Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In   作:路肩の石ころ

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5.向かわねば

 

 

 

 「У, мать вашу(うぅ…このクソが)…また、ホロウに逆戻りかよ。」

 

 亀裂へ向かって殴り飛ばされたスキフは呻き声を上げながら立ち上がる。周囲はこの世界で目覚めてから嫌になるほど眺めたホロウの景色が広がっていた。

 

 痛みを堪えながら、急いで亀裂へ走ろうとし…立ち止まる。

 

 ZONEへの出入口である亀裂から、エーテル結晶で構成された鋭い手甲鉤が現れる。ミイラの様に変色した身体が姿を現す。下顎から垂れ下がる触手が見える。スキフだけを見据える目が此方を睨む。

 

 外来種・ブラッドサッカーがゆっくりと姿を現した。

 

 「お前、いい加減しつこいんだ…よ…」 

 

 武器を向けようとしたスキフは絶句してしまう。ガウスガンが無い、持っていた筈の両手に無い。視界をブラッドサッカーに向ける。その足元にはスキフが手放してしまったガウスガンが転がっていた。

 ガウスガンに着けていた筈のスリングは千切れていた、恐らくはそのせいで飛ばされた時に落としてしまったのだ。

 

 ブラッドサッカーは足元のガウスガンに気付くと、足で踏みつけようとするが止める。そのかわり後ろに向かって蹴り飛ばし──ホロウの亀裂、ZONEが存在する場所へとガウスガンは行ってしまった。

 

 スキフは軽く絶望した、この目の前の怪物に確実に致命打を与えられる威力を持つ自身の切り札を失ってしまったからだ。手元にあるのはPTMピストルとナイフ、そしてバックパックに結び付けられたガタが来ているASラヴィナ(自動小銃)とそのマガジン三つ。普通のブラッドサッカーなら複数体で襲い掛かって来られても十分な装備だが…生憎目の前の個体は特別製である。

 あの亀裂に飛び込めば、ZONEに帰還してガウスガンも拾う事が出来るだろうが、そんな事は立ち塞がるこのブラッドサッカーが死んでも許さないだろう。実際に死んでくれればスキフは非常に助かるが。

 

 

 両者が立つのは侵食された建築物用資材が各所に置いてある広い工場現場らしき場所。

 

 

 そこでスキフとブラッドサッカーは只管互いに睨み合っていた。

 

 

 どちらかが僅かにでも動こうとすれば直ぐに行動できる様に全神経を集中していた。

 

 

 ブラッドサッカーの後ろでホロウの亀裂が揺らめいている。

 

 

 スキフとブラッドサッカーの呼吸が重なる。

 

 

 ──そして、ZONEへ帰還できる亀裂は消えていった。

 

 

 亀裂が消えた瞬間、最初に動いたのは意外にもスキフの方だった。引き抜いたPTMピストルを怪物の顔面に向けて撃つ。9x18MM弾は人間の額に風穴を開けるには十分な威力だがミュータントに対しては余りにも心許ない。

 銃撃に怯まずブラッドサッカーはスキフに向かって爪を突き出すのに対し、スキフはブラッドサッカーの左側の懐に向かって飛び込み、地面に転がる。

 爪に手応えは無く、掠っただけと判断しスキフの方へと振り向いた瞬間、9×39MM弾の射撃がブラッドサッカーを襲う。

 

 スキフが手に持っているのはさっきまでバックパックに結びつけられていた筈のASラヴィナ(自動小銃)であった。

 わざわざスキフがブラッドサッカーに突っ込み、懐に潜り込む危険を冒したのはバックパックと自動小銃を結ぶ紐をブラッドサッカーに切らせる為だ。元々戦闘中に解けない様に固く結んであった為、ヤツを目の前に悠長に解いていられない。

 結局、ASラヴィナ(自動小銃)に浅い爪痕が残る程度で済んだが、もう少し深ければただ武器を一つ無駄にするだけの危険な賭けだった。

 

