Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In 作:路肩の石ころ
沼地の奥に存在した、壊滅した讃煩会の拠点を調査している所に現れた「クリアスカイ」と呼ばれる企業のCEO「ナタリア・レベデフ」とその護衛達。
武装ヘリに乗っていきなり現れ、戦闘ロボットを投下してきた彼らを警戒し、スキフ達はクリアスカイとお互いに武器を向け合っていた。
スカイブルーの迷彩を輝かせる企業の兵士と戦闘ロボットを見て、スキフはある事を思い出した。
スカドフスクまでの道のりでホロウレイダーに聞いた、ストーカーの拠点を占拠した者達の存在である。
「……お前ら、ホロウレイダー達を武力で追い出して「イカロス」を占拠した連中だな?」
「人聞きの悪い事言わないで下さい、彼らにはちゃんと警告と交渉を持ってして快く退去して頂きました。」
そりゃあ完全武装の兵士に戦闘ロボットに加えて、恐らく攻撃ヘリの機関砲まで突きつければ大抵の相手は聞き分けが良くなるだろう。頭の中でスキフはツッコんだ。
レベデフはアキラに向けていた笑みを引っ込め、スキフに対しては睨むような目つきで言う。
「そもそも、あなた達は何者なのでしょうか?こんな所まで来ているなんて、ただのホロウレイダーのチームには見えませんわ。こちらが先に自己紹介をしたのだから、そちらの素性も明かすべきでは?」
こちらを警戒するレベデフの周囲に展開していたクリアスカイ社の警護兵が装備する黒のゴーグルやバラクラバから覗かせる目が鋭くなる。
リヒター達も対抗してクリアスカイ兵を睨みつけるが、スキフはライカンに目配せをする。
ライカンとアキラは“正式なZONE調査員”としての身分で来ている。本来は不法侵入者であるホロウレイダー達よりもずっと正当な理由でここにいるのだ。
クリアスカイがマトモな企業であるなら彼らの許可証を見て退いてくれるだろうが、そうでないなら生き残りを掛けた殺し合いが始まるだけだ。
スキフの意図を察したライカンとアキラは正式許可証を取り出してレベデフ達に見せつける。
そしてライカンは自分達が誰の命令で沼地にやって来たのかを明かした。
「私達は新エリー都市長、メイフラワー閣下のご指示でホロウ化した沼地の調査を行なっております。怪しい者ではありません、直ちに武器を下ろして頂きたい。」
「……まさかメイフラワー市長の調査員だったとは……セキュリティ、直ちに武器を下げてください。」
「………え?これ市長の依頼だったの?俺達市長に雇われてたの?マジで?」
新エリー都市長の名を聞いてレベデフは軽く驚いてクリアスカイ兵達に武器を下ろすよう命令した。その命令でクリアスカイ兵や戦闘ロボットの武器が下ろされ、こちらに向いていた攻撃ヘリの機関砲も別の方向へと向く。
一方リヒターが今回の仕事は市長からの依頼だった事に素っ頓狂な声を出し、ウルフやトラッパー、スキフまでも意外な人物からの依頼だった事に驚いていた。
(そう言えば……ライカンさんは今まで“雇い主”としか言ってなかったな。)
市長を含め、ヴィクトリア家政に仕事を依頼した人物の事を「ご主人様」と普段は呼ぶライカンだったが、ZONEでの仕事はライカン個人に命じられた仕事であり、更に一応機密情報としていたのか市長の存在を伏せていた事に今更気付いたアキラ。
スキフにライカンがヴィクトリア家政に勤めている事は前に教えたが、市長からの仕事と言うのはシドロヴィッチかZONE駐留部隊しか伝えられていなかったのだ。
取り敢えず、相手が酔狂なホロウレイダー集団ではない事を知ったクリアスカイが武器を降ろした為、スキフ達も続いて相手に向けていた銃口をゆっくり下げる。
「危うく市長様の調査員に迷惑を掛けてしまうところでした。申し訳ありませんわ。」
謝罪するレベデフに、何とか一触即発の危機が過ぎたことに安心したライカンが次は自分達の質問だとばかりに聞く。
