Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In   作:路肩の石ころ

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36.ポンプ場の戦い

 

 

 

 「撃ってきたぞ!Давай(動け)プロキシ!小屋の中に避難しろ!」

 

 「プロキシ様、頭をお下げください!」

 

 ポンプ場を包囲するように出現したエーテリアスの群れから無数のエーテル弾が発射される。

 アルペカや強欲射手から放たれるエーテルの弾丸は次々とポンプ場に突き刺さり、古い木造の小屋や錆びついた大型のタンクに穴を穿つ。

 そしてエーテル弾による制圧射撃の援護を受けつつ、ティルヴィングと悪辣討手が泥濘を掻き分けながらポンプ場へと突撃してきた。

 

 屋根の上にいたスキフ達はエーテル弾の猛射を掻い潜りながらアキラを守りつつ階段を下り、小屋の中に急いで向かう。

 それを狙ったアルペカ達がエーテル弾を発射しようとコアにエーテルを収束した瞬間───多数の銃撃がコアを貫き、光の点滅を発生させながらアルペカ達は消滅した。

 

 「援護する兄貴!早く降りてこい!」

 

 「エーテリアスとやりあうのは久しぶりだな…!」

 

 「野郎共撃ちまくれ!エーテリアスなんざバンディットと大差ねぇ!」

 

 ウルフ、トラッパー、ビスとガーベジのホロウレイダー達がエーテリアスの群れに向けて手に持つありったけの武器を放つ。

 そのお陰で僅かにエーテル弾の雨が途切れ、その隙にアキラを小屋の中へと放り込んだ。

 

 「プロキシ様、迎撃に向かいます。ここで伏せていて下さい。」

 

 「リヒター!お前はここでプロキシを守れ!」

 

 「アイアイサー!」

 

 「スキフさん!ライカンさん!気をつけて!」

 

 アキラの声援を受けながら外を見ると、巨大なタンクがある小屋の南以外の方向からエーテリアス達が包囲網を敷いていた。

 その中でもこのエーテリアス達のボスのように振る舞っている1体、「要警戒・デュラハン」が東側から盾を構えて突っ込んでくる。

 ウルフ達ホロウレイダーが銃撃で食い止めんとするが、相手は上級エーテリアスの上位種、この程度の弾幕ではビクともしなかった。

 

 「私が前に出ます。」

 

 そう短くウルフ達に伝えると、ライカンが疾風の如く駆け出し、通りすがりに数体のティルヴィングと悪辣討手のコアを蹴り砕きながらデュラハンの盾に冷気をまとった一撃を与える。

 ライカンの強烈な一撃にデュラハンは僅かに後ずさり、反撃に剣を振るってライカンとの距離を取った。

 

 ───一瞬の睨み合い、その直後にライカンに向けて光刃が襲いかかる。

 

 咄嗟にその攻撃を回避すると同時にデュラハンが飛び出してライカンを両断せんと剣を振り下ろすが、その剣撃をパリィして逆にデュラハンの胴体に蹴りを食らわす。

 その瞬間、先程アキラを奇襲した「要警戒・タナトス」が敵の命を刈り取らんと、ライカンの背中に音もなく刃を振り下ろす───

 

 だがライカンは動かない、わざわざ回避する必要が無かったのだ。

 

 タナトスの持つエーテルの刃と、そのコアに大口径のライフル弾が突き刺さり、全身に自動小銃の銃弾が浴びせられ、一瞬硬直する。

 追加とばかりにライカンの回し蹴りがタナトスに炸裂、堪らずタナトスは一度姿を消し、デュラハンの隣に隠れるように現れた。

 

 「皆様、助太刀感謝致します。」

 

 先程の援護射撃を行った者達に感謝の言葉を述べる。彼の側に3人のホロウレイダーがやって来た。

 

 「あの要警戒エーテリアスを仕留めれば後は雑魚だけだ、手を貸すぞ。」

 

 「アンタはあの2体に集中してくれ、露払いは任せろ!」

 

 「プロキシはスキフ達が全力で守ってるから安心してくれ兄貴!」

 

