Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In   作:路肩の石ころ

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33.スカドフスクへ

 

 

 

 ZONEの一地域「沼地」そこで何かの計画を企てている「讃頌会」。

 ホロウを上書きし、全く違う環境に変貌した筈のZONEの一部がホロウのような空間に逆戻りしていると言うことから調査の為にZONEへ来たアキラとライカンは、スキフやリヒターなど現地のホロウレイダー達を雇い、沼地と隣接する地域「ザトン」へと向かう事に。

 

 ルーキー村を出発し、コルドンを真っ直ぐ通る道路を進むアキラ達一行、かつてアキラがZONEで通った壊れた鉄橋が見えてきた為、その時の事を思い出したアキラはリヒターに鉄橋に存在する一つの検問について聞いてみた。

 

 「リヒターさん、以前あそこで賄賂をせびられたけど今回はどうするんだ?クズネツォフさんは許可証を見せればいいと言っていたけれど…」

 

 「うーん、今回君たちは正式な許可証を持ってZONEに入って来て、調査の護衛として俺達を雇った。なら俺たちの身分は一時的に臨時調査員と言う形になる。」

 

 「ヤンターの研究基地で雇われてる連中と同じだな。」

 

 「そうだスキフ、だからプロキシとライカンさんの許可証があれば俺たちも通れると思うんだけど……」

 

 「その様子だと一筋縄ではいかない様ですね。」

 

 「コルドンは中途半端に平和な分、連中の規律も特に緩んでるんだ兄貴、殆どの場合賄賂を払えと銃で脅してくる。」

 

 「取り敢えず、許可証を見せてから相手の反応を伺おう。」

 

 交渉失敗による戦闘に備えてウルフ達ホロウレイダー達は近くで待機し、アキラとライカン、スキフに顔が広いリヒターが鉄橋の検問を敷いている防衛軍の兵士に通行の許可を貰いに行く。

 鉄橋に近づくにつれ、防衛軍の兵士達が武器を構えて威圧する。

 

 「その位置で止まれ、お前達を撃たなくていい理由を教えろ。」

 

 「我々はZONEの調査員で、彼らは護衛の者達です。前哨基地から話は聞いている物と思われますが…」

 

 「ふん、許可証を見せろ…………チッ、さっさと通れ。」

 

 兵士に睨まれ、悪態が聞こえたがあっさりと通してくれた事に肩透かしを食らうアキラ。前哨基地の有様を見てここでも何かしら因縁を付けられるのではと思っていたが、どうやら違ったようだ。

 何事もなく通れるならそれに越したことはない───そう結論づけたアキラだが、ライカンは何故平然と通れたのか見当が付いていた。

 

 (検問の兵士の数は6人…対してこちらは9人、数の差で不利と悟ったか。スキフ様とリヒター様がウルフ達を連れてきてくれなければ、また面倒な事になっていたでしょうね。)

 

 もしもの時はクズネツォフが自分の名前を出せと言っていたが、ここの兵士の態度からしてあまり期待が出来ない。この程度の人数ならライカン1人で楽々制圧出来る数だが、だからと言って防衛軍と敵対するのは得策じゃない。

 図らずもホロウレイダー達のお陰で余計な問題を回避できた事に内心感謝しつつ、全員が検問を通り過ぎるまで警戒を怠る事は無かった。

 

 「いやぁ、賄賂を払わなくて済むとは気分がいいな!正式許可証様々だ。」

 

 「地図によりますと、コルドンを出てすぐ隣がワイルドアイランドとなっておりますね。」

 

 「ああ、ライカンさんは強そうだからあまり心配無いと思うがプロキシは十分気を付けてくれよ、ワイルドアイランドから先はコルドンやガーベジよりも危険なミュータントやアノマリーが多いからな。」

 

 「まぁ仮に何かあっても俺たちがサポートする、ウルフ達もいるし安心してくれ。」

 

 「勿論、だから今回も頼らせてもらったんだ。スキフさん達がいれば、ZONEの何処にだって行けるからね。」

 

 「お前人を煽てるの上手いなぁ……」

 

 屈託のない表情ではっきりと言うアキラに頬を掻きながらスキフはこいつ生粋の人たらしなんじゃ無いかと内心思い始めていた。

 ZONEには確かに人情はあるがそれはそれとして殺伐とした世界だ、結局はこの世界の郊外とどっこいどっこいの血なまぐさい、騙し騙され上等の人間も星の数程いる。

 アキラはこう見えて立派なアウトロー(プロキシ)なので疑う事を知らない純粋無垢では全く無いが、それでもZONEじゃ伝説のアーティファクトより珍しいタイプの真っ直ぐな人間だ。

