Zenless Zone Zero The S.T.A.L.K.E.R Who Wandered In 作:路肩の石ころ
こんなのS.T.A.L.K.E.R.じゃないわ!ただのMETROよ!!
コンクリートに包まれた地下トンネル。そこに敷かれた比較的真新しい線路を錆ついた古い貨物列車が荷物とクリアスカイ兵を乗せて走り抜ける。
その後方からスキフとリンを乗せたジープが枕木とレールを踏み越え、車体全体が激しく揺らしながら追いかけていた。
暗く、僅かな照明すら無いトンネルを列車とジープのライトだけが照らす空間。
冷たい空気と風が肌を叩く。オープンカー式のジープのハンドルを握るリンは視界の先に別のライトを見つけ、アクセルを踏む足に力を込めた。
「列車が見えたよ!スキフさん迎撃お願い!」
「出来るだけ頭伏せてろ!」
スキフが叫ぶと、列車の最後尾の車両からクリアスカイの機関銃による射撃がジープに振り注ぐ。
貨物列車の大半は屋根が無い運搬用の車両が占めており、そこに人の半身程の高さの雑多な鉄板や金網を貼り付けてそれらしい形に整えられていた。
助手席からTRs 301を発砲するが、唯でさえ揺れる車両から機関銃を撃ってくる敵を倒すのは難しい。
「リン!隣の線路に入れ!」
「オッケー!捕まって!」
線路の途中が分岐しているのを見つけたスキフは隣の線路を進むように指示する。
機関銃からの攻撃を避けられるのと、列車よりもジープの方がスピードが早く、先回り出来ると見たからだ。
ガタン、と一瞬車体が浮き上がるような感覚と共に隣の線路に侵入する。
「あの車両を破壊しろ!列車に近寄らせるな!」
列車と横並びになったジープ目掛けて列車に乗るクリアスカイが自動小銃、ショットガン、果てはハンドガンまで持ち出して2人を殺害しようと撃ってくる。
スキフは冷静にTRs 301を構えて1人、また1人とクリアスカイ達を仕留めていく。
機関銃を移動させて来たクリアスカイ兵に5.56x45mm弾を浴びせ、血を噴いて倒れたのを確認したスキフはマガジンをリロードしながらリンに言う。
「もっとアクセルを踏め!何とかして乗り込むぞ!」
「今更だけどどうやって乗るつもりなの!?」
「後で考える!」
最後尾の車両を制圧したのを確認したリンは更にアクセルを踏み込む。
スキフは列車に飛び乗るつもりでいたが、線路と線路の間に存在する地下トンネルを支える幾つものコンクリート柱が邪魔をしていた。これでは飛び乗ろうとした瞬間に柱に激突して全身がぐちゃぐちゃになるだろう。
先の方へジープを進めると、今度は貨物車両に固定された
咄嗟にスキフは運転席のリンを背に庇うように姿勢を動かし、MRAPのガンナー目掛けて銃を撃つ。
「ちょっと!前見えないってば!」
「自分の頭吹き飛ばされるよりマシだろ!そのまま真っすぐ走れ!」
重機関銃が火を噴いて高速で通り過ぎるコンクリート柱や壁を削っていく。
その内の数発がスキフの胸と腹に命中するが、凄まじい痛みがスキフを襲うだけで貫通と致命傷には至らない。
反撃にTRs 301を発砲するが、ガンナー席を守る様に設置された防弾板が5.56x45mm弾を完璧に防ぎきる。
更には前方の車両からクリアスカイ兵の援軍がやって来てジープへの攻撃に加わった。
(増援も来やがった…!アーマーはもう使い物にならないし、これ以上受けたらヤバい───
現在装備中のCS-1 ボディアーマーの耐久力はかなり低下している、流石に身を挺してリンを守り続ける事は難しいと感じたスキフだったが、MRAPの傍に積まれている
直ぐにスキフはそれに向けて銃を撃った。
カバーとベニヤ板で包まれたその
「こう言う場面じゃ火気厳禁だ、
スキフはMRAPの傍に纏めて積まれた
その瞬間、中に積まれたエーテル燃料が大爆発を起こしてMRAPとガンナー、その車両に居たクリアスカイ兵を派手に吹き飛ばす。