 トラッパー、ビス、ウルフがライカンと共に要警戒2体を主力とするエーテリアス達と相対する。

 通常のタナトスであれば先程の攻撃によって倒せていたが、残念ながら相手は要警戒級、未だに体力を残している事は明らかだった。

 小屋の方には多数のエーテリアス達が群がっている。スキフ達が近付かせんと迎撃しているが、だからと言ってアキラを守る使命があるライカンが放置していい訳では無い。

 

 「───あまり向こうに負担は掛けられません。手早く済ませましょう、良いですね?」

 

 彼らから返事は無い、その代わりに、彼らの持つ銃火器のトリガーがエーテリアスに向けて引かれたのが答えだった。

 

 

 

 

 「Вогонь!(撃て!)Вогонь!(撃て!)近接型を優先して仕留めろ!」

 

 スキフ達はポンプ小屋のウッドデッキに陣取り、全く頼りにならないベニヤ板や木の柵を遮蔽物にしながら小屋の北側と西側から押し寄せてくるエーテリアスを押し留めていた。

 

 「“グレネーダー”!榴弾はどれだけ持ち込んでる!」

 

 「ボタ山を吹っ飛ばせるくらいだ!」

 

 「“ガンナー”の弾が切れたら北のエーテリアスを爆撃しろ!俺は“ライフルマン”の援護に行く!」

 

 ビスと共に今回の依頼に付いてきたガーベジのホロウレイダー3人。

 彼らの名前をスキフは知らず、聞いてもいなかった為に持っている装備から勝手にニックネームを付けて呼んでいた。馬鹿らしいが連携を取るのに「お前」呼びは割と支障が出る。

 幸いな事に彼らもスキフの意図をちゃんと理解してくれていたので一応問題はない。

 

 機関銃を持つ“ガンナー”が、遮蔽物の殆ど無い小屋の北側を突き進むエーテリアスの群れを薙ぎ倒すが、箱型弾倉に詰められた弾薬が切れる。

 好機とばかりにアルペカや強欲射手がエーテル弾を撃たんと身を晒すが、それらのエーテリアスに向けて“グレネーダー”がリボルバー式グレネードランチャーを次々発射、沼地に爆発音が鳴り響き、同時にエーテリアス達が吹き飛ばされていく。

 

 小屋から汲み上げ用の大きなパイプが横に伸びる西側では、パイプをよじ登って来るエーテリアスのコアをセミオートライフルで“ライフルマン”が次々と撃ち抜いていく、そんな彼に多数のエーテル弾が飛来し、その場に屈んで回避する。

 

 「リロード!畜生、攻撃が激しい!」

 

 「俺が接近して来る奴をやるからお前は撃って来る奴を狙え!」

 

 到着したスキフがパイプの上を走る数体のエーテリアスをASラヴィナ(自動小銃)の銃撃で撃ち倒す。

 9×39MM弾はティルヴィングなら数発で倒せるが、悪辣討手を倒すには更に弾薬を撃ち込む必要があった。

 案の定、ASラヴィナのマガジンが空になる頃には悪辣討手が2体残り、スキフを仕留めようと突っ込んでくる。

 

 スキフは冷静にASラヴィナを手放し、11号が貸してくれた(そして返すのを忘れた)幅広のナイフを左手で抜き、最初に突っ込んできた悪辣討手の一撃を受け流し、全力でケツに蹴りを入れて相手の体勢を崩す。

 奥のもう一体の悪辣討手がその腕をスキフに振るう前に、スリングにぶら下げていたサイガD-12(ショットガン)を右手で持ち上げ、胴体に向けて発砲。

 

 ほぼゼロ距離からの散弾に怯んだ悪辣討手のコアにナイフを突き立て、更にサイガD-12を放って排除。

 そのまま振り向き、体勢を立て直した最初の悪辣討手の足を散弾の連射で粉砕し、コアをナイフで一閃、そのまま悪辣討手は力無くパイプを落ちて消滅していった。

 

