Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In   作:路肩の石ころ

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61.ミュータント・パニック

 

 

 

 「畜生、また隔壁が閉まってる!早く解除しろ!」

 

 「技術者の裏切り者はどうなってる!奴らが隔壁を操作している犯人だろう!」

 

 『連中セキュリティルームに立て籠もってる上、警備ロボットを何台かハッキングしやがった!襲撃者との戦闘で人手が足りてないし、南部の前哨基地も麻痺状態……!代表、どうかご命令を!』

 

 「レベデフ代表……北倉庫の“機甲部隊”は無事の様ですが、援軍を要請しますか」

 

 気絶したアキラを抱えてSTCマラカイトから脱出を図るクリアスカイ部隊。

 部下からの指示を仰ぐ声に、スキフによって付けられた大きな顔の傷の出血を、血に染まったタオルで押し当てていたレベデフは痛みに耐えながら部下に返答する。

 

 「あれは“計画”に必要な主力部隊です、現有戦力で対処し、私たちが脱出するまで戦い続ける様に。ここは捨てます。」

 

 「み…味方を見捨て、この施設を放棄するのですか?この……心血を注いで立て直したマラカイトを?」

 

 部下の言葉に、ギロリと血に濡れた視線を向ける。

 一言も発していないのに、レベデフのその目つきだけで彼は萎縮してしまった。

 そんな中、他のクリアスカイからの通信が掛かってくる。

 

 『こちら地下鉄駅。代表、脱出用の列車が到着しました。“奴ら”も一緒です。』

 

 「私が到着するまで、“オブスキュラ”を出来るだけ列車に積み込んで下さい。それと彼らに代わって。」

 

 『こちら“ブラック”、ダークストーカーズ現着した。』

 

 「私の後を追ってくる連中を排除しなさい、“ハイブリッド”も多数投入しても良い……奴らを食い止めなさい。」

 

 『了解だ司教……それと、もう1人のパエトーンが確保出来てないそうだが……どうする?』

 

 「そちらに任せるからさっさと奴らに対処しなさい…!」

 

 レベデフは乱暴に通信を切り、痛みが再発してきたのか呻き始めた。

 傷を癒す為に回復キットを撃ち込んだが、この出血を止めるには時間が掛かる。

 

 クリアスカイ兵が隔壁を突破しようとしている間、軽く霞み始めた視界を動かす。

 大柄なクリアスカイ兵に抱えられた、自分が殴って気絶させたアキラと、そんな彼を心配そうに見つめるボンプ───内通者としてスキフ達を引き入れた“ドクター”だ。

 

 “先ほどの失敗”を引きずるドクターはアキラを助け出すチャンスをずっと伺っていたが、そんな彼の裏切り行為を知らないレベデフは掛ける。

 

 「さっきは助けてくれてありがとうございます。あわや、頭を撃たれる所でした。」

 

 『………気にしないでくれ、ナタリア。キミとボクは……友達じゃないか。』

 

 「ええ……ここを乗り越えれば、モノリスまであともう少しですよ、“マークワン”」

 

 

 次の瞬間、隔壁が開いてクリアスカイ兵達は警戒しながら地下に進んで行く。

 ドクターもレベデフについて行くが、彼女の顔を見る事は、一切出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 「侵入者だ!ここを通す───ギャァァァ!!」

 

 レベデフに先回りする為に施設を突き進むスキフ達の前に、エーテルショットガン「チェイサー13」を構えたクリアスカイ兵を先頭に、多数の兵士が飛び出してくる。

 

 だがスキフは止まる事なく一気に距離を詰め、一番先頭にいた相手の左膝を蹴り砕いた。

 悲鳴を上げて地面に尻もちをつくクリアスカイ兵のチェイサー13を掴んでそのまま顔面に銃身を叩きつける。

 ゴーグルが割れ、ガスマスクの下で鼻血が垂れるがスキフはすかさず相手からチェイサー13をひったくってゼロ距離で顔面に散弾を叩き込んだ。

 

 弾け飛んだ頭部の残骸とヘルメットが床一面に飛散し、頭を無くしたクリアスカイ兵の死体は地面に横たわる。死体の傍にチェイサー13を投げ捨てたスキフは「TRs 301」を構えて、遮蔽物から身を晒して撃ってきた敵を撃ち抜いた。

 

 その内にスキフの側面へ回り込んだクリアスカイ兵が飛び出してきたが、スキフの背後を守る様に割り込んだ11号の一閃に倒される。

 

 「助かった、11号。」

 

 「一人で先行しすぎよ、お互いカバー出来る範囲に居なさい。」

 

 「アイアイマム……ニンブル!今何処に向かってるんだ?」

 

 敵兵を倒しながらスキフがニンブルに問いかける。

 

 「大分先回り出来てる!後は“地下収容所”フロアを通れば……!」

 

