Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In 作:路肩の石ころ
最後のデータスタンドの設置ポイントである漁村に横たわる数多のキメラの屍。
漁村全体に広がるキメラの死体は20体はあるだろうか、そのどれもが普通のキメラより体躯が大きく、頑強な皮膚を持っているのが一目で分かる。
よほど激しく戦ったのか、キメラ達の死体は激しく損傷し、焼かれ、溶かされ、焦げつき、体が潰され、無数の斬撃の跡も見受けられる。
廃村にある周囲の建物も大きく崩落している物が多かった。漁村全体を巻き込んだ激戦なのは明白だった
「なぁトラッパー、このキメラ達やけにデカくないか?こいつら全員“ヌシ”って訳じゃないだろう?」
「沼地は獲物が豊富だから身体もデカくなってるんだよ、だから他の地域のキメラよりずっと強いし、“ヌシ”は更に手強い……いや、手強かったと言うべきだな。」
スキフの疑問に答えるトラッパーの声はどこか暗い。その視線の先には他のキメラより更に大きく、他よりも傷付いたキメラが骸を晒していた。恐らくあれが“ヌシ”なのだろう。
「奴とは決着をつけたかったんだがな……」
ヘルメット越しに顔の傷を撫でるトラッパー。やはり、何度も戦って来た相手が自分のあずかり知らぬ所で殺されていたのが堪えたのだろうか。
「……先程戦った要警戒エーテリアスが傷付いていたのは、このミュータント達と戦い、全滅させたからなのでしょうか。」
「タイマンなら兎も角、沼地のキメラの強さだったら群れで挑めば余裕で勝てる筈だ……あの2体のエーテリアスだけだったならの話だがな。」
ライカンの予測に対し、沼地のキメラの実力をよく知るトラッパーが否定する。要警戒エーテリアス2体でキメラの群れを全滅させられる訳が無いと確信しているのだ。
「僕が思うに、傷口からして別の存在がこのミュータント達を殺戮した可能性が高いんじゃないかな。」
アキラの推測は恐らく正しいだろう、キメラの身体にはまるでアノマリーにやられたような跡が幾つもあった。
ポルターガイストの一部個体はアノマリーを出現させて攻撃してくるのは知っている。だがキメラの虐殺を行った犯人ではない可能性が高い。トラッパー曰くポルターガイストは沼地には生息していないからだ。
十中八九エーテリアスの仕業だろうが、ポンプ場で戦った種類のエーテリアスではこんな傷は生まれないだろう。
なら別のエーテリアスが潜んでいる、沼地のキメラ達を、“ヌシ”を殺戮した強力な個体が沼地の何処かに。
トラッパーは辺りを見回し、キメラの骸を数えている。すると、キメラの数が足りないことに気が付いた。
「ひぃふぅみぃ……待てよ、
「群れの総数なんて分かるのか?」
「俺は沼地にいたほぼ全てのキメラの数を把握している、“ヌシ”がいる以上、群れの総力を持って敵に挑んだのは確かだ。」
「そしてキメラ達に勝った奴らがまだ……ぞっとしないな。」
“ヌシ”とキメラの群れを殺戮したエーテリアス、明らかに強敵であろう存在と遭遇する可能性にスキフがうんざりしていると、アキラとリヒターが最後のデータスタンドの設置に取り掛かっていた。
「このデータスタンドを起動すれば沼地全体の行き来が楽になる筈だ。」
「そしたら讃煩会の連中の捜索だな、ようやくだぜ。」
周囲に死骸が散乱しているからか、アキラとリヒターは手早く作業を終わらそうとしているのが見受けられる。
漁村の真ん中で作業している2人を囲むようにスキフやライカン達が周辺警戒を行う。
今のところ敵の気配は感じない、だがポンプ場での戦闘でエーテリアスは巧妙に隠れ潜んでいるのは分かっている。