固定具が外れ、黒焦げになったガンナーを乗せたままMRAPは列車から転がり落ちていき、ギリギリ吹き飛ばされなかった兵士は炎に飲み込まれ、悲鳴を上げながら藻掻き、倒れていった。
「ひゃああああ!?」
「ypaaa!ハラショー!」
スキフの背中に視界を阻まれ、何が起きてるのか分からないリンは突然の爆音に驚かされる。
彼女を守るため身体に何発もの銃弾を受けたスキフは銃を掲げて派手な光景を前に歓声を上げた。
「ねぇちょっと!終わったなら前どいて!」
「どうして悪党って奴らは爆発物を近くに置いておくんだろうなぁリン!」
「私に聞かれても知らないよ!」
困惑するリンに押しのけられて、助手席に座り直したスキフはリロードを行いながら先を見据える。
この調子で進めば───そんな事を思ったスキフの視界は、突如吹き飛んだコンクリート柱の破片に埋め尽くされた。
「頭を守れ!」
「んもぉ!今度はなんなの!?」
破片がジープに襲いかかり、コンクリートが2人に振り注ぐ。
大量の破片はスキフがリンの頭を下げさせ、自身が覆い被さる事で凌いだが、今度は2人の頭の上を高速で何かが突き抜けていき、後方の地下トンネルの壁を爆発させた。
さっきの攻撃が前方の車両からだと見抜いたスキフが目を凝らすと、大きな筒の様な武器を担いだクリアスカイ兵達がジープに照準を向けていたのが分かった。
「リン、
「
「ロケットランチャーだよ!上手く回避しろ!」
斜め前方からロケットランチャーを乱れ撃ちしてくるクリアスカイ兵に対しスキフは反撃を行い、ヘッドショットを喰らった兵士の1人が天井へ向けてロケットを撃ち上げる。
リンも狭い線路でジープを蛇行させ、少しでも当たる確率を減らそうとハンドルを必死に動かし続けた。
だがロケットの一発がジープの目の前に着弾し、その破片がエンジンに直撃しておかしな音を立て始めた。
それと同時にジープと並んでいた筈の列車がどんどん先に進んでいく。
「マズイよスキフさん…!速度がどんどん落ちてる!」
「そのままアクセルを踏み続けろ!」
「で…でもスピードが……」
「前を見ろ!あれを使って列車に突っ込め!」
スキフの言葉でリンが前方を注視すると、そこには脱線した貨物車両の残骸が2人が進む線路の先を塞いでいた。
まるでジャンプ台の様な配置の残骸を見て、意図を理解したリンはアクセルを目一杯踏み込み、火を噴き始めたエンジンを酷使してその残骸にジープを乗り上げさせる。
「行っけぇぇぇぇ!」
容赦無くロケットランチャーの弾頭がコンクリート柱や残骸に突き刺さり、爆発していくのも構わずリンは思い切りハンドルを切って貨物列車に向けてジープをジャンプさせた。
地下トンネルの中、走行する列車の最後尾に空中で横転したジープは貨物車両の上に着地する。
「いったたた……大丈夫…?私たち生きてる…?」
「何とかな……早く降りろ、奴らが来るぞ。」
ひっくり返ったジープからスキフとリンが這い出る。
最後尾の車両にはスキフが倒した兵士の死体、それとジープが突っ込んだ影響で散乱した装備類などが広がっていた。
オブスキュラ以外にも様々な物資を積み込んでいたらしい。壊れた木箱から覗かせるとある装備を見つけ、スキフはボロボロになった今のアーマーと見比べる。
「リン、ちょっと着替えるから待っててくれ。」
「こんな時に?代わりのアーマーでも見つけたの?」
「ああ……良い物を見つけた。」
そう言うとスキフは、木箱からとあるアーマーを引っ張りだし、手早く装備し始めた。
頭痛を感じながらアキラが目を覚ますと、縛られている手足と、その拘束を解こうとしている都市迷彩柄のボンプが目の前にいた事に気付いた。
「うう……頭が痛い……ここは何処なんだ…?」
『気がついた?パエトーン。』
「ボンプ……?確か君は、レベデフと一緒に居た……」
『こうして喋るのは始めてだね、今から後部車両に逃げるよ。キミを助ける為にキミの妹とスキフがこの列車を追い掛けて来ているから合流しよう。』
その名前を聞いてアキラは現状を理解する。
