D×D.Gray-man   作:快 適

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道化との慎ましき会合

ここのところ、悪魔業にも慣れ、シスターの子と知り合いになったりと色々あった。

 

そんなある日。

 

「はぐれ悪魔か・・・」

 

そんな存在がいる。

 

それは爵位持ちの悪魔の下僕となったものが、主を裏切ることで主なしになることだ。悪魔の力を自分のために、好き勝手使いたいって輩が大体こうなる。

前にドーナシークって堕天使に勘違いされたもの、コレ。いわゆる野良犬。

そしてこのはぐれ悪魔は、悪魔はもちろん他の勢力も危険視していて、見つけ次第殺すようにしている。

 

で今回は、リアス・グレモリー領にはぐれ悪魔が侵入したから、討伐してほしいという依頼だ。

 

悪魔の仕事に慣れ始めてきたから・・・といってもまだ契約はとれてないけど、それでもこういった事にも慣れなければいけないのか。

 

やはり綺麗ではないんだな。悪魔社会って。

 

「・・・血の匂い」

 

人間を誘き寄せて食べてるらしい、はぐれ悪魔のいる廃屋に向う時、小猫ちゃんがそう言って袖で鼻を押さえる。

 

うーん、血の匂いなんてわからない。

 

だがまぁ、この場に満ちる敵意と殺意はビンビン感じる。正直今すぐ逃げ出したいぐらいだ。

 

「イッセー。いい機会だから、悪魔としての戦いを経験しなさい」

 

「ま、マジッスか!? 俺が闘うんですか!?」

 

「そんなわけないじゃない。まだあなたは戦力とさえ呼べないから」

 

グサッと胸に槍が刺さった。光の槍ほどじゃないけどな!

 

「でも、悪魔の戦いを見ることは出来る。今日は私たちの戦いをよく見ておきなさい」

 

「は、はい!」

 

「ついでに下僕の特性でも説明しましょうか」

 

「下僕の特性?」

 

怪訝な表情を浮かべる俺に、部長は続ける。

 

「主となる悪魔は、下僕となる存在に特性を授けるの。・・・そうね、悪魔の歴史共々、教えるわ」

 

悪魔の歴史と現状の話か・・・・・・聞いておかなければ。

 

「大昔、我々悪魔と堕天使、そして天使を率いる神は三つ巴の大きな戦争をしたの。大軍勢を率いて、どの勢力も永久と思える期間、争いあったわ。その結果、どの勢力も疲弊し、しかも決着がつかなかったの。だから戦争は数百年前に終結したわ」

 

そして木場が話す。

 

「悪魔側も大きな打撃を受けてね。何十って大軍を率いていた大悪魔の方々も部下の大半を戦争で失った。もはや軍を保てないほどにね」

 

そして朱乃さんが口を開く。

 

「純粋な悪魔はその時多く亡くなりました。しかし戦争が終結しても、堕天使、天使、悪魔のにらみ合いは続いております。いくら堕天使側も天使側も大戦で疲弊しても、少しでも隙を見せたら危うくなります」

 

そして再度部長が口を開く。

 

「そこで悪魔は少数精鋭の制度をとることにしたの。それが『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』」

 

「イーヴィル・ピース・・・」

 

悪魔の駒・・・なんかそのまんまな気もするけど、聞いておかなければ。

 

「爵位を持った悪魔たちが、人間界のボードゲーム『チェス』を参考に作ったものよ。軍団を持つ代わりに『駒』として少数の下僕悪魔に強大な力を分け与えるの。『女王』『僧侶』『戦車』『騎士』『兵士』と五つの特性を作り出してね。これが爵位持ちの悪魔に人気なのよ。そして上級悪魔同士で、自身の眷属たちを戦わせることが行われるようになったの。それは『レーティングゲーム』って呼ばれるけれど」

 

「レーティング・ゲーム・・・」

 

また業界用語みたいなものが出てきた。俺覚えられるかな?

 

「私はまだ成熟した悪魔じゃないから、公式のゲームには出られないし、プレイするにもある程度の条件もあるから、当分はここのみんなはできないわね」

 

「じゃあ、木場たちもゲーム経験は無いってことですか?」

 

「うん」

 

俺の言葉に木場が頷いた。

 

うーん、悪魔の世界ってもっとグロテクスかと思ってたが、なんか風変わりだな。

 

そういえば、俺の駒ってなんだろう?

