Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In 作:路肩の石ころ
レッサーゾーンの片隅、川岸の朽ち果てた鉄塔の側でスキフはスキャナーと呼ばれる機械を設置していた。
自分の家を吹っ飛ばした、力を失ったアーティファクト「ダミー」。これをスキャナーで蘇らせる計画だったのだが、協力者と合流する予定が何とに皆殺しにされていたのだ。
まさかZONEに入って間もなく、協力者達を皆殺しにした犯人であるブラッドサッカーと戦う事になるとは思わなかっただろう。初めて見る
合流地点の科学者のバンカーのすぐ近くがスキャナーの第一設置ポイントだった。周囲に撒き散らされている放射線に気をつけながら、折りたたまれた脚部を展開して地面に置く。
スキャナーのテンキーに暗証番号を入力し、装置を起動する。ピッ…ピッ…と言う音が鳴り始め、周囲にエネルギーフィールドが展開され、ダミーに力が充填されていく。
普通は映画やゲームでしか見られないSFやファンタジーの様な光景に、思わずスキフは目を奪われる。白いバリアの様に半球状に形成されたフィールドは、次第に電気をパチパチ鳴らし始め、頬に軽い痺れが襲う。
──もうすぐだ、もうすぐアーティファクトが手に入るんだ。
期待に胸を膨らませ、アーティファクトが復活するのを待つ。そう言えば……このスキャナーを持ってきた科学者…ハーマンは、自分にスキャナーを渡した時に何か言っていた様な──
『忘れるなよスキフ、スキャナーを起動したらその場から離れるんだ。』
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!」
スキフは死んだ───スキャナーが起動し、周囲に放出されたアノマリーのエネルギーに身を焼かれた事によって。
哀れ──イヴェン・マルティネンコ25歳は、危ない物から離れると言う当たり前の行為を怠り、ZONEへと足を踏み入れて数十分も経たない内に、自ら設置したスキャナーによって、全身に激痛を味わい命を落としてしまった。
彼はZONEで何も成す事が出来ず、彼の死は誰にも惜しまれる事は多分無く、彼の遺体はZONEの片隅でひっそりと死んだ時の滑稽な有様を晒され続け、そのうち腹を空かしたミュータントに死体を食い散らかされるのだ。
そしていつか、ストーカーが偶々ここを見つけ、PDAの記録から「ZONEに来て即スキャナーの取り扱いをミスって死んだバカ」と、酒の肴の笑い話として一部のストーカーに語り継がれるであろう。そして物好きがスキフが死んだ地に墓を立ててこう記すのだ。
《間抜けなルーキーここに眠る。ZONEに来て最速の死を記録した者。》
◆ ◆ ◆
「あんな所で死ねるかぁ!」
「わぁ!?ス…スキフさん…目が覚めたんですね。」
「……今度こそ死んでしまったかと思ったわ。その調子だと、問題は無さそうね。」
側で見守っていたのか、飛び起きたスキフに驚くトリガーと、普段通りクールな表情の11号。スキフは周りを見渡すと、先程までいた下水道では無く外にいる事に気が付いた。
ヤンターのX-ラボの端、小さなフェンスで囲まれた外の非常階段。フェンスの先にから見える景色には、ヤンター研究基地の側にある湿地帯が存在した。
「はぁ…はぁ…生きてる……俺は生きてるぞ…!」
「ええ、あんな大きな瓦礫が頭に直撃してよく頭部が割れずに済んだわね。」
「気を失った貴方を抱えながら梯子を登るのは苦労しましたよ。」
近くには下水道に繋がっているらしきマンホールがある。どうやらここを登って来た様だ───鍛えられた軍人とはいえ、女性2人で気絶している大の男をよくまぁ引っ張ってこれた物だ。
「あ、ああ…悪かった2人共……随分ボロボロになったな、大丈夫か?」
「心配無用よ、崩落の際に粉塵がかかっただけ。」
「私達に怪我はありませんでしたが、スキフさんが気絶した後、更に瓦礫が直撃してしまいまして…」
「どうりで全身痛い訳だ……さっきの夢もそれが原因か?」
唯でさえ足を酷く骨折しているスキフ、それに追い打ちをかけるように落ちてくる瓦礫に全身を打たれたらしい。その事を証明するかの様にスキフの身体に軽い打撲の様な痛みが広がっていた。
(このアーティファクト達が無ければ何十回死んでいるか……今度、新品のタオルでピカピカになるまで磨いてやるぞ。)
もちろん、完璧にダメージを防げる訳では無いが、「死ぬ怪我」を「まぁまぁ死にそうな怪我」に抑えられるのは余りにも有用だ。
腰に装備した鉛入りのアーティファクトコンテナを撫でながら、日頃の感謝を込めるスキフ。気の所為か、ハート・オブ・チョルノービリがぼんやり光った気がした。
『ハローハローX-ラボ調査班の諸君、この通信が聞こえるかい。こちらでX-ラボを包んでいたPSI放射が消滅事が確認出来たよ。本当に感謝する、地下では通信が届かなかったから連絡する事が出来なかった。』
「サハロフ教授。」
サハロフからの通信が掛かってくる。向こうでもPSI放射が消えた事が観測出来たようだった。