 「所でどうして後を追っかけずに先回りなんて手を使うんだ?奴が足止めされてるなら途中で捕まえられるんじゃねぇの?」

 

 「そうだ、てっきりドクターやお前達はシステムを掌握していると思ったんだが……」

 

 チェイサー13でスキフと11号の援護射撃をするリヒターが疑問を口にし、TRs 301で後方から攻めてくるクリアスカイを倒しているストライダーが続く。

 

 「掌握しきれてないからレベデフ回りの隔壁をめちゃくちゃにして時間を稼いでるんだ!後に続けば下手すりゃ俺達まで閉じ込められる!急がば回れだ!」

 

 その場にいたクリアスカイ兵を全滅させ、ニンブルの先導でSTCマラカイトの地下フロアへと降りていく。

 

 チョルノービリのSTCマラカイトはX-17ラボという小さな地下施設にヴィジオグラフと言う装置が存在しただけであったが、この世界の地下はかなり広く、そして深い構造となっている。

 フリーダム曰く、大半が崩落していたのをクリアスカイが掘り起こしたようだが……よくまぁ全て復旧させた物だとスキフは思った。

 

 階段を降りていくと防護扉に辿り着く。

 お誂向きに“収容区”と看板が貼られており、潜入する際にフリーダムに助けて欲しいと頼まれた捕虜が居るのではと予想したが、ニンブルが自分のカードキーで扉を開けると、その予想が外れた事を知る。

 

 「これって、全部ミュータント……!?」

 

 「その通り、“ハイブリッド”とか言う改造ミュータントの素体をここに収容してるんだ。

 間違っても壁際の貨物エレベーターに乗るんじゃないぞ、あれは最下層行きだからな。」

 

 その光景にリンが驚きの声を小さく上げる。

 

 地下に作られた学校の体育館2つ分くらいのスペースに、乱雑な配置で積み上げられた箱型の檻の山。

 ちょっとした迷路の如く、フロア中にフォークリフトが通行する為のスペースだけ上げられたミュータントの刑務所。

 

 ZONEに住まう、人間型(ヒューマンタイプ)と呼ばれる分類のミュータントたちが一つ一つの檻の中に監禁されていた。

 

 その中の1つに、ZONEで最も危険なミュータントの1つであるシュードジャイアントが収められた狭い檻を見つけたリンが恐る恐る聞く。

 

 「に…ニンブルさん、このミュータントって起きてきたりしない……?」

 

 「この檻がちゃんと機能している間は特殊な電波か何かでミュータントも大人しく眠っているらしい……が、檻が壊されたら即お目覚めだ。」

 

 周囲を警戒しながら進むスキフ達だが、クリアスカイ兵の姿が一人も見当たらない事にニンブルが不審に思う。

 

 「妙だな、ここにも警備が居る筈なんだが────」

 

 「──っ!伏せなさい!」

 

 「えっ?うおぉ!?」

 

 突如、11号がニンブルの足を蹴り払って姿勢を大きく崩す。

 困惑するニンブルの顔面を、天井から襲い掛かってきた透明な爪が掠めていった。

 

 集団の真ん中に降り立った“それ”の正体を見破る前に、スキフ、リヒター、ストライダー3人の射撃を受けて“それ”はエーテルの光を点滅させて消滅する。

 

 「ミュータントじゃない!ハイブリッドだ!」

 

 『攻撃開始!』

 

 “ブラッドサッカー型”のハイブリッドによる奇襲を回避したのもつかの間、電子加工された声と共に“シン”の傭兵──ダークストーカー達がフロアの奥から姿を現す。

 

 ガスマスクを装備した傭兵部隊が放つ、彼らの主力小銃である「FT200M」のミアズマエネルギー弾がスキフ達を襲う。

 だが弾幕はそれほどでもない、ミュータントを閉じ込めている檻に当たって中身が解放される事を危惧しているのだろうか。

 

 「畜生ブラックオプスだ!代表の護衛以外は全員北倉庫に向かったと聞いたが……!」

 

 「サクリファイス!突撃してくるわ!」

 

 11号が叫ぶと、ダークストーカーに操られる“スノーク型”のハイブリッド数体が入り組んだ檻の迷宮を猟犬の如く突っ込んできた。

 最初に飛び掛かって来た個体を11号が両断し、次に爪を振るってきた個体の頭をリヒターのショットガンが吹き飛ばす。

 

 ストライダーのスナイプでダークストーカーを一人撃破し、リンに襲い掛かろうとしたハイブリッドを殴り倒したスキフが足で踏みつけてありったけの5.56x45mm弾を撃ち込んでエーテルの光に変えた。

 “サクリファイスの第一波を倒した相手に対し、ダークストーカーの指揮官は次の一手を放つ。

 

 『ショックトルーパー前進せよ!』

 

 その指示でリボルバー式ショットガン「エリミネーター」を構えたダークストーカーがミアズマブレス弾を発射しながら距離を詰めて来た。

 

