Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In 作:路肩の石ころ
“それ”が突然自らの生きる
いつもの様に縄張りを決まったルートでふよふよ浮いていたZONEに存在する、なんの変哲もない、一部の個体の様なアノマリーを出現させる力もない、至って普通のポルターガイストだった。
その日、何を考えているのか傍からでは分からない様な動きで、縄張りをくるくる巡回し、偶に迷い込んだ
突如、目の前にホロウへの亀裂が現れるまでは。
真っ直ぐ進んで行くと、本来隣の部屋に出るはずだったのが異様に広い空間と謎の結晶が生えている建物が見える場所だった。
暫く彷徨って、全く知らない空間に飛ばされたと理解し、後戻りしようとした時には、既に手遅れであった。
基本的にZONEに住まうポルターガイストは、他のミュータントと争わない。捕食行為や縄張り争いになど興味がないし、その為か他のミュータントから襲われる事はない。何故か人間に対しては容赦ないが。
だが、ホロウのエーテリアス達は、執拗に、
必死にホロウの中の物を投げつけながらあらゆる場所を逃げ続けた。電車の車庫、侵食されたビルの中、無限に広がる工事現場…
人間と同じサイズのエーテリアスは殺す事はできてもそれ以上のサイズになると最早、そこらの小さな瓦礫や鉄筋を飛ばすだけでは全く通用しなかった。
それでも生き延びてきたのは運か、迷い込んでから1ヶ月程が経過した時だった。巨大な剣と盾を持つ
死───本能的にそれを理解し、逃れようと逃げ場の無い空間で藻掻いているポルターガイストを両断せんとエーテリアスの刃が振られた。
だが、ポルターガイストの視界に映ったのは、何本ものエーテル結晶の槍に貫かれた、大きなエーテリアスであった。
それが自らの力で成し遂げた物だと気付くのに、時間は掛からなかった。
それまでとは打って変わって、ポルターガイストはエーテリアスを狩り続けた。エーテル結晶の槍だけではなく、普通の同種が持ち上げられない程の大きさや重さの物体を動かせる様になった。ポルターガイストは間違いなくそのホロウのその地域では、
そして、何よりの変化は……「楽しい」という感情が芽生えた事であった。
必死にエーテリアスから隠れる哀れな迷い人を、力を使ってエーテリアスの群れに誘導し、惨殺されるのを見るのは楽しかった。
エーテリアスと戦闘中の
守るべき民間人を背に、エーテリアスと戦い、勝利した
複数のエーテリアスと死闘を繰り広げる
暫くして、住処の辺り一帯からエーテリアスを狩り尽くし、人間すらも近寄らなくなった。なのでポルターガイストはつまらなくなった縄張りを離れ、次の狩場を探していた時に、ふと懐かしい匂いがした。かつて自分が居た
匂いを辿りながら移動すると、エーテリアスの群れに囲まれ、追い詰められていた
自分と同じ、ホロウに適合した外来種のそいつはとある
一方で、ポルターガイストの方は何故一人の人間にそこまで執着しているのか理解出来なかった。人間なんて全部同じだろう、一人逃がしたくらいで大袈裟だ。
これは、透明化し、獲物に忍び寄り、自らの爪で狩りをし、その血を啜るブラッドサッカーと縄張りへの侵入者をほぼ自動的に攻撃し、相手から隠れるように移動し続けるポルターガイストの生態の違いでもあった。
それでもこんな
そして、同胞に出会った事でZONEの匂いを思い出したのか、ZONEへ続く亀裂を時間を掛けずに見つけ出したのは幸運だったか。
亀裂の向こうに、同胞が狙う
ポルターガイストは同胞を疎む様になった。そもそも本来は別種の為に馬が合わないのは当然だ。
もし
だから、同胞が執着しているらしい
こうしてこのポルターガイストは自らの故郷に帰還した。新たな住処を手に入れて。部屋に閉じ込めた人間を殺す事も出来たが、衰弱していくのを見るのも楽しいだろう。
それから少しが過ぎた頃、遂に獲物達がここにやって来た。その中には同胞が狙っていた奴が混ざっている。だがそんな事はどうでもいい。また、楽しく人間を殺せるのだから。
普通の、感情に乏しいポルターガイストは行わない様な、嗜虐の笑みを浮かべながら、その亡霊は狩りを開始した。
◆ ◆ ◆