 

 その後は特にミュータントやバンディットに遭遇する事も無く、一行はコルドンの出口である放棄された検問所を抜けた。

 

 

 

 ワイルドアイランドは付近の湖から流れ込む汚染された川によって分断された島々がある地域だ。

 チョルノービリのZONEではモノリスの洗脳から解放され、洗脳前の記憶を失い途方に暮れた元モノリス兵達がZONEに居場所を求めて、この地域の廃棄物処理場に居着いた勢力「ヌーンタイド」が支配する領域であった。

 

 だがこの世界ではモノリスの噂が全く無い、それどころか願望器を守る狂信者集団として、元居た世界で悪名を轟かせていたモノリス兵の存在も全く聞いた事が無い。

 故にこの世界のZONEにスキフの知るヌーンタイドなんている筈も無く、このワイルドアイランドはホロウレイダーやバンディット、反乱軍にミュータント等が日々小競り合いを起こしている地域でしか無かった。

 

 現在の目的地はザトンであり、ワイルドアイランドの中心である島には立ち寄らず、地域の南側を通り過ぎるだけであったので、この地域で一番危険な地帯には近づかずに済むだろう。

 

 それでもミュータントやアノマリー、賊徒共は常に何処からでも襲い掛かってくる。なのでスキフ達はアキラに万が一がないように注意しながら進んでいたのだが────

 

 

 

 「9時の方向100m先の草陰に数名が潜んでおります。恐らくバンディットかと。」

 

 「よく気づいたな……皆、全員で威嚇射撃するぞ。多分それで逃げると思う。」

 

 

 

 「正面の建物から獣の匂いが、ミュータントが巣を張っている可能性があります。」

 

 「お…おう、ビス、お前の仲間、グレネードを大量に持ってるだろ。それをあの建物に撃ち込んでみろ………本当にいやがった。」

 

 

 

 「リヒター様、前方に何か煌めく空間が……アノマリーと思われます。」

 

 「んー?スコープでちょっくら見て……Razor(ガラス片)じゃないか、アンタこの距離であれを見つけたのか?」

 

 「……なぁライカン、お前ベルズ検知器を持ってたりしないか?」

 

 「いえ、私の持つアノマリー探知機は通常の物でして……」

 

 「やっぱ兄貴凄いな…!」

 

 「なぁ俺たちいる?こいつがいれば護衛なんて必要ねぇんじゃねえかなぁ。」

 

 妙に敵の位置やアノマリーを事前に察知して見せるライカンに、護衛のホロウレイダーの1人から自分達の必要性を問われる自体になってしまった。

 ホロウレイダー達からしてみれば、一応護衛として雇われているのに、その仕事を依頼人自身であるライカンが颯爽と掠め取っていく。足を引っ張る無能と同行するよりもよっぽど助かるが、果たして護衛としてこれで本当に良いのかと言う感覚に陥ってしまう。

 

 だがライカンの方は全くそんな事は無いと反論した。

 

 「私は雇い主からプロキシ様を命を掛けてお守りするように厳命されています、ですが私にとってZONEは未知の場所。その為いつも以上に警戒を怠る事が無いよう努めているに過ぎません。そして、所詮1人の人間のする事、どうしても限界と言う物が発生してしまう可能性があります、それを補う為に皆様方のお力が必要なのです。」

 

 「ライカンの言う通りだな、幾ら強くたって1人じゃどうやっても限りが────何か来るぞ!」

 

 かつてZONEを1人で放浪し続けた経験から、ライカンに肯定の意を示すスキフ、だが突然周囲の木々を縫うように“何か”が接近してくる音が聞こえ、戦闘体勢に入る。

 

 標的を見定めようと視界を動かすが何も見えない───否、透明な存在が2つ、こちらに向けて接近してくるのが分かった。ZONEで生きていれば嫌でもその正体に見当が付くだろう、スキフはその存在を周りに大声で伝えた。

 

 「ブラッドサッカーだ!2体来る───」

 

 その後の言葉は続かなかった、獲物を襲おうと飛び掛って来たブラッドサッカーとの間合いを一瞬で詰めたライカンが、惚れ惚れするような蹴りの一撃を1体のブラッドサッカーに食らわせたからだ。

 

 自慢の爪が振られる前に頭部に炸裂した、ライカンの強固な義足による蹴りはブラッドサッカーの頭蓋骨を安々と砕き、そのままの勢いを維持したままもう一体のブラッドサッカーの胴体にライカンの義足が突き刺さる。