 「ミアズマだ!近寄られる前に撃て!」

 

 「隠れてろ!俺とスキフでやる!」

 

 ミアズマブレス弾は高濃度のミアズマを撒き散らす危険な兵器だ、このまま身を隠していても侵食でやられるだけなのでスキフとストライダーが身を乗り出して接近してくるダークストーカーを撃ち抜く。

 

 

 ───が、放たれた弾丸はダークストーカーを包み込む“謎のバリア”で弾かれてしまう。

 撃たれた事すら気付いてないのか、ダークストーカーは2人にミアズマブレスを浴びせてきたので、堪らず元いた遮蔽物に逃げ帰った。

 

 「ミアズマシールドか……!“リンクス”が手元にあれば……!」

 

 「いや、アグロプロムの地下で見たそれっぽい奴とは違った。だけど見覚えがあるぞ……」

 

 “シン”が運用する「ブルムバー・エクソスケルトン」に搭載されるミアズマシールドと同様の物だとストライダーは予想したが、スキフは違うと言う。

 

 ちらりと奥を見ると、一瞬だけダークブルーの装備を纏ったダークストーカー達の中に()()()()()()()()()()の、白いローブを纏った人物がいたのを発見する。

 

 ここまで散々ZONEで作られたサクリファイスと戦ってきたスキフはその正体を一瞬で看破した。

 

 「“ブーラー”だ!連中、ブーラーのハイブリッドにシールドを張らせてやがる!」

 

 ZONEに生息するミュータントの中に“ブーラー”と呼ばれる者が存在する。

 見た目は醜い髭のないドワーフの様なローブを着た太い小男であり、ポルターガイストの様にテレキネシスを操る力を持つ

 

 そんなブーラーのテレキネシス能力の1つに、テレキネシスシールドを張る能力があるのだ。

 たった3秒程度の時間、それ以外歩く事しか出来なくなるがロケットランチャーの一撃すら耐え抜く厄介な能力だ。

 大方、サクリファイスに変えられたあのブーラーはあの様に味方に強力なシールドを張れる力を手に入れたのだろう。

 

 迫りくるダークストーカーをどうするか悩んでいると、とある檻の後ろからリンがこっちに来いと手を振っているのが見えた。

 

 「2人共!この檻の後ろに隠れて!」

 

 「いや、奴らの目を引きつけないと、隠れてもミアズマでやられるぞ…!?」

 

 「いいから早く!」

 

 リンに急かされ、わけも分からずその檻の後ろに隠れるスキフとストライダー。そこまで大きくない檻の後ろには、11号達もぴったり隠れていた。

 

 「このまま隠れててもジリ貧だ、奴らの武器はアグロプロムで見ただろ11号。」

 

 「敵の防御は非常に固いわ、突破する方法が必要よ。」

 

 「突破する方法って……ああ、()()()()()()。」

 

 一転して納得したスキフ。彼らが隠れている檻の中から、野太い唸り声が聞こえて来た。

 

 

 

 

 “ブーラー型”のハイブリッドの力で敵の攻撃を無効化するシールドを纏いながらジリジリと制圧射撃を加えながら半包囲してくるダークストーカー達。

 エリミネーターによってミアズマが散布された空間を進み、スキフ達がいるであろう場所に武器を構えながら近づく。

 

 『奴らはこの後ろだ。』

 

 馬鹿め、バレバレだ──そう内心鼻で笑いながらゆっくりと、スキフ達が隠れる檻の後方へ回り込もうとした瞬間、檻の中から此方を除く目を見つけたダークストーカーは、一瞬にして血の気が引いた。

 

 『あいつら檻を開けやがっ─────』

 

 言い終わる前に、正面にいたダークストーカーの身体が、檻から開放された巨大な肉塊によって撥ね飛ばされる。

 

 『シュ……シュードジャイアント!』

 

 フロア全体に響く咆哮を放って解き放たれたのは、ZONEで最もタフで巨大なミュータントが、檻の傍にいたダークストーカー達へ狙いを定めた。

 即座ににエリミネーターに装填された、ミアズマブレス弾をシュードジャイアントに放つが、ミアズマの燃焼による対人特化の武器の上、凄まじいまでのエーテル耐性を持つZONEのミュータントにミアズマが齎す効果は非常に薄い。

 シュードジャイアントのその圧倒的質量の前にブーラー由来のテレキネシスシールドも耐えきれず、ダークストーカー達は付近の檻に叩きつけられるかその足で床の染みにされてしまった。

 

 目の前の人間を叩き潰したシュードジャイアントはキョロキョロと回りを見渡し、自分が出てきた檻の近くから人間の匂いを感じ取る。

 何時もならばそこまで頭が良くないのもあって、本能的に匂いを追って近くの人間に襲いかかるシュードジャイアントであるがこの時ばかりは違った。

 

