Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In   作:路肩の石ころ

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26.暗い暗い地下施設へ

 

 

 

 装備の修理が終わり、スキフ達3人は出発の準備を整えて再度X-ラボへと向かおうとしていた。サハロフにコントローラーについて詰められたり、11号がとんでもないラーメンを食べさせられたり等起きたりしたものの、概ね休息は取れたと言って良いだろう。

 

 出発の直前、サハロフから対PSIヘルメットを受け取ったが、何か色々手を加えられている様だ。

 

 「少しばかりヘルメットに機能を追加してみたんだ、許容値を超える量のPSI放射を検知すると警告を出す。そうなったら速やかにPSI放射の影響範囲内から退避したまえ。」

 

 「警告を発してからの時間的猶予はどれくらいだ?」

 

 「大体数分と言った所かな……スキフ君。」

 

 サハロフはスキフに近寄り、スキフにしか聞こえないように小声で話しかける。

 

 「悪いがコントローラーのPSIに対する防護はデータが少なすぎてどうしても無理だ。またコントローラーと遭遇したら君の経験(・・)で対処してもらう事になる。」

 

 「最初から分かってれば対策は幾らでも立てれる、同じ轍は踏まない……絶対にだ。」

 

 「頼りになるね、コントローラーの素材を持ってきてくれたら、君の言うPSI放射の対抗策が見つけられると思う。」

 

 コントローラー相手に失態を晒したのは、対PSIヘルメットでPSIへのの対策が出来ていると言う思い込みがあったからだ。最初から自分の装備を過信していなければ、またコントローラーと遭遇してもやりようがある。

 

 基地の扉を出ると、丁度、警備を交代した防衛軍の兵士が基地に入ろうとしていたが、オボルス小隊の2人を見ると脇に避けて直立不動の姿勢を取る。

 

 「調査任務ご苦労さまです、どうか気をつけて。」

 

 スキフに対しての発言では無いが、スキフはその言葉を胸に刻む。

 

 “気をつける”──ZONEで尤も重要な事を出来ていなかったのでないか、もっと注意を払うべきではなかったのか、PSI放射に包まれた空間である事にもっと気をつけるべきだったのではないか。

 何とか生き残れたからこそ、一層自戒しなければならない。ぞでは油断していなくても死ぬ時は死ぬが、気を緩めてあっさり死ぬよりかはマシだ──最悪、死ぬ事すら出来なくなるのかもしれないのだから。

 

 この世界に来てから誰かと共に行動する事が増えた、せめて仲間に危険が及ばないよう、もっと神経を尖らせるべきだ。

 

 (あいつらにはピンチの所を助けてもらった、俺のミスで死なれたくない。)

 

 スキフの実力は2人よりずっと下だ、ならば知識と経験で助けになるしかない。今度こそ失態を起こさないとスキフは心に誓い、X-ラボへと歩みを進めていった。

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 ──ヤンターX-ラボ地上施設

 

 

 「さて、もう一度戻って来たが…」

 

 「流石にゾンビ達は殲滅されたままね。」

 

 「一応警戒しておきましょう、見逃したゾンビがいるかもしれません。」

 

 コントローラーを追撃する中で、大量のゾンビを相手取った為か地上施設は静かなままであった。一度撤退した時もそうだが、施設全体を見てもゾンビ達の気配は無く、もう動かない死体しか残っていない。

 

 まずはコントローラーの素材を回収する為、トリガーが仕留めた場所に向かう。その場所に行くと、額が吹っ飛んで事切れたコントローラーの死体があった。

 

 「前頭葉が吹っ飛んでるな…結構撃ち込んだのか?」

 

 「出会い頭に頭を狙ったんですが…まさか耐えられるとは思わなかったですね、幻覚の可能性も考えて頭と心臓に数発づつ撃ったんです。」

 

 「良い判断だ、こいつは頭が硬いからな。」

 

