半個艦隊でもいれば合わせて二万隻二〜三〇〇〇隻になる。いた方がマシ、と言った具合だ。

 

他にもやらなければならない事は多い。

特に最優先課題として掲げられているのはイゼルローン要塞の各種設備の技術的解析だ。

流体金属の構成や組成式、浮遊砲台の技術などを早急にコピーし、損耗した時に備えて量産出来るようにしないとならない。浮遊砲台だけで数千はあるし、それに要塞全体を覆う流体金属の製造となると、生産設備の建設から量産に至るまで一体どれだけの時間と金を必要とするのか頭の痛い問題だ。

 

何はともあれ、イゼルローン要塞の各種技術の解析には最低でも半年は掛かる上、更に量産体制を整えるとなると丸々一年は掛かる見通しだ。

イゼルローン要塞を陥落させてからすぐに作業に取り掛かってはいるが、それでも浮遊砲台の量産開始まで一年、流体金属の量産まで一年半、と言ったぐらい。

それまで敵が来ず、消耗しない事を祈るしかない。

 

 

 

さて、では全く再建の目途も経たない七個艦隊をどうするべきか、という問題だが結局財政的にも人的にも再建は難しく、取り合えず九個正規艦隊体制を目指しつつ、残りの艦隊は第二、第三、第七、第六艦隊が欠番。

第六、第八、第九艦隊は余裕を見て半個艦隊として再建されることが決まった。

半個艦隊となった理由は単純に、正規艦隊分である最低数一万二~三〇〇〇隻×三をどうやっても用意するのが難しいからだ。総数だと4万隻弱。他艦隊への補充用や再建、再編用を含めるとどうやっても五万隻を下回ることは無いという数字だ。

だが半個艦隊なら七〇〇〇隻で編成したとしても、二万一〇〇〇隻で済むし、諸々の艦艇建造数を合わせても三万隻程度で済むという判断からだ。

 

出征の影響を受けていない第一艦隊一万六〇〇〇隻は訓練艦隊とすることが最終的に決定し、八〇〇〇隻の半個艦隊に改編され、八〇〇〇隻を各艦隊に振り分けることが決まった。

 

結果として、

 

第五艦隊 一万四〇〇〇隻(エル・ファシル駐留)

第十艦隊 一万五〇〇〇隻(イゼルローン要塞駐留)

第十二艦隊 一万五〇〇〇隻(ジャムシード星系配備)

第十三艦隊 一万三〇〇〇隻(ハイネセンにて待機)

第十四艦隊 一万三〇〇〇隻(ハイネセンにて待機)

 

と練度はさておき五個艦隊の数を揃えることに成功。

最も重視すべきは現在、最も敵と戦う可能性の高い第十、第十二艦隊であり、取り合えず一万五〇〇〇隻もあれば増援到着までは要塞主砲や浮遊砲台と合わせて持ち堪えられるだろうとの判断だ。

現状ハイネセンに待機している第十三、第十四艦隊は敵が来た、と言う報告があれば即座にハイネセンより出立しイゼルローン、或いはジャムシード星系増援に向かう事となっている。

ただ、ハイネセンとイゼルローン、ジャムシード星系の距離はかなり遠く、即応待機状態で出立の場合でも二週間は掛かるし、通常の待機状態となれば乗組員の呼び戻しと物資の積み込みを込みで考えれば三週間はどれだけ短くても掛かるわけだ。

だから、ハイネセンに置いておくより、前線に近い場所に駐留させるべき、という訳なのだが問題が一つ。

 

前線にはそれだけの艦隊を駐留させることの出来る宇宙港も、それを維持管理する為の工廠も、そして乗組員を受け入れられるだけの居住施設など、まぁ簡単に言えば何もかもが無い。

だからまずやらなければならないのはこれら設備を前線近くに整える事。

 

 

そう言った意見が提出され、シトレ本部長はまず整えるべきは早急な防衛体制であり、そのためにはあらゆる手段を取ることを宣言。

先ず最初に行われたのが首都星ハイネセンに配備される十二基の自動迎撃無人人工衛星を、ジャムシード星系に配置換えすることだった。

この決定には反対意見も多かったが、そもそもハイネセンまで攻め込まれている状況は同盟にとって負け、という状況であるから、そうならないように最前線に配置する方がどう考えても得策、という事で方々を説得。

