Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In 作:路肩の石ころ
フェアウェイ作戦によってZONEに派遣されたオボルス小隊。
ZONEの何処かにいる讃頌会を見つけて排除する為に、自分達の担当区域の1つであるバーントフォレストにヘリで降下し、捜索を開始したが……
結論から言うと、バーントフォレストで讃頌会を見つける事は出来なかった。
“少佐”の指し示したポイントで活動の痕跡は僅かながら見られたが、彼女達に与えられた任務は讃頌会の索敵撃滅、讃頌会の信者を見つけ出さなければ始まらない。
丸一日かけて大した収穫を得られなかった事に鬼火は不満を感じていたものの、気を取り直して次の目的地……ケミカルプラント地域での捜索ポイントの1つ“アグロプロム”、そこに向かってオボルス小隊は足を進めている。
ケミカルプラントという地域を2つに分ける大きな川に架けられた橋の1つを渡りながら、PDAの地図を見ていた11号が先導をしていた。
「隊長、橋を越えて北東の湿原を越えれば”アグロプロム調査研究所“に到着します。現在アグロプロム一帯はバンディットの一大勢力に支配されているとの情報も。」
『バーントフォレストで何度か襲ってきたが、所詮はギャングに過ぎん連中……とは言え、ここら一帯がバンディットの縄張りになってるなら讃頌会の捜索に支障が出るかもな、いっそ潰すか。』
「あの〜鬼火隊長、曲がりなりにも一地域を支配する勢力と戦闘を行うのは色々とリスクが高いのでは……」
『そんな事心配しているのかオルペウス? 勢力と言っても精々数十人人も居ればいい方だろう、デューティやフリーダムと違ってバンディットの組織なぞ規模も戦力も影響力も大したものではない。奴らはZONEの嫌われ者だからな。』
鬼火に油断や侮りの気持ちは一切無い、プロの軍人としてそれは大前提であり、その上で自分達なら容易く殲滅出来るから言っているのだ。
常日頃強力なエーテリアスや重武装の反乱軍と戦い続けているオボルス小隊からすれば数十人程度のギャング団との戦闘なぞ遊戯──は言い過ぎかも知れないが、十分どうにか出来るレベルだ。
オルペウスもああは言っているが彼女の危惧するのはZONEの情勢に影響を及ぼすことにならないかという点が大きく、バンディット自体を恐れている訳では無い。
『話をすればなんとやら、車両接近!警戒体勢!』
橋を渡り終え、アグロプロム調査研究所までの道のりの間にある”湿地帯“で鬼火の目付きが変わり、オルペウス達も武器を抜いて臨戦態勢に入る。
湿地帯の先にある丘の上に重機関銃が備えられたピックアップトラックが現れ、バンディット達がぞろぞろと降車してきた。
数は8人、そして湿原の藪の中に数人が疎らに隠れ潜んでいたのを五感に優れるトリガーが気付く。
何故か怒り狂った表情を見せながら丘を下ってきたバンディットはオボルス小隊に武器を突きつけて叫んできた。
「少しでも動いてみろ!