「私達が沼地を歩き回って漸く辿り着いたここに、何故クリアスカイは一目散にここに“辿り着けた”のですか?それもCEOである貴方直々にやって来るとは。」
ライカンの目が厳しくなる、何せクリアスカイはホロウ化した沼地の奥にある筈の讃煩会の拠点に真っ直ぐヘリを送り込んできたのだから。
だがレベデフはなんてことないように、自分の会社の技術を自慢し始めた。
「我が社の開発したデータスタンドが1つあれば、こんな沼地を包む小さなホロウなんて、完璧に解明出来てしまうのです。
ZONEのホロウ化……もといホロウへ戻ると言う奇妙な現象を解析する為に、クリアスカイはここに調査へと赴いた訳です。私が直接来た訳は……元より現場で動くタイプなので。」
「………本当かぁ?」
自分達がせっせと4つもデータスタンドを設置して、やっと沼地全体をスキャン出来たのにたった1つでそこまで出来るのかと疑うスキフ。
だがクリアスカイという企業の事を知っているらしいライカンが真実であるとスキフに教えた。
「クリアスカイはホロウやエーテル関連技術に関する特許技術を幾つも保有しています。彼女の言う通り、クリアスカイ製のデータスタンドはたった1つで従来のデータスタンド10本分の範囲をスキャン出来る性能を有すると言われています………あくまで宣伝通りの性能ならの話ですが。」
「お褒めに預かり光栄ですわ。得られたスキャンデータを解析した結果、沼地の奥に「ミアズマ」が検出されまして、その位置が丁度ここだったのです。」
「ミアズマが……?」
この拠点にミアズマが存在している事に驚くライカンに、リヒターが事実だと肯定した。
「そいつの言ってる事は本当だライカンさん、奥に焼かれたミアズマの残骸が残ってた。」
「まさかとは思いましたが、やはりホロウ化した原因となり得るかもしれない物が存在したようですね。私達はこの地の調査に入りたいのですが、ご一緒しても宜しくて?」
ライカンは考える。当初の目的であった讃煩会の計画の調査はほぼ終わったような物だ。
讃煩会は壊滅しており、当時何が起きていたのかは大体把握出来た。あとはこの残骸の山に目ぼしい情報が残っているかどうかだが……
「兄貴、一通り探したが碌なもんが残ってなかった。」
「こっちもからっきしだ。」
ウルフとトラッパーが口を開き、何も見つからなかったと語る。
「俺たちも大した収穫は無しだライカンさん。」
「これ以上は時間の無駄だ、とっとと引き上げよう。」
リヒターに続きスキフまでも情報は見つからず、早くこの場から出ようと言う始末。
スキフ達が本当に何も情報が見つからなかったのでは無く、クリアスカイに集めた情報を奪われる可能性を警戒している事をライカンは察知した。
ライカンとしてもクリアスカイは話が通じる相手ではあるが、信用出来る相手だとはこれっぽっちも思っていない。
余計なトラブルに発展するのを防ぐ為、ライカンはここで調査を打ち切る事に決めた。
「見ての通り、私達は酷く消耗しております。自分達で調査をしても収穫が見られない以上、疲労も合ってここで失礼させて頂きます。」
「………そうですか、そちらが良ければ我が社のヘリでお送りしましょうか?」
「お気遣い痛み入ります。ですがご心配無く、自分達の足で帰れますので。」
「なら仕方ありませんね、どうか帰り道に気をつけて、沼地には凶暴なミュータントが沢山いるようですから。」
沼地の現状を全く知らないであろうレベデフの言葉を後に、スキフ達は讃煩会の拠点を離れる。
レベデフは調査の為に護衛の兵士達に命令を出し始めた。
「皆さん、ここで
武装ヘリの中にいるボンプにレベデフは手招きをする。臆病な印象を受けるボンプはヘリから降りた後、アキラを見てペコリとお辞儀をした。それを見てアキラも思わずお辞儀を返す。
(やっぱり……何処かイアスに似ているな。)
はっきりと姿を現したクリアスカイのボンプの姿はイアスによく似ていた。特に着ているボンプ用の服の柄が都市迷彩である事以外のデザインがイアスとそっくりの上、服と同じ迷彩のスカーフに描かれた「01」まで一致している。