結果、ジャムシード星系には第十二艦隊、第十一艦隊、アルテミスの首飾りが配備され防備が整った。

まぁ、イゼルローン要塞みたいなのを建造する訳にも行かないし、当然の措置と言える。

 

 

次に、イゼルローン、ジャムシードの両方を支える為の後方支援体制の確立。

先に述べた通りだが、これは結構大きな問題として同盟軍に降りかかった。

 

帝国領侵攻作戦でも良く分かったことだろうが、軍隊と言うのは(軍隊に限らずではあるが)補給が無ければ戦えない。

その点で見るとイゼルローンの支援を行うエル・ファシルにしても、フェザーン回廊の蓋をするジャムシード星系にしても元々大艦隊を駐留させる設備やそれを維持する為の工廠、補給拠点なんて今の今まで無かったし、そう言ったものを用意するという考え自体が軍には殆ど無かった。

 

分艦隊規模を賄うぐらいの設備はあったから全く無い訳でもないが、分艦隊の数倍の規模となる一万隻を軽く超える正規艦隊を常駐させられるだけの設備は何処の星系にもない。

今までずっと主力艦隊はハイネセンにいて、敵が来たらハイネセンから出撃していくという無駄をやっていたわけだからな。今回、それらに改革を行って艦隊を前線に置いたことで、それらの問題が顕在化したのだ。

 

これの解決には、取り合えず艦隊用の必要設備はハイネセン近郊の設備をエル・ファシル、ジャムシードに持って行って、補給拠点は新しく建設することで落ち着いた。

ジャムシード星系の支援は辺境星域となるランテマリオ星域に置くこととなり、グリーンヒル大将の最初の左遷先はここになった。ここの設備や体制を整える為にグリーンヒル大将は奔走することになり、それが終われば次はエルファシル、そしてまた別の星系に、と次々と赴いて貰う予定だ。

 

これに伴い後方業務の業務量が膨大になり、後方業務だけで少将にまで登り詰めたキャゼルヌ先輩を早急に呼び戻す必要があると軍は認識。

というかこれだけの規模のものをやれる人材が、将官の中では今のところキャゼルヌ先輩ぐらいしかいないという現実にぶち当たり、左遷されてからすぐにハイネセンの統合作戦本部に呼び戻され、中将に昇進の上で後方業務における最高責任者としての地位を押し付けられることになる。

因みに左遷先は民間航路で往復二か月は掛かる場所であり、軍の輸送艦の都合もあって民間航路で一か月掛けて行ったキャゼルヌ先輩は、左遷先の滞在期間まさかの四日でまた一か月掛けてハイネセンに戻って来ることとなり、まぁ、詳しくは言わないがふざけるな、と言った感じだった。

 

 

 

で、俺とヤンはというと。

第十三、第十四艦隊は配置された各艦隊と交代で休暇となり、先に休暇を取らせてもらっている。

 

「俺達が大将、ねぇ……」

 

「なんだか実感湧かないね」

 

「三十代で大将なんて、帝国の貴族でもなければ最年少なんじゃないか?」

 

「そうなのかい?」

 

「いや、しらん」

 

二人揃って、戦功抜群として大将に昇進。

と言っても俺達をどうするかと言うのが具体的に決まっておらず、俺達はそれぞれ第十三艦隊と第十四艦隊司令官の任を受けたまま、事実上の宙ぶらりん状態になっていた。

というのも、現在の同盟軍にはビュコック、ウランフ、ボロディン、ホーウッド、グリーンヒル、ヤン、俺、と七人の大将がいる。

ここまで大将の階級を持つ人間が揃うのはまぁ、同盟軍史上発の事態で大将格をどこにどんな配置や配属をするべきか、で中々話が纏まらないのだ。

 

とりあえずシトレ校長は元帥で、本部長。

ビュコック大将は宇宙艦隊総司令官に。

イゼルローンに蓋をする為に実力者を、という事でウランフ大将が。

同じくフェザーン方面の蓋をする意味でボロディン大将が。

グリーンヒル大将は各地のテコ入れをする為にあちこちに行ってもらう。

 