ライカン以外は各自が手に持つ武器を握る手に力が入る。ライカンの眼光は一際鋭くなり、五感を研ぎ澄ましながら敵の奇襲を見抜こうと全力を尽くす。
アキラとリヒターがデータスタンドを操作する音だけが漁村に響く。
全員が視界を動かして地面の土くれからエーテリアスが飛び出して来ないか警戒しているが、今の所、姿を現すことはなかった。
「よし、スキャン開始だ。」
アキラがデータスタンドを起動すると、他のデータスタンドと連動して沼地全体のスキャンデータが手に持つキャロットに送信される。
正常に稼働している事を確認したアキラは安心したかの様に立ち上がった。
「良かった、キャロットデータに不具合は認められない。これで沼地を進むのがもっと楽に────」
言い終わる前に、データスタンドの側にいるアキラとリヒターのアノマリー探知機がけたたましく音を鳴らした。
思考が肉体に危機を伝達する前に、ほぼ本能的な反応速度でアキラとリヒターはその場から伏せるように飛び退いた。
その瞬間、2人が先程まで立っていた場所に
ギリギリのところでアキラとリヒターは
「プ…プロキシ!無事か!?」
「ハァ…ハァ…!ど…どうして躱せたんだ…!?」
バクバクと鼓動する心臓を抑えながら立ち上がったアキラは、熟練のガイドであるリヒターはともかく、自分がどうやって突然現れたアノマリーを回避出来たのか分からなかった。
戦う力こそ無いが、ZONEでアノマリーをその肌で経験してきたアキラは既に危機感知能力と咄嗟の行動力がより鍛え上げられていたからだという事を彼はまだ知らない。
「プロキシ様!お怪我は───うぐっ!?」
「リヒター!大丈───がぁ!?」
2人に駆け寄ろうとしたライカンとスキフの身体が突如、全身が小さなナイフに切り刻まれたかのように傷つく。
頬が、伸ばした腕が、踏み出した足が、一瞬にして小さな切り傷で埋め尽くされ、多量の出血が滴り落ちる。
「これは…ワイルドアイランドで見つけたアノマリー!」
「なんでいきなり
従来の探知機で見つけ出せない、小さなガラス片の集合体のアノマリー、
先程まで漁村に存在しなかった筈のアノマリーが、突然現れる事などあり得ない。
アキラは頬や腕が血だらけになったライカンとスキフを見て顔を青ざめる。
「ライカンさん!スキフさん!その怪我は一体…!?」
「アノマリーに引っ掛かった!俺は平気だがライカンは!?」
「心配ご無用です、この回復キットがあればすぐに止血できます……!」
ライカンはシドロヴィッチから支給された「科学的回復キット」を取り出し、自身に投与する。通常の回復キットよりも肉体の回復力が上がり、出血を止める効果が高い医薬品だ。
投与した後、包帯を使って特に出血の酷かった腕に巻いて止血の処置を行う。
スキフの方はハイパーキューブの効果で数秒もあれば血が止まる。
「クソったれ!なんで急にアノマリーが湧きやがった!?」
「ポルターガイストでもいるのか…?」
「重力アノマリーを操る個体は確認されてないしポルターガイストは沼地に存在しない、ということは……」
突然湧いたアノマリーにホロウレイダー達は混乱に陥るものの、すぐさま戦闘体勢を整える。
そして、今の沼地で襲ってくる敵など決まっている。
「エーテリアスだ!」
誰かが叫んだ瞬間、崩落した家屋の壁を突き破ってエーテリアスが飛び出してくる。
キメラに似た体躯、大きな口の中にエーテルのコア、そしてまるで身体に靄がかかり、煌めく何かが覆う身体。
猛獣のようなエーテリアスの一種、「ハティ」
姿形は要警戒級によく似たハティが大きく吠えた瞬間───スキフ達の近くに多数の
その瞬間、全員が確信した、こいつがキメラ達を殺した犯人で、アノマリーを操る特殊個体であると。