 

 蹴り飛ばされ、肋骨が粉砕される痛みに悶えるブラッドサッカーだが、それでも体勢を立て直してライカンに襲い掛かろうとした瞬間、ホロウレイダー達からの一斉射撃によって呆気なく絶命した。

 

 「………前言撤回だ、ブラッドサッカーを一撃で蹴り殺せるなら1人でも何とかなるかもな。」

 

 「お褒めのお言葉と受け取っておきます。」

 

 出会ってからライカンの得物は何だろうかと気になっていたスキフ、義足とはいえまさか体術でミュータントを仕留めるとは思っても見なかった。

 強いは強いだろうと思っていたのだが、邪兎屋のアウトローの世界で生き抜いてきたような強さや、オボルス小隊のような精鋭の特殊部隊員としての実力者でもない。

 

 洗練された所作から繰り出される華麗な足技は、そう言った物に縁が無いスキフですらエレガントさを感じ取った程であった。

 一体彼は何者なのか気になったスキフは小声でアキラに聞く。

 

 「なぁプロキシ、ライカンは一体何者なんだ?どっかの高名な武術家とかなのか?」

 

 「彼は普段ヴィクトリア家政という家事代行サービスの会社で働いているんだ、確かライカンさんは現場の責任者だった筈だね。」

 

 「……つまりライカンは家政夫とかお手伝いさんと言う訳か?」

 

 「政治家とかお金持ちの人とか対象に家事とか色々やっているんだ……ホロウ内での仕事もね。」

 

 少し含んだようなアキラの物言いにスキフは察した、恐らく上流階級を顧客にしたPMCに近い物だと勝手に納得する。あの上品な口調や立ち振る舞いも富裕層相手に商売する為の行儀作法だろう。

 

 (……邪兎屋みたいなアウトロー連中や軍の特殊部隊やらライカンみたいな人材と関わりあるってどんな人生歩んでるんだお前は。)

 

 考えてみればアキラの交友関係も謎である、ライカンとの会話から判断するに2人も親しい仲だろう、プロキシと言う職業はそれだけ多方面と交流が出来るのだろうか。

 

 そんな事を考えながらワイルドアイランドの大地を抜けていった。

 

 

 

 ワイルドアイランドとザトンの境にある鉄道メンテナンス施設に辿り着くと、普段はアノマリーやミュータントがいる筈の施設には多くのホロウレイダー達がたむろしていた。

 まるでどっかから追い出された様なホロウレイダー達を不審に思っていると、スキフ達と行動しているホロウレイダーの中に知り合いがいたらしく、1人が話しかけてきた。

 

 「よう、そんな大人数で何処に向かってんだお前。」

 

 「依頼だよ依頼、お前らこそどうしたんだ、こんな所で大勢よ。」

 

 「まさか「イカルス」を通るつもりか?今は止めとけ、俺たちはあそこ追い出されたんだ。」

 

 ザトンのスカドフスクへ向かう中継地として、この世界ではホロウレイダーの一時的な拠点として使われているイカルスと呼ばれる施設。

 そこを追い出されたというホロウレイダーに対し、この人数が居てイカルスを奪われたとでも言うのだろうかと思いスキフが問いかける。

 

 「ミュータントかバンディットの大群にでも襲われたのか?」

 

 「違う、どっかの企業が私兵部隊引き連れて「一時的に拠点にするから出ていけ」って言われたんだよ。戦闘ロボットまでいたから流石に分が悪くて言う通りにしたんだ、イカルスの周りに近付くと撃たれるかもしれないぞ。」

 

 「企業の私兵部隊」と聞いてアキラが怪訝な顔をする。

 

 「企業……TOPSでも来たのかい?」

 

 「そこまで知るかよ、ただTOPSの連中には見えなかったな。あいつ等は軍隊なんて送らねぇ。」

 

 「何故そう言えると?TOPSもZONEの利権を狙っている筈だ。」

 

 「アーティファクト目的で自分の所の人員を送り込むくらいなら、奴らはホロウレイダーか反乱軍を雇うからさ、コストを掛けてわざわざ自分で火中の栗を拾う様な事はあいつ等はしない……TOPS同士でさえ抜け駆けを警戒しているからな。一度仕事したから分かる。」

 

 じゃあイカルスを占拠したのは何処の企業なのか、少なくともここのホロウレイダー達には見当がつかなかったようだ。

 一方イカルスが通れないと聞いてリヒターは唸っていた、想定していたルートが使えなくなったからだろう。

 