 頭が肥大化した分、頭蓋骨が硬くなっているのかコントローラーにヘッドショットは効かない。ガウスガンクラスの威力なら一撃なのだが、そうでないなら遠くからチマチマ狙うしか無いだろう。

 

 スキフはナイフを取り出し、コントローラーの脳幹周辺を慎重に取り出す。チョルノービリでもコントローラーの脳は非常に高く売れる貴重な素材だ。PSI研究なら十分役に立つだろう。

 

 「………よし、一応地上施設の探索を終わらせよう。まだちゃんと見ていない部屋が残ってるしな。」

 

 素材の回収を終わらせ、地上施設の探索に移る。朝の調査は幻覚に惑わされたせいで、中途半端な探索に終わった為、続きに取り掛かる。

 

 

 

 地上施設を2時間程探索を行ったが、目ぼしい物は殆ど無く、PSI放射の発生源も見つからなかった。やはり地下にあると睨んだ通りだろうか。

 ついでに言えばトリガーが残っていると思っていたゾンビの姿は何処にも見当たらなかった。

 

 「あらかた探したけど…これ以上、価値のある情報は無さそうね。」

 

 「それじゃあ、地下への入口を探しましょうか。場所は恐らく…」

 

 「中央のレンガ造りの建物。お誂向きに地下に続く階段まである、そこしかない。」

 

 X-ラボの丁度中央に位置する三階建の建物、内部は瓦礫や壊れた機材で散乱しており、足の踏み場が見つからなかった。

 既に地上階に目ぼしい情報が無いことは確認済みであり、他にそれらしい物も無いため地下研究施設はこの下にある事は、暗い地下へ誘う階段を見れば分かる。

 

 スキフを先頭に、そこそこ大きい階段を降りながら途中にある炎を噴出するアノマリー「Burner(バーナー)」を避けて通る。

 二〜三階分くらい降りただろうか、非常灯に照らされた薄暗い地下に、ヤンター研究基地の扉を上回る重厚な防護扉が姿を現した。

 

 「閉まってたらどうしようかと思ってたが、人一人分が通れる程度には空いてるな。」

 

 「この防護扉…輝磁が大量に使われてますね、地下施設は緊急時の避難シェルターになる様にも設計されている物と思われます。」

 

 「輝磁…?」

 

 「……貴方、輝磁を知らないの?ラマニアンホロウで採れる輝嶺石と言う鉱石を加工して作られる素材よ、エーテル侵食を大きく遮断してくれる性質を持つから、こうしたシェルター等の様々な用途に使われるわ。」

 

 聞き慣れない言葉に対する11号の説明に、放射線を遮断する鉛の様な物か──スキフはそう納得して防護扉に入って行く。

 中は少し広めの空間となっており、スキフから見て右には警備員用の受付があり、恐らく防護扉の操作等をする為のコンソールが設置されていた。

 そして奥には、金網に包まれたエレベーターが鎮座していた。何かを運ぼうとしていたのか木箱が数個積み重なっている。

 

 先に侵入したスキフがゆっくりとクリアリングを行い、安全を確認する。エレベーターに近づき、スイッチを押してみるが何も反応が無い。

 

 「どうやらエレベーターに動力は来ていないようね。」

 

 「非常用の梯子がある、それで降りて───」

 

 ────グオォォォォ…

 

 突然、獣の様な唸り声が地下から響いてくる。全員が武器を何時でも振るえる様に構えるが、暫く待つと、何か地下から這い上がって来るような事は無いと分かった。

 

 「………俺が最初にに降りる、2人は何時でも援護出来るようにしといてくれ、多分()がいる。」

 

 スキフは整備が終わったばかりのサイガD-12(ショットガン)を直ぐ撃てるように警戒しながら、梯子をゆっくりと降りていく。

 それに続いて11号、トリガーの順番で梯子を降りて行ったが、幸いな事に梯子を降りきるまて待ち伏せを食らう事は無かった。

 