バンディットはオボルス小隊を包囲する様に動き始める。
数で上回り、車両に重機関銃まで持っているのだ。おかしな動きを見せれば相手を容易くひき肉してしまう、それを撃たず近づいて来るのは此方を捕虜にするつもりなのだろうか。
「てめぇらに根掘り葉掘り聞きてぇ事があるんだ!動くなよ!」
だが、バンディット共にどんな意図があろうと大人しく捕まってやる気は無い。
「隊長、付近の藪の中に数名が潜んでいます。警戒を。」
トリガーは相手の位置を全て把握して小隊全員と共有し終えている。
「正面の敵は全員とっくにロック済みだよ〜」
シードは既にステルス状態の浮遊ビットとビックシードの武装をバンディットにロックしていた。
『シード、合図したら撃て。残りはコソコソ隠れてる奴らに対処しろ。重機関銃に注意。』
「「了解」であります…!」
鬼火とオルペウス、11号ならば、重機関銃一丁程度、正面から弾幕を叩き斬って突破できる。
既に相手を殲滅する準備は整っている、問題は待ち伏せしている者達だが───オルペウス達の耳に藪から男の声が聞こえて来た。
「おい…ホロウレイダー共。そのままだ、バンディットをもう少し惹きつけろ。」
「……!? あ…貴方達は……?」
「大人しくしてれば誰も怪我しなくて済むから安心しろ………今だ、撃て。」
困惑するオルペウスを気にせず、男がボソリと呟いた瞬間、湿原の各地から放たれた銃撃がバンディット達の頭を次々と射抜いていき、僅か数秒で8人のバンディットは一発も撃つ事なく物言わぬ死体と化した。
どうやら湿原に隠れていたのはバンディットでは無かったようだ。
『……お前達、武器を下ろすなよ。』
特殊部隊であるオボルス小隊から見てもバンディット達を手際良く排除した相手の高い実力を見て、鬼火はバンディット以上に相手を警戒している。
藪が揺れ、中から数人の赤い色の装備を纏った兵士が敵の残りが居ないか確認しながら姿を現した。
「協力感謝するホロウレイダー、お前達のお陰で奴らを誘き寄せる事が出来た。まぁ、お前達の動きからして俺達が居なくても対処出来ただろうがな。」
「貴方達は……デューティでありますか?」
「デューティは今ここから遠く離れたセメント工場に拠点を置いていると聞いたわ。何故こんな所に……」
まさかの意外な存在との出会いにオルペウスと11号が疑問を口にする。
武器のリロードを行いながらデューティはオボルス小隊の面々を見回し、口を開いた。
「アグロプロム周辺のバンディット共を駆除してる最中なんだ、……そこでお前達に1つ提案がある。」
「提案…とは?」
「ZONEの平和の為に働く気は無いか?勿論報酬も出す、すぐ近くに隊長がいるからそこで話そう。」
デューティは付いてくるよう促し、仲間と共に移動を始めた。
オボルス小隊も顔を見合わせ、どうするか考えたものの、取り敢えず聞くだけ聞いてみようとデューティに付いていく事にした。
デューティに付いていくと、オボルス小隊が居た湿原から南東に進んだ場所に、レンガ造りの建物と小さな変圧所があった。
そこには数人のデューティが待っており───湿原で出会った者も含めれば小隊規模の人数になる───戻って来た仲間を歓迎する。
「隊長、ただいま帰還しました!」
「B班!戻ってきたか、後ろのホロウレイダーは?」
「実力を見込んで連れて来ました、”白い怪物“の事もありますし、調査研究所のバンディットを駆逐する助けになるかもしれません。彼女達との交渉次第ですが……」
(コイツらの目当てはバンディットの殲滅か、手を貸した方が調査がやりやすくなるが……後でデューティが私達に干渉してくる可能性もある。)
鬼火は反乱軍であるデューティの事が嫌いではあるが、今作戦中はホロウレイダーに成り済まして行動している以上表に出すつもりは無く、利害が一致するなら共に戦うのもまぁ……やぶさかではないとは思っている。
とは言え、アグロプロムを調査する際にデューティがこちらを詮索してくるかもしれない。もし鬼火達の素性に気づかれたらコトだ。
「…………」
