Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In 作:路肩の石ころ
『置き手紙1つ残して消えてごめんね、
『ほら、ああでもしないときっとお義姉ちゃん、一緒に行くって聞かないと思ったから。』
『お義姉ちゃんのエーテル適正じゃ“タルタロス”の中は長く耐えられない……何より
『結果から言うと、
『でもしくじっちゃってさ、バカお兄ちゃんもどっか行っちゃって……だから帰るのちょっと遅くなりそう。』
『
『私はここに残る、パパも、お兄ちゃんも、絶対連れ帰るから、それまで待ってて。』
『家族みんなで、大好きなお義姉ちゃんが待ってる、私たちの家に帰るから───』
呼び出しコールの音でレベデフがまどろみから目を覚ますと、ボイスレコーダーを付けたまま寝てしまった事に気が付いた。
ここはクリアスカイの本部、STCマラカイトの一角に据えられたレベデフの執務室。
その個人用デスクに突っ伏したまま、2年前から日課として毎日聞いているボイスレコーダーから流れる義妹の声が最初から繰り返される。
デスクに飾ってある家族写真のお陰で愛する人達の顔は薄れる事は決して無いが、声だけはどうしようもない。
だからこのボイスレコーダーが手放せないのだ、決して家族の声を忘れぬ様に。
視界を動かすと執務室の端で一晩中充電スタンドに接続されていた都市迷彩柄のボンプが見える。
あの日、悲しみに暮れる自分の前に現れた、家族の事を知っているボンプ。
レベデフが愛する兄妹と、最後に共にいたらしきボンプ。
彼が居なければ、義妹の声が届く事は無かったのだ。
ふらふらとした足取りでボンプに近づき撫でていると、コール音の事を思い出す。
「………っ! そうだ、呼び出しコールを……」
さっきから鳴り響いてる部下からの通信。
時刻は明朝。何かトラブルでも起きたのだろうか、眠気眼で直ぐに応答ボタンを押す。
「私です、何か問題でも──────」
レベデフは部下からの報告を聞いた瞬間、先程まで頭の大半を支配していた眠気が、全て吹き飛んだ。
「もう1人のパエトーンが……降伏しにきた……?」
◆ ◆ ◆
───マラカイト地域の境界線
ZONEを囲む駐留部隊の様に、クリアスカイの本拠地であるマラカイトの周囲に点在する警戒拠点。
それぞれの拠点に6名のチームが割り当てられ、ホロウレイダーやミュータントの侵入を阻むか、或いは他の拠点にその存在を知らせる役目を持つ、
その内の1つで、日の出が見えてきた時間帯に欠伸を伸ばしながら警備兵が交代の時間を待っていると、「OZK 探索者スーツ」と「防弾ヘルメット」を装備した女性が警戒拠点に近づいてきた。
恐れ知らずのホロウレイダーか──そう思ったクリアスカイの警備兵はマニュアル通りに警告を発し、銃口を向けたがその女性が発した言葉に首を傾げる。
「ナタリア・レベデフに伝えて!パエトーンが降伏しに来たって!」
警備兵の頭に?が浮かび上がるが、一応念の為、マニュアル通りに本部へ連絡しておく、それが自分の仕事だからだ。
どうせ気の触れたアホだろう。
「そんな奴知らん」と、本部からの返答を予測しながら銃口を女に向け続けること1分。
本部から帰ってきたのは、「今すぐその女を拘束し、厳戒態勢を敷き、回収部隊を待て」という声。
予想外の返答に仲間と一緒に困惑しつつ、命令通りにパエトーンと名乗る女を拘束して、兵舎代わりのコンテナに閉じ込める。
そしてパエトーンの見張りを1人コンテナの中に残し、仮眠中の仲間を全員叩き起こして回収部隊の到着を待つことになったのだ。
すっかり眠気が消えた警備兵達は突如やって来た“パエトーン”に疑惑の念をぶつける。
「なぁ、パエトーンって、インターノットで有名な“あの”パエトーンか?そんな奴がレベデフ代表に降伏ってどういう事なんだ?」
「俺が知るかよ……上級部隊なら何か知ってるかもな、アグロプロムの件があったし。」
「まさかアグロプロムでのスノー中隊の壊滅にパエトーンが関わってェ゙──────ア……?」
気を紛らわす為の雑談は続かなかった、突然そのクリアスカイの警備兵に強く頭を殴られた感触が襲い、首が勢いよく前後に動く。
だが目の前には誰も居ない。
なのに力が抜けて、喋ることすら出来なくなり、意識が遠のいていく。頭から生暖かい液体が流れ落ちていく。
踏ん張りが効かなくなった膝から崩れ落ちていく瞬間、隣の仲間が頭から血を噴いているのが見えた。視界の端でも別の仲間達が倒れていった。
マニュアル通り、本部にこの事を伝えなければ────そう薄れゆく意識の中で思いながら、警備兵の魂はZONEに消えていった。
倒れたクリアスカイ警備兵の正面の藪から、サプレッサーの先から煙を吐く銃口が伸びていた。