ホロウの中でミュータントが生存競争に打ち勝てば、より強力な亜種である「外来種」に変貌し、その身にエーテルの力を手に入れられる。
その法則はZONEで生存競争に勝利したエーテリアスにも適応される。ここから推測するに、エーテリアスがZONEで長期間生き抜けばアノマリーを操る力を手に入れるのであろうか。
「外来種のエーテリアス!?実物は初めて見たぞ!」
「反撃しろ、撃て!」
スキフ達が自らの武器で射撃を試みるが、その銃弾は全て身体の煌めきに阻まれてしまう。ライカンが飛び出し、強烈な蹴りを食らわすが、靄に包まれた胴体に届く事なく、凄まじい反発を受けて弾き返されてしまう。
「くっ…!まるで磁石のように弾かれた…!」
「銃弾も聞いてない…!このハティ、アノマリーを纏ってるぞ!恐らく
「打撃も銃撃も効かねぇよこれじゃあ!?」
リヒターの言う通り、
この二つのアノマリーの影響で今の外来種のハティには碌な攻撃が通用しそうになかった。
相手の攻撃が通じないのを見て嘲弄するかのように笑うハティはそのままスキフ達の間を駆け抜ける。
身体を中心に広範囲が
「ぐぁ!」「あぁぐっ!?」「痛ってぇ!」
ハティはその牙や爪を振るうことはしていない、ただ近くを通り過ぎただけでスキフ達の身体は傷つき、出血していく。
笑うように吠えるハティに一撃を与えようと、スキフはガウスガンに持ち替えて漁村を縦横無尽に動き回るハティに照準を向けて撃ち込む。
だが、上級エーテリアスを粉砕できるガウスガンの弾頭は無数のガラス片に命中し、火花を散らして防がれてしまった。
「クソッ!こいつでも通らないか!」
「どいてくれ!俺の武器なら!」
“グレネーダー”がリボルバー式グレネードランチャーを持ち出してハティに向かって次々グレネードを発射する。
すると、破片は防げたものの流石に爆風による衝撃と熱は貫通したのか明らかにダメージを受けた声がハティから漏れ出ていた。
「聞いてるぞ!爆薬を使え!」
「リロードする!援護してくれ!」
「こっちに来る!食い止めろ!」
再度こちらに突っ込んで来るハティに向けて牽制射撃を行うが、やはりガラス片によって弾かれる。
それならばと手榴弾を投げつけるが、
「ハアッ───!」
ライカンがハティの正面に立ち塞がって、その頭部に向けて全力で義足の一撃を直撃させる。
義足のお陰で
「これも効きませんか……!」
「下がれライカン!」
ライカンは声の指示に従い、ハティから距離を取る。トラッパーが放った徹甲炸裂弾がハティに突き刺さり爆発した。
これも弾頭自体はガラス片に阻まれるが、それでも小規模な爆発によってある程度ダメージが与えられた。
自身の身体を傷付けられたハティは怒り、漁村全体に響き渡る咆哮を放ち、その瞬間────
「くっ!?」「うわぁ!?」「ふ…吹き飛ばされる!」
自身を囲んでいたライカンやトラッパー、スキフ達の位置に大量の
「ぐあぁぁぁ!」
「スキフさん!」「スキフゥ!」
アキラとリヒターがスキフの身を案じる。運悪くスキフだけ吹き飛ばされた先にあった
他の者達も地面に転がるように叩きつけられ、一瞬動けなくなってしまった。
全員に隙を作り出したハティは大口を空けて獲物に食らいつこうと動き出す。その目標は“グレネーダー”だった。
「ち…畜しょ……ぎゃあああ!」
咄嗟にグレネードランチャーを向けるがハティの牙によって左腕ごと噛み砕かれ、絶叫が響く。
すぐさま助け出そうとライカン達が動くも、
援護射撃は届かず、急いで向かえばガラス片で切り刻まれる状況、“グレネーダー”はハティにナイフで抵抗するが、全く通用せず寧ろハティを覆う
「た…助け…あがぁぁぁぁ─────!」