 「畜生、近付けないんじゃ迂回するしかないな。すまないプロキシ、ライカンさん、それでもいいか?」

 

 「僕は平気だ。」

 

 「私も問題ありません。」

 

 2人に確認を取り、リヒターはPDAの地図を開いてルートを探す。イカルス周辺で攻撃を受ける可能性があるならそれ避ける方が無難だ。その結果、真っ直ぐスカドフスクに向かえる筈だったルートは少々遠回りの道のりとなった。

 

 

 

 

 ザトンと言う地域は元々大きな湖だったのか、港湾施設や船舶の残骸が各所に広がる湿地帯が大半を占める土地だ。

 チョルノービリではSIRCAAの施設がザトンの北側に建設されており、高台からなら何処からでも見えた物だったがこの世界ではその一帯にホロウが存在するだけである。

 

 そして今スキフ達が向かっているのはザトンの中心たるスカドフスク(・・・・・・)、決してサルタンスクではない。

 

 ミュータントやアノマリーに警戒しながらザトンを進んで行くと、ボロボロに朽ちた廃船が見えてくる。

 その周囲にはホロウレイダーに混じってバンディットらしき者達の姿が見えた事にアキラとライカンは不思議に思った。

 

 「スキフさん、あれって確かバンディットだよね?彼らはホロウレイダーと敵対している筈じゃ…」

 

 「ああ、ザトンの連中はガーベジの奴らと違って一枚岩なんだ。ボスの方針に従っているから“大抵は”出会い頭にこっちを撃ったりしない“マシな”バンディット達だな。」

 

 ザトンのバンディットに対するスキフの説明にライカンは何故襲ってこないのか腑に落ちた様だ。

 

 「成る程、大小様々な集団の総称ではなく、ここでは1人のリーダーの下に纏っている組織だからこそホロウレイダー達と共存できると言う訳ですか。」

 

 「だけど油断は禁物だライカンの兄貴、ザトンの奴から聞いたが結局はバンディットだ。ホロウレイダーと共存と言う名の冷戦状態になってるだけだな。」

 

 「ウルフの言う通り、奴らのボスはサルタンって言うが元々は郊外でそれなりに有名な走り屋連中だったらしい。制圧部隊が撤退して暫くして、ある日突然油田もバイクもトラックも捨てて組織丸々ザトンに腰を据えたんだ。当時ザトンを拠点としていた他のバンディットやホロウレイダー達と毎日戦争していたのはよく覚えているよ。」

 

 リヒターに言われた事でアキラはザトンのバンディット達を改めてよく見てみる。確かに彼らは新エリー都よりも郊外でよく見かける様な人々の服装をしていた。

 スキフもザトンのバンディットの服装がやけにトゲトゲが付いていたりで、ギャング団というよりも核戦争後のレイダーにしか見えなかったが、そんな理由があったのかと以前X-ラボの調査でザトンに来た時に抱いた謎が1つ解けたのだった。

 

 「それじゃあ、どうして今はホロウレイダーと共存を?」

 

 「ここで商売をしていたビアードって奴がサルタンと交渉してな、何とか講和してずっと続いていた戦争を止めたのさ。そして今はビアードとサルタンの2人がそれぞれホロウレイダーとバンディットの元締めをしながらザトンを治めてるって所だな。」

 

 元居た世界のザトンでもビアードとサルタンの2人がストーカーとバンディットの代表として対立していたのはスキフは覚えている。

 だがそれではザトンの外から来る勢力に太刀打ち出来ないと危機感を抱いたサルタンの部下の1人、ソーニャと呼ばれる女性がビアードとサルタンの暗殺を依頼し、当時のスキフはそれを遂行した。

 その結果ザトンはソーニャの下、ストーカーとバンディットが手を取り合うような地域になったのだが、暗殺する直前に聞こえて来たビアードとサルタンの会話からして暗殺せずにソーニャを裏切ってもストーカーとバンディットの対立は解消されたのではとスキフは今でも思っている───もっとも、別の世界に来てしまった今は過ぎた事だが。

 

 「一旦ここで休もう、スカドフスクへようこそ。」

 

 スカドフスクと名付けられた廃船の中心部は外板が剥がれ落ちており骨組みしか見えない。

 そこに入るとまだ無事な船内へ続く水密扉があり、リヒターが扉を開くと船倉をBARに整えた内装が目についた。

 錆びついた船倉のあちこちにテーブルが置かれており、基本的には立って飲食をする場所なのだろう。多くのホロウレイダーやバンディットが飲食を楽しんでいた。

 入り口から入って左奥、船の船員室に続く階段の隣のカウンターにはボディアーマーを身に着けた“クマ”が飲み物を提供していた。その雰囲気は100rads barの店主に何処となく似ている。