 その直後、小屋から銃撃が飛来しスキフの後ろに迫っていたティルヴィングのコアを貫く。

 “ライフルマン”では無い、彼は西側にいるアルペカや強欲射手を仕留めている最中だ。数多のエーテル弾によって穴だらけにされた小屋からひょっこりとリヒターが顔と銃を出していた、彼がやったのだ。

 

 礼を言おうとしたスキフは、リヒターの表情が軽く焦っている事に気付いた。

 

 「北からデカブツが来るぞ!お前のガウスガンが必要だ!」

 

 「全く…次から次へと!」

 

 スキフはため息を吐きながら、武器をガウスガンへと持ち替えて、北側の防衛へと向かっていった。

 

 その際に、ガウスガンのとあるスイッチを入れて。

 

 

 

 

 

 小屋の東側で要警戒クラスのデュラハンとタナトスの両方を相手取るライカンとウルフ達。

 通常よりも遥かに手強い上位種ではあるが、その攻撃の鋭さも連携もかつてライカンがバレエツインズで戦った双子のバレリーナと比べれば幾分か劣る。更に───

 

 「既に何者かによってかなり傷付いている、動きが鈍いっ!」

 

 ライカンの連撃がデュラハンの盾に次々と衝撃を与え、防戦一方に追い込んでいる。

 他のエーテリアスと違い、何故か2体の要警戒エーテリアスは現れた時から身体中が傷付いていた。

 そのせいか攻撃のスピードは少しばかり遅い、他のエーテリアスの横槍はウルフ達が全て防いでくれる。決して油断をしない事が前提だが、ライカンの実力ならば余裕を持って勝てるだろう。

 

 デュラハンからの攻撃を弾いて距離をとったと同時にタナトスがライカンに襲いかかるが、その攻撃を回避してコアに反撃を与え、怯んだタナトスが一度姿を消す。

 遠方に出現したタナトスが光刃を放ったのを見て瞬時に回避する、だがタナトスの狙いはその先にいたウルフだった。他のエーテリアスに気を取られ一瞬攻撃に気付くのが遅れてしまったのだ。

 

 「うおぉ!?」

 

 幸運にも当たりはしなかった、だがウルフの足下に着弾し彼の体勢が崩される。

 タナトスはウルフの側に瞬間移動し、刃を振り下ろそうとしていた。

 

 「ウルフ!避けろ!」

 

 すぐさまライカンが助けに向かおうとするがデュラハンが攻撃頻度を上げそれを防ぐ、トラッパーやビスの援護も間に合わない。

 

 タナトスの一撃がウルフの首を裂く─────事はなく、紙一重で回避し、サイドアームのブームスティック(ダブルバレルショットガン)を引き抜いてコアに叩き込む。

 

 「あっぶねぇな!どうだ兄貴俺もやるだろ!」

 

 「ウルフから離れやがれ!」

 

 更にビスがタナトスに飛び掛かり、ゼロ距離でアサルトカービンの弾を捻り込み、手痛い反撃を受け苦しむタナトスはビスを振り落とし、姿を消す。

 

 そして他のエーテリアスや障害物に隠れながら、光刃をウルフ達へ放とうとするが───既にその場所に照準向けていた者がいた。

 

 「くれてやるよ、シュードジャイアント用の特製弾だ。」

 

 トラッパーが持つ上下2連の大型ライフルから発射された2発の徹甲炸裂弾はタナトスのコアに深々と突き刺さると、大きな爆発を引き起こした。

 度重なる攻撃で傷付いていた要警戒・タナトスのコアは完全に崩壊し、その場に崩れ落ちるように消滅していった。

 

 相方をやられて激昂したのかデュラハンは大きく吠えながらライカンに猛撃を繰り返すが、その攻撃を尽くいなしながらデュラハンの膝を集中攻撃して蹴り砕く。

 片膝をついた要警戒・デュラハン、頭部にあたるコアに映る景色、そこには片脚を大きく振り上げたライカンが映っており、トドメの踵落としがコアを叩き潰した。

 