アーマーは裂け、バックパックは千切れかけ、全身の切り傷から出血する“グレネーダー”の腹をハティは牙を突き刺すように咥え、何処かへと駆け出していった。
“グレネーダー”の助けを求める叫び声がこだましながら、外来種のハティが霧の中に消えていったと同時に、ライカン達の動きを阻害していた漁村のアノマリーが消滅する。
そのうち、連れ去られた“グレネーダー”の悲鳴は段々と聞こえなくなった。
「畜生、畜生、クソったれ!クソハティめ、あいつを連れ去りやがった!」
「兄貴の攻撃が全く通じてなかった……要警戒エーテリアスのコアを砕く威力なのに…!」
「全員まずは止血を終わらせろ、包帯は余分に持っている。」
「あんなのがいるなんて聞いてないぞ…」
「殴っても効かねぇし銃弾も弾く奴なんてどうやって戦えばいいんだ…!頼みのグレネードランチャーはぶっ壊れるしよぉ!」
ガーベジの仲間をやられたビスが激昂し、ウルフは外来種のハティの防御力に驚愕し、トラッパーは
“ガンナー”と“ライフルマン”も止血をしながら外来種に対する恐怖が生まれつつあった。
1人
「……で、どうする?1人やられてデータスタンドもおじゃん。俺達の殆どはあのエーテリアスに碌なダメージを与えられない。スカドフスクに戻って代わりのデータスタンドとロケットランチャーでも持ってくるか?」
アキラはキャロットデータを覗き込み、そこに表示されていた物を見た。
「データスタンドの事なんだけど……さっき沼地全体をスキャンした時に、この辺りに起動していないデータスタンドが1つあるみたいなんだ。」
キャロットデータを見たライカンが言った。
「恐らく、レネゲイド討伐に赴いたバンディット達が残していったものでしょう。」
「問題は、これが残されている場所が……あの外来種が逃げていった先にある事なんだ。」
アキラが指を指した方向には、“グレネーダー”の血が点々と続いていた。向こうに進めば外来種のハティと再度戦闘になる可能性が高いだろう。
「……プロキシ様、率直に申し上げます、あのハティに対して私が有効打を与えることは現状不可能、と言わせて頂くほかありません。」
「俺のガウスガンも通じなかった、全員火力が足りなさすぎる。チャージ状態で狙うにしてもアノマリーの召喚が厄介過ぎる、奴を仕留めるのは難しいかもしれないな。」
「ライカンさん……スキフさん……」
アキラは目の前のライカンの言葉が半ば信じられなかった。何せ市長の懐刀であるヴィクトリア家政の実力者と、アキラがZONEで一番頼りにしているストーカーが実質的な白旗を上げたのだから。
実際、攻撃が通じないのならどうしようも無い。ハティの身体を覆うアノマリーを何とかする方法は現状ほぼ無い。
そんな中、空気が重くなっていくのを見かねたリヒターが言った。
「ま…まぁ一旦帰るのは悪くねぇと思うぜ!スカドフスクで装備を整えて、一杯飲んで、ぐっすり寝た後、奴さんにリベンジでも───」
「ハンターの勘として言わせてもらうが、後戻りしても道中あのハティは確実に襲って来るぞ、今度は仲間を引き連れてな。先に進む方が良い。」
話を聞いていたトラッパーが割り込んで来た。彼の言葉にスキフは少し疑問を感じた、この場合撤退を選ぶのは悪くない選択肢なのだが、彼はそう思ってないようだ。
ライカンがトラッパーに問いかける、彼としてはアキラの身の安全が第一であるからだ、下手に先に進むのは避けたい。
「仲間を引き連れて……と言いましたね?」
「アンタらも薄々感じているんだろう?キメラの群れを全滅させたのはあの外来種のハティ一匹だけの仕業じゃない……さっきの戦闘で自分が優位に立っていたのにも関わらず一度撤退したのは仲間を連れて来る為だ。