「曹長?何をしているんです?」
どうするか考えているとデューティの1人が妙な目付きで此方を──特に11号とシードを見ていることに気付く。
まじまじと顔を見られ、顔を顰めた2人がやんわりとデューティに忠告する。
「私達の顔に何かついているかしら。」
「あんまりジロジロ見られるのは好きじゃないな〜」
「……!?」
「あっ…まさか……」
2人の顔を見ていたデューティが何かを確信したかのように後退りし、その様子にオルペウスは非常に嫌な予感がした。
「オ…オボルス小隊!防衛軍共がここで何をしている!?」
「やっぱりバレたであります〜!?」
騒ぎながらそのデューティは慌てて此方に武器を向けてくる。
顔を見られただけで素性がバレた事に11号とシードは思わず素っ頓狂な表情になり、オルペウスとトリガーは頭を抱え、鬼火は眉間に皺を寄せ───身体構造上不可能だが───溜息を吐いた後、デューティ達を睨みつけた。
『はぁー……まさか反乱軍に2人の顔が割れていたとはな。』
「お前達の顔を忘れるものか!ロストク旧本部の屋上!1年近く前に貴様らがやって来たのを覚えているぞ!何せ屋上でずっと睨み合ってたからな!」
「う〜ん、そんな事あったけ?」
「………確か以前の任務で、隊長達がデューティの司令官と会談中、私達は屋上で待機していた筈よ。恐らくその時、私達を見張っていたデューティね。」
「フッ…オボルスとあろう者が敵の顔も覚えられないとはな!」
「だってZONEの人たち皆マスクか覆面で顔隠してるじゃん、覚えてる訳ないよ。」
「た…確かに……」
何とも気まずい雰囲気になりつつあるオボルス小隊とデューティ───その均衡は鬼火の口から吐き出された小さな炎で崩れる。
『さて?我々が防衛軍だと分かったらどうする?私としては貴様ら反乱軍を叩き潰してもいいんだがな。』
「鬼火隊長!いくらなんでも好戦的過ぎるであります!」
「どの道素性がバレた以上、このまま野放しにすれば任務に影響が出るかもしれん、こいつらとて私達を放っておくつもりは無いようだしな!」
オルペウスがデューティの方を向くと、既にデューティはオボルス小隊を囲む様に布陣し臨戦態勢を整えており、オルペウス達も交戦に備えざるを得なくなる。
デューティの小隊長はオボルス小隊に敵意を向けながら言い放った。
「“境界線”以外で防衛軍を発見したら排除せよとタチェンコ将軍はデューティ全員に命令している……例えオブシディアン大隊の”元“戦友であってもな。」
一触即発の現場となった変圧所。
オボルス小隊とデューティが互いに睨み合う状態の中、その間に1人が立ち、互いに手を向け制し始めた。
『……トリガー、何をしている。』
「なんのつもりだ、オボルスの狙撃手。」
トリガーの突然の行動に鬼火とデューティの小隊長は思わず銃口を下げる。
だが他のデューティは依然として武器を、それも前に立った自分に向けているのにも関わらず、トリガーは毅然とした態度で口を開いた。
「防衛軍はデューティを反乱軍の一つと見做しています。でも、貴方達は新エリー都の敵ではない、そうですよね?」
「当然だ、デューティはお前ら防衛軍に代わり、ZONEの脅威から無辜の市民を守る為にこの地に残り戦っている。テロリスト共とは違う。」
「……私達も新エリー都を、そこに住まう市民を脅威から守る為にこの任務を受けています。確かにデューティは防衛軍と袂を分かちましたが……共に向いている方向は同じ、市民の未来を守る為にきっと協力し合える筈です。例え……この瞬間だけでも。」
「……どうやら、以前のような下らない調査任務、という訳では無さそうだな。」
トリガーの説得にデューティ達はゆっくりと銃口を下げていく、それを見てオルペウス達も武器を下ろしていった。
互いが武器を下ろした事を感じ取ったトリガーは話を続ける。
「聞かせて下さい、一体何故デューティは何故本拠地から遠く離れたここでバンディットを討伐しようと?先程言った“白い怪物”とは一体……」
その疑問にデューティの小隊長は応えた。