 我ながら馬鹿みたいな賭けだな──スキフは自嘲しながら目の前の怪物にマガジン内の残弾を撃ち込む。

 ブラッドサッカーは透明化し、周辺の遮蔽物を利用しながらスキフの周りを縦横無尽に駆け巡る。その爪で引き裂く隙を待つ為に。

 スキフも背中を取られないようブラッドサッカーの位置を見据えるながら射撃を撃ち込が、マガジン内の弾が底をついた。その瞬間を狙い姿を現したブラッドサッカーはスキフに向かって飛びかかる。

 

 スキフは咄嗟にスライディングしながらマガジンを交換──残り二つ──し、すれ違った後に着地したブラッドサッカーの背中に銃撃を加える。

 装甲も肉体もかなりダメージが残っているせいで苦痛に呻くブラッドサッカーは透明化し、再度周辺の遮蔽物に身を隠す。

 

 スキフがマガジンの残弾を計算しながらブラッドサッカーが身を隠した遮蔽物に武器を向けると──金属が何かにきり裂かれる音がした。

 その瞬間、遮蔽物の周囲が煙に包まれた事にスキフは一瞬怯んだ。スキフは何が起こったのか分からなかったが、ブラッドサッカーはホロウ内に放置され侵食された消火器を切り裂いたのである。

 

 透明化を維持したブラッドサッカーが咆哮を上げながらスキフに向かって跳躍したのが、煙の動きを見ることで分かったスキフは飛び掛かって来る箇所を予測し、銃撃を加える。

 

 

 手応えが無い。

 

 

 銃弾は空を切って行った事に気付いたスキフは背後を取られたと思い、即座に真後ろに銃撃を加える。

 

 

 弾丸は後ろの建築資材を穿っただけに終わり、マガジンの底がつく。

 

 

 スキフの脳がブラッドサッカーを見失ったと認識する前に、スキフの眼がブラッドサッカーの居場所を捉えた。

 

 眼の前で、その身を全力で伏せていた。

 

 スキフの弾切れを狙って、背後まで跳躍し、息を潜めていた。スキフの銃撃する箇所を予測して、その身を限界まで屈めていた。

 

 地面を削りながらスキフの顔面に迫る爪に、咄嗟に両腕でガードする。

 凄まじい熱が腕を襲い、銃を落としてしまう。余りの激痛にその場に蹲ってしまった。より深く裂かれた左腕の傷は骨まで達しているかもしれない。両腕から大雨の時の雨樋の様に血が落ちて行く。スキフは声すら上げられなかった。

 

 アーティファクト(ハイパーキューブ)の止血効果を持ってすればもう少しすれば血は止まる、だがその傷と痛みはアーティファクト(ハート・オブ・チョルノービリ)の効果を持ってしても、短時間では収まらない物であった。

 

 自らを見下すブラッドサッカーにスキフは見上げる事しか出来ない。ブラッドサッカーは漸くこの獲物を引き裂く事が出来るという恍惚感に満たされていた。

 

 ホロウ(ZONE)では良くある、異形の怪物(ミュータント)に狩られる人間の光景。

 

 そんなありふれた場面で、スキフは少しでも苦しみから逃げる為に目を閉じるしか無かった。

 

 持ち上げられた爪が、残酷にもスキフを引き裂く───

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間──ブラッドサッカーの背中を、光刃が切り裂いた。

 

 「………え…?」

 

 ブラッドサッカーはその爪を振るう事なく倒れる。その背中はまるで切られたかのような斬撃の傷が出来ていた。

 

 「誰か…助けてくれたのか…?」

 

 スキフは命を救ってくれた恩人を探そうと周りを見渡す、だがそこには誰もいなかった。

 

 そんな折、視界の端で光が見えた。その光に、スキフの本能が全力で警告を放った。

 

 「あぁぁぁぁぁ!」

 

 未だ激痛がする両腕を抱えながらスキフはギリギリで回避を成功させた。

 

 完全に失念していた、ホロウを支配し、そこに住まうのはミュータント(外来種)ではない。奴は獲物二匹が消耗し、油断するその時を狙っていたのだ。

 

 スキフは何とか銃を手に取り、地面に刺さる鉄骨の上に立つ、そのエーテリアス(在来種)を見つけた。

 

 