「い…幾らなんでも数が多すぎるぞ!にゃああああ!しっぽが!」
「猫又しっぽ閉まっとけ!畜生、俺の銃じゃ撃ち落とせねぇ!囲まれ過ぎて何処から来んのかも分からねぇ!」
「ビリーは小さい物を迎撃して。私が大きいのを弾く…!」
「これじゃあキリが無いわよ!ユーレイは一体何処にいるの!?」
「この攻撃…これはまるで…スキフさん、まさかこのミュータント…!」
「ああ、間違いない…!こいつ、俺たちを嬲り者にしてやがる!」
スキフが知るポルターガイストは、縄張りの範囲内に入ると近くの物を取り敢えずぶつけてくる防衛システムの様な行動を取る生態をしている。
そしてその通りなら、スキフ達が倉庫に足を踏み入れる前に、プラントの敷地内に入った時点で攻撃してくる筈だ。
だがこいつは、スキフ達が全員倉庫に入り込んで来た時を狙って攻撃してきた。この外来種の力なら、外にある廃車両や廃材なども振り回せるスペースがある筈なのに。
実際、それらを動かし、この倉庫の出入口を全て封鎖しているを見た。それを攻撃に使わず、
そして、物量に任せてスキフ達を圧殺出来るかもしれないのに、
「外来種共は、皆クソみたいな性格してるのか…!」
余りに悪辣、如何にも卑劣。基本的に動物的な本能とその能力に依って襲い掛かるZONEのミュータントの超自然的な卑怯さではない。まるで
邪兎屋の実力なら、この瓦礫やエーテル結晶の波を何とか突破して撤退出来るかもしれない。彼女達が攻撃を躱し続け、今持ち堪えてるのが証明している。
だが、プラント倉庫の狭い空間のあちこちに、一歩踏めば全身が焼け爛れ、眼球が沸騰し、内臓と脳が焦げ付く程の電撃で感電死する死の
この状況では幾ら彼女達が実力者であっても限度があるだろう。更には───
「後ろだ!伏せろプロキっ…」
「スキフさん!」
「お…前は俺が、庇いきれない攻撃を避けろ!」
アキラの存在である。彼は今、確実に足手まといとなっていた。どうやらこのポルターガイストは一番弱く、それでいて彼らが必ず庇おうとするアキラに集中的に攻撃を行っている。まるであの外来種が「早く守らないと死ぬぞ」と嘲笑っているかのように。
スキフと邪兎屋はアキラを囲む様な布陣で抵抗しているのだがそれが無ければもう少し回避と迎撃がしやすかったであろう。
最も、付き合いの長い邪兎屋は勿論、スキフでさえアキラを足手まといとは欠片も思っていないのだが。
アキラの能力をスキフはホロウ内で把握している。戦う能力こそ無いが、それでも最大限身を隠し、勝手に巻き込まれる様な行動はしないのをスキフは見て判断した。そもそも一流のプロキシであるなら居るだけで必要な存在なのだ、何も出来ない無能では決して無い。
何なら、この様な状況に追い込んだのはスキフ自身だ。彼が倉庫内を敵が居ないと思い込み、奴の処刑場へと案内してしまったのだ。
ならばせめて自分以下の身体能力のアキラを庇い続けるしかない。どうせ邪兎屋の様に瓦礫や鉄骨を弾く技量は無い、怪我も肉体が木っ端微塵にならなければアーティファクトの効果で何とかなる。
「スキフ!貴方はZONEに詳しいわ…!ポルターガイストの攻略法を教えて…!」
「力押しだけどいいのか!?」
「もう何でもいいぞ!このままじゃあたし等ペッタンコだ!」
「奴を見つけて武器を構える!」
「後は奴を見つけるだけだなスキフの兄ちゃん!次は!?」
「こっちが死ぬ前に奴をとにかく攻撃して殺す!」
「ただの考え無しじゃない!?」
「だから力押しだと言ったろうが!」
実際そうとしか言いようがない。こういう狭い空間で襲われたなら瓦礫や鉄筋の雨で死ぬ前に必死に逃げるか奴を見つけて銃を死ぬまでぶち込むのが一番確実なのだ。
かつて手放してしまった
「あれは…!ガウスガン!お前ら!あの銃があれば奴を一撃で仕留められる!破壊しないでくれ!」
「スキフ!そっちに飛んでいくわ…!」
「
「ス…スキフさん、大丈夫なのか!?」
「お…おお…よこせぇぇぇ!」
剛速球で飛んできたガウスガンのストックがスキフの腹を貫く、また跳んで行こうとするそれを掴んで必死に耐えるが健闘虚しくガウスガンがスッポ抜け、ご丁寧にふよふよ飛びながら地下へ続く階段へと戻って行った。
「
「スキフさん!このままじゃジリ貧だ…!ポルターガイストがどんな姿なのか、何処にいるのかの見当は!?」