「エネミーダウン、最後の1人はコンテナの中、パエトーンと二人きりだ。」
「……見事な狙撃ね、トリガーが賞賛するだけの腕はあるわ。」
「しかもスコープ無し、あの人数をアサルトライフルでこの距離だぞ?凄すぎるぜストライダーのおっさん。」
「驚く暇は無いぞリヒター、おいフリーダム、PDAをハックする準備をしておけよ。」
「分かってる、早く行こう。」
警戒拠点から遠く離れた位置、藪や木々の間からスキフと11号、リヒターにストライダー、そしてフリーダムの兵士2名が姿を現す。
彼らが身に纏うのは、先程事切れたクリアスカイと同じ
スキフとリヒターは黒いヘルメットにゴーグル、ガスマスクを備えた強襲部隊用の戦闘アーマー「CS-1 ボディアーマー」を。
11号にストライダー、フリーダム兵はフードにバラクラバ付きの軽装甲の探索用アーマー「CS-3a・ボディアーマー」を纏っている。
スキフ達は足早に死体だらけの警戒拠点へ向かい、リンが拘束されたコンテナハウスの前に辿り着く。
中では外の惨状に意識を行かせないように、リンが必死に見張りの気を引いていた。
スキフは音を出さぬようコンテナハウスの扉に近づき、軽くノックをする。
「だーかーらー!あんたのボスは悪いことしてて、私はすっごい迷惑掛けられてんだからね!どう責任取ってくれるの!」
「だからどうした、企業のトップが裏であくどい事してるなんて珍しくもねぇだろうが、それに俺は金で雇われた傭兵………なんだ?」
見張りがノックに気づき、扉に手をかける。
「はぁ……交代してくれよ、この女頭のおかしい事ばかり抜かして────」
まくし立てるリンに辟易した見張りの目に映ったのは、サプレッサーが装着されたスキフのPTMピストルの銃口と、その奥から吐き出される9x18MM弾の弾頭。
コンテナの内壁に見張りの脳髄が飛び散り、崩れ落ちる人間だった物にリンは目を背けてしまう。
「大丈夫かリン、暴力を振るわれたりしてないか?」
「……ううん、大丈夫だよ。」
外から入ってきたクリアスカイに変装したスキフの声に安心感を覚え、息を整えるリン。
スキフに連れられ外に出ると、スキフと同じくクリアスカイに変装したフリーダムが全ての死体からPDAを抜いていた。
「よしよし……
クリアスカイのPDAと自分のPDAを接続し、色々と弄くり回しているフリーダム兵に、フードとバラクラバを被った11号が続く様に話しかける。
「そして回収部隊がやって来たら即排除、再度IFFを書き換えて成り済まし、彼女を連れてSTCマラカイトに潜入する手筈の筈だったわね。あなた達……フリーダムのハッキング技術は信頼出来る物なのかしら?」
「見くびって貰っちゃあ困る。クリアスカイからスポンサー契約が打ち切られた後、それはもう色々持ち逃げしたからな、PDAに搭載されるIFFの偽装くらいお手の物さ。」
自身満々に言うフリーダムを見て一応納得する11号。
そもそも何故、スキフ達がこの様な変装をしているのか。
クリアスカイがZONE全域に敷いた通信妨害をフリーダムの協力で回避し、防衛軍特殊部隊やデューティ本部に援軍を要請したは良い物の、先手を取っていたクリアスカイのせいで増援の当てが無くなってしまったオボルス小隊やシュルガ中佐達デューティ。
クリアスカイや“シン”の傭兵部隊に比べて圧倒的に戦力不足の現状、ミクルハが計画していたフリーダムによる「マラカイト奪還計作戦」を聞く事に。
その作戦とやらがフリーダムが鹵獲したクリアスカイの装備を使ってマラカイトに浸透し、破壊工作や暗殺を行うと言う物であったのだ。
ミクルハはそれに一味加え、リンを囮に使いパエトーン連行部隊に成り済ましてSTCマラカイトに侵入すると言う大胆な作戦を提案。
危険過ぎるとスキフ達から反発を受けたが当のリンが志願した他、有効な手段が少ない以上ミクルハの潜入作戦を取るしか無かった。
リンをクリアスカイの本部に連行──もとい護送する役目に選ばれたのはスキフ、リヒター、ストライダーに11号の4人。
スキフとリヒターはマラカイトの地形をよく知っており、ストライダーもかつてクリアスカイから逃走しマラカイトを走り回った経験を持つ。
この3人は万が一があった際、リンを連れてマラカイトを移動できるメンバーが選ばれた。
だが変装する都合上、ガウスガン等の高火力武器を置いていかなければならない為、サクリファイス等の強敵が現れた時に素で対抗可能な人材として11号に白羽の矢が立った。
他のオボルス小隊の隊員と違い、彼女はかつて反乱軍にスパイとして潜入した経験があったのも大きい。
死体を全てコンテナハウスに運び込むリヒターが周囲を気にしながらスキフにぼやく。