で、問題がホーウッド大将と俺、そしてヤンだ。

大将に与える職ともなると現状、中々ない。

案としてはざっくり二つ。

艦隊司令官か、方面軍を新設してそこの司令官にぶち込んで前線指揮を執らせるという話。

もう一つが統合作戦本部で要職勤めとする案。

まぁ簡単には決まらないだろう。

 

艦隊司令部の面々も中将やら少将に昇進したことで、カールセン提督、ワイドボーンは中将に昇進。

チュン准将は少将へ、ラップは准将へ。ラインハルトに関しては少佐にまでなった。

オフレッサーとメルカッツ提督も中将扱いとなる。

 

ヤンのところもだいたい同じような感じで、大きく変わったのは准将になったシェーンコップ率いる薔薇の騎士連隊はイゼルローン要塞守備隊に転出ぐらいか。

第十三、第十四艦隊は艦隊司令官が大将なのは他の艦隊と変わらないが、参謀長や幕僚が全員将官という状態になり、多分一番豪華な艦隊司令部を持つことになっている。

ただまぁ、予想としてはカールセン提督は艦隊司令官に、ワイドボーンは何処かの基地司令か艦隊総参謀長辺りを一旦挟んでからの艦隊司令官に栄転、と言う形になると思う。

艦隊に二人も三人も中将が居たらそれはそれで困るし、彼らは全員優秀だ。そんな人間をイチ艦隊司令部に置いておくほど同盟に人的余裕はない。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

諸々の総括が終わった後、シトレ校長は統合作戦本部長に慰留、宇宙艦隊総司令官には元帥に昇進されたビュコック提督が着任。

ビュコック提督が離れたことで指揮官不在となった第五艦隊司令官にはウチの艦隊からカールセン提督が栄転と言う形に収まった。

イゼルローン要塞の総参謀にワイドボーンが栄転し、エル・ファシル補給基地にはムライ中将がヤンのところから栄転。

イゼルローン方面の後方業務はムライ中将が一手に引き受けることになり、そのため第十三艦隊から栄転。

ウチの艦隊は一旦、チュン小将を参謀長、ラップを副参謀長、ラインハルトを主席幕僚とすることで解決。

 

で、本題の俺とヤンだが。

処遇が決まらないから当面の間休みを貰い、帰還後に正式に届けを出して夫婦となったアンネローゼと過ごしていた。

ヤンもだいたい同じらしく、ユリアン君が士官学校を目指しているとかで、休暇を利用して実質通い妻みたいな状態になっているグリーンヒル大尉と一緒に勉強を見ている。

まぁ、ヤンの成績は落第ギリギリばかりだから殆どグリーンヒル大尉に任せっきりらしいけど。ヤンは艦隊指揮や作戦立案とかになると大天才なんだが、それ以外が壊滅的だからなぁ。

友達じゃなけりゃ、助けなんてしなかったしそうなったらヤンは士官学校を落第していただろうな。

それはそうと、ヤンとグリーンヒル大尉、あれはいつになったらくっ付くんだろうか。

あんなの周りから見れば付き合っているようなもんだし、ユリアンの二人に対する懐き具合や様子を見ていれば親子だぞ。口に出して言うのも野暮だから何も言ったりしないけど。

 

 

「貴方、いつまでお休みを貰えるの?」

 

「どこのポストに放り込まれるかが決まるまでだな。それまではハイネセン近郊で訓練と補充整備を繰り返す事になるから、一か月?ぐらい?」

 

「それなら毎日帰って来られるのね?」

 

「あぁ。そもそもウチの艦隊自体が最低限の人員を残して休暇中だからなぁ。暫くはこのままだろうよ」

 

「ふふっ、貴方が毎日帰って来てくれるだけで嬉しいわ」

 

「照れるな」

 

「あら、可愛い」

 

とまぁ、休みを満喫している訳だが、アンネローゼは普通に店を開くから暇じゃない。

定休日は設けているが、それ以外は朝から晩まで店を開いている。なので店の手伝いでも、と話したら貴方が店番に立ったら余計な人達まで来てお客様に迷惑になるからやめて、と言われた。悲しい。

オフレッサーはあちこちの地上部隊相手に訓練をして回って、それ以外は基本的に俺やらアンネローゼ、両親の護衛をやっている。

因みにアポも取らずに突っ込んできたマスコミ相手にブチ切れて追い掛け散らし、危うくマスコミ本社が更地になるところだった。お陰で新聞の一面を飾ったのはある意味良い思い出だ。忠誠心は高いが、なんせ凶暴が過ぎる。ま、おかげでマスコミ連中の突撃を喰らわなくて済むけどさ。