 2体の要警戒級エーテリアスが消滅したのを見た僅かなエーテリアス達は敗北を悟ったのか次々と逃走していった。逃げていくエーテリアスを疑問に思いながらライカンは乱れた服装を整えようとして、今の自分が執事服ではない事を思い出す。

 

 「お見事です皆様……侵食体はともかく、ティルヴィングやアルペカに逃走を判断出来る知能はなかった筈ですが……」

 

 「そもそもあの程度のエーテリアスにあんな奇襲が出来る能力があったなんて未だに信じられん、アンタもハンターの俺も気配を全く察知出来なかったしな。」

 

 「おいやべぇ!向こうにデカブツが出てきたぞ!」

 

 「兄貴!トラッパー!スキフ達の援護に向かおう!」

 

 「っ!すぐに────いや。」

 

 ウルフとビスが小屋の北側から巨大なエーテリアスが現れたのを発見して叫ぶ。

 ライカンとトラッパーは逃げていくエーテリアスに踵を返して小屋の援護に向かおうとして、既に大勢が決した事を悟る。

 

 「どうやら、向こうも決着がついたようですね。」

 

 巨大なエーテリアスが小屋の目前まで迫った瞬間、小屋の中から凄まじい音が鳴り響き、青白い閃光が巨大なエーテリアスを貫き、付近のエーテリアスを薙ぎ倒したからだ。

 

 

 

 「ドデカいエーテリアスが突っ込んで来るぞぉ!」

 

 「畜生、グレネードじゃ止まらねぇ!?」

 

 濃霧の中から突如姿を現し、小屋に向けて突っ込んできた大型のエーテリアス「賊害侵蝕体・凶悪狂人」

 

 まるで暴走列車の如く突き進むエーテリアスに“ガンナー”と“グレネーダー”が機関銃とグレネードランチャーの集中砲火を浴びせるものの、凶悪狂人には効果は今一つのようで爆発と銃弾をものともせず突撃して来る。

 

 もうプロキシを連れて小屋を離れよう──そう思った時、やかましい音を鳴らすガウスガン(EM-1)を抱えたスキフが巨大なエーテリアスの前に立ちはだかった。

 スキフの脳裏にガウスガンを勝手に弄くり回した容疑者の1人であるサハロフ教授の言葉が浮かんでくる。

 

 『スキフ君、君のこの武器はとても素晴らしい性能を持っている。だが些か機構が旧世代過ぎてこのまま使うのはあまりおすすめしないね。弾薬だって職人手作りのオーダーメイド品が必要だ。

 そんな訳で、誠に勝手ながらこちらで手を加えさせて貰った、動力源に特殊なエーテル発動機を組み込んでチャージ時間の短縮、更にこちらで威力の高い専用弾薬も用意した。後はとっておきの必殺……新機能があるが、それは見てのお楽しみだね。

 使い勝手は格段に良くなるだろう、改造代はいらないよ。その代わりこれの性能をレポートにして送ってきてくれたまえ。』

 

 「これで大したことがなかったら化けてでてやる…!」

 

 ガウスガンの銃身がバチバチといつも以上に音を鳴らす、銃身上部に並ぶ動力機器が光り輝く、元々ガウスガンに使われていた「フラッシュ」アーティファクトと新たに導入されたエーテルが混じり合った凄まじいエネルギーが込められた銃身が震え、赤熱する。

 

 

 凶悪狂人が小屋まであと少しと言うところまで接近する。

 

 

 小屋に接触する寸前に、スキフは引き金を引き────閃光が沼地を裂いた。

 

 

 2つのエネルギーが混じり合った弾頭は防衛軍の最新鋭レールガンすら嘲笑う速度と威力で凶悪狂人の顔面から尻まで瞬時に貫通し、一瞬遅れて全身が粉砕された。

 

 

 貫通した弾頭はそのまま後方にいたエーテリアスの群れを通り過ぎ、弾頭が直撃する事なく、発生した衝撃波でエーテリアス達が引き裂かれていく。

 

 

 肩が外れそうな凄まじい反動がスキフを襲うが、コンパス(物理防護)のお陰で衝撃が幾分か和らいでくれた。

 

 