「くっそ重てえな、ダイエットしろよ……なぁ本当にこの警備拠点が1番手薄なのか?ドローンが通りかかって作戦失敗は勘弁だぞ。」
「ミクルハが言うにはな、フリーダムの偵察情報を信じるしかない。」
「連中、その気になればクリアスカイに反旗を翻す準備してたもんなぁ……ああクソっ、このアーマーのサイズ合ってねぇ。」
クリアスカイにマラカイトを奪われて以降、いつの日か取り返すつもりだったのかやけに詳細なマラカイトの巡回マップを用意していたフリーダム。
サイズの合わないCS-1 ボディアーマーに悪戦苦闘するリヒターを尻目に、同じ装備を着けているスキフは大きなゴーグル越しにクリアスカイの銃火器をチェックする。
クリアスカイの標準装備である「TRs 301」や「チェイサー13」と言った銃火器。変装した状態の今、マラカイトで使用するならこれらが必要になるだろう。
取り敢えずスキフは見た目はオーソドックスなARタイプのエーテルエネルギー銃であるTRs 301を選ぶ。
驚いた事にアグロプロムの地下でスキフが失った「ASラヴィナ」の代わりに鹵獲した、“シン”の傭兵ことダークストーカーの主力小銃である「FT200M」と弾薬やマガジンの形状が全く一緒であった。互換性は十分あるだろう。
アグロプロムの時は意識してなかったが、マガジンの中を見てみると特殊な実包が詰まっていた。
鉛の弾芯を硬質化エーテル物質で覆い、薬莢内にエーテル混合火薬が詰め込まれた5.56x45mm M885弾に酷似した物。
この世界における
だがクリアスカイの弾薬は更に一手間加えられているらしい。
スキフは専門家ではないので詳しい事は分からないが、エーテルエネルギーが多く込められているようだった。
だからマガジンがダークストーカー達が使う物と同じであったり、奴らの使う弾薬にミアズマが入っていたりしたのだ。
特殊な弾薬と言うのは得てして余計なコストが掛かるものだがクリアスカイ……否、“シン”の場合はダークストーカーと共通の弾薬を使用する補給面の利を取ったのだろうか。
考察も程々に、軽めにアイアンサイトを調整し他の者達にクリアスカイの武器を手渡す。
ストライダーは自分と同じTRs 301を、リヒターは無骨なショットガン「チェイサー13」、11号は彼女の戦闘スタイルに合わせてエーテル合金製のブレードにした。
警備兵の死体も全てコンテナの奥へ運び終え、地面に飛び散った血痕も誤魔化し終えたスキフは土嚢の上に座ってそわそわと落ち着かない様子を見せるリンに近寄る。
「リン、作戦前の不安には深呼吸だ、なんだかんだそれが1番効く。」
「……ごめん緊張しちゃって、スキフさんは大丈夫なの?」
「実はちょっとワクワクしてるな、まるでハリウッド映画みたいだ。」
「ハリウッド映画……?」
「あー……俺の
「沢山ビデオ見たけどそのスタジオは聞いたことないなあ、でも大作映画作ってるって事は有名なとこなんだよね?」
「そうだな、アキラを助けたら教えてやるよ。」
そう言うとスキフはリンの被っている防弾ヘルメットに手を置く。
「アキラは目の前だ、そこまで辿り着けるかどうかは俺達の演技に掛かってる。」
「うん、お兄ちゃんを助けて讃煩会……“シン”の計画を止めないとだね。」
「最後は奴らの根城を爆破して見事エンディングだ、家に帰ったらポップコーンの準備をしておけよ。」
「任せてよ、スキフさんは何味が食べたい?」
「キャラメルソースだな、思い返せば十年以上食べてない。」
「オッケー、特大サイズ用意するから皆でパーティしよう!」
落ち着きを取り戻し明るい笑顔を見せるリン、スキフもガスマスクの下で笑顔を返すと、ストライダーが接近してくる車両を発見する。
「
「よし皆配置につけ!まずは奴らを化かすぞ!」
スキフの号令で全員が所定の位置につく。
リンはリヒターと共にコンテナの中で、ストライダーはコンテナハウスの屋根に登り、スキフと11号は車両を挟み込める位置に、フリーダム兵はコンテナの傍で待機する配置だ。
車体上部のガンナーが重機関銃を構えながらMRAPは警戒拠点の真ん中へとやって来ると、運転手とガンナーを除いて2人のクリアスカイ兵が降車した。
スキフ達が成り代わっているとは露にも思わず、彼らは疑うこと無く変装したフリーダム兵にリンの居場所を尋ねる。
「パエトーンを回収に来た、奴は何処だ?」
「このコンテナの中だ、おい!パエトーンを連れてこい!」
フリーダム兵がコンテナの壁を叩くと、中からリンを連れたリヒターが出てきた。
変装がバレないよう、2人は全力で
「グヘヘ…お迎えが来たぞ、観念しろパエトーン!」
「やめて!私に乱暴する気でしょこの変態!」
(あいつらふざけてんのか?いやマジだ、あれは大真面目にやってる目だ、本気でアレを演じている…!)