 そのエーテリアスを一目で現すなら弓兵であった。エーテリアス特有の黒いコアが頭に浮かび、その右手は巨大な弓と化しており、弓のリムには巨大な刃が備えられている。胴体の左側は首から広がるマントの様な物質に隠れて見えない。

 

 遠目で見ても、スキフが出会った首無し騎士(デュラハン)と同じ威圧感を放っていた。だが、スキフが見たそれより、エーテルの結晶が赤く光っていた。

 

 その巨大な弓を向けた赤い弓兵(タナトス・蓄エネ型)がスキフに向けてその矢を放った。その弓から放たれた攻撃はエーテルの刃と成りスキフを切り裂かんと迫ってくる。

 

 咄嗟に屈んでその光刃を回避する、マガジンを交換しようとするが腕が殆ど動かない。

 

 (動け、動け、動け。)

 

 腕の激痛を堪え、必死に最後のマガジンを装填しようとするが、目の前に気配を感じる。

 スキフが顔を上げると、音も無く目の前に現れたエーテリアスが、此方に大剣でもある右腕の弓を振り下ろそうとした。

 スキフが人体を縦に裂かれる前に横に倒れ込むように回避する。地面に酷く傷付いた腕が擦り付けられ痛みに呻く。

 

 スキフが振り返るとエーテリアスが弓を此方に向けている。攻撃を幾度も躱し続けたせいでマトモに動けない程スタミナが消耗していた。アーティファクト(サンダーベリー)のスタミナ回復はあと数秒掛かる。その時間で目の前のエーテリアスはスキフを撃ち抜く事が出来た。

 

 スキフの顔前に光が迫る。目を閉じる事もできず、間抜けにもマガジンが抜かれた銃を抱えながら見つめる事しか出来ない。

 

 

 

 何か、資材が倒れ落ちる音が鳴り響いた。

 

 

 

 スキフを切り裂く筈だった光刃は音のする方に向けられ、放たれた光刃に資材が切り裂かれた。

 

 攻撃が外れたと感じ取ったエーテリアスは突然姿を消す。スキフはそれを眺めるしか事しかできなかった。

 

 呆然とするスキフのそばに小さな影が寄ってきた。

 

 猫だ。なんの変哲もない、可愛らしい黒猫だ。

 

 ホロウの様な環境には場違いな、その存在にスキフは助けられたのだ。

 

 黒猫はまるでついてこいとばかりに走り出した。スタミナが何とか回復したスキフは全速力で黒猫と同じ方へと走り出す。黒猫とスキフが走り出した途端、先程までいた場所に光刃が振り注いだ。

 

 まるで道を知っているかの様に黒猫は時折スキフに向かって鳴き声を上げながら走る。スキフはその黒猫を信じて付いていく。

 

 走っていた猫が突然横へ逸れる。スキフも同じ方向に曲がった瞬間、さっきまでスキフの身体があった位置に音も無く現れたエーテリアスが刃を振り下ろしていた。

 

 (この黒猫は神の使いか!?)

 

 スキフはそう思わざるを得なかった。延々と続く建築現場の様なホロウを黒猫と共に進む。まだ腕には激痛が走るが出血は何とか止まった。走りながら何とか手を動かしASラヴィナのマガジンを交換する。

 

 いつの間にか、あのエーテリアス(タナトス)の追撃は無くなっていた。未だ目の前を走る黒猫についていきながらスキフは周りを見渡し───光刃が来るのを察知した。

 

 視界の遠くに、高台から此方を狙っているエーテリアス(タナトス)がいた。

 

 その照準は、黒猫とスキフを狙っていなかった。スキフが正面を見ると、明らかに爆発物だと分かる赤いドラム缶が多数あった。黒猫はその横を通り過ぎようとする。

 

 スキフは全力で黒猫へ飛び込み、覆い被さった。

 

 エーテリアスが放った光刃がドラム缶に直撃すると、大爆発がスキフと黒猫を包み込んだ。

 

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 

 (Идиот(バカ野郎) Идиот(間抜け) Идиот(この阿呆が) その場に伏せて居れば良かったのになんで猫なんか助けちまうんだ。)

 