どうやらレベデフはあの状況から自分を連れてここまで逃げる事に成功したらしい、そしてそれを追ってリンとスキフが追跡して来た事も。
『あの2人のお陰で後部車両は大混乱だ、今のうちに屋根に登って、2人がいる所まで移動するよ。』
「……君を信用しても良いのかい?確かスキフさんを妨害してレベデフを守っていたじゃないか。」
アキラからすれば、自分が殴られて気を失う直前にスキフに突進してレベデフの命を救い、結果的にアキラがまた連れ去られる原因を作った存在であるボンプをいまいち信用しきれなかった。
都市迷彩柄のボンプ───ドクターは複雑な表情を作って弁解を始める。
『僕にとって彼女は止めなきゃいけない人であると同時に大切な友達なんだ、死んで欲しく無かったから……』
「……君の気持ちは分かった。案内してくれ、リンとスキフさんに合流しよう。」
本気で言ってると感じたアキラはそれ以上の追求を止めた。
とにかく今は逃げる事が先決だ、見た所この車両にはアキラとドクター以外に人は居ない───よく見ると車内の端に見張りと思われる兵士が気を失って倒れていた、恐らくドクターが気絶させたのだろう。
客車を流用したと思われる車両の窓を開け、アキラとボンプは何とか屋根に登って遠くを見据える。
強く冷たい風がアキラの肌を刺すなかで、慎重に一歩ずつ歩みを進めていく。
列車後方の屋根の無い貨物車両の奥では、激しい戦闘が起きて居るのが見えた。
最後尾に飛び移ったジープ、それに乗っていたであろう敵を排除する為、クリアスカイ兵は続々と後部車両へと移動していった。
武器を構えて車内をクリアリングしながら、ひっくり返ったジープまで辿り着く。
そこにスキフとリンの姿は無かったが、ジープの後ろに誰か潜んで居るのは直ぐに分かった。
「ドラゴンブレス、前へ。」
「了解。」
ドラゴンブレス弾を装填したチェイサー13を構えた兵士2人のがゆっくりとジープへ近づいていく。
屋根が無い貨物車両ではどの道逃げ道など無い、お互いの射線が交差する様に動いて確実に燃焼弾を敵に浴びせる────そのつもりであった。
ジープが突然、
激しい音を打ち鳴らしながら列車の後方へと転がっていくジープに、クリアスカイ達は一瞬呆然としてしまう。
列車から投げ出されたジープの裏から現れたのは、ミアズマシールドを輝かせる、ダークストーカーの重装兵が運用する「ブルムバー・エクソスケルトン」
それを装備するのは、クリアスカイが使用していた「RP-74」機関銃を構えたスキフ。
かつてこの世界に来たばかりの頃、エーテリアスの大群をなぎ倒し、デュラハンとの戦いで喪失した「RPM-74」とそっくりな見た目だが、あれよりも長い銃身を備えている汎用機関銃だ。
グリップとキャリングハンドルを握り締めたスキフは、ダークストーカーの様な電子加工された声で木箱の後ろに隠れているリンに言った。
『リン、顔を出すなよ!』
「う…撃てぇ──────!」
その瞬間、列車という細長い空間にいるクリアスカイ達は一斉射撃をエクソスケルトンに対して浴びせる。
ドラゴンブレス弾やTRs 301の5.56x45mm弾がスキフの全身に振りかかるが、讃煩会と“シン”の技術の結晶である兵器化されたミアズマシールドを突破するには至らない。
お返しにスキフが機関銃の引き金を引くと、毎分750発のベルトリンクに繋がれた7.62x54 mmエーテル弾が密集するクリアスカイ兵達に襲い掛かる。
腕が吹き飛び、足がもがれ、内臓が零れ落ち、アーマーがズタズタに引き裂かれ、中身ごとヘルメットは粉砕され、叫び声すら上げる暇無く赤い血飛沫を飛散させながらその場に居た兵士達は全滅した。
全ての弾薬を吐き出し、硝煙を靡かせるRP-74を下げ、リロードを行う。
この世界に来てからこのタイプの機関銃を使うのは大分久しぶりだ、カチャカチャとベルトリンクの弾薬を設置し、カバーを下ろしてコッキング。