「奴は生きてる間は実体を見せない!よく見れば光の靄が出てるがそれだけだ!それと…恐らくこいつのクソみたいな性格なら、すぐ近くにいる筈だ!」
こんなに人をおちょくり、弄ぶ様な事をしてくるのだ。こいつはこのプラント全体の何処かでは無く、倉庫内の特等席から眺めてるに違いない。スキフはそこの見当が付いていた。そして、既に邪兎屋のメンバーもそれに気が付いている。
「俺でもわかるぜ…!こんなパーティーの特等席なんざ、吹き抜けの二階しかねぇよなぁ!」
「ビリー!あたしと一緒に彼処に向かって撃って!少しでも隙間を作るわよ!二人とも!」
「猫被り!」
「あいよアンビー!」
アンビーがナタを逆手に持ちそこに猫又が器用に飛び移る。ニコとビリーの連続射撃が小さい瓦礫や物体を削り、僅かな隙間が出来た。そこに向けてアンビーが全力でナタを振り猫又を飛ばす、猫のシリオン自慢の動きで瓦礫の波を乗り越え、二階部分の1階より狭いスペースへ着地する。曲芸じみた動きにスキフは感服した。
「ほいっと!猫は身軽なんだ!…いたぞスキフ!光のモヤモヤがあった!」
「そいつだ!そいつをとにかく攻撃しろ!」
猫又が宙に浮いた光の靄を確認し、飛び掛からんと迫る。ポルターガイストは猫又を確認するとエーテル結晶の槍を構築し、それを猫又にぶつけるが、猫の動体視力を持つ猫又はそれを次々に紙一重で躱していく。
「これでも喰らえモヤモヤ!」
猫又の一閃がポルターガイストに入った瞬間、スキフ達を囲んでいた無数の物体の一部が地面に落ちて行く。やはりこれ程の物体を動かすには集中力が必要なようだ。
狭い二階をまるで蝶々を追い掛ける猫の様に走り回る。猫又が少しづつ与える攻撃に、1階を埋め尽くす物体は次々落ちて行った。だが致命傷は与えられてない様子だ。
猫又は二階の端にある吹き抜けの通路を見た、彼処なら1階からの射撃が届く。
「ニコぉ!こいつすばしっこいぞ!そっちに追い込む!……今だ!」
「ナイスよ猫又!ビリー!あたし達の武器であいつを撃ちまくるわ!アンビーは援ごっ…!何!?鉄筋!?」
「俺の足にも鉄筋が巻き付いてる!動けねぇ!」
「ああもう!小賢しい!このまま撃つわよ!」
ニコとビリーの近くに鉄筋が突き刺さり、足に巻き付く様にひん曲がる。アンビーにも飛んできたが弾かれ、脅威と判断してないのかスキフやアキラには来なかった。
「猫又!誤射に注意…!?何よ!防ぐんじゃ無いわよ!」
「クソっ飛んできたぞ!アンビー!親分を!」
「くっ…!猫又…!貴方がやって!」
「真打ち登場!まっかせろぉ!」
ニコ達の攻撃が防がれ、代わりに吹き抜けの壁際通路から猫又がポルターガイストに接近し仕留めようと試みる。自分の武器を構え、人一人通れる分しか無いにも関わらず、此方に飛んでくる攻撃は全て躱し、ポルターガイストへとその刃を突き立てる。
「うおおお!……あれっ?」
突然、猫又の足元の感覚が無くなる。下を見ると金属の通路がいきなりひん曲げられ、猫又は下へと落ちて行く。
「うわわわっ……あ。」
猫のシリオンである彼女は空中で体勢を立て直そうとするが、その目の前に、バスケットボール程のコンクリートの瓦礫が迫り、腹部に衝突し、壁に叩き付けられる。
胃の中のものを全て吐き出しそうになり、意識が朦朧とし、視界が歪む。
かろうじて地面を見ると──電撃のアノマリー
「クソ…!猫又!」 「アンビー!猫又を!」
動けないニコとビリーが猫又の名を悲痛な声で叫ぶ。
「猫又ッ!くっ…邪魔よ!」
普段の表情からは信じられないほど焦ったアンビーが駆け出すが飛んできた瓦礫の壁に阻まれる。
「猫又…!間に合わない…!」
一発当たれば死ぬかもしれないのにも関わらず瓦礫の雨を飛び出したアキラは一歩遅れてしまった事を悔やむ。
「二…コ……みん…な…」
誰も間に合わない、大好きな
だが彼女は、どう足掻いてもアノマリーに焼かれ、その人生を終えるだろう。
「スキ……フ?」
ただ一人、「最も最悪でクソったれな結末」を「かなり最悪でクソったれな結末」に変えられる人間がいなければの話だが。
猫又がアノマリーに落ちて行く時、ただ一人スキフはその場に留まっていた。ニコやビリーの様に動けなかった訳では無い。助けるのを諦めた訳でもない。