 発砲音による耳鳴りが収まり、静寂が沼地に戻ると、後には地面に残った裂け目のみが残されていた。

 

 

 「………ハラショー」

 

 

 オーバーヒートして動かなくなったガウスガンを抱えたスキフは、予想以上の凄まじい威力に呆然とするしかなかった。

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 「プロキシ様、お怪我はありませんか?皆様も負傷があればお申し付け下さい、高性能な回復キットを多めに所持しております。」

 

 「僕は大丈夫さ、彼がずっと覆いかぶさってくれたからね、ありがとうリヒターさん。」

 

 「どういたしまして……正直小屋に隠れてる方が危なかったんじゃねぇかな、スキフがあのデカブツを吹っ飛ばしてくれなければ潰されてたぜあの小屋。」

 

 残ったエーテリアスは全て逃走し、一段落ついたスキフ達。

 

 ポンプ場は哀れなほど穴だらけにされ、もはや倒壊していないのは奇跡とも言える惨状だった。

 一方スキフはウッドデッキに座り込み、ガウスガンの調子を確認していた。

 

 「………威力はヤバいが一度使えばオーバーヒートして暫く使い物にならない、あと耐久性がかなり低下……連発はご法度だなこりゃ、チャージ時間もあってここぞと言う時にしか無理だ。」

 

 スキフは先程使用したガウスガンの新機能──つまるところ必殺技の代償を確かめる。

 あらゆる敵を一撃で屠れそうな程の凄まじい威力であったが、正直使い勝手はかなり悪いと結論づけた。少なくとも普通に使う分にはかなり改善されている分、あれは本当に追い詰められた時の切り札として使おうと心に誓う。

 

 「チャージ中は銃身がブレるし命中精度もあまり期待しないほうが良いな、それに反動が強すぎる、コンパスがなければ肩が外れ……いや、あの威力でこの程度に済んでる技術を評価すべきか?」

 

 ──研究者共め、こんな物を見てのお楽しみとか言って渡しやがって、事前に言えってんだ。

 

 そんな事を思いつつ、スキフは立ち上がって皆の所に合流する。アキラやライカン達は全員無事に生き残った事を喜びつつも、あのエーテリアスの集団の事で議論していた。

 

 「ZONEにゃホロウと繋がる亀裂がたまに出来るのは常識だが……あんな大量に入り込んだり、要警戒エーテリアスが侵入して来るなんて見たこと無いぞ、沼地はどうなっちまったんだ?」

 

 「ホロウ化って言うから、エーテリアスの大群がいるのはまぁ納得出来るけど……だとしたらミュータントは何処に行ってしまったんだろう。」

 

 時たま発生するZONEとホロウを繋ぐ亀裂からエーテリアスがやって来る事はあっても、あれだけの大群と要警戒級が侵入して来るのは見たこと無いと言うリヒター。

 ホロウに変化しているならエーテリアスが居てもおかしくないと考えつつも、ZONEの在来種であるミュータントの行方が分からないアキラに対し、ビスが率直な意見を言う。

 

 「そりゃあ皆エーテリアスになっちまったとかじゃ……」

 

 「その可能性もありますが、沼地のエーテル濃度が低く、我々でさえ侵食の危険が少ない環境でそのような事が起きるのか些か疑問ですね。何よりミュータントのエーテル適応体質はあらゆる生命体や物質よりも遥かに上と研究結果が出ています。」

 

 「後はここまで来るまでにエーテリアス共も一匹も遭遇していなかったのも気になる、普通のホロウだったら足を踏み入れればすぐにエーテリアスに遭遇する筈だ。」

 

 侵食されてエーテリアスに───そんなホロウの常識は通用しないと考えるべきとライカンが述べ、トラッパーもそれに続く。

 

 「あの妙に傷付いた要警戒エーテリアスも気になりますね……ホロウであるならエーテリアスの傷は時間が経てば自己修復される筈なのですが…沼地のエーテル活性が低いからなのでしょうか。」

 

 「確かに謎は多いけど、今揃っている情報じゃ分からない事が多すぎる。皆、次が最後の設置ポイントだ、先に進もうか。」

 