クリアスカイのボンプはそのままスキャナーらしき機能で周囲をスキャンし始める。
そんなボンプを見ていると、レベデフがアキラに向かって薄く笑いながら手を小さく振っていたのに気付いた。
アキラは彼女に対しても会釈を返し、スキフ達に遅れないよう足早にその場を去る。
アキラが霧の中に消え、クリアスカイ以外の人間が居なくなった瞬間。レベデフの笑顔が消えていく。
先程までの笑みは何処へやら、冷たい目をしながらレベデフは、霧の向こうに消えたアキラの背をただ思いながら、呟いた。
「…………罪人の子。」
◆ ◆ ◆
「全く、胡散臭い連中だったな。」
ミュータント達はおろかエーテリアスでさえ見かけなくなった沼地を出るために進みながら、唐突に口を開いたスキフの言葉に、リヒター達ZONEのホロウレイダーは同感だとばかりに頷いた。
既に滅んでしまったチョルノービリのクリアスカイがどんな者達なのかスキフは全く知らない。だがこの世界のクリアスカイよりかは信用出来る連中だっただろうと何となく感じた。
「何度見ても企業の連中は好かないな、脅しをかけながら完璧に笑顔を張り付かせる天才だ。TOPSもそうじゃない企業も変わらない。」
「昔企業となんかあったのか?」
「まぁ、色々とな。」
この世界でミュータントハンターなんて酔狂な事をしているトラッパーは、ZONEに来る前は何をしていたのか気になったスキフ。だが彼は多くを語ろうとしなかった為、スキフも深く聞かない事にした。
アキラはライカンがクリアスカイの事を知っていたのを見て、どんな企業なのか聞いていた。
「ライカンさん、クリアスカイとはどんな企業なんだい?僕はあまり詳しくなくて……」
「クリアスカイ・コーポレーションは主にホロウ内設備やエーテル関連製品を製造している現在急成長中の企業で、営利企業の中では一番ZONEに目をつけ、独自に研究を行なっている企業でもあります。
先程も言った通り、様々な特許技術を保有しており、そこから作られる製品は高い評価を得ている事で業界では有名ですね。“昔”はその特許を狙ってTOPSから様々な買収工作を受けていたようです。今ではTOPS入りを目指していますが。」
「そんな企業がどうしてZONEに……他の企業の目とか気にしていないのかな。」
ZONEに注目する企業は数多くあるが、だからと言って全部が全部ZONEに首を突っ込むような企業ばかりではない。アパレル企業やゲーム会社なんてZONEには殆ど関わらない。
それでもビジネスを見出した企業が、ZONEが出来たばかりの頃に我先に立ち入ったが、ホロウとは違い過ぎる危険な環境を前に次々と損害を出して撤退。
今ではヤンターの研究基地に資金を出すか、ホロウレイダーや反乱軍を使って間接的に介入かのどっちかしか企業と言う組織は関わって来ない。
現状、直接的に利益になる成果が出ていない以上、営利組織である企業は制圧部隊の末路もあってかZONEに本格介入はしていない。
だがクリアスカイはZONEに直接人員を、それもCEO本人が直々に乗り込んできている。損害を恐れていない以上に、他の企業から“抜け駆け”と見なされたりしないのだろうか、とアキラは感じた。
「……恐らく、TOPSの先駆けとしてZONEへの介入を画策しているのかもしれません。」
「TOPSの先駆け…?クリアスカイはTOPSではないんだろう?どう言うことだい、ライカンさん。」
「以前までクリアスカイは小規模経営の小さな会社だったのです。共同経営者の“兄妹”が会社を運営しており、その兄妹の力で小さな会社でありながら特許技術を狙うTOPSの買収や干渉を跳ね除けていました。」
アキラは素直に驚いた、小さな会社があのTOPSの魔の手を跳ね除けるなんて非常に珍しいからだ。
「“交渉に長けた兄”と“開発部長を兼任する妹“、2人の経営者の方針によってTOPSとは距離を取っていたのですが……
「失踪だって……?」