 部屋のずっと奥、別の人間の集団に混ざる異物(ホロウ)の匂い。

 

 敵意、拒絶、嫌悪、忌避感。

 

 嗅ぎ慣れた同胞(ミュータント)の匂いと混じりあった“サクリファイス(ハイブリッド)”の存在を検知したシュードジャイアントは、一心不乱にフロアの奥へと突進していった。

 

フロアの奥、ダークストーカー達が陣取る車両用出入口付近から激しい戦闘の音と怒号と叫び声が響いてくる。

 シュードジャイアントを閉じ込めていた檻の後ろから6人がひょっこりと顔を出して様子を伺った。

 

 「前にお兄ちゃんからミュータントとエーテリアスは凄く敵対してるって聞いたから、上手くサクリファイスを襲ってくれないかなって思ったんだけど……」

 

 「確かにそうだがカルト野郎共のバケモンにも通じた辺り、妹さんの作戦勝ちだな。」

 

 以前ZONEから帰ってきたアキラからの土産話を思い出したリン。

 リヒターが肯定した様にZONEでは非常に稀なケースだがその場に人間とエーテリアスが同時に居たのならば大半のミュータントはまずエーテリアスを狙う、逆も然りだ。

 どうして彼処までお互い敵対し合っているのか不明だが、今回はその習性に掛けてみたら上手く行ったようだ。

 

 向こうがパニックになっている隙を見逃さないと、スキフが武器を構えて動き出す。

 

 「よし、向こうが混乱している内に突破─────」

 

 ガァン!ガラガラガラ……!

 

 突如、積み上げられた檻の山の一つが盛大に崩れ落ちる。

 

 山を崩壊させたのは、先程ダークストーカーとハイブリッドに突撃していった筈の、ボロボロになったシュードジャイアント。

 

 重量級の足音を聞いたスキフが視線を動かすと、そこに居たのはアグロプロムのX-ラボで戦った“シュードジャイアント型”のハイブリッド。

 シュードジャイアントと同じ体躯で、更に太く強靭な触手を得たサクリファイスであり、状況からして奴がシュードジャイアントを殴り飛ばしたのだろう。

 

 フロアの奥のダークストーカーが見えたのでそちらを見ると、シュードジャイアントが崩した檻の山に注意を向けながら退却を始めていた。

 

 もう一度崩れた檻の山を見る。

 そこから目覚めの唸り声が次々と聞こえて来た。

 

 ひん曲がった檻をこじ開け、這い出し、数多のミュータントが檻の中から姿を現す。

 

 ブラッドサッカー、スノーク、ブーラー、ポルターガイスト、そしてシュードジャイアントがもう一体。

 

 クリアスカイと“シン”によって捕らえられた彼らZONEの原生物が、寝起きの獲物を探していたのははっきりと理解した。

 

 『退却だ!ハイブリッドは置いていけ!』

 

 「あいつら余計な事しやがって…!来るぞ!」

 

 スキフが毒づいた次の瞬間、ミュータント達が一斉に散らばり、それぞれ獲物と定めた相手へ向けてその力を振るい始めた。

 

 ポルターガイストとブーラーは残骸を部屋中に振り回し始め。

 

 スノークとブラッドサッカーは獲物を引き裂こうと吠えながら爪を振るい。

 

 シュードジャイアントはとにかく暴れ回って周囲の檻を破壊していった。

 

 戦闘の余波──その殆どがミュータントによる──で他のミュータントを閉じ込めていた檻が破壊され、更にミュータントが開放されていく。

 自由になったミュータント達が増えるに連れてサクリファイス(ハイブリッド)だけでは無く人間や別種のミュータントを襲い始め、あっという間に収容区は混沌とした様相を呈した。

 

 ダークストーカーはその場をサクリファイスに押し付け、後退し収容区の封鎖を試みるが、ポルターガイストが檻の残骸を飛ばして各出入口の封鎖を妨害。

 その隙に多数のミュータントは外へ逃げ出そうと人員用出入口や車両用通路、換気ダクト等あらゆる出口に逃げ込む一方、スキフの直ぐ側では巨大な肉塊のサクリファイスと巨大な肉塊のミュータントによる頂上決戦が繰り広げられていた。

 

 「なんか沼地を思い出すなぁスキフ!?」

 

 「あの時と違ってミュータント共が襲ってくるがな!上から来るぞ!気を付けろぉ!」

 

 視界に宙に浮き上がるエリミネーターが映り込んでスキフは大声で皆に警告を飛ばす。

 ブーラーがテレキネシス能力で死亡したダークストーカーの銃を空中に浮かせ、四方八方に乱射し始める。

 

 「リン!そこから離れろ!」

 

 「わっ…!?スキフさん!身体にミアズマが…!」

 

 「掠っただけだ!お前は!?」

 

 「わ…私は大丈夫…!」

 