リンとリヒターの演技の賜物か、それとも気にして無いだけなのか、2人のクリアスカイは演技に気づかぬままパエトーンを連行する為に接近していく。
その背後へと自然な動きで11号が迫り、コンテナの上に居るストライダーは身体と視線を別の方向に向けながら、手に持つ銃の銃口をパエトーンを警戒しているガンナーへと合わせていた。
スキフはMRAPの運転席をノックし、運転手に話しかける。
「なぁ、あの女は何者なんだ?」
「お前達は知らなくていい事だ。」
MRAPの小さな窓が開き、余計な質問をするなとクリアスカイ兵が警告をするが、スキフは引き下がらずに続ける。
「そんな事言わずに教えてくれよ、酒か何か奢ってやるからさ。」
「黙れ、お前に教えることあ゛ぅ───」
一瞬だった。
MRAPの扉に張り付いたスキフは開いた窓に手を掛け、流れるような動作でナイフを運転手の首元に突き刺し、捻り込んだ。
運転手は苦痛に顔を歪めるが、すぐに身体の力を失ってハンドルに身を委ね、クラクションが一瞬鳴る。
スキフが動いたのと同時にストライダーの銃弾がガンナーの頭を撃ち抜き、降車した2人のクリアスカイ兵は11号が斬り伏せた。
すぐさまフリーダムがクリアスカイ兵からPDAを抜き取り、IFFをハックして持ち主の情報を書き換える。
「これでお前達は回収部隊だ、死体を退けて車に乗れ。」
フリーダム兵の指示通りに死体を退かし、スキフ達5人はクリアスカイのMRAPに乗り込む。フリーダムの2人は“後続”の為にこの場に残るのだ。
運転席にはリヒター、ストライダーが助手席、スキフがガンナー席に座る。11号とリンは広いスペースの後部座席だ。
リヒターがエンジンを掛け、あちこち触ってチェックしているのを待つ間、ガンナー席のスキフにフリーダム兵が話しかける。
「なぁ、パエトーンの兄貴を救い出すついでに頼みを聞いてくれないか?」
「なんだ、仲間でも捕まってるのか?」
「そのまさかだ、マラカイトをクリアスカイに奪われる時に立ち退きを拒否して捕虜になったウチの幹部様とその部下達が居てな、まだ生きてると思うからついでに助けてやって欲しい、お前達に手を貸してくれる筈だ。」
「マラカイトを取られたのは結構前の話だろ、人体実験か何かでもう死んでるんじゃないのか?」
「いや、労働力として生かされてる。当時のSTCマラカイトの地下には崩落した地下フロアや地下鉄があってだな、それを掘り起こす為の人手としてこき使われてるとロストクで酔ったクリアスカイから聞いた。」
「そうか……まぁ、どうせアキラを助けたら立て籠もる予定だしな、生きてたら助けておいてやる。」
「頼むぜ、あの人はいい人なんだ。」
「よぉーし君達!出発だ!いざ敵の本丸へ!」
フリーダム兵の頼みを頭に入れつつ、準備が整ったリヒターがアクセルを踏み込み、クリアスカイの本部──STCマラカイトへとスキフ達を乗せた車を走らせていった。
「哨戒兵に監視ドローンに巡回のヘリ……変装せずに侵入するのはやっぱり無謀だったな。ストライダー、よくお前ここから逃げ出せたな。」
「ドクターの支援あってのものだ、俺一人じゃ逃げ切れなかった。」
「ちゃんと運転出来てるよな?運転の仕方でバレて「曲者!」って皆纏めてお陀仏になったら俺死んでも死にきれねぇよ……!」
「落ち着いてナビ通りに走れリヒター……」
クリアスカイの領地と化しているマラカイトをリヒターが運転するMRAPが突き進む。
IFFを誤魔化している為気付かれては居ないが、やはり敵に囲まれているというのは落ち着かない。
「それにしても11号と一緒に潜入かぁ……始めて11号と会った時思い出すね。」
「あの時は私からの依頼で反乱軍に寝返った兵士と、「モグラさん」の憧れのプロキシだった“パエトーン”に成り済まして反乱軍に潜入したんだったわね。」
「まぁ当時演技してたのは私じゃ無くてお兄ちゃんなんだけどね。そう言えばそれから暫くたっても私たちが本物の“パエトーン”だって11号信じなかったよね〜」
「………ごめんなさい、“パエトーン”の名はあなた達の誇りの筈。自ら正体を明かしてくれたのに、それを信じず当時の私は………」
「いやいやいや!私は懐かしい思い出だなって感じで言ったのであって、決して11号を責めてるとかそんなんじゃないから!お願いだからそんな顔しないで〜!」
本当に申し訳なさそうな表情で謝罪する11号に慌ててリンは弁明する。
騒がしくなってきた車内に、ガンナー席から降りたスキフが11号へ声をかけた。
「11号、鬼火隊長たちの準備はどのくらいか確かめて貰っていいか?」
「分かったわ。」