 ミュータントの不在に始まる沼地の謎。これまで分かった状況証拠を元に色々と仮説を立ててみるものの、やはりもっと調査が必要であると思い、最後のデータスタンドの設置ポイントへと移動を開始する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───あの人間の群れを追跡したお陰で、黒い奴が襲ってきたせいで放棄するしかなかった巣に戻る事が出来た。

 

 生みの親(・・・・)と違って自分はこの霧の中を自在に進むのは難しく、今まで戻る事が出来なかったのだ。

 必死にかき集めた食い物はまだ残っていた、人間の匂いがついていたが、久しぶりに腹は膨れたので良しとしよう。

 

 それよりも驚いたのはあの人間の群れの強さだ。

 

 自分達以外を狩り尽くすために、この地から誰も生きて返さないために、奥に行けば行くほど黒い奴らはああやって潜んでいる。

 

 この地が霧に包まれ、その中から姿を現した当初よりも、黒い奴らは匂いも気配も隠すのが上手くなった、たまにやって来る赤い光と熱(・・・・)から身を守るように学んだ結果(・・・・・)だ。

 

 この前やって来た大勢の人間の群れはそうやって巧妙に隠れる黒い奴らに奇襲され、半分がぐちゃぐちゃに殺されて、もう半分は捕まって奥の方に連れて行かれたのは見た。

 

 なのに今度来た人間の群れは一匹も死ぬ事なく、寧ろ黒い奴らの殆どを倒して見せたのだ。

 特にあの白い毛のやつ!黒い奴らの中でも強い奴をああも手玉に取っていた!やはり家族(・・)と似た匂いを持つアイツがあの群れのボスに違いない、一番強いやつがボスになるのは常識だからだ。

 始めて見た(・・・・・)あの大きい黒い奴も、どうやったか知らないが一瞬で倒してしまった、あの人間達なら……もしかしたら“ヌシ達”と戦えるかもしれない────

 

 

 

 

 

 ポンプ場から逃走を選んだエーテリアス達が次々と、同時に沼地の藪に消えていき、光の点滅が霧の中を僅かに照らしていく。

 

 1体のティルヴィングが引きずり込まれた藪から現れた小さな影は、スキフ達の追跡を再開した。

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 「トラッパーさん、確かこの先は漁村という名前だったかな?」

 

 「周辺の景色からして漁村に近付いているのは確かだ……さっきみたいにエーテリアスが待ち受けてるかもしれん。」

 

 「皆様、警戒を怠らぬよう願います。」

 

 「任せろライカン……と言いたいが、沼地のエーテリアス共は隠れるのが上手いからな、一発貰うのを覚悟でプロキシを庇う方が良いかもしれん。」

 

 「はぁ…スキフさん、少しは自分の身を大切にしてくれ。」

 

 「お前が居なきゃ俺たちはここから抜け出せなくなるんだ、死ぬ気で守るに決まってるだろ。」

 

 沼地の中間にある漁村に接近しつつある一行。ポンプ場で受けた奇襲を警戒するように慎重に、プロキシを守るようにゆっくりと歩いていく。

 

 ポンプ場と同じく漁村に近づくにつれ、周囲の霧が少し晴れていき視界が広がっていく。

 視界の先には廃村があり、多数の大きな影が漁村に散らばっていた。

 

 その影を見て一行は臨戦体勢に入るが、よく見ればその影はピクリとも動かない。

 

 警戒しながらも多数の影の正体が分かる所まで近付いて行くと、トラッパーの顔が驚愕に染まっていく。

 

 「────あれ、は。」

 

 「トラッパー様、あの遺骸(・・)達は……」

 

 「キメラだ、間違い無い…沼地を縄張りにしてるキメラ共だ……」

 

 漁村に広がる多数の動かない影、それは沼地に住むミュータントの頂点捕食者、キメラの群れ──その物言わぬ骸たちであった。

 

 

 






 スキフ君遂に終結スキル習得、なおガウスガンの耐久値は死ぬ模様。
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