『実はヘルメットに発信器を付けていてね、地下では君達の安否が分からなかったから心配していたんだが……反応は2つだけ、残念な事に殉職者が出てしまった様だね。』
「不正解だサハロフ教授、死人は出ていないぞ。3人共無事だ。ヘルメットが1個壊れたんだ」
『ほう!それはめでたい報告だ、動けない負傷者はいるかね。いるならそちらに助けを向かわせよう。』
「はい教授、足を骨折した負傷者が1名。衛生兵を送って頂けますか。」
『分かった、そちらの現在位置に人を向かわせよう。』
そう言ってサハロフは通信を切った、後は助けが来るのを待つだけだ。今の位置ではフェンスに囲まれているので、人が通れる様に11号が斬っておく。
今日は朝から災難続きだった、コントローラーの幻覚に翻弄され、カダーヴァーに足を折られ、瓦礫の雨にめった打ちにされる。
援護の人員を待つ間、スキフは少しばかり眠ろうかと目を瞑ったが、じんわりとした体の痛みとアドレナリンのせいで全く眠れない。すると、トリガーがスキフに話しかけてきた。
「スキフさん…サハロフ教授から聞いたのですが、どうしてX-ラボに興味を?調査班に選ばれたのもそれが理由だと。」
「んー…あー…まぁ…依頼でな。調べろって言われてるんだ。」
(サハロフめ、余計な事を言いやがって…プライバシーってのを知らんのか。)
内心サハロフに毒づきながら、誰に依頼されたかをはぐらかすスキフ。トリガーの事は信用しているが、わざわざアキラの事を伝える必要は無い。
確かプロキシと言うのは公的には違法な職業の筈だ、彼女達の様な軍属とはそりが合わないかもしれない。
「その依頼とは……ビデオ屋のプロキシさんからの物ですか?」
「…………なんで知ってる?」
明らかにアキラの事を知っているトリガーに警戒心を顕にするスキフ。そう言えばトリガー達は特殊部隊であった、そうすると伝説のプロキシ「パエトーン」であるアキラを追っていたりするのだろうか、彼と繋がりを持っているスキフを利用してアキラに近づこうとする魂胆があるのか、まさかその為にわざわざ調査任務に参加し────
一瞬でスキフの脳内にあらゆる可能性が溢れ出した。陰謀論に片足突っ込んだ様な仮説も浮かんだ。スキフがそうなっているとは露も知らないトリガーは、予想が当たったと喜んでいた。
「私と11号は、その人と友人なんですよ。ビデオ屋「RandomPlay」の店長さん達と。」
「ZONEに向かう少し前に偶然会ったのよ。その時に彼がZONEに行った事を聞いたわ、貴方に仕事を任せている事もね。」
「もし会うことがあったら宜しく伝えて欲しいと言ってました。」
スキフは懐疑の目で2人を見てみるが、どうも嘘は言っていないようだ。それに何か企んでいるのなら余りにも唐突過ぎるタイミングである。
取り敢えず警戒心を解いて、スキフはアキラからの依頼を認める事にする。しかし詳しい内容までは言わなくても良いだろう、そこは流石に信用問題になる。
「そうだ、そのプロキシから俺は依頼を受けた、X-ラボを調べてくれとな…どうして今?」
「ずっと気になっていたんですよね、プロキシさんから聞いた名前と貴方の名前が一致していたので、偶然の一致だと思ったんですが……」
「クリムゾ…プロキシからの貴方の評価を聞いているわ。ZONEを良く知っていて、頼れる人だったと。」
「「頼れる」という部分の評価は聞かなかった事にしてくれ、今日はお前達に助けられっぱなしだ。」
自己評価としては、今回の調査任務では余り活躍出来ていないと思っているスキフ。一方で11号とトリガーのお陰で幾度も窮地から救ってもらった事は確かだ、2人がいなくてはX-ラボの何処かで死んでいたかもしれない。
「フフ…謙遜なさらないで下さい、スキフさんはPSI放射から私を救ってくれたんですから。」
「プロキシはこうも言っていたわ、「仲間の為に自分の身を投げ出せる凄い人だ」…と、その評価通りね、ゴールドフィッシュ・ハープ。」
「……お褒めの言葉はありがたく受け取っておくよ。あんた達も流石防衛軍の精鋭だ、ゾンビやカダーヴァーの時は見事な実力だった。」
やはり、こうした素直に褒められる様な事は慣れない。むず痒い気持ちを誤魔化す為に、逆に2人を褒めてみるスキフ。
実際2人の実力が非常に高い事を、今日は存分に味わってきた。彼女達がチョルノービリにいたのなら、ZONEはIPSFの天下だったかもしれない。
だが、そんな彼女達でも何度も死にかけたのだからこのX-ラボは恐ろしい。呪われているのではないかと思う程厄介な物が多すぎた。
(STALKERプログラム…モノリス…そして“夢”。この世界のZONEには奇妙な謎が多すぎる。)
元居た世界のZONEも大概謎だらけではあったが、それは秘密結社じみたC-コンシャスネスの陰謀と実験の結果と見れば、一応納得出来る物だ。
だがこの異世界…または推定未来の世界で同じ様な物が存在するのか、これが分からない。
(やっぱり、ZONEの奥に全ての秘密が眠っているのか…?)