11号はフリーダムの特殊回線を使い、クリアスカイの通信妨害を回避してオボルス小隊へと接続する─────
────ケミカルプラント地域 マラカイトとの境界付近の森
『鬼火隊長、我々は敵の車両を奪取し、STCマラカイトへ移動中です。』
『こっちはデューティの援軍が丁度到着した。これで強襲チームの準備は済んで、そちらの合図を待っている所だ!プロキシ君を助け出したらすぐに知らせろ!』
『了解、合図の方法は─────』
11号がどう合図するかを伝えると、潜入チームとの通信が切れる。
鬼火とオルペウスは“後続”としてマラカイトに突入する強襲チームの全員を見渡す。
マラカイトの防備からして、スキフ達が潜入しアキラを連れて脱出出来るとは全員ハナから思っていなかった。
だからこそ、スキフ達がアキラを救い出した後、STCマラカイトに殴り込みに行って潜入チームを救出、あわよくばクリアスカイ本部を壊滅させる作戦であった。
「デューティ諸君!これより我らが相対するは新エリー都の敵である讃煩会、そして奴らの傀儡たるクリアスカイである!彼我の戦力差は向こうが数倍以上だが……新エリー都市民の為、命を賭して連中を撃滅し、我らの義務を果たせ!」
「「「
シュルガ中佐は何とか集まった20名弱のデューティ隊を鼓舞していた。
『俺の仲間達の準備は完了だオボルス、お前達が動いたらこっちも動く。マラカイト南部の前哨基地は既に射程圏内だ。』
「では手筈通りに、ミリタリーレイダーには期待していますよ“少佐”。」
トリガーは妨害工作の役目を担う“少佐”率いるミリタリーレイダーズと連絡を取り合い。
「“アッシー君”、向こうには対空兵器とかあるけどちゃんと隊長達を運んでよ〜?僕とビック・シードは絶対に墜ちないけど。」
「アッシー君ってなんだアッシー君って……アグロプロムじゃあんた達を助けてやれなかったからな、パイロットとして必ずオボルスを目的地に運んでやるさ!」
何時でも飛び立てるよう準備してあるヘリ、“スティングレイ4”とビック・シードの横で航空戦力同士、シードとソコロフ中尉が会話している。
彼らを眺めながら鬼火は、その傍らで緊張しているオルペウスに一声掛けた。
『オルペウス!』
「ひゃ、ひゃい隊長!」
『私の予想だが……アグロプロム以上に今回の戦いは激しい物になるかもしれん。』
「か…覚悟は出来ているであります!」
『だがな、我々の目的はZONEの讃煩会の排除だけでは無い、プロキシ君の救出だ。衛非地区では彼に色々世話になったからな……軍人としてだけでは無く“友人”としてその時の恩を返す時だ!必ずやり遂げるぞオルペウス!』
「────はい!鬼火姉さん!」
緊張が解けたオルペウスはスティングレイ4へと向かう。
(11号さん、リン殿、どうか気を付けて下さいね。)
掛け替えの無い戦友と大切な友の無事を祈りながら、オルペウスはヘリに乗り込んでいった。
『ストライダー、ボクだ。進捗は?上手く忍び込めそうかい?』
「もうすぐSTCマラカイトに到着する。ドクター、ナタリア・レベデフの様子は?」
『もう1人のパエトーンと“会う”準備を進めているよ、駐車場に着いたらどこそこに向かえって指示が来ると思うから、そしたらボクがナビゲートするね』
「見えて来たぞ、
重機関銃に手を掛けるスキフの目に映るのは、周囲を防壁に囲まれた、如何にも近未来的な建築物。
だが1番、地形や建築物からしてチョルノービリと違うのがこの「マラカイト」地域である。
マラカイト北部に存在する筈の「ブレインスコーチャー」がただのでかい倉庫広場になっているのを始め、マラカイトの各重要施設がこの世界では何かパッとしない施設に変わっていたのだ。
一番の極めつけはマラカイト中心部のSTCマラカイト。
チョルノービリでの見た目は無骨な工場としか思えない政府の研究所だったのが、この世界では元居た世界のザトンの北に存在したSIRCAAの研究施設の様な“整った”廃墟であった。
以前アキラとリンの依頼でX-ラボを探し求め、赤い森までのZONEを巡っていたスキフは他の地域と比べてマラカイトの違い様に困惑したものだ。
フリーダムの支配下にあった時は割とボロボロだったのだが、クリアスカイが大改装したのか、施設は元居た世界のSIRCAAレベルに綺麗な物に大変貌していた。
物々しい雰囲気のゲートに辿り着き、ゲートの守衛立ち会いの下、小型の監視ドローンがMRAPのスキャンを始めると、車内のリヒターとリンが小声で呟く。
「ZONEに似合わねぇ高度な検問だなぁおい、コルドン前哨基地が惨めに思えてくるぜ。」