 空中からミアズマブレス弾が振り注ぎ、ある程度固まって動いて居たスキフ達は散り散りに逃げざるを得なくなった。

 近くにいたリンを抱えて、スキフは貨物エレベーターの前まで退避する。

 スキフは自分の身体に掛かったミアズマをバタバタと振り払う。アーティファクトのお陰で怪我こそないが焼夷弾じみた攻撃を喰らったせいで、現在装備しているCS-1 ボディアーマーはかなりのダメージを受けていた。

 

 (他と合流するか?だがリンを連れてミュータントの群れを突破するのは……)

 

 「スキフさん!前からデカい奴!」

 

 スキフがどうするか考えているとリンが2人目掛けて“シュードジャイアント型”のハイブリッドが、シュードジャイアントを押し込みながら突っ込んで来るのに気付いた。

 咄嗟にTRs 301を撃ち込むが、5.56x45mm弾は白い肉の鎧に阻まれ止まる気配は無い。

 

 あのスピードと図体では左右の回避は間に合わない。

 仕方無く貨物エレベーター内に逃げ込み、出入口目掛けて巨大な肉塊が思い切り衝突する。

 ギリギリ貨物エレベーターの扉のすぐ横に衝突したので内部まで入ってこなかったことにほっと一息つく。

 

 「危なかった……グロ肉野郎共め、もっと前を見やが────」

 

 その瞬間、エレベーター内にブザー音が鳴り響いて扉が閉まり始めた。

 

 「………リン、お前スイッチ押したか?」

 

 「押してないよ!……止めようとしてるけど反応しない!」

 

 リンがエレベーター内の開閉スイッチを何度も連打しているが努力虚しく、エレベーターの扉は閉まっていく。

 シュードジャイアントが外側の開閉スイッチに衝突した上、ショートして誤作動を起こしたのだ。

 

 「クソっ!早くこっから───うおぉ!?」

 

 閉まりゆく扉を抑えて何とか出ようとした瞬間、シュードジャイアントが扉に激突して危うく手を潰され掛け、引っ込めてしまった。

 

 「У, мать ваш(マツオバショー)!リヒター!ストライダー!11号!」

 

 「ああどうしよう!扉が閉まっちゃう!」

 

 手を離した事で更に扉が閉まり、スキフは仲間に自分達の状況を伝えようとするが乱戦状態の収容区はその声を阻んでしまう。

 

 「2人共、どうしてそんな所に……!」

 

 ミュータントと戦う11号が偶然こちらに気付いたが、困惑した表情を見せる彼女が駆け寄る前にエレベーターの扉は完全に閉じてしまう。

 スキフとリンを乗せたエレベーターは、そのままSTCマラカイトの更に地下に向かっていった。

 

 

 

 

 「本当に生産途中のハイブリッドを全て処分していいのか?」

 

 「代表の命令だ、所で他の奴らは何処に消えた?少しは手伝って欲しいんだが……」

 

 「囚人を始末しに行った、もう労働力は必要ないそうだ。」

 

 「科学者共も逃げたしここを捨てるのは確実みたいだな。クリアスカイはヤバいかもしれない。」

 

 STCマラカイトの最下層。ミュータントをサクリファイスに作り替える秘密の研究施設でクリアスカイの警備兵2人が後始末に追われていた。

 

 壁に並べられたオブスキュラの中にある作りかけのサクリファイス(ハイブリッド)を処分する為、ミアズマの供給を断とうとした瞬間、貨物用エレベーターの到着を知らせるブザーが鳴る。

 エレベーターの扉が開くと、ボロボロのアーマーを着たクリアスカイ兵が出てきたので急いで駆け寄った。

 

 「おい!大丈夫───うごぁ!?」

 「なっ……お前まさか侵入者───あぐぅ!」

 

 1人は顎を殴られ昏倒、もう1人は武器を構えようとした所を銃のストックで殴り倒される。

 スキフは制圧した警備兵からマガジンを抜き取りながらエレベーター内で配線を弄っているリンに話しかける。

 

 「味方と勘違いしてくれて助かった……リン、エレベーターは動きそうか?」

 

 「ぜんぜんダメ、ロックが掛かっちゃったみたい。」

 

 「順調に行く訳が無いとは思ってたが……いくら何でも踏んだり蹴ったりだ畜生……仕方ない、急いで地下鉄のある階まで目指すぞ。」

 

 「何とか上に戻れれば良いんだけど……他の奴らを捕まえて尋問してみる?」

 

 「そうだな、出来るだけ生け捕りにしよう。」

 

 エレベーターが動かない以上、別の道を探すしか無い。

 ミュータントだらけの部屋に置いて行く羽目になった11号達の安否が気になるが、仕方無くスキフとリンは先に進む事にした。

 

 

 

 

 「ふっざけんな!散々人をこき使っといて毒ガスで殺すとか人の心あるんか!?」

 

 「今まで生かしてやっただけありがたいと思え。」

 