「衛生兵が来たようですね、漸く帰れそうです。」
そう考えていると、サハロフが寄越した人員が近付いて来るのがわかった。恐らく防衛軍の衛生兵と……ホロウレイダーらしき人間だ。
そのホロウレイダーの顔が判別できるほど近付いてきた時、スキフは目を丸くして驚いた。
「な……リヒター!?」
「よぉ相棒!生きててなりよりだな、助けに来たぞ!」
ガイドのリヒターだ、どうして彼がここにいるのだろうか。
「そろそろお前の仕事が終わるんじゃないかと思ってヤンターまで来たんだ。そしたらビンゴ!丁度サハロフから調査が終わって負傷者がいると聞いたから俺もついてきたって訳。」
「ホロウレイダーの助けは要らんと何度も言ったんだが……」
「嘘つくなよメディック、お前基地から出るのめちゃくちゃビビってたじゃねぇか。あと俺はガイドな、そんじゃそこらのレイダーとは違う。」
「ぼ…防衛軍の兵士たるもの!アノマリーやミュータントに恐れを抱いたりなどは…!」
「はいはい、君はZONEに来て2日なんだから素直にビビっておくの、そうすればまだ死なないって。」
「あの……この人とお知り合いなんですか?」
「ああ、ZONEでガイドをしている俺の友達だ。わざわざ迎えに来てくれるなんて良い奴だろ?」
防衛軍の衛生兵と愉快なやり取りをしているリヒター。1日会ってない程度なのに随分と久しぶりな気がする。
ZONEで数少ない、そして一番親しい友人がわざわざ来てくれた事に嬉しくなるスキフ。こうした友情はZONEでは余りにも貴重だ。
だがそんなスキフを11号は何か意外に思ったようで、怪訝な顔をしていた。
「貴方……友達がいたのね、意外だわ。」
「おいそれどういう事だ。」
「11号…流石にそれは失礼では……」
「不愉快に思ったのなら謝るわ…でも、ZONEの様な環境で、貴方達のような友人関係が成り立つのは珍しいから。」
「……まぁ普通はそう思うよな。」
考えてみれば11号の言う通りである。奪うか奪われるかの連続であるZONEの様な完全な無法地帯では、基本的に協力関係と言うのは砂上の楼閣なのが定石だ。
だが、ZONEは様々な要因による裏切りが絶えない場所であると同時に、なんだかんだ人情が根付いている場所でもある。
寧ろ、あちこちで裏切り行為が起きるからこそ、個人間の信用や実利を超えた関係を大事にする人間は結構いる。
情けは人の為ならず───ZONEで人に親切にすれば、その半分はちゃんと帰ってくるのだ。もう半分は親切を踏み躙られるか、銃弾で帰って来たりするが。
「ZONEじゃ、ドライな奴が多い一方で仲間を大切にする奴も意外と多い。……まぁ裏切りと欲望と暴力が渦巻いているの無法地帯なのは確かだが、だからこそ助け合いが出来る仲ってのは貴重なんだ。」
「とは言え、貴方は少々自分の身を顧みていない気がするけど。」
「俺の持っているアーティファクトは強力なやつでな、ちょっとやそっとの事じゃ死にはしない。その力を存分に使っているだけさ……まぁ。」
一拍置いて、スキフは11号とトリガーを見る。
「前にも言ったが、お前らをこんな場所で死なせたくなかった。2人共、俺を助けてくれた恩人であり、一緒に戦った戦友だからな。」
スキフの本心からの言葉を聞いたトリガーは口元が軽く緩んでいた。11号の方も表情は変わらないが、どうやら悪い気分ではないようだ。
共に行動したのは今日1日だけ、とは言えZONEじゃ決して短くはない期間である。協力し、命を助け合い、死地から抜け出した者達が友情を感じても不思議では無い。
邪兎屋の時もそうだが、元居た世界でほぼ1人で行動していたスキフからすれば、こうした経験は非常に新鮮だった。この世界ではそうして出来た縁を安易に手放したくない。
有り体に言えばボッチに戻りたくないのだ。
「担架の準備が出来た、持ち上げるぞホロウレイダー。」
「帰ったら一緒に飲もうとしたんだが、その足じゃ病室で飲むしかないなスキフ。」
「飲むのは辞めないのか……」
「ZONEにゃそれくらいしか娯楽無いだろ?一息ついたら土産話を聞かせてくれ。」
ニトロフューエルと呼ばれる飲み物をバックパックから覗かせながら笑うリヒター、スキフは衛生兵によって担架に乗せられ、全員研究基地へと帰還していった。
◆ ◆ ◆
「………なんでホロウレイダー共が銃殺刑にされてんだ。」
「俺が来た時になんか騒いでたけど知らねえ。」
「一体何があったんですかこれ……」
スキフ達が研究基地に戻って来ると、あまりにもカオスな光景が目の前に広がっていた。
鬼火隊長とクルグロフ教授率いる、もう一方の調査班も帰還してきたらしい。
だが調査班のホロウレイダーの半分が、もう半分のホロウレイダー達に、地面に突き立てられた棒に両手を拘束されもがいていた。