「はい、兄妹の失踪後、兄の方の婚約者であったナタリア氏が会社の実権を握り、それまでとは打って変わってTOPSに接近。特許技術を餌に様々な企業から資金を得て事業拡大を続け、今ではTOPS入りも夢ではない規模にまで成長しています。」
「つまり反TOPSだった前経営者が消えた途端、急にTOPSに迎合するようになったと……なんか、陰謀論みたいな物を感じさせるストーリーだね。」
もしかしたら前経営者の失踪は、レベデフやTOPSが目論んだ物かもしれない───インターノットのスレで囁かれそうな話だ。
実際TOPSの”悪行“は真偽はともかく非常に有名である。あくどい行為の幾つかは新エリー都では公然の秘密のようなものだ。
「とは言え、当時の失踪事件に彼女やTOPSが関わっている証拠は一切無く、所詮ゴシップに過ぎません。見方を変えれば方針転換したナタリア氏の見事な手腕とも言えます。
実際、TOPSと関係を持つようになってから会社を大きくする事ができましたからね。
話を戻しますが、クリアスカイが直接ZONEにやって来たのは、TOPSに代わって火中の栗を拾う為でしょう。実は彼らがZONEで得た研究成果をそっくりそのままTOPSに流しているのは有名な話なのです。」
「わざわざ危険なZONEまで来て、その成果を全部渡している?随分と気前がいいんだねクリアスカイは。」
「全てはTOPSに加わる為……私の推測に過ぎませんが、情勢が不安定かつ、利益が見込めるか不透明なZONEに率先して介入し、そこでの成果を渡すことでTOPSへの口利きを引き出すつもりなのでしょう……ただ。」
一拍おいて、ライカンは続けた。
「その場合、何故ZONEへの介入というリクスの大きい方法を選んだのか理由が分からないのです。クリアスカイ程の企業なら、自らの力だけでTOPSに入れる程の業績はあるというのに。」
「もしかしたら、別の目的があるのかもしれないね。」
わざわざCEOが直接やって来ているのだ、ただTOPSに媚を売る為にZONEに来たとは思えない。
讃煩会の拠点を見つけ出した事と言い、自分に向けられたレベデフの笑顔に何処か怪しい所を感じながら、アキラは沼地を進んでいった。
◆ ◆ ◆
結局、沼地を出るまで敵に遭遇すること無く脱出する事が出来たスキフ達。
霧の中から生還してきたスキフ達を見て、封鎖線を張っていたザトンのホロウレイダーやバンディット達は驚愕し、大騒ぎになった。まさか生きて帰ってくるとは思わなかったのだろう。
軽く小休止を取った後、彼らがスキフやライカンのアーマーがズタボロなのを見かねてスカドフスクまで送ってくれた事もあり、一行は無事、安全な拠点に戻ることが出来たのだった。
スカドフスクの扉を開くと中で駄弁っていた者達が一斉に静まり返る。全員の視線はスキフ達に向いており、揃って目を丸くしていた。怖気づいて逃げて来た……と言うには余りにもアーマーがボロボロ、人数も減り、皆して疲れ切った目をしていたので間違いなく沼地から帰還したのだと、スカドフスクの全員が一目で理解した。
そんな船内をお構いなしにスキフ達が中心のテーブルに近づいていくと、そこにいたホロウレイダー達が場所を開けた。
譲ってくれるなら遠慮なく──椅子は無いため腰は掛けられない──テーブルに体重を掛け、息をつく。
生きて安全地帯に辿り着いたという安心感で力が抜ける感覚がスキフ達を襲う。ライカン以外の全員がどうして椅子が無いんだとスカドフスクの酒場にクレームを入れたくなる程であった。
そんな彼らを黙って見ていた周囲の人間の1人が漸く口を開く。
「畜生め、俺もビアードも大損だ。」
どうやら生きて帰ってくるかどうか賭けをしていたらしきサルタンがそう言うと、スカドフスク内は良くも悪くも沸くことになった。賭けにはスカドフスクの全員が参加していたらしい。
「未だに信じられん、外来種のエーテリアスが4体もいるなんてそりゃあ誰も生きて帰って来ない訳だ。」