「ね…ねぇ、PDAのIFFは誤魔化してるけど、このスキャンは大丈夫なやつ?これでバレたりとかは……」
『クリアスカイの中にボクの協力者がいる。彼らのお陰で検問は突破出来るようにしてあるよ。』
「それなら安心…かな。」
ドクターからの通信にリンが胸を撫で下ろし、問題無く検問を突破出来たMRAP。
敷地内の駐車場に進む間、眉を顰めたストライダーがドクターに問い掛けた。
「ドクター、お前の他に内通者が居るなんて聞いてないぞ。」
『言ってないからね、もしキミが捕まって芋づる式に他の協力者がバレると困るんだ。キミは仲間の中で一番自由に動ける身であり、捕まるリスクも高いから……』
尤もらしい事を言っているが、少し気になったスキフがもう少し問い詰める。
「他に何か隠してるんじゃ無いだろうな。」
『まぁね……それと、ナタリア・レベデフの事なんだけど。』
スキフの疑問を誤魔化し、何か含んだ言葉でドクターが続ける。
『彼女と相対しても、生かして欲しいんだ。』
「傷付けるなって事か?」
『いや、
ガンナー席で外の風を浴びているスキフは首を傾げ、車内の全員が顔を見合わせる。
よくよく考えれば、鬼火達が到着するまで立て籠もるのならば、クリアスカイのCEO兼讃煩会の異端者“シン”の司教である彼女を殺害するより、生け捕りにした方が人質として利用出来るだろう。
だからレベデフを殺さないというドクターの要望には応えるつもりだが、どうにも個人的な思惑があるようだった。
そもそもレベデフとドクターは一体どういう関係なのか、ドクターは何者なのか。
急に怪しく思えて来たドクターを疑いつつ、駐車場へと着いたスキフ達。
着いて早々、彼らの持つクリアスカイから奪ったPDAに「パエトーンをA1室に連行せよ」との命令が下る。
『案内するから言う通りに動いて、ナタリアもその部屋にいる。くれぐれも
「良し……!みんな、準備は良い?お兄ちゃんを助けよう!」
後ろに手を回し、ハンドカフを軽く着けて“捕虜になった”リンは11号に支えられながらMRAPを降りる。
最愛の兄は目前だ。緊張と決意を胸に、リン達4人はレベデフとアキラの所へと演技をしながら向かって行った。
◆ ◆ ◆
「ここがA1室……」
「この中にナタリア・レベデフが居るのね?」
「命令だとその筈……ストライダーのおっさん、あんた以前この部屋に来たことはあんのか?」
「いや、前は逃げるのに必死でSTCマラカイトの内部を見る暇なんて無かった。」
リン達はレベデフが待つらしい、A1室の前までやって来た。
ここに来るまで、大勢のクリアスカイの兵士や職員にマジマジと見られながらも、何とか演技で怪しまれずにここまで来れた。
遂に、敵の親玉と相対だ──リン達は覚悟を決めて入室する。
内部は座席やデスク等が何一つ無い殺風景な薄暗い部屋だった。
天井には大きな換気ダクトが剥き出しになっており、部屋の照明は壁に付けられた幾つかの小さなライトのみ。
広さだけはそれなりにある部屋の奥に、跪く人影が見えた。
その人影を見るやいなや、頭の中が真っ白になったリンは11号達の静止を振り切り、両手が拘束された状態で走り出す。
「────お兄ちゃん!!」
「くっ───待ちなさい!」
「う…動くなパエトーン!」
拘束されたその人影───アキラは駆け寄ってくるリンを見て、焦った様に叫んだ。
「リン!近づいちゃ駄目だ!」
「え───わあぁ!?」
部屋の中央まで来た瞬間、突然現れた光の壁──エネルギーシールドに激突し、リンは弾き飛ばされてしまう。
彼女が身に着けるヘルメットにアーマーのお陰で怪我は無いが、地面に身体を打ち付けたリンに11号達が駆け寄る。
何処で誰が見ているのか分からないので、銃口を向けた上荒い口調の演技は続けたままだ。
「大人しくしなさい、抵抗はしないで。」
「次勝手に動いたら容赦しないぞ…!」
「やめろ!妹に触るな!」
無理やりリンを立たせる様に見えるやり方で、怪我がないかチェックする11号達。
まさか妹を連行するクリアスカイ兵の中身が味方だとは思わないアキラは必死に叫ぶが、反応する訳にはいかないので11号達は無視するしかない。
「感動の再開と行きたかったんですが……女性ならもう少し落ち着きを覚えたらどうですかぁ、リンさん?」
部屋を隔てるエネルギーシールドの向こう側、アキラの奥にある扉から、青いスーツに空色の髪を靡かせ、クスクスと笑いながらナタリア・レベデフが3人のダークストーカーと都市迷彩柄のボンプを伴って姿を現した。
11号達に拘束されたふりをしつつ、リンは彼女をキッと睨み付けた後、すぐにアキラの方に向く。
「お兄ちゃん……ごめん、心配だから来ちゃった。」
