Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In   作:路肩の石ころ

17 / 46
17.闇夜のマンハント

 

 

 

 バンディット退治をする為に、またガーベジ地域へと戻ってきたスキフと、ついでに連れてこられたビリー。

 日付が変わった真夜中のZONEを真っ直ぐ突き進むスキフとは対照的にビリーは漆黒の暗闇に怯えていた。前にいるスキフに引っ付く姿は、初めてZONEに足を踏み入れて即アノマリーの脅威に遭遇した時そっくりである。実際、引っ付いている理由の半分はアノマリーのせいだが。

 

 「な…なぁ、兄ちゃん。ZONEって暗闇から何か囁いてきたりしないよな…?幽霊とか出ないよな?死んだ人間が蘇るとかないよな…!?」

 

 「人の声を真似するミュータントは知ってるぞ、後はリアルな幻覚みたいな奴を見せてくるミュータントがいる、ゾンビは頭が壊れた連中で……そう言えば死んだ人間と話した事はあるな。」

 

 「役満じゃねぇか…!ZONEはお化け屋敷か何かかよ…!」

 

 「銃で撃てば解決するだけいいだろ…あとはPSI放射の影響とかだな、あれはマズイ。」

 

 死んだ人間と話した件については非常に特殊な状況なので外すが、ビリーの心配する幽霊問題に関しては、大抵、銃を撃ち込めば解決する存在(ミュータント)が殆どだ。そういうアノマリーも存在するかもしれないが、少なくともスキフは遭遇した事がない。

 一方で最悪なのがZONEの一部に存在するPSI放射だ、長く浴びるとまるで脳が消え失せていく感覚と幻覚の敵が見え始め、最悪ゾンビに変貌してしまうのだ。

 

 「そりゃあ銃でブッ倒せるなら別にいいんだけどよ……そう言えばスキフの兄ちゃん、いつの間に悪党退治の仕事なんて受けてたんだ?」

 

 「ニコと行動中に奴らとやり合ったんだ。それで根城が近くにあるんじゃ無いかと思って、バーキープに取引ついでに聞いたら、フリーマーケット近くの「デポ」という列車倉庫にバンディットの集団が集まってると情報があった、そこの掃討をする訳だ。」

 

 スキフはあのバンディット達が現れた時の数と、ここら一帯を云々と言う時に何処かに拠点でもあるのではないかと言う疑問があったのだが、その予測は当たっていたようだ。その為、ロストクに賊の大規模な拠点が出来るのを疎んだバーキープが、出る杭は打てと言わんばかりに依頼を与えたのだ。

 

 「そんな事あったんだな、怪我とかしなかったか?」

 

 「2人で無事に帰ってきた事が何よりの証拠だ。バンディット程度なら俺1人でも何とかなるが……だからと言って1人だけだと流石に限界もあるからな、あの時ニコが居てくれて良かった。」

 

 ZONEを1人で駆け巡り、最後は無数のモノリス兵相手に真正面から戦い続けたスキフにとって、あの程度物の数では無い…と言いたい所だがあの配置で全員から撃たれると、アーマーとアーティファクトの防護効果で撃たれるのを我慢してバンディットを排除しなくてはいけなかった。死にはしないが痛いものは痛いのである。

 

 「それで今回は俺の力が必要って訳だなスキフの兄ちゃん……待てよ?俺が付いてくれば邪兎屋に払う報酬が増えるってのはどう言う事だ?参加した人数分報酬が増えたりするのか?」

 

 「何を言ってるんだ、バンディットを全員始末したら楽しい楽しい物資漁りの時間(お楽しみタイム)なんだぞ。お前が協力してくれれば2倍の荷物を運べるんだ。」

 

 「つまり荷物持ちじゃねぇか…!」

 

 「お前の強さも必要だよ。それに、どうせニコの買い物に付き合わされて荷物全部持たされたりしてるんだろ?」

 

 「…なんで知ってるんだ?」

 

 「合ってるのかよ…」

 

 真夜中のガーベジを駄弁りながら進む2人は、前にスキフ達がエミッション(光熱放射)から避難したフリーマーケットに到着する、そこには2人のホロウレイダーらしき人物が居た。

 スキフのよく知るストーカーの様なレザージャケットに、旧ソ連製のガスマスクの代わりにこの世界のホロウレイダーがよく使う、球状のヘルメットを装着したZONEのホロウレイダーである。