 梯子の一番下、本来降りてくるエレベーターの為に用意されたスペースにスキフが足をつけ、直ぐに臨戦態勢に入る。

 視界の先にある広い部屋は暗がりでよく見えないが、唸り声からミュータントが居ることは分かっている為、2人が降りてくるまでその空間を睨み付けていた。

 

 11号とトリガーが降りるのを確認すると、スキフと11号が先頭に立って進む。

 

 暗がりの中で何かの影が蠢いているのが分かる、それはまるでチンパンジーの様な四足歩行で走りながら、複数体が此方に向かって襲いかかって来た。

 

 一般的な対ホロウ装備である球状のヘルメットが半分以上割れ、血がこびりついた口元が外に曝け出されており、ホロウ調査協会(HIA)の一員を示すその制服は、ボロボロに朽ち果て背中が大きく裂けていた。

 

 ZONEのゾンビよりもゾンビらしい外見の獰猛な肉食ミュータント「スノーク」、この世界にナイズされた外見に変貌したその怪物が、スキフ達を喰らわんと歯を剥き出しにして襲いかかってくる。

 

 「スノーク!こいつの爪に気をつけろ!」 

 

 自分に飛び掛って来たスノークを散弾の連射で仕留める、隣の11号はスノークが振るう爪を潜り抜けて胴体を両断する芸当を見せた。

 もう一体がスキフに飛び掛って来たが、トリガーの射撃がスノークのヘルメットを貫き、頭部が粉砕されそのまま倒れ落ちる。

 

 「キャットウォーク、ゾンビが多数!」

 

 スノークが飛び出して来た広い部屋のキャットウォークに、複数のゾンビ達が此方に銃口を向けていた。

 スノークを仕留めたトリガーがそのまま照準をゾンビ達に向けて撃つ、飛んできた銃弾を11号が弾いて援護し、スキフがPTMピストルを抜いてゾンビの頭を狙う。

 

 スキフがゾンビにヘッドショットを食らわせて倒すと、どうやら部屋に居たミュータントは全滅したらしい。スノークやゾンビの唸り声は聞こえなくなった。

 

 「………クリア、2人共怪我は無いか?」

 

 「問題無いわ。」

 

 「此方も問題無し……これがスノークですか。」

 

 トリガーは自分達が仕留めたスノークを見て顔をしかめる。ゾンビよりもずっと人間の成れの果てと評するに相応しい、スノークの風体はマトモな人間なら大きな嫌悪感を抱くだろう。

 スノークが初めて確認された時は、ZONEを知るHIAの調査員や防衛軍の兵士達の間で「エーテリアスになるのとどっちがマシか。」で話題になった程だ。

 

 「この手の施設や洞窟にはスノークがうんざりする程いる。こいつの爪を食らったら酷い出血になるから、何時でも包帯を取り出せる様にしとけ。」

 

 スキフは部屋のクリアリングを行う、広い部屋の左側には何かの大きな機械が3つ並んでいた。その機械の上を歩けるよう、部屋を囲む様にキャットウォークが張られている。

 部屋の奥には、先へ続く通路があるが、左側の壁にも小部屋が確認出来るので、そこをまず確認する。

 

 小部屋の方は唯のトイレだった。一応確認するが敵はいなかった。2人の下に戻ろうとすると、天井や壁から何かが這い回る音が鳴り響き、それに驚いて武器を向ける。

 壁と天井を警戒するが、特に何も来ない為注意しながらトイレを出ると、11号とトリガーがゾンビを調べているのを見つけた。

 

 「2人共、ゾンビがどうかしたのか?」

 

 「このゾンビ達…恐らく防衛軍です。」

 

 「部隊章からして、制圧部隊に配属されていた小隊ね。恐らく消息を絶った部隊よ。」

 

 ZONEで防衛軍の正式装備を身に着ける勢力は3つあるが、デューティは装備を赤く染め上げており、ZONEで活動している反乱軍は青い迷彩服を着ている。故に防衛軍の兵士の見分けは簡単につく。