「我々は重要な偵察任務の為にケミカルプラントへ遠征に向かった。だが偵察隊を2つに分けて行動中、偵察隊の指揮官である“シュルガ中佐”率いる小隊がアグロプロムでバンディットの奇襲を受け、虜囚の身となってしまった。
その時の通信でバンディット共が“白い怪物”を飼い慣らして襲ってきたとあった、中佐は元オブシディアンのコマンド部隊出身、相手がただのバンディットなら後れを取る筈が無い。」
「“白い怪物”の正体に何か心当たりは?」
「無い。最初はミュータントかと思ったが、ZONEのどのミュータントの特徴には当てはまらないし、そもそもミュータントを飼い慣らすなんてバンディットに出来るわけが無い。何か隠し持っているなら話は別だが。」
それを聞いたトリガーは鬼火の方へ振り向く。
「……隊長、恐らく彼らの仲間が遭遇したのは……」
『ああ……』
鬼火達もデューティを襲った怪物の正体に察しがついたようだ、同時にアグロプロムに目標がいる可能性が高い事も。
「讃頌会のサクリファイス……!」
「何だと!?」
オルペウスの呟きにデューティの小隊長や古参兵が驚愕に包まれる一方で、兵卒クラス──元ホロウレイダーのデューティは何のこっちゃと頭に?を浮かべていた。
「我々も衛非地区の事件は聞き及んでいる!讃頌会がこのZONEにいると言うのか!? ……待て、となるとオボルス小隊がここまでやって来た目的は……」
「私達がZONEに来たのは、讃頌会の残党を追うため。シュルガ中佐の小隊を襲ったのも、讃頌会が関わっている可能性が高いと思われます。」
『あー…トリガー、一応今回の任務は秘密作戦なんだからな?』
呆れた風に鬼火がトリガーに言うが、「勿論分かってますよ」と言わんばかりの笑みを返して来たのでそれ以上何も言わない事にした。
デューティの方は小隊長や古参兵達が何かを話し合った後、オボルス小隊に向き合い、小隊長が意を示す。
「衛非地区では讃頌会との戦闘でオブシディアン大隊に死者が出たと聞く。中佐達が捕まっている以上、増援を呼ぶ時間は無いし、我々だけでは手に余る可能性もある。恥を忍んで言う、仲間を助ける為にお前達の任務に協力させてくれ。」
「し…しかし隊長……独断で防衛軍に協力したと上に知られたら……」
「大丈夫です。」
心配するデューティを安心させるよう、トリガーが微笑む。
「他のデューティに知られそうになったらタチェンコ将軍に繋いで下さい。彼とは
◆ ◆ ◆
───アグロプロム地下 X-ラボ最下層「試験場」
「その後はデューティと共同戦線を張って調査研究所を制圧、エレベーターを使って地下施設の入口まで降りて、地下研究所の敵も全て倒した後、貴方達に再会したのよ。あの時、トリガーが居なかったら確実にデューティと戦闘になっていたわね。」
「全くです!時には相手への怒りを抑えてもっと穏便に対応するべきだと思うであります!特にこの間の様な「スナックは禁止だぞー!」とか言って没収、みたいな行動を抑えるとか!」
『此方の正体が露見しなければ何事もなくデューティに手を貸してやるつもりだったんだ!それに先に仕掛けようとしてきたのは奴らの方だったろう!あとオルペウス、全部聞こえているからな?』
「……申し訳ありません隊長、あの時顔を見られたせいで……」
『11号、お前に非は無い。どうしろと言うんだそんな稀有過ぎるケース……結果的になんとかなったんだから気にするな。』
スキフは11号達オボルス小隊がZONEへ来た経緯を聞いていた。
その隣でシュルガ中佐はデューティの兵士に手当てを受けつつ、同じ様に彼女達の話を耳に入れながら部下に何かを聞いている。
オボルス小隊──防衛軍はZONEにおける讃頌会の存在を把握し、どうにかする為に行動している。
ならば、誘拐されたアキラの救出にも手を貸してくれるかもしれない。
「なぁ、アキラの件だが……」
『スキフと言ったな、ここから出た後プロキシ君の誘拐について知ってる事を話してもらうぞ。もう1人のプロキシ君と一緒にな。』
「……協力してくれるんだな。」