 

 ビリーが一瞬警戒するがスキフがそれを手で制す、2人に気付いたホロウレイダーがこっちに来いとばかりに手を振っていた。

 

 「もしかしてあんた等がバーキープが送ってきた助っ人か?1人だと聞いていたが…」

 

 「もう一人追加だ、実力は確かだから安心しろ。デポの偵察は済んでいるのか?」

 

 「いいや、デポの周囲にある丘がエーテル汚染が酷くて近づけ無かった。一応、正面から見えた限りは把握したけど…」

 

 「なぁ兄ちゃん、こいつらって…」

 

 「こいつらの仲間がバンディットに捕まってるらしいから、出来れば助けろって仕事も受けている。バーキープからは、ビビリだから手助けしてくれるかどうかは分からないって言われてたから期待してなかったが…気合は入っている様だな。」

 

 スキフがバンディット討伐の仕事を受けた時に、バーキープにデボのバンディットに仲間が捕まったと泣きついて来たホロウレイダーが居ると伝えられ、彼らと合流しろと言われたのだ。ホロウレイダー達を見るとまだまだ新米ですと言わんばかりの雰囲気をスキフとビリーは感じ取った。

 

 「それで、どういう作戦で行くんだ?向こうの方が数はずっと上だぞ。」

 

 「何処かに侵入可能なルートはあるか?」

 

 「ええっと…倉庫内にはデポの正面から見て左側にクレーンが倒れている、それを伝って屋根から中の吹き抜けの通路に行けると思う。正面門の右側には監視塔があってそこに1人見張りが立ってた、敷地の中に忍び込める場所は調べて無かったな…」

 

 「時間あっただろうが…」

 

 「よぉあんた等、正面から突撃するのはどうだ?俺とこの兄ちゃんなら行けると思うぜ。」

 

 「仲間が何処に捕まっているのか分からないんだ、下手な真似すると殺されちまう!」

 

 「わかったわかった、俺が1人で侵入して、俺が通信で合図したら突入しろ、PDAは持っているよな?」

 

 時間があった筈なのに集めた情報が少なすぎる頼りないホロウレイダーと、うだうだするなら正面から自分とスキフで鏖殺すれば良いというビリーでああでもないこうでもないと議論する。仕方無いのでスキフが単身潜入して敵の人数を探りながら奇襲する事になった。

 

 

 

 

 「デポ」既に廃棄されたこの列車倉庫は、レンガの壁で覆われた敷地とその中央の大きな倉庫で構成される。パッと見た入り口は正面の門と裏手にある丘のトンネルに続く門の2つだ。

 真夜中とはいえ、正面の監視塔にいる見張りに気づかれないように、そしてZONEに存在するアノマリーに気をつけながらスキフは慎重に移動していた。

 

 ライトなんて付けようものなら一瞬でバレる為、スキフは暗視ゴーグルを装着して辺りを見回していた。確かに倉庫の左側にクレーンが倒壊しているのが見える。屋根の上に見張りは居ない為、監視塔の見張りにのみ注意を払えば良いだろう。デポの左側に向かうと、レンガの壁の一部に穴が空いていた。

 

 「……正面から左に回ると壁に穴があった、そこから侵入出来る。」

 

 『わかった、おい機械人、左側に侵入出来る穴があるってよ。』

 

 『俺に貸してくれ、あいつと連絡とりたいからよ。』

 

 スキフが穴を通りデポの敷地内に入ると、近くでドラム缶に火を焚いて居たバンディット達が居た。

 

 「奴らはいつ来るんだ…もう結構待ってるだろ?」

 

 「さぁな、けど取引が終わればいい武器が入るんだ。デューティなんか目じゃねぇぜ。」

 

 (奴ら?マズイな…うかうかしてるともっと数が増えるかもしれない。)

 

 さっさと仕事を終わらせないと、更に多数とやり合うかもしれない、スキフはさっさと屋根に登る事にした。

 その前に焚き火の周りにいるバンディット達を始末する。周囲に他の敵が居ない事を確認してから、消音器が内蔵されたASラヴィナから放たれた9x39mm弾が彼らの頭を撃ち抜き、バンディットは力無くその場に崩れ落ちた。

 敵を排除したスキフは倒壊したクレーンへと向かう。

 

 (こいつを登るのは一苦労だな…)

 