それに銃口を向けるは怒り狂う鬼火隊長、眉間を摘んでそれを眺めるのはクルグロフ教授。
鬼火と二心同体のオルペウスは体育座りで死んだような目をしており、シードは側で座りながらオルペウスの頭を撫でている、どうやら慰めているようだった。
「離せぇ!俺達は無実だ!」
「うるせぇ、大人しく運命を受け入れろトポル!」
「畜生、せっかくオアシスを見ることが出来たのに…!」
「なぁスピリット俺ら仲間だろ、俺らが何をしたってんだよ!」
「セクハラ。」
『✕✕✕共、これより貴様らを軍法会議に掛ける!死刑!』
「パマギーィチェー!」
命乞いをするホロウレイダー達を容赦なく縛り上げる別のホロウレイダー達。準備は整ったとばかりに鬼火隊長が冷酷に判決を述べた。処刑寸前の光景なのに何処か緊張感が無い。
取り敢えずトリガーは、死んだ目で微動だにしないオルペウスの隣に座るシードに事情を聞いてみた。
「シード、一体何があったんですか…?なぜ鬼火隊長はあれ程までに怒っていて、オルペウスはそんな顔を?」
「あ、おかえり〜。うーん何処から言ったらいいのかな?」
「シード、言ったら怒るであります。」
「調査の途中でね〜小さいドワーフみたいなミュータントに遭遇したんだよね〜」
「シード、一生のお願いであります。」
「確かブーラーって奴だったかな?そいつ超能力で物を操ってくるんだよね〜」
「まぁ確かに奴は面倒くさいミュータントだが…」
ブーラー、シードの言う通り黒コートを着たドワーフの様なミュータントである。ポルターガイストと同じ様にテレキネシスを操るが、それよりもずっと上手く操ってくる厄介なミュータントだ。銃弾をバリアで防ぎ、装備している武器を奪い、周辺の銃火器を空中に浮かべて凄まじい一斉射撃を食らわせてくる難敵だ。
だが、今の混沌とした状況はブーラーと遭遇した事と何か関係があるのだろうか。
「そいつ武器とか奪ってきてさ、僕もビットが1つ取られちゃったよ。」
「トリガーさんお願いです自分の尊厳に関わるのでありますどうか聞かないで下さいお願いします。」
「わ…分かりましたオルペウス。シード…もう大丈夫ですから。」
オルペウスの必死の懇願にトリガーは詳しい事を聞くのを止めた……がその気遣いは無駄に終わる。
『お前らがオルペウスの尻を見ていなければこんな事にはならなかった、死にたくなかったらさっさと記憶から消せ…さもなくば脳みそをブチ撒けてやる!』
「ブーラーにアンタが空中で振り回されてオルペウスちゃんがケツ晒す事になったんだろうが!俺達は悪くねぇ不可抗力だ!」
『それを助けもせず眺め続けたのは貴様らだろうこの変態共がぁ!』
「そうだ、お前らズルイぞ俺も見たか「パァン!」」
「マーシャルゥ!」
「うわあああん!トリガーさんと11号さんにもバレたぁ!」
「オルペウス……」
怒れる鬼火の銃撃(非致死性)に頭を撃ち抜かれる、処刑台に拘束されていない方のホロウレイダー。泣いてしまったオルペウスを前にトリガーと11号は押し黙るしか無かった。
詳細はこうだ、調査任務中に遭遇したブーラーが武器を奪い取ろうとテレキネシスを使用した際、
身体がひっくり返され、振りほどこうとする内に空中を飛び回る他の銃火器にショートパンツが引っ掛かり、その下にあるものが曝け出される羽目になった。そんなあられもない姿を見せるオルペウスを目に焼き付けていたのが今処刑台に立たされるホロウレイダー達。クルグロフ他、もう半分のホロウレイダーは別のフロアに居て見ていなかった為無罪だ。
最終的にブーラーはビックシードに叩き潰されたのだが、助けもしないでオルペウスの尻を凝視していたホロウレイダー達に鬼火隊長がブチ切れたという訳だった。
頭を抱えているクルグロフは、自分達が雇っているホロウレイダー達に救いの手を差し伸べようと鬼火に交渉を試みる。
「あー…鬼火隊長、ああ見えて彼らは優秀な臨時調査員なんだ、防衛軍の方で勝手に処刑とかされると困るのだが…」
「クルグロフ教授…!」
『彼らのウチの隊員に対する行いはコンプラインス的に非常に不適切だ教授、厳しい処罰を行うべきだと思うが?』
「うーむぐうの音もない。すまない君達、昨今はコンプライアンスが厳しくなっているから、それを持ち出されると僕はどうしようもない、諦めてくれ。」
「クルグロフ教授!?」
『では貴様ら、記憶が無くなるまでその脳みそを焦がしてやろう。私のオルペウスに不埒な視線を向けた罰だ!』
あっさりクルグロフに切り捨てられたホロウレイダー達は悲観の声を上げた。鬼火の銃口にエネルギーが収束し、ホロウレイダー達は必死に命乞いと言い訳を並べ立てる。