 スキフと黒猫を巻き込んだ爆発は、スキフが持つアーティファクトの防護効果を上回り、その身体に致命的なダメージを与えていた。

 即死してないので身体はいずれ回復するだろう、腐ってもスキフの持つアーティファクトは全て伝説級の代物なのだ。

 だが、わざわざその時間を与えるほど目の前に現れたエーテリアスはИдиот(愚か者)ではない。

 

 スキフが庇った黒猫は何処かへ行ってしまった。庇ってやったお陰で黒猫は無事だったが傷付いたスキフを一瞥すると走り去ってしまった。

 

 (薄情者め、次会ったら承知しないぞ。)

 

 スキフは黒猫に軽く恨み事を吐きながら目の前のエーテリアスを残った力で睨みつける。

 

 エーテリアスは今度こそスキフを仕留める為に弓を向ける。

 

 流石にこれまでか───スキフがそう思った時、エーテリアス(タナトス)の後ろから、歪んだ空間(・・・・・)が飛び掛かって来た。

 

 

 

 歪んだ空間がエーテリアスに掴みかかるとまるで藻掻く様に暴れ始め、エーテリアスの身体に爪痕の様な物が次々と浮かび上がる。スキフが驚いていると、その歪んだ空間の正体が姿を現した。

 

 外来種のブラッドサッカーだ。獲物を仕留める最大のチャンスを邪魔をされて完全に怒り狂ったこいつはこのエーテリアス(タナトス)を追跡し続けていたのだ。

 

 ───こいつあの傷でまだ生きてるのか。スキフがこのミュータントに畏敬の念すら抱いていると、エーテリアスがブラッドサッカーを投げ飛ばす。だがブラッドサッカーが投げ飛ばされた瞬間に地面を蹴って、凄まじい勢いでエーテリアスに再度突っ込んで行く。そのまま二体は近くの壁に激突し、瓦礫が吹き飛び粉塵が巻き起こる。

 

 だが瞬間移動でもしたのか、マントを翻しながらエーテリアスが姿を現し、粉塵に向かって光刃を放つ。粉塵が切り裂かれると同時に大砲が通ったかのような穴が粉塵を突破する。

 

 エーテリアスが姿を消すより疾く、その身体を爪が切り裂く。切られたエーテリアスがその弓に備えた大剣を振り下ろし、ブラッドサッカーは正面からそれを受け止める。

 直後、凄まじい旋風とエーテル物質同士の激突による火花が巻き起こった。

 

 互いが互いを弾き飛ばし、ブラッドサッカーは透明化を、エーテリアスはマントを翻して消え、一瞬の静寂が起きる。そして刹那の時、同時に姿を現して再度鍔迫り合いを始めた。

 

 目の前で繰り広げられるミュータント(ZONE)VSエーテリアス(ホロウ)の頂上決戦の様な戦闘にスキフは圧倒されるしか無かった。だが最後のマガジンを備えたASラヴィナ(自動小銃)をどちらにでも放てるようには準備していた。

 

 『勝った方が我々の敵になるだけです』

 

 子供の頃に見た古い海外の映画のセリフを思い出しながらスキフは二体の戦いを見据えていた。

 

 

 

 

 

 外来種のブラッドサッカーとエーテリアス(タナトス 蓄エネ型)の鍔迫り合いは、ブラッドサッカーが突如、膝を屈する事によってエーテリアスが優勢となった。

 スキフから散々受けた傷と、目の前のエーテリアスによって付けられた背中の傷が余りにも負担となっていたからである。

 

 本来このエーテリアス(タナトス)はここまで力押しで迫るような戦術を取らない。だが、目の前のこのミュータントはエーテリアスにとって絶対に排除すべき病原体の様な存在として認識している様だ。表情がもし存在するなら、明らかに怒りの表情が浮かんでいた事だろう。

 

 ブラッドサッカーの身体に自らのエーテルの爪が食い込み始める程、エーテリアスの刃が迫ってくる。ブラッドサッカーは烈火の如く吠えるが、表情も感情も見えないエーテリアスには効果が無かった。

 

 ブラッドサッカーの肉体が、エーテルの刃によって分断される瞬間───銃撃がエーテリアスの全身を襲った。

 