そしてあのハティは獲物を生け捕りにして連れて行った、多分何処かにエーテル活性が高い場所があって、そこでエーテリアスに変えてるんだ、次は俺達かもしれないな。」
トラッパーの推測にスキフが説明を求めた。
「どうして生け捕りにしたのはエーテリアスに変えるからだとわかる?」
「ポンプ場の要警戒エーテリアスが傷付いていたのに他のエーテリアスが無傷だったのはバンディット共があのエーテリアス共に変えられたからだ。死体の腐敗から見て、キメラの群れとの戦いが終わった後にバンディットやレネゲイドがやって来たんだろう。
外来種のハティもほぼ無傷だったが……要警戒エーテリアスとの違いは、ハティが群れのボスか、それに準ずる立場だから自己回復可能なエーテル活性地帯を独占しているお陰、要警戒共は群れの立場が低いから後回しにされていたんだ。」
トラッパーの推理は一定の説得力がある、それでもスキフは半ば疑わしい気持ちもある。
「説得力はあるが……所詮予想に過ぎないんじゃないか?」
「確かにな、だがポンプ場での奴らの隠れ方、主力がやられて逃走を選ぶ判断力の高さ、そして……あのハティのオーラ。
俺が沼地で散々戦って来たミュータントの群れを思い起こさせる。ハティが群れを統率し、戦術を組み立てて、確実に仕留める作戦を考えているんだ。」
確かに、ポンプ場のエーテリアスは妙に戦術的に動いていた。一応納得したスキフは次の質問に移る。
「成る程……それで、先に進んだ方が良い理由は?何故撤退を選ばない。」
「ここまでの道のりは殆ど沼に囲まれて足を取られる地形が多かった、奴の素早さからして、沼地を出たり、ポンプ場や古い教会のような開けた土地に辿り着く前に襲われる可能性が高い。
そして未作動のデータスタンドがある場所は広い範囲で足場がしっかりしている……どうせ戦うことになるなら動きやすい場所の方がいい。」
トラッパーの説明にスキフだけではなく、アキラやライカンも一理あると感じていた。
襲いかかるエーテリアスと戦うのに、機敏に動けなくなる湿地帯で戦うよりも普通の地面がある場所の方がいい。
トラッパーは自分の上下2連ライフルを肩にかけて言い放つ。
「奴にダメージを与えられる特製弾はまだまだある……ハティに対して俺が矢面に立つ、お前達は奴の仲間の対処を頼む。もしかしたら、もっとヤバいのがいるかもしれないからな。」
もっとヤバいの───それは全員、薄々分かっていた。あのハティは
だが敢えてそれを指摘する者はいない、これ以上気が滅入る話題は避けたいのだ。
ライカンはアキラに向かい合う。
「……プロキシ様。このまま進んだ場合、装備が不足している状態で戦うことになり、最悪貴方様の身に危険が及ぶやもしれません。しかし、このまま沼地から撤退すると、戦闘に適さない地形で追撃を受ける可能性があります。どちらを選ぶかは、プロキシ様にお任せします。」
「………先に進もうライカンさん、どのみちデータスタンドが4つ起動しなくちゃ後戻りするのに時間がかかる。皆もそれでいいかい?」
アキラは腹を括ったようだ、そして他の者達にも同じ事を聞く。
スキフ達は一言も言わず、ただ頷き、漁村を出発した。
◆ ◆ ◆
もしPDAの地図が使えるなら、漁村を南下した所に向かっている筈だ。
そこには何もない、漁村やポンプ場のような建物も特徴的な地形があるわけでもない。だがそこに何故かデータスタンドがあるのだ。
かつてここに来たバンディット達はどの様な経緯でそこにデータスタンドを設置したのだろうか。
ただひたすらに警戒しながら、スキフ達は濃霧に包まれた沼地を進んで行く。
すると、オオカミのシリオンであるライカンとウルフが顔を顰め始めた。
「な…なぁ兄貴、なんかすっごい匂わないか?」