「なぁ頼むぜ鬼火隊長、オルペウスちゃんは凄い可愛いけど俺ら好みじゃねぇんだ、ただあの素晴らしいお尻は男としてどうしても目を逸らせなかっただけなんだ!」
「うう…貶されたり辱められたり褒められたりわからないでありますぅ……もうオヨメに行けないぃ…」
「気にするなオルペウスちゃん、君ならきっと良い人見つかるって。」
「まぁ、もれなく
『死ね✕✕✕共ぉ!!』
死なない程度の威力のレーザーが、処刑台に立たされるホロウレイダー達に直撃し、情けない叫び声が研究基地に響く。スキフは彼らが処される様を呆れた表情で見つめていた。
「俺達がX-ラボで死にかけていたのに、こいつらは一体何をやってるんだか……」
「シード、廃車場の調査はどれ程成果があったのか教えてくれる?」
「うーんそれがねぇ、何の成果も!!得られませんでした!って奴?」
その報告にスキフ達は驚いた、X-ラボの方はそれなりの収穫があっというのにシード達が向かった方──廃車場の地下にあるという軍事基地には何も情報が無かったと言うのか。
「正確には古い兵器の戦闘データとか、ここら辺に警備として配備されていた旧防衛軍の部隊とかの情報は見つかったんだけど、大した価値のある物がなかったんだよねぇ。」
「廃車場全体を調査しても殆ど価値ある情報が見つからなかったので、クルグロフ教授が目標をアノマリーのデータ収拾に切り替える事にしたのであります……その時にブーラーが、ブーラーがぁ……」
「そう言えばそっちの進捗はどうだったの?」
「私達の方は色々見つかりました、X-ラボで何が行われていたか、何があったのかも。」
「よかった、オルペちゃんが恥ずかしい思いしただけで終わっちゃうかと思ったよ。」
そう言うとオルペウスを慰めに戻るシード、トリガーと11号もオルペウスの側で彼女を労る事にしたようだ。
スキフは記憶が無くなるまで鬼火に折檻されるホロウレイダー達を眺めながら、リヒターと衛生兵によって基地の医務室へと運ばれていった。
◆ ◆ ◆
ZONEのどの医療施設よりも綺麗で清潔な基地の医務室へ運ばれたスキフ、足を骨折していると言ってもアーティファクトの効果で1日寝ていれば治るので少し大げさな気もした。
寝台に寝かされたスキフにきちんとした手当てを行われた後、衛生兵が去って行った事を確認したリヒターは早速ニトロフューエルを取り出して酒盛りを始めようとする。
「こいつはバーキープに頼んでカリュドーンの子って連中のバーテンダーから取り寄せた一級品だ、飲むとさいっこうに癖になるぜ。」
「それは興味深い、後で僕にも飲ませてくれるかなリヒター君。」
「げぇサハロフ教授!」
いつの間にかリヒターの後ろに立っていたサハロフ、まるで学校に禁止品を持ち込んだ事が教師に発覚した生徒の様に、リヒターは慌ててニトロフューエルをバックパックにしまい込んだ。
「飲んでみたかったのだが…」とつぶやきながらスキフの側に来るサハロフ、どうやら様子を見に来ただけのようだ。
「やぁスキフ君、調査班全員無事に戻って来てくれてなりよりだ。さぞかしX-ラボは大変だっただろうね。」
「ああ、あそこの地下で何があったか知ったら腰を抜かすだろうよ……ほら、コントローラーの脳幹だ。」
バックパックからコントローラーから回収した素材を取り出し、サハロフに手渡す。聞いたこと無い名前にリヒターは気になった様だが、スキフが目配せするとその意図を理解して部屋から退出していった。
「なんか重要そうな話があるみたいだな、一旦お暇するよ。」
「ありがとうスキフ君、これでコントローラーに対する対策に取り掛かれそうだ。」
「一応地下にもコントローラーの死体があったが…あれは使えなさそうだ。情報によるとコントローラーはあそこで生まれたミュータントらしい。」
「本当かい?今度ホロウレイダー達を使ってあそこを総洗いしなくては…」
早速次の調査目標を決めるサハロフ、PSI放射が消えた以上、あそこに価値のある物を求めて色んな人間がやってくるだろう。
だがスキフはそんな事よりも聞きたいことがあった、リヒターに医務室から出て行かせたのはその為だ。
「なぁサハロフ……X-ラボは何の研究をしていたのか、何か知らないか?持ってきた資料以外の事で頼む。」
「ううむ…旧都陥落以前のX-ラボの事は殆ど知られてないからな……僕も噂話程度しか知らないし、最高機密の研究をしていたくらいしか分かっていない。」
「あんたも知らないと……モノリスという名前に聞き覚えは?」
あのモノリスが止まる時に見た“夢”で謎のエーテリアスの兵士達がモノリスの名を上げていた。さっきの事から期待はせずにサハロフに聞いてみる。
「モノリス?うーん…」
「まぁ気にしないでくれ、その様子じゃ聞いた事───」