『当たり前だ!プロキシ君には“色々と”世話になったからな!助けない理由なぞ無い!』
「全力で手を貸すでありますよスキフ殿!共にプロキシ殿を助け出しましょう!」
「……その表情は何?まさか私達が協力しないとでも思ったのかしら。」
「いや、アイツは随分と友達に恵まれてるなと思っただけだ。」
なんとまぁ奇妙な交友関係を構築しているとアキラの事を思ってはいたが、スキフが出会ってきたアキラの友人は皆彼の事を良く想っている、それもひとえに彼の人柄だろうか。
あの人たらしめ───そう思っているスキフだが、間違いなく自分もその人柄にあてられた1人であるのは間違い無い。
手当てが終わり、部下から代わりの武器を受け取ってスキフに貸してもらったASラヴィナを返却したシュルガ中佐は鬼火に話しかける。
「鬼火隊長、恐らく讃頌会は他にも拠点を構えている可能性が高い。」
『間違い無くそうだろうな。』
「私と部下達も讃頌会の殲滅に手を貸したいんだ、新エリー都を傷付けようとした奴らをこのままZONEに野放しには出来ない。タチェンコ将軍に直談判して増援も送って貰うつもりだ。」
『それは助かるが……本当に良いのか中佐?』
「……ここで部下が的扱いにされて死んだんだ、本音を言えば命令に背いてでも彼らの仇を取りたい。」
『……分かった。』
部下の亡骸を見て歯ぎしりするシュルガ中佐。
それを見て鬼火はデューティを受け入れる事にしたようだ。
話も済んだ事でスキフは上の制御室へと向かう。
11号達に讃頌会の生き残りがいる事を伝え、尋問の為に連れて行こうとする。
上のキャットウォークに登ったついでにスキフが潜り込んだ“抜け穴”を確かめて見たが、サクリファイスとの戦闘中に崩落したのか、土で埋め尽くされていた。
仕方無く後戻りし、気絶している讃頌会の人間を抱えて11号やデューティの1人に手を貸して貰いつつ、オルペウス達の前に突き出す。
「まだ生きてる、必要な情報を得られるかもしれない。」
『今すぐ叩き起こしたいが……まずはこっちからだ。』
未だに起きない讃頌会の構成員をその辺に転がしておくと、もう1人のデューティが酷く怯える男を試験場に連れてきた。
「鬼火隊長、捕虜を連れてきました。」
「こいつは……!」
『見たことあるようだな中佐。こいつはここでサクリファイスを作っていたらしい研究者の一人だ。バンディットを制圧中に降伏してきた。』
恐らくシュルガ中佐はX-ラボに連行されている時に彼を見かけたのだろう。デューティの兵士はその研究者を荒っぽく讃頌会の構成員の隣に投げ出した。
「や…やめてくれ!私は被害者なんだ!」
「何が被害者だクソったれ、私と部下達に何をしたか言ってみろ!」
『大人しく知ってる情報を吐いた方が身のためだぞ?何せZONEは無法地帯、誰ががどうなろうと誰も気にしないからな。ここで讃頌会は何をしていた!』
鬼火の脅しと怒れるデューティ達の銃口を向けられ、科学者は泣きべそをかきながら情報を喋り始めた。
「こ…ここでは“ハイブリッド・サクリファイス”を自立行動出来るよう改良を行なっている。制御が外れても戦術的な行動を取れるようにするのが目的らしい……」
「ここで作られてる訳じゃないなら何処でサクリファイスは製造されているんだ、言え。」
スキフが科学者の頭頂部にPTMピストルを押し付けながら聞く。
「し…知らない!ハイブリッド用の“オブスキュラ”の開発の為に讃頌会に誘拐されてからずっとここで作業させられていたんだ!連中の目的とか詳しいことは何も分からないんだよ!」
『オブスキュラの開発だと?お前は何処から誘拐されたと言うんだ?』
「刑務所だ……別の場所へ移送中に護送車が襲われて、そのままZONEに連れてかれた。わ…私が元々フェロクスさんの所で働いていたからだろう……あの時も讃頌会に協力していたから。」
「フェロクス……と言う事は貴方は元ポーセルメックスの社員だったのでありますか?」
(ポーセルメックス……確か、衛非地区で讃頌会と手を組んでいた企業だったか?)