 

「部長。俺の駒ってなんですか?」

 

「ああ、イッセーのは―――――――」

 

「不味そうな臭いがするぞ? でも旨そうな臭いもするぞ?甘いのかな?苦いのかな?」

 

地の底から聞こえて来る様な、嫌悪感しかない声が聞こえてくる。

 

ケタケタケタケタケタケタケタケタケタ

 

悪寒が走る異様な笑い声が辺りに響く。それはもう、人間の発する声ではない。

 

向った先には、暗がりから上半身裸、下半身化け物の女性が奇声を上げた。

 

「はぐれ悪魔バイサー。貴方を消滅しにきたわ」

 

だというのに、微塵の恐怖を感じさせない、凛とした声がこの場で響く。

 

「主のもとを逃げ、己の欲求を満たす為に暴れまわるのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、バイサー。あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

「こざかしぃぃぃぃ! 小娘ごときがぁぁぁ! その紅の髪の様にお前の身を鮮血で染めてやるわぁぁぁぁ!!」

 

再び響いたグレモリーの言葉にバイサーが吼える。

 

それをグレモリーは鼻で笑い、指示を出す。

 

「雑魚ほど洒落(しゃれ)のきいたセリフを吐くものね。祐斗!」

 

「はい!」

 

その言葉に反応すると同時に、木場の姿が掻き消える。

 

次の瞬間には相手の背後へと回り、すでに剣で斬りこんでいた。

 

ま、全く見えなかった・・・。

 

「イッセー、丁度いいわ。さっきの話の続きよ」

 

呆然としている俺に、部長が話しかけてくる。

 

「木場の役割は『騎士(ナイト)』。その特性はスピードであり、騎士となった者は速度が増す」

 

説明している間にも木場の速度がグングン上がる。そしてついに残像すら見えなくなった。

 

敵も両手で槍を振るうが、どれもこれもまったく当たる気配が無い。

 

「そして祐斗の一番の武器は剣よ」

 

一度立ち止まった木場は、いつの間にか西洋剣らしき物を手に取る。

 

それを鞘から引き抜き、銀光を放つ長剣を構え

 

 

フッ・・・。

 

 

その場から消えた瞬間、

 

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

はぐれ悪魔は咆哮を上げる。見てみると両手が胴体が綺麗に分離していた。

 

うぇ・・・グロい・・・。

 

「これが祐斗の力。目では捉えきれない圧倒的な速さと達人的な剣の扱い。この二つを合わせる事により、木場は最速のナイトとなる」

 

「ぐそぉおおおおおおおおおおおっ!!」

 

説明が終わった瞬間、はぐれ悪魔が叫びながら、今度は小猫ちゃんへ突っ込む。

 

「次に子猫だ。子猫は『戦車(ルーク)』であり、『戦車』の特性は――――」

 

 

ズズーンッ!!

 

 

怒りに身を任せ、バイサーが小猫を踏みつける。って小猫ちゃん!?

 

「こ、小猫ちゃん!? なんでかわさないの!?」

 

「安心してイッセー。かわす必要なんて無いから」

 

俺がその言葉を理解する前に、はぐれ悪魔の足が、少しずつ地面から浮き上がる。

 

「『戦車』の特性はシンプルで、バカげた力と屈強なまでの防御力よ」

 

 

グワンッ!

 

 

「うぉ?!」

 

小猫ちゃんがはぐれ悪魔の足を、完全に持ち上げてひっくり返す。

 

「・・・ふっ飛べ」

 

そして小猫がその場でジャンプし、起き上がったはぐれ悪魔の腹に鋭い拳を突き込む。

 

巨大な体を持つバイサーがいとも簡単に吹き飛ぶ。・・・小猫ちゃんって、力持ちだったんだね・・・。

 

「最後に朱乃」

 

「はい部長」

 

呼ばれた朱乃さんは、倒れこんでるはぐれ悪魔のほうへ歩いて行く。

 

「朱乃は『女王(クイーン)』。私の次に強い駒で最強の者。『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、『僧侶(ビショップ)』、『兵士(ポーン)』四つ全ての力を兼ね備えた駒『女王(クイーン)』」

 

「ぐ、ぐぅぅぅ・・・・・・」

 

斬られて吹っ飛ばされてと、すでに悲鳴を上げる気力も無いはぐれ悪魔に近づく朱乃さん。

 

「あらあら、まだ元気みたいですね?」

 

そう言って手を空へとかざした刹那、どこからか雷(いかずち)が落ちる。

 

「ガガッガガガッガガガガ!!」

 

激しく感電するはぐれ悪魔。もはや壊れたロボットのような悲鳴だ。

 

「あらあら、まだ元気そうね?」

 

 

カッ!