 「どうせ殺すなら銃弾で殺せや!毒ガスなんて回りくどい事すんな!」

 

 「弾の無駄だ。」

 

 最下層に存在する捕虜収容所。

 クリアスカイが地下を掘り起こしていた際に、監獄に使えそうなスペースが丁度あった為、秘密裏に捕まえた捕虜をここに閉じ込めていた区画である。ついでに言えばアキラが監禁されていたのもこの場所だ。

 

 監房代わりの部屋が並ぶ通路の真ん中でガスマスクを着けたクリアスカイの看守が何本ものタンクを起き、それらの栓を開けようとしていた。

 

 監房は固く閉じられているが密閉されている訳では無い。

 このままでは始末されると囚人達は必死に抗議し、牢屋をこじ開けようと努力するが、看守は容赦無く毒ガスを開放しようとして───出入口から響く銃声に手を止める。

 

 「サニー5-2、応答しろ、敵か?」

 

 返事は無い、だが銃声は近づいて来る。

 看守は出入口に向かって武器を構え、敵に備えたがその頭に唾が掛けられる。

 監房の隙間から囚人が唾を吐き、器用に看守に命中させたのだ。

 

 「ちっ…!先にお前を殺してやろう───ぐあぁぁ!」

 

 青筋を立てながらその犯人に意識を向けた看守は、突如両膝を撃たれてその場に倒れ伏す。

 何とか攻撃が来た方向に武器を向けようとしたが、手に持つ武器も撃ち抜かれて遠くに飛んで行ってしまった。

 

 出入口には、リンを守りながら銃を構えるスキフがいた。

 

 「死にたくなかったら答えて!地下鉄のある区画まではどうやって行くの!?」

 

 「ぐ……貴様ら侵入者か…!誰が答えるものか!」

 

 「他の連中も同じ事言ってたぞ、お前らの忠誠心に付き合ってる暇は無いんだよ。」

 

 リンの脅しに屈さないクリアスカイに内心イラつきが増してきているスキフは一発殴ってやろうとストックを持ち上げるが、横で見ていた囚人がそれを止める。

 

 「よぉあんちゃん!クリアスカイの格好してるけど違うんか?地下鉄に向かいたいならウチらが知ってるぞ!開けてくれたら教えたる!」

 

 「……本当か?と言うかここに監禁されてるのかお前ら。」

 

 「その通り!なんてったってウチらはクリアスカイにシバかれながらマラカイトを掘り返したモンだしな!地下の事はそいつより知り尽くしてるで!」

 

 「そうか、じゃあお前は用済みだ。」

 

 「なっ……おい待─────」

 

 全力で看守を殴り飛ばして気絶させる。撃っても良かったがこっちの方が割とスッキリするので止めた。

 看守の懐を漁ると鍵を見つけたので話しかけて来た囚人を開放する。

 

 自由の身になった囚人は上機嫌な態度で看守に蹴りを入れ、スキフ達に感謝を伝える。

 

 「本当に助かった!このアホ共ホンマに───」

 

 「お前らフリーダムだろ?感謝は後で良いから地下鉄までのルートを教えてくれ。」

 

 「なんで知って……まぁええか。おい!お前は他の連中を開放しとけ!」

 

 潜入前にフリーダム兵から聞いた、クリアスカイの捕虜になった幹部とその部下達。

 恐らく彼らがそうなのであろう、馬のシリオンらしきその男は同室の囚人に鍵を渡し、看守の武器とボディアーマーを手早く装備する。

 

 「そう言えば自己紹介がまだやったな、オレは“ロキ”!フリーダムの幹部様や、あんたらの目的は知らんけどクリアスカイをブチのめすならウチらも協力するで!ついて来ぃや!」

 

 少なくとも数ヶ月間捕まっていたとは思えない程調子のいいフリーダムの案内でスキフとリンは地下鉄へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 『クソが!バケモノ共が多すぎる!』

 『食い止めろ!ここを通すな!』

 『ミュータントの後方から敵の射撃───ぐぁ!』

 『マンダウン!敵近接兵が突撃してくるぞ!』

 

 「ナイスよストライダー!そのまま援護を続けて!」

 「ミュータントに注意しろよ!奴らは目に付く存在全てに襲い掛かるぞ!」

 「何が“急がば回れ”だニンブル!一番時間掛かるルートじゃねぇか、ええ!?」

 「ミュータントが全部脱走するとは思わなかったんだよ!グロ肉なんか開放するんじゃなかった!」

 

 マラカイトの地下鉄に続く、ニンブル曰く先回り出来るルートをダークストーカーとミュータントとの三つ巴をくぐり抜けながら突き進む11号達。

 

 結局、シュードジャイアントとサクリファイスが暴れ回った結果、収容区の檻と言う檻が破壊されてミュータントの殆どが解き放たれてしまったのだ。

 