スキフはこの世界に来てからあらゆる武器や装備を失い、僅かな物資も使い果たして来た。
だが
だからこそ、スキフはそれを、猫又を救う為に、躊躇なく取り出した。
スキフがバックパックから取り出したるは
前の世界での最後の戦いの最中で、
「受け取れぇぇぇぇぇぇ!」
その名は「ランタン」その効果はそれなりの放射線防護と、それなりの
猫又がアノマリーによって「即死」するのを「即死じゃない」に変える程度の物。
アノマリーに落ちる寸前、猫又は残る力を振り絞り、それをキャッチし胸に抱いた。ニコ達の顔を思い浮かべながら、目を瞑った。
その瞬間──倉庫内に彼女の絶叫が鳴り響いた。
「アノマリーは再展開する!彼女を引っ張りだせ!」
スキフのその言葉を聞いて、猫又の下に辿り着いたアキラとアンビーが急いで猫又を引っ張り出す。そして直ぐに
猫又の全身が焼け爛れ、毛が電撃により焼けているが僅か、僅かに息をしている──死んでない。
「生きてる…!猫又は生きてるよ…ニコ…!」
アキラの絞り出した様な声にニコは安心したかの様に俯き、そして顔を上げた。その表情は“無”であった。アンビーも、ビリーも、同じ顔をしていた。
怒りが頂点に達したが故の、無表情であった。
「アンビー、ビリー。」
それは、付き合いの長いアキラが、今まで聞いたことがない声だった。
「あのクソ野郎を、あの場に縛り付けなさい。」
返答は無く、代わりに凄まじい銃撃と斬撃がポルターガイストに襲い掛る。余りに激しすぎてあっという間に壁際通路から動く事が出来なくなった。
そして、ニコの持つスーツケース型のマシンガンに、エーテルエネルギーが集束し始める。それを見たスキフはマシンガンでは無かったのかと驚いた。
普段ニコが必殺技の様に使うエーテルグレネード。だが今収束しているエネルギーは何時もの倍の大きさになっていた。
だが同時に、大量の小さな瓦礫や鉄筋をニコに差し向ける。少しでも攻撃を避けようとする為だ。未だニコはその足に鉄筋が纏わりついてその場を動けない。ビリーも同じ、アンビーには瓦礫の壁を差し向け動きを妨害する。
「ニコ!」
猫又を覆うように庇うアキラが叫ぶ。だが、ニコは笑っていた。
「カッコイイじゃない。スキフ。」
ニコの前に飛び出したスキフがその全身でポルターガイストの攻撃を受け止める。幾つかの瓦礫がぶつかり、鉄筋が身体に刺さり、スキフは倒れていく。
だがスキフは自分が倒れていく中、ここまで一発も撃っていなかったPTMピストルを構えていた。その狙いはポルターガイストの防護壁。
ビリーの位置から狙えず、アンビーでは射程が足りない“そこ”に、狙いを定めていた。
そこには、プラント中から物体をかき集めた時に偶然混ざっていた、赤い爆発物が詰まっていた。
「JACK・POT」
昔見た覚えのあるハリウッド映画の決め台詞を呟き、放たれた9x18MM弾は、見事に防護壁を爆散させた。
想定外の事態にポルターガイストは最後に残されたエーテルの槍をニコに向ける。だがそれはニコの頬を掠めるだけに終わった。
最後の足掻きが失敗に終わったポルターガイストは理解出来なかった。何故、ホロウで強者となれた自分が負けるのだと。
理由は簡単だ。この外来種は、ホロウでは狩人だった。姿を隠し、最高のタイミングで背中から殺す。そのやり方でホロウを生き抜いて来た。
だとすれば、そのやり方を捨てた彼女達との戦いで、この結末は必然だったのであろう。
「バイバイ、クソ野郎。」
冷徹に言い放ったニコの最大の一撃は、ポルターガイストと、プラント倉庫の壁を、跡形も無く消滅させた。
◇ポルターガイスト
見た目は光の玉でテレキネシスで色んなものを飛ばしてくるウザ系ミュータント。ゲームでもちょこまか動く上、瓦礫でシールドを形成し逃げて行くため非常に面倒くさい。
建物内で攻撃されるとこいつを探し出すために色んな所を探さなくてはいけないので本当に面倒くさい。
倒すと実体が見えるがエイの裏側みたいな顔をしている。
◇Electro
シリーズ恒例の電気アノマリー。初期装備で踏むと絶対に死ぬ。通る時はボルトを投げて作動させてから進もう。
多分2のチュートリアルでこいつに殺されたルーキーは沢山いると思う。