 

 「あの人…バーキープさんの血縁者って訳では無いよねスキフさん。」

 

 「俺も最初はそう思ったが奴とは全くの無関係だ、あいつがベアード…じゃなくてビアードだ。」

 

 スカドフスクのバーテンダー「ビアード」、元居た世界では立派な髭を蓄えた中年男性だったがこの世界ではバーキープと同じくクマのシリオンだ。

 この世界で始めてスカドフスクに来た時のスキフはこう思った───この世界のZONEでBARを営んでいる奴は皆クマなのかと。

 

 「一応言っとくが俺たちのすぐ左にいるのがザトンのバンディット共のボスだ。」

 

 船に入ってすぐ左の方を見てみると、バンディット達が見張りとして立っている“特等席”には猫のシリオンがマフィアのドンの如く座って手下と何か話している。

 こっちもスキフの世界では丸坊主の中年男性だったが、この世界では白髪の髪が生えておりその上に猫耳がピョコンと生えている、強面な中年男性に生えているケモノ耳はどこかシュールだ。

 

 取り敢えずリヒターは一行に休憩を促す。コルドンからザトンまで歩きっ放しの為、漸く休憩時間だ。

 

 「ここで腹ごしらえでもしておこう、目的地までまだあるからな。」

 

 「分かりました。プロキシ様、お荷物をお預かりします。」

 

 「ありがとうライカンさん、結構歩いたから疲れたよ…贅沢を言うなら椅子が欲しかったけどね。」

 

 「ライカンの兄貴!俺もそっちに───」

 

 「そっちのテーブルは一杯だろウルフ、お前はこっちだ。」

 

 ビスに引っ張られて泣く泣く別のテーブルに引きずられるウルフ、結局アキラやスキフ達4人とホロウレイダー組5人で分ける事になった。

 アキラとライカンはシドロヴィッチが用意した食料を取り出して食べる事にしたようだ。リヒターとスキフは食べ物を注文する為にビアードのいるカウンターまで向かう。

 カウンターまで来ると、リヒターに気づいたビアードが快く出迎えてくれた。

 

 「よく来たなリヒター、それと……前に見た顔だな。」

 

 「1回だけここで食い物買った時に顔を合わせた、スキフだ。」

 

 「そうか、よろしくなスキフ…そんでリヒター、お前と来た連中、確かコルドンとガーベジのホロウレイダーだろ。活動拠点をザトンに移して来たのか?」

 

 流石はザトンのホロウレイダーの元締め、ホロウレイダー達の顔を覚えているようで、リヒターにウルフやビス達を連れてきた理由を問いてきた。

 

 「いいや、単に遠征に来たのさ、ウルフ達はその護衛の為に連れてきた。」

 

 「ザトンに遠征…?はて、なんかあるのか?」

 

 「ここは通り道、目的地は沼地さ。」

 

 

 

 ────その瞬間、先程まで賑やかだったスカドフスクは気味が悪い程静まり返った。

 

 

 

 リヒターは何かやらかしたのかと思い、周りを見渡す。周りのホロウレイダー達がこちらを見ていることに、アキラやライカンだけではなく、ウルフやビス達も困惑しているようだった。

 それ以外のホロウレイダーやバンディット達は信じられないと言う目でスキフ達を見ている。

 

 スキフなこの静けさをどうした物か……と思っていると、サルタンが特等席から立ち上がり、カウンターへと近づいてきた。

 

 

 

 「リヒター悪い事は言わねぇ、沼地には近づかない方がいいぞ。」

 

 「今回ばかりはサルタンの奴が正しい、死にたく無ければ沼地には行くな。」

 

 

 

 2人のザトンの支配者が、スキフとリヒターに警告するように伝える。

 

 その目は本気でこちらの身を案じた物であった。

 







 ◇ザトン
 3作目CoPの最初のフィールド、S.T.A.L.K.E.R2でも登場し、前作と大体同じ様な地形で登場してくれた。
 2本編でも他の地域と比べてかなり広い方であり、非常に探索のしがいがある。
 CoPでバンディットがスカドフスクを支配したのが正史になったのか、ビアードはスカドフスクを追い出され、サルタンスクへと改名された。
 その後ビアードは紆余曲折あり、シェフチェンコというもう一つの廃船に拠点を築くのだが、サドンの支配者を巡るサブクエの結果によってはビアードはスカドフスクのバーテンダーに戻る事ができる。
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