 

 思いがけず制圧作戦の犠牲者の行方が知れたが、こんな所でずっと彷徨っているとは思わなかったであろう。

 11号とトリガーは仲間のドックタグを回収し、スキフ達は奥へ続く通路に進んで行った。

 

 通路を歩いて行くとさっきの部屋程では無いが、そこそこ広い空間に繋がっており、そこから左右に分かれる通路がある。

 

 非常灯に照らされた、多数の死体が転がる死屍累々とした空間を歩き回るゾンビとスノークを掃討するが、スキフ達が元から転がっていた死体をはっきり見える位置まで近づくと、その異様な死体達に全員が驚愕する。

 

 「……なぁ、エーテリアスって死体が残る奴がいるのか?」

 

 「身体の極一部を残して消滅する個体は見た事ありますが…倒されても消滅しないエーテリアスは聞いた事ありません。これらは……侵食体エーテリアスの様にも見えますね。」

 

 「ドロップレット・ファイアーボール。この改造兵士達、上で見た設計図と同じよ。恐らくこれがプロトタイプ「Kadaver(カダーヴァー)」と思われるわ。」

 

 「こいつらがSTALKERプログラムの…オマケに見ろ、コントローラーの死骸が何体もあるぞ……何があったんだここで。」

 

 まず間違いなく死んでいるエーテリアス擬き。身体を覆うエーテル結晶のアーマーは各所がひび割れ、コアがあったであろう心臓部はぽっかりと穴が空いている。その手には剣や銃を形どったエーテル結晶で作られた様な武器が握られていた。

 

 そして地上施設で発見した、エーテル完全適応兵士計画──STALKEプログラムと名付けられた設計図にあった改造兵士カダーヴァー(Kadaver)。それと全く同じ姿形をした死体が10はあるだろう。

 

 最後にコントローラー、本来何体も群れる筈の無いコントローラーだが、妙な事に幾つかの死体がこの空間に集まっていた。

 

 「どうやら、ここで相当な激戦が起きたようね。カダーヴァーとコントローラーには同じ傷がある……このエーテリアス…?と戦ったのかしら。」

 

 「念入りに吹っ飛ばした様だな、五体満足の死体は一つも無いぞ……トリガー?」

 

 改造兵士とコントローラーは顔面や胴体を抉られる様に吹っ飛ばされているか、或いは両断されている。手足が揃っている死体は一つも無い。

 トリガーを見てみると、彼女がエーテリアス擬きの死体を調べているのが見えた。

 

 「このエーテリアス、旧防衛軍の軍服を着ています。生身の部分を見て恐らく死後数年は経っているかと。」

 

 エーテリアス擬きをよく見ると、全てエーテル結晶に包まれている訳では無く生身の部分が存在した。まるでエーテルのエクソスケルトンを身に着けている様に見える。

 地下という環境のせいか、肉体部分は腐らずに乾燥してミイラ化していた。

 コントローラーを見てみると、此方も同じ程度には死後の年数が経っているであろう。

 

 「死後数年…?ZONEが出来たのは何時だったか…」

 

 「約1年前……ここの戦闘は、ZONEがまだホロウだった時に行われた可能性が高いです。……なぜ彼らが旧防衛軍の軍服を着ていたのか分かりませんが…」

 

 (そうなると、コントローラーはZONEが出来る前からいたと…もしかしてここで作られたのか?)