「リン……何で1人で来たんだ。」
「
「だからって……!」
「まぁまぁアキラさん、リンさんの兄を思う気持ちをそう無碍にするものではありませんよ。」
アキラとリンの会話に割り込んだレベデフは目つきをニヤつかせながら、クリアスカイに変装している11号達に振り向く。
「ご苦労さまです、もう良いですよ?」
「了解、彼女の拘束は……」
「いや、
「なん……あああぁぁ────!」
レベデフの目が冷たく鋭い目付きに変わった瞬間、部屋の半分、リン達の立っている床に強烈な電流が流し込まれる。
咄嗟に武器を構えようとした11号達は全身を襲う電流によってその場に倒れ伏した。
「リン!頼む止めてくれレベデフ!一体何故!?」
「リンさんは、お一人でここまで来た訳じゃないと言う事ですよアキラさん。」
「サニー1!突入せよ!」
電流が消え、激痛と痺れのせいで息を上げけているリン達。
その後ろの扉から次々とクリアスカイの小隊が突入し、即座にリン達を制圧した。
「はぁ…はぁ……なんで……」
「フフフ…リンさん、貴方の作戦は最初からバレて居たんですよ。フリーダムの奴らが通信妨害を回避して何処かに連絡を取っていたのは察知していましたからね。
まさか変装なんて手段を取ってくるとは思いませんでしたが……こうしてノコノコ罠とも知らずに飛び込んで来てくれて、色々と手間が省けました。」
勝ち誇った笑みを浮かべるレベデフがリン達を囲むクリアスカイ兵に合図をすると、兵士達は11号達を跪かせた状態で拘束しその内の1人のマスクを剥ぐ。
バラクラバの下から覗かせた顔に、レベデフは目を丸くして驚いた。
「これはこれは……ストライダーさんじゃありませんか。私たちに協力する為にリンさんを連れて戻ってきてくれたのですか?」
「そんな訳があるか……!お前達の計画を阻止しに来たんだ!モノリスは存在してはいけない悪魔そのもの!お前らの手に渡す訳にはいかない!」
「だからこそ、貴方と同志になれたかもしれないのに……それにしても、あれだけ貴方のご家族に“危険”が及ぶかもしれないと警告したと言うのに、よくまぁ逃走を選べましたねぇ?」
「俺の家族は“兄弟達”が守ってくれている、絶対に手は出させない……!」
「旧都陥落の時に貴方が創設したという、かの高名な“民兵団”ですか……まぁそれは置いときましょう。ストライダーさんがリンさんを手助けしていたのは分かりました。ですが、他の人達はどちら様─────」
途中まで言いかけたレベデフの表情が固まった。
まるで何かを探すように視線をリン達“4人”に向け、“何かに”気付いた彼女は声を張り上げる。
「変装した人間は“4人”居た筈です!ここには“3人”しか─────」
ゴォォォォン……!
突如、STCマラカイトを揺らす規模の爆発音が部屋に届く。突然の事にリン達を囲むクリアスカイ兵は混乱状態に陥る一方で、ダークストーカー達は周囲の警戒を固め、レベデフはすぐさま無線機を手に取った。
「報告なさい!今の爆発は一体何なんですか!」
『そ…外のエーテル燃料貯蔵タンクが突然大爆発を……!死傷者多数!施設にも被害が……!まさかアノマリー……』
「───っ!アノマリーではありません!直ちに厳戒態勢を敷いて、侵入者の捜索を!」
「な…何が起きて……リン?」
クリアスカイと同じ様に困惑するアキラはリンの方を見る。
リンは薄く笑っていた。
その笑顔はまるで───
「計画通り……!“今だよ”、ドクター!」
リンの呟くような声に、呼応する者が居た。
レベデフにも、ダークストーカーにも、クリアスカイ達の目にも絶妙に映らない位置に陣取る“彼”。
都市迷彩柄の、いつもレベデフと共にいる、何処となくイアスに似ているボンプ。
レベデフ達に気付かれる事も、声が聞こえる事も無く、彼のモニターが通信中を示す画面に切替わった。
『
『やぁーっと出番だな。』
『了解だ、システムダウン!』
次の瞬間、STCマラカイトの通信システムが停止し、更にレベデフ達の無線機に強烈な高周波が流しこまれ、クリアスカイ兵とダークストーカーの表情が苦痛に歪む。
「がああああ───!」
「耳がぁ───!!」
『ぐっ───無線機を外せ!』
「クソっ……なにが起きて……」
無線機を投げ捨て、顔を顰めたレベデフの視界に、高周波に苦しむクリアスカイの小隊の中に1人、平然としていた者がいた。
「スパイ共!7時の方向は
「1-4何を───ぐぁ!?」
「ニンブル貴様───ぎゃあ!」
突如、リン達を拘束していたクリアスカイ兵の1人が味方に向けて発砲し、状況は更に混沌と化す。
そして、その隙を見逃す“彼女達”では無かった。