リンに衛非地区での讃頌会との戦いを大雑把に教えて貰ったスキフ。
実際はもう少し込み入った事情があるのだが、今は大して重要では無い為ポーセルメックスの事はそこまで深く聞くことは無かった。
「知っているのはこれだけだ、後はそいつに聞いてくれ!」
科学者は隣で転がる讃頌会の構成員を指さす。
丁度、手足を撃たれた痛みで呻きながら起き上がってきた所だった。
抵抗しても即制圧出来るよう備えながら、讃頌会が目を覚ましたタイミングでスキフが声を掛ける。
「よう、目が覚めたかクソ野郎。また撃たれたく無かったら大人しく質問に答えるんだ。」
「!?貴様ら…警備のバンディットはどうした?」
「既に調査研究所も地下研究所も制圧済みよ。諦めなさい。」
「地上には仲間達も居ます!大人しく堪忍するであります!」
『ここで何をしているのかはそいつから聞いた。お前にする質問は2つ、讃頌会の目的と、何故“パエトーン”を誘拐したかだ!』
目を赤くし、銃口から火を吹き出す鬼火が讃頌会に対して激しい怒りを抱いているのは明白だ。
傍らのオルペウスと11号も同じだ、3人共アキラの安否が気がかりであるが故である。勿論スキフも同様、地味に目に怒りを滲ませてピストルを突きつけていた。
「フ…フフフ……そうか、この施設は
だが讃頌会の構成員はアグロプロムのバンディット達が壊滅させられたと聞き、此方を嘲笑うような、または諦めたような笑みを浮かべ始める。
それが癪に障った鬼火は相手を焼き尽くす勢いで炎を吐きながら詰め寄った。
『質問に答えろ!その顔を焼いて笑えなくさせてやろうか!』
「鬼火姉さん今は抑えてください!こいつを焼くのは尋問が終わってからであります!」
「そうか、我々の計画を幾度も妨害したというあの“パエトーン”が……“サラ”様から聞いた事が本当なら、その為に攫ったのか…?やはり言い伝えは本当だったのか。」
「おい、何1人で分かった風にしてるんだ。」
ブツブツと呟く讃頌会の構成員の頭に強く銃口を押し込むスキフ。讃頌会は死んだ様な目で面を上げて応えた。
「お前達の質問だが……我らにも分からん。何せ我々もそこの科学者の様にZONEに連れて来られた口だからなぁ?」
「どう言う事?讃頌会は何かを企てていて、その目的の為にZONEへ来た筈じゃ……」
11号の言う通り、ここまでスキフやオボルス小隊も“讃頌会”がZONEで暗躍している前提で動いてきた。
だが目の前の讃頌会の人間は、自分たちをZONEに連れてきた別の存在がいると言う。
『讃頌会が黒幕じゃないのか…?なら一体誰がお前達をZONEに連れてきた!』
「奴らもある意味“讃頌会”と言えるだろう、なにせ教えを曲解し、遥か昔に我々と袂を分かったと言われる───“異端者”だからな。」
「なっ……!?」
「異端者?讃頌会に分派があったのでありますか?」
その言葉を聞いてスキフは思わず声に出して驚く。
だが鬼火達やシュルガ中佐達デューティは聞き覚えの無い勢力に顔を見合わせている。
スキフの反応に心当たりがあると見た鬼火は問いた。
『おいスキフ、“異端者”に聞き覚えが?』
「……1年近く前、市長の依頼でZONEで拠点を敷いた讃頌会を捜索したんだ……讃頌会自体はとっくに全滅していたが、そこで手に入れた記録に異端者の存在があった。」
「そんな事があったんでありますか!?」
「1年も前に市長がZONEに来た讃頌会を把握していた……?防衛軍の記録には何も無かった筈……」
『市長の件については後だ!おい貴様!“異端者”とはどんな連中だ!奴らの目的は!衛非地区の讃頌会とどんな関係がある!知ってる事を全部吐け!』
再度、讃頌会の構成員に火を向ける鬼火。
表情1つ変える事なくその讃頌会は話を続ける。
「奴らの事は讃頌会に伝わる言い伝えくらいでしか分からん、最初に異端者が接触してきた時、“メヴォラク”様はおろか、サラ様や古株の者達でさえ、本当に異端者が実在していたとは思わなかった程だ。
ああ、その時にメヴォラク様と何か密約を結んでいたのは覚えている。恐らく以前ZONEに来たのはその密約に沿ってだろう、メヴォラク様が討たれた後、異端者の下に少なくない数の戦士達が合流して行ったのもそれに違いない。」