「確か、ZONEに来る前に見たX-ラボの資料にモノリスの名があった。」
「っ!?本当かっ…いたたた…」
飛び起きたせいで折れた骨が痛むスキフ。だがモノリスの名前がしっかりと出てきた事に比べれば大した事ではない。サハロフはスキフに少々驚いたが、すぐに平静を取り戻した。
「あくまで名前を見たことあるだけだよ、何かしらのコードネームに「モノリス」と名付けられていただけだ。」
「ああ、それでも十分だ……ついでにC-コンシャスネスというのは聞いた事は?」
「すまない、全く聞いた事が無い。」
「そうか、ありがとう。」
この世界のZONEにも、モノリスが存在するらしいと確実に判明した。そうなると、この世界にもC-コンシャスネスが存在している可能性が跳ね上がる。“夢”の内容も踏まえるともしかしたら讃頌会という組織が関わっているのかもしれない。そこまで考えた所でスキフは一旦冷静になる。
(………だが、調べた所でどうする?今の俺は何もしがらみが無いじゃないか。)
そう、この世界に来たスキフはモノリスをどうこうする理由が無い。元居た世界ではスキャナーを奪われた事から始まる様々な騒動に巻き込まれた果てに、最後にZONEの解放という選択を選んだ。
言ってしまえばそれは成り行きでそうなったに過ぎない、今のスキフには自分を利用するウォードやスパークのような組織はいない。まさしく自由な身だ。
スキフの知るモノリスは確かに危険な物だが……はっきり言ってじゃあどうするのかと言われると、何も言えない。ZONEそのものは自由であるべきと言う思想はあるが、それ以外は特に何とも思っちゃいない。
アキラからの依頼には関係が無く、元居た世界でモノリスを利用しようとした
「今日はありがとうスキフ君、君達が集めた情報は防衛軍と協議した上で纏めさせて貰うよ。怪我が治るまで医務室は自由に使ってくれたまえ。」
そう言うとサハロフは退出していき、暫くした後にリヒターが戻って来る。手に持つニトロフューエルは一本無くなっていた。
「つい一本あげちまった……結構したのに。」
「一杯飲ますだけでよかったんじゃないか。」
「まぁその代わり今度の仕事で便宜図ってくれるよう頼んだから別にいいさ、乾杯しようぜ。」
「そうだな、X-ラボから帰還できた事に。」
安いプラ製のカップに注がれたニトロフューエルを飲み干すスキフ。味としてはコーラベースのエナジードリンクのような味だった。
癖になると言う評価の通り、丁度いい辛さが舌を刺激する。心なしか体調も良くなってくる感じだ。
強いて言えば、ウォッカを混ぜ込めば自分好みに美味くなるのではと思う。
暫くの間、リヒターにX-ラボでの騒動を話しながらのんびりと過ごす。今日1日頑張ったのだからこれくらいは許されるべきだろう、アキラに渡す情報も既にPDAに纏めてある。
そうしていると、医務室に11号とトリガーが入って来た。
「失礼しますスキフさん、どうやら怪我は大丈夫そうですね。」
「よぉ2人共、あっちの方はもう大丈夫なのか?」
「ええ、鬼火隊長もオルペウスも落ち着いたし、情報についても纏め終わったわ。」
「やぁお嬢さん方、君達が良ければ一杯飲んでいくかい?」
「申し出はありがたいのですが、任務中ですので…」
「それに、私達は一足先にZONEから去る事となったわ。」
「そう言えばデューティが戻ってくるんだったな……それにしても、もう帰るのか。」
思い出してみれば防衛軍がヤンターにいるのは昨日と今日だけである。デューティとの取引で一時的に来ただけだった筈だ。
とは言え、時間を見てみるとまだ日付が変わるまで時間はあり余っている。
「はい。他にも任務がありますし……何より、休息はZONEの外で取れと、上からのお達しで。」
「そりゃあ良い、ZONEの中でマトモに休める場所なんて大して無いからな。」
「と言う訳で、スキフさんにお別れを言っておこうかと。」
彼女達は軍人で、それに本来ZONEに配備されている部隊では無いし、更にZONEの防衛軍はホロウレイダーとそりが合わない。今のヤンターの様にお互い仲良く?関わる事自体、本当はあり得ない事なのだ。
スキフは一抹の寂しさを覚えながら2人に今日の事で改めて感謝を告げる。
「そうか……今日は色々ありがとな、お前らと任務を共に出来て良かった。」
「こちらもです。あの時ヘルメット投げ渡してくれた事、忘れませんよ。」
「もし軍に復帰する気があるのなら、私は何時でも歓迎するわ。」
「まだそれ言ってんのか……11号が自分の部隊を持ったなら、貴官の部下として軍に戻ってもいいでありますよ上官殿。」
「そう、ならその時は貴方をスカウトしに来るわ。」