 しかも手違いでスキフとリンが貨物エレベーターで逸れてしまう。

 11号は2人を助けに向かおうと一瞬考えたが、レベデフを先回りしてアキラを助け出す事が優先であると判断し、スキフが居るならリンの身は大丈夫と自分を納得させて先に進む事にしたのだ。

 

 「はあぁ─────!」

 

 『ちぃ!“再創”をぉ!』

 

 ブーラーを踏み台にしてクリアスカイ製エーテル合金の剣で斬りかかる11号に対し、ダークストーカーの1人がミアズマを纏ったハンドアックスで応戦する。

 お互いの武器が激しくぶつかり合うが、なんと11号の剣が砕け散ってしまう。ここまでミュータントを斬ってきたこの剣はかなり損耗していたのだ。

 ダークストーカーは一瞬ほくそ笑むが、瞬時に11号は体術に移行して相手の顎に掌底を喰らわせ、腕を捕えてハンドアックスを奪い取って胴体に深い一撃を喰い込ませた。

 

 他のダークストーカーが11号を撃とうとするが飛び掛かって来るミュータントがそれを妨害し、ストライダーの正確な射撃が彼らの頭を撃ち抜いていく。

 死んだ敵兵からもう一本ハンドアックスを拾い上げた11号は敵兵とミュータント相手に斬り掛かっていった。

 

 少し経って、その場に立って居るのは11号達のみであった。

 

 「クリア!先に進みましょう!」

 

 「ニンブル!道案内を……待て、ドクターからだ。」

 

 『ストライダー!何が起きたの!?STCのあちこちにミュータントが出てきて……地上にもいっぱい現れたんだ!』

 

 「ここに捕まってたミュータントが逃げ出したんだ、レベデフは今何処まで行ってる?」

 

 『もうすぐ地下鉄に到着する!急いでくれ!』

 

 ドクターとの通信を終えたストライダーは顔を顰める。時間的なアドバンテージは失われつつあったからだ。

 それでも全力で走れば間に合うかもしれない、少なくともアキラを助ければ“シン”の計画を止める事が出来るのだ。

 

 「ニンブル、地下鉄まであとどれくらいなんだ?」

 

 「あと少しだ!このまま進め!」

 

 ニンブルの案内で進み続ける11号達。

 暴れ回るミュータントと制圧を試みたであろうクリアスカイ兵の死体を乗り越えて進んだ先に地下鉄駅は存在した。

 

 乱雑に駐車された車両に隠れながら様子を伺うと、軍用車両の駐車場と併用している駅の真ん中にある線路には元々ZONE内にあったであろう物を再利用した貨物列車があった。

 スノークの死体を踏みつけたクリアスカイの隊長が部下に命じて次々とオブスキュラや物資を積み込ませているのが見える。

 

 「隊長達はまだ到着していないようね……」

 

 「もしかしたらミュータントに足止めされてるのかもな、どうするよストライダーに11号さん。」

 

 「決まってる、ここを制圧ないし、列車を破壊して逃げ道を封じて────クソ、レベデフが来たぞ…!」

 

 ストライダーが指した方向からレベデフ達が到着する。 ドクターに警備兵に抱えられたアキラも一緒だ。

 

 「このままじゃ逃げられるぞ…!」

 

 「配置について。貴方達の援護射撃で私が突撃する。」 

 

 「1人で大丈夫か11号さん。」

 

 「心配無用よ、準備して。」

 

 「俺一応道案内の為に付いてきただけなんだけどな……」

 

 リヒター、ストライダー、ニンブルがそれぞれ配置に付く。

 11号が手を挙げると、3人は武器を構えてレベデフの周囲にいる兵士に向けて発砲した。

 

 「あがっ……」「ぐあぁ!」

 「敵襲!応戦しろ!」

 「何故追いつかれてる!ダークストーカーは何をしているのですか!」

 「代表!早く列車に……1人突っ込んでくるぞ!」

 

 身を低く屈めながら11号がハンドアックス両手に突撃する。

 チェイサー13 を抱えてクリアスカイ兵も立ち向かって行くが、容赦無く11号は斬り伏せていく。

 目標はアキラの奪還───11号は銃撃を弾きながらアキラを抱えるクリアスカイ兵に狙いを定めるが、視界一杯広がるミアズマを前に回避を強いられる。

 

 「ぐぅ…!」

 

 『今のを躱すか、中々やるじゃないか。』

 

 「ブラック…!奴らを足止めしろと言いましたよね!?」

 

 『ミュータント共が逃げ出して後退せざるを得なかった、列車にエクソスケルトンもあったから着替えに戻ってたんだよ司教。』

 

 列車から出てきたのは「ブルムバー・エクソスケルトン」とエリミネーターを装備したダークストーカーの指揮官───ブラック。

 ミアズマブレス弾を浴びせようと連射するが、11号は周囲の車両やオブスキュラを巧みに利用して攻撃を回避する。

 