 

 

「ギャァァァァッァァッァァ!!」

 

ニコニコと玩具(おもちゃ)で遊ぶような表情をした朱乃が続けざまに三発目を落とす。 

 

「グァァァッァァァッッ!」

 

・・・もうその辺で勘弁してあげてください。さすがにアレを元気と判断できません。

 

「朱乃は魔力を使った攻撃が得意なの。雷や水、炎などといった自然現象などを魔力で起こす力ね。そして何より彼女は究極のSよ」

 

S。ドS。略さず言うとサディスト・・・。なんだろう、俺今の朱乃さんを直視できないわ。

 

「うぅ、朱乃さん。怖いっス」

 

「大丈夫よ、朱乃は味方にはとても優しいから。今度うんと甘えて見なさい」

 

「うふふふふふふ」

 

不可能じゃね?甘えるどころか、トラウマを埋めつけられそう。

 

「-―――まだだぁああっ!!」

 

一通り朱乃さんの攻撃を受けたはぐれ悪魔は、体を起こしその場から逃げ出した。

 

「はぁ・・・無駄よ。小猫、匂いを追いなさい」

 

「・・・了解。コッチです」

 

部長の指示に従う小猫ちゃんは、鼻を動かしながら、はぐれ悪魔の匂いを追う。

 

俺等が走って後を追うが、あの巨体であの手負いなのに、意外とはぐれ悪魔は足が速いらしく、中々追いつけない。

 

「ふう。このまま街を出られると厄介ね。木場と朱乃の二人なら、バイザーに追いつける?」

 

「もちろんです」

 

「お任せ下さい」

 

部長の頼みに木場と朱乃さんは速攻で同意する。

 

「そう。なら今すぐ貴方達二人で――――」

 

 

―――――ゾクッ!

 

 

『ッ!!』

 

部長が言葉を言いかけたとき、全身が心から冷えるような悪寒が走った。その次の瞬間、近くの廃屋の方から爆発音が派手に鳴り響く。

 

「急ぎましょう!」

 

部長の掛け声で、俺等全員走って廃屋まで向う。

 

「ぐぉおおおおおおおおおおっ!」

 

向ってみるとはぐれ悪魔は咆哮を上げ・・・・・いやそうじゃない。

 

悲鳴を上げてるんだ。

 

あのデカイ足が綺麗に切断され、下半身の巨体からは血が噴水のように吹き出てる。

 

アレは誰かに襲われている? 俺等と同じ、はぐれ悪魔を退治しに来た奴にか!?

 

「・・これは一体どう言う事・・・?」

 

部長も困惑したような声を出す。他の皆もそんな表情だ。

 

 

「――――また貴女ですか。でも今度は大人数ですね」

 

 

『ッ!!』

 

そんな声が俺たちの『真後ろ』から聞こえてくるから、もう心臓が飛び出るほど驚いた。

 

みんな飛び上がりながら後ろを振り向くと、あの銀の仮面をつけた少年がいた。俺の命の恩人だ。

 

「初めての方は初めまして。道化(クラウン)と申します。以後お見知りおきを」

 

鉤爪の左手を胸へ折り曲げて、貴族のような挨拶をしてきた。流れる動作だが…正直不気味だ。

 

「・・・貴方は、教団のエクソシストね?」

 

部長は警戒しながら、白黒の少年・・・道化(クラウン)に尋ねる。

 

「”元”がつきますけどね。それより、僕は今からあの悪魔を救わなければならない。邪魔をしないでもらえませんか」

 

といって左腕の鉤爪で、血を吹き流しながら暴れるはぐれ悪魔を指差す。

 

その鉤爪が月明かりで照らされ、紅く濡れていることに気づく。ドス黒い血が・・・滴り落ちてる。

 

「あの悪魔を救う? 何を言ってるのかしら」

 

「文字通り。僕はエクソシストですから」

 

といって左手を俺たちに向け、明らかな警告をしてくる。

 

「・・・”はいそうですか”とは、いかないわよ。エクソシスト」

 

うわっ! 部長の体から紅いオーラみたいなのが出てる! あれが魔力か!?