「───今よ!」
「武器を取れ!」
「うおおお!ガイド魂ぃ!」
混乱するクリアスカイ兵達に11号、リヒター、ストライダーが一斉に襲い掛かる。
混戦状態となったシールドの向こう側の中で、唯一リンだけがその場から動かず、ひたすらにアキラとレベデフを見据えていた。
「リン……君は……」
「リンさん、貴方は一体何を……!」
「───お願い、スキフさん!」
リンが呟いた瞬間、天井の剥き出しの換気ダクトの格子が蹴り落とされた。
レベデフと護衛のダークストーカー達が上を向いたその時、1人のダークストーカーのガスマスクのレンズが銃弾によって貫通し、ガラス片と血飛沫が飛び散った。
「
数メートル以上はある天井の換気ダクトから、クリアスカイ兵の格好をしたスキフが、ナイフとPTMピストルを両手に飛び降りて来た。
『上だ────』
スキフの真下に居たダークストーカーがミアズマエネルギー銃「FT200M」を構えるが、それよりも早くスキフのナイフがガスマスクを貫通して脳天に突き刺さる。
そのまま相手をクッション代わりにして即座に立ち上がり、レベデフへと突撃した。
「次。」
「お前───!」
『退くんだ司教!』
レベデフの護衛として3人連れて来たダークストーカーの内、瞬く間に2人殺害され、残る1人はレベデフが丁度射線上に重なる位置にいた為に発砲出来なかった。
レベデフは咄嗟にハンドガンを抜いてスキフに向けるものの、紙一重で躱され、PTMピストルのグリップで思い切り殴られた上、ハンドガンを持つ腕を捻り上げられる。
そのままレベデフに隠れる様に体勢を変えるスキフにダークストーカーが撃てずにいると、殴られたせいで揺れる頭のままレベデフは大きく叫んだ。
「いい……から私ごと撃て!」
『了ガぁ────』
レベデフがその身を顧みず反撃を指示し、ダークストーカーは応えるが、それよりも早く9x18MM弾の連続射撃がダークストーカーの頭部を粉砕し、引き金を引かれたままの「FT200M」が天井へ銃弾を撒き散らした。
「オールクリアだ。」
スキフは乱暴にレベデフの膝裏を蹴り、その場に跪かせて首にナイフを、側頭部にPTMピストルを突きつける。
「あ……あっという間に……そうだ、リン!大丈夫か……」
頭を伏せていたアキラは視線をリンへと向ける。
エネルギーシールドで隔てられた向こう側は既に決着が着いており、リン達を囲んでいたクリアスカイ小隊が1人──ニンブルを除いて全員倒れ伏していた。
そしてリンの傍にいる人物達に、アキラの表情は喜びや困惑等、様々な感情が入り混じった物に変わる。
最早泣き出しそうなくらい顔をくしゃくしゃにしながら、声を絞り出しだしてアキラは彼らに呼びかけた。
「11号……!リヒターさん……!」
「よぉプロキシ!久しぶりだな!」
「怪我は無いようね、クリムゾン・アイズ・ハーミット。」
「じゃあ……こっちは……」
アキラはスキフの方へ向く、ナイフをレベデフの首に押し当てながら、スキフは片手でクリアスカイのガスマスクやゴーグルを器用に外し、その素顔をアキラに見せる。
「スキフさん!」
「涙は家に帰るまで取っておけ、アキラ。」
「1人で来たんじゃない、みんなで助けに来たんだよお兄ちゃん!」
リンの言葉に、遂に一筋の涙が零れ落ちるアキラ。
一方、スキフに制圧され形勢が逆転したレベデフは、凄まじい敵意の籠もった目でスキフを睨み付ける。
「何者なんですか……貴方は……!」
「俺か?俺は………」
ちらりとアキラを見て、スキフは余裕の笑みをレベデフに向けて言った。
「パエトーンの、S.T.A.L.K.E.R.エージェントだ。」
◇STCマラカイト
ZONEの西にある、政府や国際機関の承認を受けた科学者達が作った研究施設。
S.T.A.L.K.E.R.2には2種類の科学者が存在し、1つはメインストーリーに密接に関わるSIRCAAで、それ以外の科学者──前作で言うエコロジストに相当する者達がこのマラカイトに所属している。
SIRCAAには実動部隊として「ウォード」が存在するがマラカイトの科学者にはそう言った使いっ走りはいない為、ストーカーや傭兵を雇ったりしてZONEの研究を進めている。因みにマラカイトの防衛は珍しく非敵対的なIPSFが担当しており、生きている彼らをマジマジと眺められる貴重な場所。
SIRCAAの影響化に無い科学者しかいない為、ウォードに強い恨みを持つストーカー達「スパーク」がマラカイトの科学者達に協力し、拠点にしているのが見受けられる。
本小説ではあの工場みたいな建物では無く、SIRCAAみたいな近未来的な施設に置き換わってる設定。