 「エクソスケルトンに弾幕を集中しろ!」

 

 11号を援護する為ストライダー達が集中砲火浴びせるが、ミアズマシールドによって全弾防がれてしまう。

 ストライダー達にもミアズマブレス弾をお見舞いし、ブラックは余裕綽々にリロードを行ないながらレベデフに目線で合図を送った。

 

 「………命令です、運びきれないオブスキュラを全て開放しなさい。この場に居るクリアスカイは全員列車に乗り込んで!」

 

 「了解!」

 

 クリアスカイ兵がPDAを操作すると、列車に乗せられなかったオブスキュラが次々と開いていく。

 棺桶から死体が甦るかの如く20近いハイブリッドが湧き出して来た。

 更に貨物列車が動きだし、11号達の目の前でレベデフとクリアスカイ兵達はアキラを連れて列車に乗り込んでいく。

 

 「くっ……列車が…!」

 

 『余所見する暇は無いぞ侵入者、俺とこれだけの数のサクリファイスを相手にお前らはどれだけ持ち堪えられるかな?』

 

 多数のハイブリッドを従えたブラックが11号の前に立ち塞がる。はっきり言って今の火力と人数では突破は容易では無いのは分かっている。

 このままアキラを乗せた列車が何処かへ行ってしまうのを11号達は指を咥えて見ているしかなかった。

 

 

 

 

 そして列車の最後尾が駅から消えようとした瞬間、反対側のホームの扉からスキフとリン、そしてロキが飛び出してくる。

 

 「あっちゃあ、列車行ってもうたわ。」

 

 「cyka(クソったれ)!あともう少しだったのに!」

 

 「まさか11号達は間に合わなかったの……って、11号!?」

 

 『新手か……3人増えた所でな!』

 

 スキフとリンは驚愕する、目の前で11号達が多数のハイブリッドとダークストーカーに追い詰められていたのだ。

 ブラックは後方に現れた3人を即座に敵と見抜き、数体のハイブリッドを差し向けようとした瞬間、3人の後ろから大勢の囚人───捕虜にされていたフリーダム達が飛び出して来た。

 

 ロキは武器を掲げて全員に突撃命令を下す。

 

 「ホロウレイダー共ぉ!連中を皆殺しにしたれぇ!自由は目前やぁ!」

 

 フリーダム(自由万歳)!」

 

 『役立たずの看守め…!喰らえ囚人共────ぐぉ!?』

 

 雄叫びを上げながらハイブリッドに立ち向かっていくフリーダムにブラックはミアズマブレス弾を喰らわせようとするが、それを11号の斬撃が阻んだ。

 

 『このアマ……!』

 

 「彼は列車よ!ここは任せて貴方達は列車を追いかけて!」

 

 「追いかけるったって……」

 

 「スキフさん!車!車で追いかけよう!」

 

 リンが無造作に置かれたジープを見つける、恐らく列車に乗せる予定だったのだろうか。

 ハイブリッドとフリーダムが戦っている中、スキフとリンはジープに向かって走り出した。

 

 「ロキ!向こうの連中は俺達の仲間だ!撃つなよ!」

 

 「白いバケモンとガスマスクだけ殺せばええんやろ!任しとき!」

 

 ハイブリッドをロキたちに任せ、スキフはジープに乗り込んで配線を弄くりエンジンを点火する。

 だがジープにハイブリッドが突っ込んで来たのでTRs 301を向けて迎撃しようとしたが、ハイブリッドの横っ腹を銃撃が貫く。

 

 「リヒター!ストライダー!」

 

 「援護するぜスキフ!」

 「俺達が抑えるから早く車を出すんだ!」

 

 「お前ら絶対に死ぬなよ…!」

 

 2人に、11号に、フリーダム達に感謝しながらスキフは車を出そうとした時、リンが運転席に割り込んできた。

 

 「おいリン!何をしてるんだ!?」

 

 「私が運転するからスキフさんは撃つ役!」

 

 「危険だぞ!ここに残ってろ!」

 

 「サクリファイスだらけの場所も危険でしょ!大丈夫、私運転免許持ってるから!」

 

 何処にそんな力があったのか、スキフを助手席に押しのけてリンはハンドルを握る。やる気満々のリンを前に、スキフは仕方無く彼女に運転を任せ、自身は迎撃に専念する事にした。

 

 「スキフさん捕まってぇ…!揺れるよ!」

 

 「お前の運転を信用するからな…!頼むぞリン!」

 

 リンは目一杯アクセルを踏み込み、ジープは線路に飛び込んだ。

 

 レールと枕木をタイヤで踏みつけガタガタと車体を揺らしながら、アキラを乗せて走り去らんとする列車を追って、スキフとリンはZONEの地下に張り巡らされた地下鉄(メトロ)の暗闇へと飛び込んで行った。

 

 

 

 

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