 倉庫に倒れたクレーンを渡るのも大変だが、そこに登る為には乱雑に積まれた土管を登らなくてはいけなかった。

 クレーンを登りながら周囲を見渡す、デボ正面の平野にビリー達が隠れながら移動していた。

 

 「正面の見張りは監視塔以外居ないな……見張りを排除、ビリー、もう少し早く移動しても良いぞ。」

 

 『わかったぜスキフの兄ちゃん……穴の空いた壁に到着した、待機してるぜ。』

 

 「待ってろ、お前らの出番はすぐだ。」

 

 クレーンを渡りきったスキフは監視塔の見張りの頭に穴を空け、倉庫の屋根から内部の吹き抜けの通路に入る。周囲を見渡すが、吹き抜けに見張りの姿はなく、階下を見下ろすと放棄された列車が幾つかあった。 バンディットは1階に集中しており、その中の如何にもボスらしき大柄なバンディットは何処か落ち着かない様子だ。聞き耳を立てるとボスが大声で手下に向かってがなり立てていた。

 

 「反乱軍の連中は何時になったら来やがる!あと1時間でこなかったら取引は無しだ、奴ら皆殺しにしてやる!」

 

 「ボ…ボス、相手は反乱軍だぞ?俺たちより武器も装備も上だし…それにブツ(・・)を使われたら…」

 

 「使われる前に奪えば良いだろ!クソッ昼に7人殺されたってのに今日は厄日だ…!おい、捕虜のホロウレイダーから何か聞き出せたのか!?」

 

 「駄目だ、ピンク髪の女なんて見たことねぇとよ、男の方も特徴が無くて他のホロウレイダーと見分けが…」

 

 (やっぱりあいつらここのバンディットだったか、1人生き残るとは幸運な…それにしても反乱軍?確か傭兵みたいな連中だったか。)

 

 スキフはリヒターがZONEに入り込んでいる勢力の一つに反乱軍の名を上げていた事を思い出した。新エリー都の反体制派勢力の様な名前をしているが、結局は装備の良いバンディット(ZONEの傭兵)だとリヒターは説明していた覚えがある。

 

 「ビリー、バンディット共はここで反乱軍と武器かなんかの取引をするつもりらしいぞ。捕まってるらしいホロウレイダーの姿はまだ見えないな、恐らく何処かの部屋に監禁されている。」

 

 『マジかよ、取引が終わるまで待つか?』

 

 「いや、既に何人か殺してるからな、さっさと終わらせる事にしよう。敵の大半はボスらしき奴に集まってる、爆発が聞こえたら突入しろ、いいな?」

 

 『合点だぜスキフの兄ちゃん。』

 

 ここから倉庫全体を見渡してもホロウレイダーは見かけない、と言う事はここで暴れても巻き込まれる心配は取り敢えず無いと言う事だ。バンディットの数は十数人は居るが、大半がボスを中心に集まっていた。

 スキフは複数個の手榴弾を用意する、ピンを抜き、僅かに待つ、そして下の階のボスの周りに放り投げた。

 

 「んあ?えっ───」

 

 丁度、手榴弾はバンディット達の顔前で炸裂した。爆発と多数の破片が肉体を襲い、ズタズタに引き裂く。一瞬でデボの倉庫内は阿鼻叫喚の現場と化した。

 スキフはASラヴィナを1階のバンディットに向け、スコープの先で、混乱するバンディット達を射殺していく。未だ無事なバンディットは上から撃たれている事を察し、反撃を試みるが──

 

 「スターライトナイトォ!見ッ参ッ!」

 

 「仲間を返しやがれクソバンディット!」

 

 飛び出して来たビリーに次々と撃ち倒される、まるでアクション映画の様な動きでリボルバーを操り1人、また1人とバンディット達が倒れていく。混乱しながらもバンディットが手持ちの銃火器で抵抗するも華麗に躱され、ビリーからのヘッドショットをお返しにと食らわされた。何とか凌いでいるバンディットもビリーに続いて突入してきたホロウレイダーに排除されていく。

 

 スキフは吹き抜けの通路を進み、ビリー達が突入してきた方とは逆のトンネル側の倉庫出入口を狙える場所に向かって行った。すると、逆側で見張りをしていたであろうバンディット達が数人現れたので一番先頭を走っていた男を撃ち殺す。