 

 この世界のZONEで今まで発見されなかったコントローラー、ここの地上施設で初めて確認されたとなると、必然的にこのX-ラボで生み出された可能性が高い。

 

 死体の調査は程々に、分かれ道の左側を進んで行くと広い手術室の様な場所に出た。中央の手術台を囲む形で機械が配置されており、台には先程の改造兵士カダーヴァーが寝かされていた。 

 どうやら手術を中止したのか、改造が中途半端な状態で放置されている様に見えた。近付いて調べてみると、どうやら死んでいるのが分かった。

 

 何か情報が無いかと3人で部屋を捜索する。スキフは手術台の横にある端末を操作すると、改造手術の進捗が記されたレポートが見つかった。

 

 『被検体#65 適合手術

 エーテル活性調整機能───完了

 コア安定化装置───未完了

 補助用コア───未完了

 エーテル活性変形合金───完了

 エーテルプログラミング───不適合

 追記:#65は脳に異常があるのかエーテルプログラミングが何度やっても上手く行かず、H.D.Dからの指令が受信出来ない。このままシステムとの接続が出来ないのであれば、廃棄する予定。』

 

 スキフは改造途中のカダーヴァーの姿を観察する。胴体には謎のプラグやボルトが多数埋め込まれ、手足にはエーテル合金の義手と義足が接続されていた。

 カダーヴァーの顔を覆う様に設置された3つのモニターを退かし、その御尊顔を拝むと、改造の影響か、肌は青白く変化しながらも腐敗しておらず、口元は金属製のマスクで覆われている。

 

 「なんか、11号に似てるな…」

 

 カダーヴァーの目元は何処か11号によく似ている様な気がする、更には髪の色も同じだ。

 彼女が男性として生まれていたらこんな感じなのだろうか───そんな事を思いながら、別の所を調査している11号を見ると、ふともう一つ気づいた事があった。

 

 「そう言えばあいつ、アンビーともかなり似ているよな。まさか姉妹……いや、他人の空似だろう。」

 

 知り合いに似ているからと言って、わざわざ血縁関係があるかどうか聞く程気になっている訳ではない。スキフは記憶の片隅にその事を追いやって、部屋の調査を続けた。

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 部屋を出てそれぞれ分かった事を共有した3人、あの広い手術室の先は無かったので、先程の分かれ道に戻り、今度は右の通路へと進んで行く。

 すると、T字路となっている場所に辿り着いたが、右側の通路にまたコントローラーとカダーヴァーの死体が散乱していた為、そちらを調べる事にする。

 

 右の通路を進んで行くと、十個のポッドが立ち並ぶ部屋に出た。一部のポッドに入っている中身を見てスキフ達は警戒を強めた。

 

 「コントローラー…ここが生まれ故郷なのは決まりだな。」

 

 「ポッドは殆ど空になっているわ、中に入っている個体も恐らく死んでいる。」

 

 「カダーヴァーは兎も角…コントローラーは何故作られたんでしょうか?」

 

 「ここも調べよう、何か分かるかもしれない。」

 

 ポッドを一つ一つ調べていくが、どうやら生き残りはいないらしい。ポッドの解放日がそれぞれの端末にあった為、見てみると殆どが11年前に空けられているのが分かったが、一部のポッドは1年程前に空けられていた。

 

 (恐らくエーテリアス擬きに殺されたコントローラーはずっと前に解放された個体……だとすると地上施設にいたコントローラーはZONEが現れた後に解放されたと言う事か?この年月のずれは一体どういう事なんだ?)

 

 11年前にポッドから出た個体と1年前に出てきた個体、この違いは何なのだろうかと考えたが答えは出なかった。

 兎に角、他にもコントローラーの生き残りが何処か似いるかもしれないと判断して、部屋の奥へと進んで行った。

 

 部屋の奥にはカダーヴァーでもコントローラーでも無い、ミイラ化した普通の死体が倒れていた。恐らくX-ラボに勤めていたであろう、白衣や警備員の様な服装をしていた。近くのデスクから端末や書類を見ると、僅かに記録等が確認出来た。

 

 

 『コントローラーの開発指示書

 偶然手に入れた旧時代のデータから、我々のH.D.Dシステムに適応出来そうな強化人間の記録が手に入った、コードネームは「コントローラー」

 データによるとこの強化人間は脳が高度に発達し、強力なテレパシー能力があると書かれている。

 この事から、H.D.Dシステムと同期させたカダーヴァーの大量運用による脳への負担を耐えられる可能性が高い。もしかしたら、H.D.Dシステムを介さずにこの強化人間単体でカダーヴァーの部隊を指揮出来るかもしれない。