ちょっとした冗談のつもりだったが、どうやら11号は割と本気で受け止めたらしい。もし彼女に軍に連れて行かれたとして、はたしてウクライナ軍での経験は新エリー都防衛軍で役に立つのだろうか。
「そろそろヘリの時間ですね、ではお達者でスキフさん。」
「じゃあな戦友、ZONEからお前らの無事を祈ってるよ。」
別れの言葉を告げ、医務室を出ていくトリガーと11号。だが扉の手前で突然11号が足を止め、こちらに振り向いた。
「
「……え?」
「戦友と言うのは共にラーメンを食べるものよ、今度生きて再開出来たら美味しいラーメンをご馳走するわ。」
言い終わると、さっさと医務室を出ていってしまった。スキフはただ呆然と11号の背中を眺めていた。それに対し勝手に何かを感じ取り、すかさずリヒターが茶化しに来る。
「よぉスキフ、今の…デートの約束みたいだったな!」
「あんにゃろ……人の名前ちゃんと覚えてるじゃねぇか。長ったらしいコードネームでずっと呼びやがって。」
「そっちぃ…?」
思ってた反応と違うと落胆するリヒターと、何処か納得のいかない感情が芽生えるスキフ。
やはり11号はクソ真面目な軍人の皮を被った陽気な奴なのでは───そう思った所で、スキフは突然何かを思い出した。
「ああ畜生!リヒター、あいつらの所に連れてってくれ!今すぐ!」
「お…おうどうした、惚れたから最後に愛の告白でもしに──」
「冗談言ってる場合か!11号の
「ええ……」
壊れたナイフの代わりに11号が貸してくれた、マチェットのような幅広のナイフ。確か試作兵器だとか何とか言っていたので、返さないと不味い事になるのではとスキフは考えていた。
リヒターは急いでスキフを支え、オボルス小隊の乗るヘリに向かう。
慌ただしく基地を出て外のヘリパッドを探す、近くにいた防衛軍の兵士に聞くとオボルス小隊の乗るヘリは「スティングレイ4」と言うらしい、駐機しているヘリパッドを見ると、オボルス小隊を乗せたスティングレイ4は既に離陸して空へと舞い上がってしまった。
11号のナイフを握りしめながら、ZONEの空に飛び去っていくオボルスが乗るヘリを眺める事しか出来ないスキフとリヒター。
「こいつどうすればいいんだよ。」
「別にナイフくらい貰ってもいいんじゃないか?」
「駄目だ、確かに良いナイフだけどなんか悪い気がする。」
「じゃあ自分で考えろ自分で。」
共通の知り合いらしいアキラ経由で11号に返して貰うか、いやその前にちゃんと手入れをしなければ、そもそもこれは郵送で送れるのか───
飛んでいったヘリを見つめながら、このナイフをどうすべきか、やはり自分の手で直接返すのが筋なのではと、鬼火に適度に処されたホロウレイダー達の側で悩み続けるスキフであった。
────ヤンターX-ラボ
既に日が落ち、闇に包まれる地上施設の一室。スキフと11号がSTALKERプログラムの産物「カダーヴァー」の設計図を見つけた部屋で、2人の人影が何かを探し回っていた。
その内の一人が、スキフが見ていたパソコンを暫く弄くると、今まで止まっていた画面が動き出し、音声ファイルがはっきりとした音源で再生される。
『────それと、いつもの贈り物に関しては嬉しいけど、お菓子の量を減らしてくれるとありがたいわ。子供達は凄く喜んでいるけど多すぎよ。』
『子供達で食べきれないのだったら職員にも渡せば良いじゃないか、その為に送ってるんだぞ。何せヘーリオスは僕の古巣だ、そこにいた時の事が今でも思い出すよ。』
『なら、たまにはヘーリオスに来ない?他の職員も久しぶりに貴方に会いたい筈よ。あの2人もきっと喜ぶわ、
『カローレ、そのあだ名は他の者と聞き分けがつかなくなるから止めてくれと言っただろう………それにあの兄妹を診ていたのはもっと小さい頃の話だ、会ったとしても僕の事は覚えていないだろう。』
『会ってみなくちゃわからないわ………もう一つの贈り物…あのデータに関してなんだけど、本当に例の「モノリス」の中身だけを使える様にした物なのね?』
『そうだ、中継機の様な既存のモノリスネットワークとは独立した、言わばミニモノリスさ。こちらの実験で兄妹が干渉を受ける事は無い、モノリスのエーテル干渉機能だけを「知能水晶体」に組み込めるようにしたんだ。』
『それであの子達のエーテル適正が元に戻せるのは凄く嬉しいわ……正直、プロジェクトモノリスに関しては怪しい事が多すぎて、信用はしていないのだけれど。』
『それでも君は友人の僕を信じてくれている、だからできる限りその恩に報いるつもりだ。』
『……ええ、その言葉、信用しているわ。』
『それと、ヘーリオスに顔を出す件だが、どうせならウチのグラナイトの患者達も一緒に行こうと思うんだ、ヘーリオスの子達と年も近いからきっと仲良くできるだろう。』