 前を走っていた奴が撃たれ、一瞬怯んだバンディット達も次々スキフによって射殺されていった。

 1人だけスキフの射線から逃れ、デポの外に逃走を試みたバンディットがいたので、スキフは倉庫の窓から狙おうとするが──

 

 

 「俺に任せな、スキフの兄ちゃん。」

 

 

 ビリーが自らのリボルバーを、逃走するバンディットに向け、引き金を引く。そして銃からは、虚しいカチッと言う音が鳴り響いた。

 

 「………ゴメン、今のナシ。」

 

 「ビリー……」

 

 倉庫上階の窓から放ったスキフの狙撃が、逃げるバンディットの頭を撃ち抜いた。

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 デポを掃討したスキフ達、ホロウレイダーは捕まった仲間を捜索している一方、スキフとビリーは来るかもしれない反乱軍に備えていた。

 一応、使えそうな物資をバンディットの死体から拝借していると、1人だけ息のある者がいた。

 

 「こいつまだ息があるぞ…よく見たらバンディット共のボスじゃないか。」

 

 「よぉ、俺の親分にちょっかい出してくれたみたいじゃねぇか。」

 

 最初に投下された手榴弾の直撃を食らい、息も絶え絶えなそのバンディットのボスはビリーの言葉で日中手下を殺した奴の仲間と分かったのか、血を吐きながら虚勢を張り始めた。

 

 「テメェ…ら…俺の手下を…殺しやがった奴の…仲間だな…」

 

 「お前らが脅迫なんてしてくるからだ、因みに俺がピンク髪の女と一緒にいた奴な。」

 

 「殺して…やる…そのクソ女も追い掛けて…犯して…殺してやる…」

 

 「もうオメェ黙ってろ。」

 

 ニコを侮辱する言葉に腹が立ったのか、ビリーが止めを刺そうと銃をボスの頭に向けた瞬間、何か(・・)が発射される音がした。

 まるで時間がスローになったかの様に動く気がした、音が聞こえた時点でスキフは横目でそれ(・・)に気付き、目を見開いてミサイル(・・・・)を認識した。

 

 

 「R・P・G!」

 

 

 スキフは咄嗟に元いた世界でよく使われ、ZONEでも流通していた対戦車兵器の名を叫び、横に飛んで伏せる。

 そして、ビリーとスキフに向けて放たれたミサイル弾頭は、半死半生のボスに直撃し、手榴弾を上回る爆発が、デポの倉庫を揺らした。

 

 「У, мать вашу(ぐぅ…クソったれ)…ビリー、そんな…」

 

 バンディットのボスは木っ端微塵だ、そしてその近くにいたビリーもタダでは済まなかった、爆風で引き裂かれたのか身体は無く、脚しか見えない。

 誰よりも表情豊かで、陽気な性格の仲間思いな邪兎屋の従業員は、この残酷なZONEで、無残にもその命を終えてしまったのだ───

 

 「お前の事は忘れないからな…ビリー。」

 

 「勝手に殺さねぇでくれる…?」

 

 ビリーは生きていた、2人が居た位置より一段下となっている地面に、爆風で落ちて脚だけ飛び出していただけだった。

 

 2人はうめき声を上げながら立ち上がる、トンネル側の倉庫入り口からバンディットよりも遥かに洗練された動きを見せる兵士達が入って来た。

 装備はデューティとよく似た、そしてデューティの大元である新エリー都防衛軍の装備と同じ物を身に着けたならず者の傭兵─反乱軍だ。

 

 「い…今の音はなんだ!?大丈夫か──うわぁ!」

 

 「列車に隠れろ!急げ!」

 

 音を聞きつけたホロウレイダー達が駆けつけようとするも、反乱軍の銃撃に慌てて近くの廃列車に隠れてしまった。

 反乱軍の隊列の中心に、大きなコンテナを背負った耐爆スーツの様な重装備をした兵士が左手に装着されたミサイルランチャーを突きつけながら立っている、その雰囲気からスキフは恐らく指揮官だと予想した。

 

 「バンディット共の根城から銃声が聞こえるから様子を見ていたら、ホロウレイダー共に駆逐されているとはな。」

 

 「随分なノックだったな…殺された連中がそんなに大事だったのか?」

 

 「抜かせ、こっちの武器と引き換えにアーティファクトを寄越す契約だった。でなければあんなゴミ共と関わらん。」

 