 

よく見たら俺以外の部員は、全員戦闘体勢に入ってる。ま、まさか奴と戦うんですか!?

 

「それは悪手ですよ『王(キング)』。僕の左腕を見て、気付かないわけではないでしょう?」

 

向けられた左腕から、十字紋章の緑色の光が浮かび上がる。

 

・・・なんだアレ。堕天使の槍とも、はぐれ悪魔の笑い声とも違うけど、背中の悪寒が止まらない。

 

周りのみんなも、少なからずそんな表情をしていた。

 

「・・・やはりそれは”イノセンス”だったのね」

 

「やはりご存知で。しかし見るのは初めてみたいですね。随分と動揺してらっしゃる」

 

「っ……適合者のエクソシストは、こんな都市部でもない街に来る訳ないわ」

 

「僕も一応適合者なんですけどね。今はフリーのエクソシストをしてます」

 

部長はにこやかな冷笑を浮かべていて、エクソシストは俺等を直視はせず、フランクな態度で話している。おおよそ、敵同士の会話とは思えない。

 

「貴様ぁああああああああっ!!」

 

そのとき、さっきから悲鳴を上げていたはぐれ悪魔が、怒号を上げながら白髪のエクソシストへ突っ込んで行く。

 

「お、おいあんた!逃げなきゃ踏み潰されるぞ!!」

 

エクソシストは避ける素振りも見せない。

 

はぐれ悪魔の全長は5メートルはあるんだぞ!? ぶつかればトラックに轢かれたように吹っ飛んじまうのに!?

 

「―――――大丈夫ですよ」

 

しかし、エクソシストはただ一言、俺にそう言ってきた。

 

「ぐわぁああああああああああああああっ!!」

 

悲鳴と狂気に駆られた、はぐれ悪魔の表情は醜く、その叫び声も背筋が凍るものだった。

 

「神ノ道化(クラウン・クラウン)」

 

しかし、エクソシストのマントが巨大化して、身を翻すことではぐれ悪魔を吹っ飛ばした。

 

「ぐわっ!」

 

さらに倒れこんだはぐれ悪魔に近づいて、

 

「道化ノ帯(クラウン・ベルト)」

 

エクソシストの翻したマントから、クモの糸のようにたくさんの白い糸が放たれた。

 

「なっ――――ぐぅうううううううううっ!!」

 

それははぐれ悪魔の巨体を、容赦なく貫き、エクソシストはまた容赦なく引き抜く。

 

「・・・・・・すげぇ・・・」

 

「・・・・・・本当に、強い」

 

俺が無意識に呟いた言葉に、近くに居た木場も同意した。

 

「貴方には何の恨みもありません。だが、貴方を救う術はこれしかない」

 

エクソシストは、全身から血を吹き出しているはぐれ悪魔に、あの鉤爪の左腕を掲げる。

 

 

 

「―――――哀れな悪魔に――――――」

 

 

 

そしてエクソシストは、何か言葉を呟きながら――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――魂の救済を――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――左腕を振り下ろした。

 

 

「ギ―――――――」

 

ほんの一瞬。

 

ほんの一瞬だけ、あのはぐれ悪魔の悲鳴が聞こえたが、眩しい光に俺たちが眼を瞑り、次に目を開けるときは、はぐれ悪魔の存在は跡形もなく消えていた。

 

「どうか安らかに。ミス・バイザー・・・」

 

エクソシストはそれだけ呟くと、俺たちに背を向けてこの場を去ろうとする。

 

「待って!!」

 

「もう貴方達も用はないでしょう? ミス・リアス。闘うのなら、抵抗しますが」

 

優しい声音で部長に言い放つエクソシスト。部長はその顔を顰めて、苦々しい口調で言った。

 

「・・・貴方が私たちと敵対しないというのはわかったわ。けれど、貴方の目的は何? 悪魔を助けたり殺したり、仮にもエクソシストを名乗るなら、バランスを取った方がいいわよ」

 

「そんな事、貴方に指図される覚えはありませんよ。ですがこの行動が、僕の目的と思ってもらえれば幸いです。まぁ、貴女方では理解できないでしょうけどね」

 