 知能レベルを一定に保ちたい為、クローン以外の被検体を使うように。』

 

 『件名:先日の実験について

 最初に完成したコントローラーとH.D.Dシステムの接続実験の際、奴が暴れて警備兵と研究員数名が廃人にされた!奴は強力なマインドコントロール能力を持っている、何とかして制御出来るようにしないと試験運用なんて到底無理だ。

 エーテルプログラミングも試して見たが、どういう訳か効果が薄い。H.D.Dシステムとの組み合わせは難しいかもしれない。

 それまでは例のボンプを使って実験してくれ、あれもウチのH.D.Dシステムと同期可能な特別製だろ。』

 

 

 (旧時代の…データ?待てよ、確か旧時代って…)

 

 「なぁ11号、ちょっと良いか?」

 

 「どうしたの?」

 

 「旧時代って…どの辺りの年代を指すんだ?」

 

 記録を見たスキフはその内容の一文。旧時代のデータからコントローラーを作ったと言う内容が気になり、近くに居た11号に聞いてみた。

スキフの知るコントローラーはスキフの居たチョルノービリのZONEで、C-コンシャスネスによって生み出されたミュータントである。

 

 「そうね…旧時代は遥か昔、旧都時代よりもずっと前の事も指すわ。」

 

 「大昔って事か…」

 

 ここは異世界──だとするとこの世界のZONEで偶然同じコントローラーが生まれるのは不思議でもない…そう思っていたスキフだったが、この記録によると旧時代にコントローラーを作り上げた存在がいると言う事になる。

 

 (………判断材料が少なすぎるが…もしかしたらこの世界は異世界じゃ無くて未来…?だがこの世界のZONEがチョルノービリと同じ地形な理由が分からない。前に新エリー都周辺の地図を見たが、どう見てもウクライナじゃ無かった。たまたまコントローラーのデータだけが存在した可能性がある。)

 

 果たしてスキフがやって来たこの世界は、異世界なのか、それとも未来なのか。答えが出ない問題が頭の中をぐるぐる回りながら考え込むが、11号に肩を揺さぶられる事によって中断される。

 

 「大丈夫…?何か考えていた様だけど。」

 

 「ん?ああすまん…ちょっと気になる事があってだな、どうやらコントローラーは旧時代のデータから作られたらしいんだ。」

 

 「当時の防衛軍に、こんな強化人間を作れる技術があるとは思えないわね…旧時代の遺物があったのなら、それも納得だわ。」

 

 「2人共、此方に来てもらえませんか?」

 

 二人して記録を見ているとトリガーから声を掛けられる。この部屋の横に、カダーヴァーの所よりも小さな手術室が存在しており、そこでトリガーは何かを調べていた。

 

 「トリガー?何か見つけたの?」

 

 「この部屋が少し奇妙で…」

 

 「奇妙?どういう事だ。」

 

 「他の部屋は長年放置されていたのに、この部屋だけ最近まで人が出入りしていた痕跡があるんです。」

 

 そう言われてスキフも部屋を調べると、妙に埃が積もって無かったり、手術道具がそこそこ新しい物だったりなどの人が出入りしていたのが分かる。放置されていたとしても数カ月程度だろう。

 ゾンビやスノークではない、もしそうだとしたら散らかっていないのはおかしいからだ。

 

 (PSI放射が蔓延し、ミュータントが彷徨く中で誰がここを使っていたのか?一体どうやって……駄目だ、さっきの事もあって考えが纏まらない。)

 

 取り敢えず、この部屋を調べ終わったので部屋から出る。此方も前の部屋と同じく行き止まりになっていた為、逆の通路に進んで行く。

 