 「へぇ?アイツ等アーティファクト持ってんだとよ、スキフの兄ちゃん、追加報酬だな。」

 

 重装備の反乱軍兵士はやはり指揮官だった様だ、反乱軍の数は数人。バンディットより少ないが実力ではずっと上だろう。

 スキフとビリーは何時でも近くの遮蔽物に隠れられるよう準備をしておく。反乱軍から見えない様にスキフの手にはある物が握られていた、ビリーはそれを見てスキフの意図を察し、互いにウインクをする。

 

 「こっちの火力はさっきので味わっただろう?何の目的で奴らを皆殺しにしたかはどうでもいい、だが奴らが持っていたアーティファクトを寄越せ、そうしたら見逃してやる。」

 

 「おいИдиот(バカ野郎)、一発撃ってから交渉なんてお偉いさん同士でしか通じねぇんだよ、ZONEじゃ……宣戦布告だ!」

 

 「グレ…!いや、スモークかっ!」

 

 そう言うとスキフは隠し持っていた物を反乱軍に投げつける、それに呼応してビリーはスキフが投げつけた物を狙い撃った。途端、スキフ達と反乱軍の間に煙幕が撒き散らされる。

 スキフが投げつけたのは単純なスモークグレネード、普通の手榴弾では反乱軍を混乱させられず、あの重武装の指揮官を仕留められないと判断し、攻撃では無く撹乱を選んだ。

 煙幕の向こうから反乱軍の掃射がスキフとビリーに襲い掛かるが、既に二手に分かれて遮蔽物へと駆け込んでいた。

 

 「奴らを殺せ!突撃せよ!」

 

 「ビリー半分頼めるか!俺はもう半分を!」

 

 「あいよ!さっきのお返しだぜ!」

 

 2人はそれぞれ反乱軍に向けて反撃を開始する、スキフはASラヴィナを構えながら煙幕に潜り込もうとするが──

 

 「っ!?クソッ死ねぇ!」

 

 「ずっと思ってたが何故剣で戦う奴がいるんだ!?」

 

 同じく煙幕を突破しようとした、剣を装備した反乱軍兵士が斬り掛かって来る。スキフはそれを紙一重で躱し、反乱軍兵士の頭部に対してASラヴィナのストックをフルスイングで振るう。ヘルメットを装備してるとは言え渾身の一撃に反乱軍兵士の頭が揺れ、体勢を崩す。

 その状態からでも何とか剣を振るうが、アーマーとアーティファクト(コンパス)の防護があるスキフの腕に阻まれる、まさか剣が腕に阻まれると思っておらず、一瞬呆然とした反乱軍兵士の首と鎖骨の間に、咄嗟に抜いたPTMピストルをねじ込み2発発砲、剣持ちの反乱軍兵士はその場に崩れ落ちた。

 

 スキフはビリーがいる方向を見るが、煙幕の向こうで圧倒してるのかビリーの調子の良い声と反乱軍の怒鳴り声が聞こえていた。

 少し深めの腕の裂傷を我慢しながら、ASラヴィナを構えて煙幕を抜ける。すると、目の前に現れたスキフに対して咄嗟にライフル持ちの反乱軍兵士が撃って来るが数発当たるのを気にせずスキフは反乱軍兵士に突貫し押し倒す、そしてそのままの状態で胸から頭にかけての正中線にASラヴィナの9x39mm弾をお見舞いする。

 視界を上げると反乱軍の指揮官が武器を此方に向けていた。

 

 「中々やるようだな!褒美にこいつをやる!」

 

 「クソったれ…レーザーかよ!」

 

 重装備の──重装砲兵の指揮官がレーザーをスキフに向けて放ち、既の所で伏せたスキフの頭と背中を閃光が通り過ぎる。急いでスキフは横の遮蔽物に身を隠し、自身の切り札であるガウスガン(EM-1)に持ち替える。

 

 「コソコソ隠れてないでさっさと──」

 

 「こっちにも居るんだよ!余所見してんじゃねぇ!」

 

 相対した反乱軍兵士を撃破したビリーが煙幕を突き抜け、反乱軍の重装砲兵に向けてリボルバーの猛射を食らわせる。だがその厚いアーマーに阻まれてそこまで通用してない様だ。

 だが隙が生まれたのでスキフはガウスガンを重装砲兵に向けて狙いを定める。

 