 

 

俺の家で、アンネローゼが作り置きしてくれていたおやつを食べながら、ヤンはブランデー入り紅茶を飲み、俺はもう良いやと昼間からウイスキーやワインを飲んで雑談会だ。

 

「そう言えばアンネローゼさんは?」

 

「仕事。俺が休みでも店は開かないといけないからな」

 

「傍から見たらヒモ男だね」

 

「お前は子供がせかせかしているのに昼間から酒を飲んでいる屑親父ってところだな」

 

「おいおい、こっちはユリアンに勉強教えているんだぞ」

 

「士官学校在学中、ずっと落第ギリギリで度々俺に泣き付いてきたお前がか?馬鹿言うなよ。どう考えてもヤン、お前よりユリアン君の方が出来が良い」

 

「おっと勘違いしないでくれよ。戦史とかはトップクラスの成績だったぞ。これなら幾らでも教えられる」

 

「でもそれ、落第しても全然問題無い科目だったろ」

 

「……」

 

馬鹿め!

 

 

 

特にやることもなく、毎日食べて動いて寝て夜はアンネローゼと過ごして、という怠惰な日常を一か月も送っていると完全に忘れていた頃になって統合作戦本部に呼び出された。

 

「君らの処遇を決めかねていてね。君らの希望を聞こうと思っているんだが。あぁ、一応言っておくが軍を辞めたいという返答は無しだぞ」

 

本部長室に呼び出されて、どうする?という話をされた。

まぁなんとなく休暇を満喫しながら何処に行くでもなく、互いの家に足を度々運び合っていたヤンと、そのうち処遇が決まらなくて呼び出されるかもな、とか話していたらこれである。

 

「困ったなぁ、それだと希望なんて何も無くなってしまいますよ」

 

「今の軍が君らを手放すわけが無いだろう」

 

「分かってますよ、それぐらい。まぁ、私としては何処でも良い、という感じですね」

 

ヤンは何処でも良い、と言った。

ヤンの性格上、本当に何処でも良い、あわよくば閑職が楽出来て良いなぁ、とか思ってそうだ。

 

「私も別に艦隊司令官だろうが本部勤務になろうが構いません」

 

「君らは欲が無いな」

 

笑いながら言うシトレ校長に、俺達は肩を竦めて答えた。

 

 

結局、俺とヤンの処遇が決まったのは帰還から三ヶ月もしてからだった。

それまでの間、俺達をどこで存分に働かせるかと話し合い、結果としてヤンは宇宙艦隊総司令部の総参謀長として防衛体制の早期確立を命じられた。

ヤンはグリーンヒル大将の後釜に座ることになり、がんばれよー、と笑っていたら。

 

「アルフレート・フォン・ノルトハイム大将。貴官には宇宙歴八〇〇年までの同盟軍再編及び再建計画の作成とその指揮を命じる。尚、第十四艦隊司令官も兼任するように」

 

ヤンよりキッツイ仕事をする羽目になった。

 

 

 

「同盟軍再編及び再建計画の作成って言ってもなぁ」

 

「どこから手を付けるか、ですね」

 

大まかな計画はある。

だがその為の詳細は一切決まっていない上、再建も再編もままならない。

 

因みに艦隊の指揮は出動以外はメルカッツ提督に任せてある。軍からも特に何が言われなかったので問題無し。

流石の俺でも、艦隊の訓練運用計画を立てて艦隊指揮を執りながら、再建計画、再編計画を策定するなんて出来る訳ない。過労で死んじまう。

取り合えず、キャゼルヌ先輩と諸々を話し合って、詰めて、出来る事からやるしかない。

 

そんな最中だった。

 

 

 

銀河帝国皇帝フリードリヒ四世、崩御。

 

 

 

その一報が宇宙を駆け巡った。

 

 

 

 






消極的継戦派
帝国と言う専制政治体制を持つ相手が、果たして同盟との和平を結ぶかどうか疑問、という意見の元、イゼルローン要塞を筆頭に同盟領に引き籠って出血を強要した上で和平を結ぶべき、と主張している派閥。
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