 曲がりくねった通路に居たスノークを排除しながら、先に進む、小階段が2箇所あったので降りていくと、ゾンビが居た。

 危うげ無くそのゾンビを倒し、11号がドックタグの回収を行う。すると、何かを見つけた様だ。

 

 「これは…記録カメラね、当時の事が分かるわね。」

 

 「11号、映像を再生出来そうですか?」

 

 「……大丈夫、まだ動くわ。」

 

 11号はカメラの映像を再生する。そこにはゾンビになる前の、X-ラボの調査を行なっていた防衛軍の小隊が映し出されていた。

 

 ▼  ▼  ▼

 

 『此方アクチフ小隊、現在地下施設の奥を探索中……ここにもエーテリアスと…改造人間達が戦った跡がある。』

 

 『隊長、奥に謎の物体が…かなり大きいです。』

 

 『……なんだこれは?エーテル結晶…ではないよな。』

 

 『待って、上の方に誰か───』

 

 《システム再稼働、起動開始》

 

 『おい誰が動かした!何が起きているんだ!?』

 

 『な…何も触っていません!勝手に起動して…!』

 

 『この物体だ…ヤバい予感がするぞ!』

 

 『退避だっ!急いでこの場から───があぁァ…!?』

 

 『頭がぁぁぁ───!』

 

 『あぁぁぁ……うぅぅぁ……』

 

 ▲  ▲  ▲

 

 

 記録映像には、何かの装置が動き出した結果、PSI放射によって防衛軍の兵士達がゾンビと成り果てる瞬間があった。

 仲間がゾンビに変わっていく瞬間を見せつけられ、11号もトリガーも重い表情をしていた。

 

 「……この先にPSI放射の発生源があるな。」

 

 「ええ…早く止めに行きましょう。」

 

 更に地下に進む広い階段を降りていくと、円柱状の非常に広い部屋に辿り着いた。部屋に入った瞬間、対PSIヘルメットから警告が鳴り始め、数分間のタイマーが表示される。

 

 『注意!強力なPSI放射を検知、直ちに安全圏へと避難してください』

 

 「恐らくこれが発生源ね、手早く止める方法を見つけましょう。」

 

 「何かしら非常停止手段がある筈です。最悪、破壊してしまうのも───スキフさん?」

 

 トリガーはスキフが動かない事に気付く、スキフはPSI放射の発生源と思われる物体を見て呆然としていた。

 

 円柱状の部屋の中心に“それ”はそびえ立っていた、数階分の高さはある“それ”を囲む様に階段と通路が設置されている。

 

 スキフは“それ”を驚愕の表情で見つめていた、余りにも見覚えがある物体で、こんな所にある物とは思えなかったからだ。

 

 

 「……モノリス?」

 

 

 かつてスキフが、元居た世界のSIRCAA施設で見て、その力の一端を味わった「願いを叶える願望機(マインドコントロール装置)」によく似た物が、部屋の中枢に鎮座していた。

 

 

 

 






 初代のX-16ラボ、モノリスと軍が地下で戦闘していたのに気付くと想像が掻き立てられるよね


 ◇スノーク
 STALKERお馴染みの中盤あたりから出てくるミュータント、元軍人やミリタリーストーカーが変異したと言われている。
 元人間だったが四足歩行で長距離を跳んでくる他、攻撃に乗る出血効果が凄まじい為囲まれるとかなりヤバい。
 ザトンでゴンタ君がスノーク狩ってこいって言ってとんでもない大群相手にさせられたのは許さないよ。


 ◇Kadaver
 本作オリジナルでは無く、2のデラックス版を購入すると付いてくるコンセプトアートに書かれていたボツミュータント。
 説明曰く、プロジェクトXの科学者が完璧な兵士を創造するために生み出したミュータント。見た目はバイオとかに出てきそうな如何にもな改造人間。
 多分STALKER2プレイした人の中にも知らない人がいると思う。

 本作では色々設定を追加した為、オリキャラに片足突っ込んでる。
 
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