 「こいつには耐えられ──」

 

 「やべぇぞスキフの兄ちゃん!厄介なのが来る!」

 

 「なっ……ガウスガンを弾きやがった!?」

 

 ガウスガンの照準に捉えた重装砲兵の前に、シールドを構えた二足歩行ロボットが滑り込んでガウスガンの一撃を食い止める。「重装ストライカー」と呼ばれるその兵器が持つシールドは大型のエーテリアスの一撃すら平然と耐えてみせる強力な支援兵器だ。

 

 「隊長、自律補助ユニットの起動完了。我々も戦闘に参加します!」

 

 「はっ!バンディット共にくれてやる予定だったがまぁ良い!お前等に存分、食らわせてやる!」

 

 「スキフの兄ちゃん!避けろ!」

 

 「こいつ、はや──」

 

 反乱軍の増援が到着し、重装ストライカーはシールドを構えたままスキフに突撃する、そのスピードにスキフは逃げ切れずに壁に押し潰された。壁に罅が入り、周辺の物が吹き飛ばされ、シールドと壁の間に凄まじい圧力が掛けられる。ビリーはそれを眺める事しか出来なかった。

 

 「スキフ!畜生……!」

 

 「はっホロウレイダー!お前も後を追うがいい、奴を撃て!」

 

 反乱軍の一斉射撃にビリーは隠れる事を余儀なくされる。一方、重装ストライカーはスキフを押し潰したまま、甲高い音(・・・・)を鳴らした。

 

 「なんだ?ストライカーは───」

 

 重装砲兵の呟きが終わぬまま、二回目の甲高い音が鳴り響き、上部装甲から何かの弾頭が貫通し、痙攣しながら重装ストライカーは二三歩後退した後、煙を吹きながら機能を停止した。

 先程押し潰された筈のスキフは、しっかりとガウスガンを構えていた。衝撃でガスマスクが外れ、口から血を吐いてるが、何とか生き残っていた。

 シールドに押し潰された時に、その盾の隙間にガウスガンを突き刺していた。アーティファクトの防護で命は無事だったが、骨が折れ全身が悲鳴を上げながらもガウスガンの一撃を食らわせる事に成功したのだ。

 

 「な…何故あれで生きて…う、撃て!奴を──」

 

 「あんた達、余所見は厳禁だぜ。」

 

 スキフを殺そうと反乱軍が銃を向けた瞬間、ビリーの声と同時に煙幕が晴れていった。

 

 そこにはホロウレイダー達が、バンディットから鹵獲した武器を構えて反乱軍に対して向けていた。

 最初にビリーと共に突撃した2人だけでは無い、バンディットに捕まっていた者達も加わっていた。

 

 一瞬反応が遅れてしまった反乱軍に対して、ホロウレイダー達が引き金を引く時間は十分にあった。

 多数の銃火器による一斉射撃は反乱軍の兵士達を次々撃ち抜いていった。唯一、指揮官の重装砲兵だけが耐え抜き、目の前のホロウレイダー達に左手のミサイルを撃とうとするが───

 

 

 「今度は、ちゃんと決めるぜ。」

 

 

 既にビリーが重装砲兵に向けてリボルバーを発射していた。その銃弾の向かう先は、左手のミサイル、弾頭に着弾し、腕が弾け、肩が吹き飛び、身体に付けた爆薬が誘爆し、重装備のアーマーが崩壊し、反乱軍の指揮官は派手に爆散する。

 

 

 「なんつったけ…汚ぇ花火だ、だったか?スキフの兄ちゃん。」

 

 「知らねぇよ…そんなセリフ。」

 

 

 その爆発の音を最後に、デポで鳴り響いていた戦闘の音は、漸く終結したのだった。

 

 

 







 ◇傭兵
 S.T.A.L.K.E.R.シリーズお馴染みの敵その二。大体中盤からいい武器を持って出現する様になる。
 恐らく外国勢力、特に西側諸国から派遣されて来たような名前と武器を持ってZONEで様々な仕事を行なっている。だが基本的に主人公に対して問答無用で襲い掛かるのでバンディットと変わらない。
 初代SOC以外では協力したり手を組んだりするキャラも増えるのでその装備のカッコ良さと中盤の主な敵というポジ含めて中々扱いが良い勢力だと思う。

 本作のZONEは反乱軍が傭兵のポジで入り込んで居る設定。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。