 

 スキフが最後のマガジンに残る銃弾をエーテリアスに向けて放つが、途中で止まる。給弾不良(ジャム)だ。

 

 邪魔されたエーテリアスが弓をスキフに向けるが体勢を立て直したブラッドサッカーの爪がそれを許さない。光刃はあらぬ方向へと発射された。

 

 給弾不良を直したスキフが再度エーテリアスに鉛玉を食そうとするが、エーテリアスはマントを翻して消えてしまった。

 

 

 途端──凄まじい咆哮が辺り一帯を覆い尽くす。

 

 ブラッドサッカーがあらん限りの力を振り絞り咆哮を繰り出していた。ひび割れた胸のエーテル結晶から血を噴き出す程の勢いだった。

 

 その命を削る咆哮に消えた筈のエーテリアスが姿を現す。その姿は不協和音に耳を塞ぎ、頭を抱え苦しんでいる様に見えた。

 それでも震える腕で弓を咆哮を繰り出すブラッドサッカーに向けようとするが、エーテリアスはスキフの存在を失念していた。

 

 「おい、Идиот(愚か者) こっちも忘れんな。」

 

 スキフがASラヴィナ(自動小銃)の残りの残弾をエーテリアスの全身に隈無く食らわせる。

 

 全身を撃ち抜かれたエーテリアスが残る力でスキフの方へ振り向こうとするが──その後ろにブラッドサッカーの爪が迫り、コアごとその身体を切り裂いた。

 

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 

 エーテリアスを相手に奇妙な共闘を行ったスキフとブラッドサッカーは互いを睨みつけていた。

 

 ブラッドサッカーは今も倒れそうな程ふらついており、スキフも余りにもの肉体的ダメージに立ち上がれずにいた。

 だがスキフは相手に対して感謝の気持ちや共闘した事による情など一切沸いていない。それは向こうも同じだろう。敵の敵は何処まで行っても敵でしかない。相手がミュータントの様なバケモノなら尚更だ。

 

 「おれは、まだ、やれるぞ。」

 

 PTMピストルを向けながら自分でも驚くぐらい掠れた声で言い放つ。ブラッドサッカーもいい加減、終わりにしたいのか爪を構える。

 

 

 その間に、黒猫が割り込んで来た。

 

 「お前…逃げたんじゃないのか…?」

 

 とっくのとうに遠くへ逃げて行った筈の黒猫がスキフを庇う様にブラッドサッカーに威嚇をしている。それと同時に、この場所に向かう多数の足音が聞こえて来た。

 

 その音にブラッドサッカーは忌々しい眼でスキフを睨みつけ、透明化し、ホロウの奥へと消えていった。

 

 スキフは構えていたPTMピストルを地面に落とす、黒猫がどうだ、助けを連れてきてやったぞと何処か誇り高い顔をしていた。憎たらしいその頭を撫でてやりたいが、その力すら無い。

 

 スキフは意識が無くなっていくのを感じていた。傷はその内治るが失った血は戻らない。瞼が段々と閉じていく、だが、やるべき事がスキフにはあるのだ。

 

 

 

 「猫はこっちだ!あそこにいたぜ親分!」

 

 「気をつけてビリー、さっきの咆哮の主がいるかもしれない。」

 

 「ニコ!凄い血の匂いがするぞ!」

 

 「まって、誰か倒れてるわよ!」

 

 

 

 この世界でも、俺をZONEに導いてくれた友を助けなければ。

 

 

 「Помогите(助けてくれ)…」

 

 

 「…!まだ生きてるわ!ビリー、こいつを運ぶから手伝いなさい!アンビーは周辺警戒!猫又は猫ちゃん回収!」

 

 

 

 行かなくては、俺はあそこに向かわねばならない。

 

 

 

 「ZONE…ZONEへ、向かわないと…友達の下に…」

 

 

 「………いいわ。その依頼、この邪兎屋が受けてあげる。そのかわり、安くはないからね。払うもん払って貰うわよ!」

 

 

 その言葉を聞いたスキフは、この世界に来てから初めて、その意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

        Zenless Zone Zero

 

     The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In

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