『それは楽しみね、でも膨大な量のお菓子を送って来るのは止めて。ヘーリオスの皆が太ってしまうわよ。』
『僕はそっちの方が良いと思うなけどなぁ────』
これ以上はパソコンが持たなかったのか、音声が途切れてしまう。操作をしていた人物は舌打ちをしながらメモリを取り出した。
「……流石にここまでか、音声ファイルは抽出出来たぞ。そっちはどうだ?」
「やっぱり幾つか持ち出されてるな……防衛軍の連中に先を越された。」
「仕方ねぇよ、あのPSI放射は抜けられねぇ。何人が入り込もうとしてゾンビになった?」
2人の装備、それを一言で例えるなら緑の迷彩服だった。普通のホロウレイダーと違う、明らかに統一された装備。それでいてデューティ程しっかりしていない印象だ。
彼らは「フリーダム」の構成員、X-ラボのPSI放射が消えたと知るとすぐさま情報の回収の為にやって来たのだ。
「日付が変わる前に終わらせねぇとデューティの連中が戻って来るぞ。地下の連中は大丈夫か?」
「大丈夫だろ、無数にいたゾンビやスノーク共は防衛軍に皆殺しにされてる、デューティが来るまで敵は来ないさ。」
防衛軍が去り、デューティが戻ってくるまでの隙間を利用し、それなりの人員をX-ラボに投入したフリーダム。彼らは手分けをし、何かの情報を求めて施設中を探し回っていた。
「全く……確か、情報を漁るX-ラボはここが最後だったよな?」
「そうだ、クソ
スポンサーに対して愚痴を言うフリーダム兵、だがもう一人のフリーダム兵はそんな相方の言葉を咎めていた。
「俺たちにTOPS製の高性能な武器を下ろしてくれるのも奴らのお陰だろ?それでデューティと戦えるんだから別に良いじゃねぇか。」
「良いように使われてるだけなのがわかんねぇのかよ、連中からの依頼で、X-ラボへの突入や赤い森の調査を強行されて仲間がどれだけくたばった?それに気付いている幹部はミクルハだけだ。」
「でも金払いが良いのがクリアス───」
言葉が終わらぬ内に、銃声と共に突然フリーダム兵の頭部──ホロウレイダーのヘルメットが割れ、一瞬で中の頭部が破裂し、ヘルメットが血に染まった。
もう一人も反応する暇も無く、身体中を銃弾が突き抜けその場に倒れ伏す。辛うじて息はあるが、出血は止まらず、回復キットを取り出す力も無い。
熱い、息が出来ない、力が抜けていく、床に流れる相方と自分の血が混じり合う。
自分が倒れたと同時に、通信機からX-ラボで調査をしていた他のフリーダム達の悲鳴と銃声が流れていた。
『誰か援護を!いきなり奇襲を受け───』
『なんだこいつら、デューティ───』
『違う!デューティでも反乱軍でもねぇ!一体なにも──』
『駄目だ!逃げろ!ここから逃げ───』
謎の存在に次々と狩られていくフリーダムの構成員達、遂には悲鳴と銃声が途絶え、あっと言う間に全滅したという事実が、死にゆく身体で思考が覚束ないフリーダム兵にも理解できた。
コツコツと、自分と相方を撃った犯人が近付いてくる。目が掠れ、更には闇に包まれてその姿は一切見えないが、恐らく複数人だと言う事は分かった。
辛うじて声が聞こえる、せめて誰なのかを確かめる為に視線を動かす。
「────徒を排除、これより、必要な物を全て回収する。」
「我らが“主”の為に。“再臨”の為に。」
(“主”…?“再臨”…?なんの………ゴボッ」
血が喉に迫り、咳込んだフリーダム。襲撃者はそれを聞き逃さなかった。彼らは銃を死にかけたフリーダムに向ける。
それは生存者を冷酷に始末する行為であり──死にゆく人間に対する救済でもあった。
最後に相手の正体を見極めようと、襲撃者が持つ銃口を見つめることにした。どうせほっといても死ぬのだ、ならば自分を殺した相手を見てみたい。
だがその願いは叶わなかった、銃口からマズルフラッシュが輝くが、禄に相手の姿は見れなかったからだ。
辛うじて分かったのは、僅かな光に照らされた、
◇ブーラー
黒コートの背が低い人型ミュータント、3作目CoPから登場。
装備中の武器を落としてきたり、ポルターガイストの様に物を投げつけてきたり、銃撃無効のバリアを張ってきたりする能力を持つが、2では周辺に落ちてる銃火器を浮かべて一斉射撃してくるというクソほど凶悪な能力を持って登場してきた。対策としては捨てる事が不可能な初期ピストルかナイフでひたすら攻撃すると良し。
洞窟や倉庫とかでこいつと遭遇して銃撃で即死した経験は皆あるよね?
◇11号のネーミングセンス
ゼンゼロ原作で毎度愉快なコードネームを付けてくれる11号。他の作者様の作品でも11号が色んな名前を付けたりするのを見るが、筆者はそんなボキャブラリーがない為STALKERシリーズに登場するアーティファクトから全て取っている。