「腐った肉と、血の匂いだ……キメラの死骸があった漁村の比じゃない……凄まじい数の死骸の匂い…!」
ライカンの言葉に全員が改めて身を引き締める。スキフもガスマスク越しに異様な匂いが立ち込めているのが分かってきた。
歩みを進めて行くと、立ち枯れた木々と藪が少しばかり生えている、平地のような地域に辿り着く。
視界の遥か先にはライカンの背丈ほどある
「あれは……一体…?」
その丘を注視したアキラは思わず絶句してしまう。
多数ある小高い丘────それはミュータントの塊だった。
沼地に住まう無数の、様々なミュータントの死骸が積み重なって、遺棄されていた。
その内の1つで、死骸で出来た丘の上に、漁村でスキフ達を襲った外来種のハティが適当な死骸を咥え、空中に生み出した
外来種のハティはこちらに気付くと、漸く来たかとばかりに死骸で遊ぶのを止めて、遠吠えを響き渡らせる。
すると、スキフ達の周囲に多数のティルヴィングやアルペカが地面から現れてくる。
スキフ達はすぐさま戦闘体勢に入る、前衛にはライカンとトラッパーが立っていた。
「……奴に対して援護は逆効果だ、他のエーテリアスの横槍だけ防いでくれ。」
ライフルを握り絞めたトラッパーがハティを見据える。
「承知致しました、露払いはお任せを。」
ライカンが踏み出す準備を整える。
「チャンスがあればガウスガンのフルチャージで狙うからな。」
乱戦に備え、
アキラやリヒター、他のホロウレイダー達も額に汗を垂らしながら、今まさに始まろうとする戦闘に備える。
外来種のハティが大きく吠えた。
その声を聞いたティルヴィングとアルペカが襲い掛かってきたのと同時に、一行も目の前のエーテリアス達を駆逐せんと動き出した。
その瞬間、スキフ達の目の前で大量の
「─────
「──ッ!みんな!?」
突然のアノマリーの強襲、スキフ達はZONEのホロウレイダー特有の直感でギリギリ直撃を回避出来たものの、閃光によって視界が焼け、酷い耳鳴りがその場にいた全員を襲う。皆に囲まれる位置にいたアキラはなんとか被害を受けずに済んだ。
だが1人、
「───ぐっ──がっぁ──!」
「────ライカンさん!」
ライカンだ、彼も既の所で直撃を防げたが、他の者より一瞬反応が遅れてしまった為、閃光の熱と音によるダメージを受けてしまった。
シドロヴィッチの支給したアーティファクトによって深刻なダメージは回避できた、少なくともまだ戦える。
しかし、視界は白く塗りつぶされ、耳は一切聞こえなくなった。時間が経てば治るだろうが、戦闘中に於いては致命的過ぎる隙を生み出す。
混乱するスキフ達に、更に追い討ちをかけるように
未だに閃光の影響が残るスキフ達は反応が遅れてしまう。先に回復したスキフはアキラを引っ張ってアノマリーを回避しようとするが、アキラはライカンに警告する為に叫ぶ。
「ライカンさん!アノマリーが向かって来てる!避けるんだ!」
だが今のライカンは耳も目も一時的に潰れている。それでも残された感覚と本能でアノマリーの接近を察知し、回避を試みてはいるが、アノマリーが自身に追従しているのは気づく事が出来なかった。
「トラッパー!ライカンを引っ張れ!早く!」
「クソッ間に合わない!」
スキフはライカンの近くにいた筈のトラッパーにライカンを助けるよう言うが、度重なるアノマリーの攻撃ですぐに助けられなかった。
ライカンの目の前に
漸く視界が回復してくると、既に回避が出来ない距離にまで接近を許してしまっていた。
(不覚……!)
自身の不甲斐なさを呪いながら、アノマリーの直撃に備える。
そして─────ライカン達の
今更だけどアノマリーの名称は海外Fandomを参考にしています。もし名前が違くない?とかあってもユルシテ。