「そう思うよなビアード、俺達も追い込まれてあわやって所に現れたのがミュータントの大軍勢さ、巨大なホーンヘッド…“王”が外来種や上級エーテリアス共をちぎっては投げちぎっては投げ────」
「その話もう3回目だぞトラッパー。」
意外な事に外来種のハティ達や沼地を支配したエーテリアスの、“王”率いるミュータントの軍団の事はあっさりと信じたビアードや他の者達。
ザトンで名の通ったトラッパーの発言なら、嘘を言っていないと分かるのだろう。
「そこでよ!俺の相棒がライフルをハティのコアにぶっ刺して天まで届く閃光を─────」
「ライカンの兄貴の止めの一撃は大地を割り雲を裂き沼地に轟く大爆発を──────」
他にもリヒターやウルフが、ニトロフューエル片手に沼地で何があったか少々誇張しながらスカドフスクの面々に武勇伝を語っている。
一方スキフ、アキラ、ライカンの3人は軽く食事を取ったらすぐにスカドフスク上階の宿泊用の寝室に転がり込む事にした。外は既に暗闇が支配しつつある。眠るには丁度良い時間だ。
「ライカン、お前のアーマーはまだ使えそうだったのか?」
廃船の船員室でアーマーを脱いでシャツだけになったスキフがライカンに聞く。
ボロボロになった装備を全てスカドフスクのメカニックに押し付けたのだ。黒焦げになったり融解したアーマーや破損寸前の銃火器を渡されたメカニックは表情が引きつっていた。
「いえ、損傷が酷く修理するのには数日は掛かると……どの道明日にはZONEを出る予定ですので最低限の修復で済ませることにしました。」
「へぇまだ使えるのか……俺の方は駄目だった、ジャンクにすらならないとよ。その代わりここの
スキフがベットの脇に置くのはZONEの職人が作った「サンライズアーマー」、どうやらこの世界でも同じ物が作られていた様だった。
ヤンターの研究基地でたまたま手に入った「PSZ-5アーマー」によく似た防具は残念ながら御臨終だ。
あの戦いで
「装備の修理費や購入費についてはお申し付け下さい、必要経費として別途支給致します。」
「そりゃあ助かる、ガウスガンの修理費は安く無いからな………プロキシはもう寝ているのか。」
スキフがアキラの方を見ると、錆びついたベットに年季が入ったマットに薄いシーツが掛けられた粗末な寝床で泥の様に眠り込んでいた。
「1日中歩き回った上、激戦に巻き込まれたのです。相当お疲れでしょう、スキフ様もお休みになられて下さい。」
「お前が一番疲れてるんじゃないか?あの炎の外来種とずっとタイマンを張っていたんだからな。」
「執事たるもの、どれだけ疲れていようと仕事中に表に出す事はあってはなりませんので。」
「流石完璧執事……とは言ってもいい加減休息は必要だ、俺は先に眠らせてもらう。」
「よい夢を、スキフ様。」
ベットの近くにあるランプの明かりを吹き消し、スキフはベットに横になる。
横になった途端、疲れが一気に押し寄せて来る。だがスキフは眠る前に讃煩会の拠点で見たミアズマ……それに触れた時に呼び起こされた記憶をもう一度思い出す。
(結局、“夢”で見た讃煩会の事は分からなかった……だけどミアズマに触って思い出したあの“言葉”を俺は知っている。元居た世界のザトンに存在したSIRCAAの施設……あそこで俺はあの言葉を聞いたんだ───モノリスの声を。)
SIRCAAが行おうとした「第二次カリブ実験」。その為に
かつてスキフが間近まで近寄り、誰かが望んだ願いを歪んだ形で叶え、ストーカーを洗脳するマインドコントロール装置の発する声。
“ヌーンタイド”と共にSIRCAAによるモノリスの再稼働を止める為、“ある男”と制御室まで乗り込んだが結局止められず、頭に響き渡った、支配下に誘う悍ましいあの言葉と一字一句同じ言葉。
(だけど…あの時とは違った。あれは……まるで……
───
眠気が最高潮にまで達し、何度も何度も同じ言葉が反復し、とある考えが導き出される。
(俺をこの世界に呼んだのは……モノリスなのか?……それとも………)
疲れ果てたスキフの脳は限界に達し、眠気によって意識がぷっつりと途絶えた。
イディーカムニエー