「メヴォラク……イゾルデ“元”大佐が?」
『それも後だオルペウス……その言い伝えとは何だ。』
「……………」
「おい、いきなり黙ってどうした?」
さっきまでペラペラと喋っていたのが一転、口を噤んでしまった讃頌会の構成員。
不審に思ったスキフが引き金に力を込めながら言う。
「………なぁ、お前等の仲間は
讃頌会の言葉に、嫌な予感がしたスキフ達はすぐさまそれぞれの仲間に連絡を入れるが、帰ってきたのは雑音だけであった。
「リヒター…おいリヒター!応答しろ!リンはそこにいるか!?畜生、リヒター!」
『オルペウス!2人との通信は!?』
「トリガーさんともシードとも連絡が取れません!」
「コヴァルスキー大佐やスティングレイ4とも通信不能……!まさか妨害されているの…!?」
「シュ…シュルガ中佐!地上でオボルス小隊と待機している小隊との通信が途絶しています!」
「貸せ!……クソッ!本部との通信は無理か!」
突然通信が出来なくなってしまった事に混乱するスキフ達。
讃頌会の構成員はそれを見て完全に諦めたように天を仰いでいた。
「やはりな……この施設が制圧された瞬間から、こうなるのは決まっていたか。」
「……異端者の仕業か。」
「その通り、奴らは用意周到だ、今すぐ証拠隠滅の為に異端者の傭兵部隊が乗り込んでくる。お前の仲間達も既に……」
『黙れ、異端者とは何なんだ!そいつらは一体……何故パエトーンを攫った!』
構成員はゆっくりと口を開く。
最早、讃頌会の中でおとぎ話と化していた“異端者”と呼ばれる者達について、答え始めた。
「………遥か昔、始まりの主からの恩寵を拒絶し、ただひたすらにホロウは人類への罰……原罪としてそれを“贖罪”せんと、時の司教の方針に反発した一派がいた。
奴らは旧時代の記録を収集し、無数の“贄”を集めてホロウに捧げる事を目的としてたと言われている。
当時の讃頌会から見ても、異端者の儀式は常軌を逸していたらしく、大勢の同志達が異端者に“贄”にされた事から事実上、“本派”とは戦争状態にあったらしい。」
「生贄って事は……まさかアキラは…!」
「“サラ”様が言っていたが、パエトーンは“罪人の子”なのだろう?恐らく奴らの贖罪の“贄”とする為に異端者に攫われたのかもしれないな。
話を戻すが、星見家三代目当主によって当代の司教が討たれたのと同時に異端者達も何処かに消えてしまった。
各地で“本派”が暗躍していた時期でも全く音沙汰が無く、その内ただの言い伝えとしてしか異端者の名は残らなくなった………衛非地区で奴らが接触してくるまでは。」
一拍おいて、讃頌会の構成員はその名を、讃頌会の異端者達の名前を口にする。
「当時の讃頌会に、奴らはこう呼ばれていたらしい────「
─────アグロプロム地下
ガスマスクの呼吸音、妖しく光る暗視装置、手に握られるは“ミアズマ兵器”、共に進むのは
『此方“スキッパー”、配置完了。』
その動きはさながら特殊部隊、その精神性は狂信者、100年もの間潜み、来たるべき“召集”に備え続けて来た傭兵団。
『……了解だ司教、これよりブライト・スター作戦を開始する。』
異端の司教の命により、異端の傭兵達は動き出す。
『ダークストーカーズ、行動開始。』
プロットに丁度噛み合いそうな要素が原作ゲームから見つかるとテンションが爆上がりになる。なった。
だってオリジナル組織作るよりクロスオーバーしてる感じするもん
◇
一作目である『Shadow of Chernobyl』が世に出る前、『Oblivion Lost』というタイトルで開発中だった時に登場予定だったボツ組織
設定ではZONEの研究所の情報をかき集め、生贄を捧げて死体を飾り立てる上、殆どゾンビとなっているも同然のストーカーで構成されているおっそろしいカルト連中。
モノリスと色々被っている為なのか、一作目では存在を消されているものの、データ上にはその痕跡が残っているらしい。
未収録コンテンツを復活させる事を目的とした『Lost Alpha』というMODに勢力の1つとして登場するが、そちらは世界観に合わせて設定が追加されていたりする。