「・・・・・・・・・」

 

「僕は・・・そうですね、ちょっとした介入者です。基本僕の事は無視して構いません。そのほうがお互いのためですから」

 

「っ・・・・・・一応、そういうことにしましょう」

 

部長は納得しづらそうな顔をしているが、道化と名乗る少年に要求を呑んだ。

 

「ありがとうございます。・・・・・・そして、兵藤一誠君」

 

「えっ!?お、俺!?」

 

いきなり俺に話しかけてきやがった。ビックリしたぞコノヤロウ。そういえば、初めてコイツとマトモに喋ったが、何か作り物めいた声色だな。

 

「君は、転生悪魔になったようだね」

 

「あ、ああ・・・そういえばアンタには助けられたことがあったな」

 

「・・・・・・。先ほどの彼女も、転生悪魔なんだ」

 

だが俺の言葉を無視して、喋りだしやがった。

 

「それぐらい知ってる」

 

「今のは転生悪魔の一つの末路。兵藤一誠、君も転生悪魔だ。果たして君は、どのような末路を迎えるんだろうね」

 

「ッ!」

 

確かに、俺もいつかあんな末路を迎えるかもしれない・・・。そうはなりたくないが。

 

「そんなの、お前に言われる筋合いはない!」

 

「僕個人としては、できれば長生きして欲しい。でなければ助けた意味が無い。・・・辛い道だろうけどね。では、そろそろ帰らせてもらいます」

 

言うが早し、道化は夜の闇へと消えていった。

 

「・・・小猫。どう?」

 

「・・・・・・ダメです。完全に匂いが消えました」

 

「そう・・・。転移系の術・・・予備動作もなしに使うなんて・・・・・・」

 

部長どころか、みんな苦い表情をしている。な、なんでだ?アイツは敵対しないとわかったのに・・・。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「・・・イッセーがわからないのも無理ないわね」

 

「へ?」

 

何を言ってるのかわからない俺に、木場が苦笑いで解説を加える。

 

「あの道化を名乗る人物・・・僕ら全員を返り討ちに出来る実力を持ってるみたいなんだ」

 

「・・・は?」

 

はぐれ悪魔を無双してた部長達が、全員でかかっても返り討ちされる!?

 

「ま、マジか・・・?」

 

「うん。あのはぐれ悪魔を一瞬で片付ける実力。まして対アクマ武器があるなら、今の僕らが勝てる見込みは・・・ほぼ無い」

 

「悔しいけど、彼の要求を呑むしか私たちに道はなかったの」

 

そうなのか・・・・・・。確かに敵に屈服する形だし、あまりいい気分じゃないか。

 

「とりあえず、今日はもう帰りましょう」

 

部長の一言で、俺たちは解散した・・・・・・・って、一つ聞き忘れた。

 

「部長、先程聞きそびれた事ですけど」

 

「あら、なにかしら?」

 

部長に先程聞き忘れたことを聞く・・・・・・薄々未来を感じつつだが。

 

「俺の駒・・・というより、下僕としての役割は何ですか?」

 

朱乃さんが女王(クイーン)、小猫ちゃんが戦車(ルーク)、木場が騎士(ナイト)ならば、残る駒は二つのみ。

 

『僧侶(ビショップ)』と『兵士(ポーン)』だけ。僅かな期待を抱いたが、瞬時に壊される。

 

「『兵士(ポーン)』よ。イッセーは『兵士』なの」

 

ニッコリと笑いかける部長に、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

・・・やはり現実は、そう甘くなかったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、びっくりした。まさかあんなに早く来るとは思ってなかった」

 

あの道化は、リアスたちから逃げた後、黒いコートを脱いでバックに詰めて、ある学園の制服へと着替える。

 

「けど一応、僕の要求を聞いてもらえたし、結果的にはよかったかな」

 

能力が解除された、紅く染まる異形の左腕に包帯を巻きながら呟く。

 

「この街で堕天使たちが何かを企んでいる。僕はそれを止めなければいけない」

 

ショルダーバックを肩にかけて、道化と名乗ったエクソシストは、夜の街へと繰り出す。

 

「道化は踊り仮面は偽る。僕は君たちを・・・救済するよ」

 

 

 

その道化の左目には、見るものを震え上がらせるような、紅き目が浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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