装填を終えたスキフは振り向いて隠れているリンの安否を確かめた。
『リン、怪我は無いか?』
「う…うん、大丈───ごめん、ちょっと待って……」
恐る恐る顔を出したリンはスキフの前に広がるスプラッタな光景を前に吐き気を催す。
いくら人の死をある程度見てきたアウトロー寄りのパエトーンとは言え、臓物や手足が盛大に散乱する現場と、流れてくる濃密な血の匂いを前に平気な顔が出来るほど慣れては居ない。
乙女の尊厳を守る為、こみ上げてきたものを必死に飲み込んで前を向いた。
「敵が来るよ、スキフさん。」
『掛かってこい、全員ぶっ潰してやる。』
機関銃を構えたスキフは貨物列車を進んで行く。
死体を踏み越え、此方に迫って来るクリアスカイ兵をなぎ倒し、アキラの下に辿り着く為に。
『こちらサニー2!敵は
『こっちの攻撃が効かない!誰か助け──────ひぎゃあ!』
「チッ……時間がありません、早く済ませなさい。」
通信機から聞こえる悲鳴に顔を顰めるレベデフはオブスキュラを積んだ貨物車両で何かを仕掛けている部下を急かす。
部下の方はレベデフに従いつつも、今やっている作業の必要性に疑問を持っていた。
「代表…こんな事せずとも、今のうちに車両を切り離せばいいのでは?」
「ここまで執念深く追い掛けて来る相手ですよ?確実に仕留めなければなりません。」
「しかし、せっかく積み込んだオブスキュラを捨てるのはまだしも、味方を犠牲にするような────いえ、分かりました。」
余計な口を叩かず、さっさと作業を終わらせろ。上司の目はそう言っていたので部下は何も言わずに作業を続けた。
スキフが迫って来る後部車両を見据えながら、落ち着かない様に指をトントンと叩いていると、彼女の下に通信が掛かってきた。
『代表!非常事態です!』
「今がまさに非常事なんですよ、何があったんです。」
『パ…パエトーンが脱走しました!見張りもやられています!それと、代表のボンプも何処にも見当たりません!』
それを聞いたレベデフの目が、大きく見開いた。
銃身がひん曲がった機関銃を全力で前方へと投げつけ、正面に居たクリアスカイのアーマーに突き刺さる。
影に潜み、至近距離からショットガンを放った兵士の首根っこを掴んで、高速で走る列車の外へ放り投げた。
最後の1人が半狂乱で弾が無くなるまで乱射するも、全てミアズマシールドに阻まれてカチカチと虚しい音が鳴り、叫びながら殴り掛かってくるが渾身の右ストレートで顔面をぐちゃぐちゃに潰され床に転がされる。
ZONE最強のアーマーであるエクソスケルトンにミアズマシールドが組み合わさり、歩兵戦車と化したスキフを止められるクリアスカイ兵は誰も居なかった。
チョルノービリでもエクソスケルトンを装備した事はあるが、アーティファクトとの重ね合わせでもここまでの力を味わえ無かったスキフは無敵になった気分を味わっていた。
『アグロプロムでは苦戦させられたが……自分で使うと最高じゃないか、今ならシュードジャイアントと殴り合いしても勝てそうだ。』
「頼りになるけどミアズマの侵食とか大丈夫なのそれ?」
その背中を眺めながらリンは微妙な表情でスキフの装備するエクソスケルトンを見る。
何せ衛非地区で散々その脅威を見せつけられたミアズマを纏う、讃煩会の技術を使うアーマーなのだ。始まりの主を信奉する奴らの事だから身体が侵食される副作用があるのではと疑っている。
だがスキフは問題無いとばかりに胸を叩いた。
『俺のアーティファクトの1つは侵食を完全に打ち消す伝説級の代物さ。もし侵食があったとしても、ミアズマなんて屁でも無い。』
「……アグロプロムの時もそうだったけど、何度も私を守る為に盾になってくれてもへっちゃらだったり、怪我が治ったりしたのもアーティファクトのお陰なんだ。」
『そうだ、これを持ってる限り俺は撃たれても治るしある程度死なずにいられる。アーティファクトが無ければ俺はただの常人に過ぎないさ。』
アーティファクト自慢も程々に先へ進むスキフとリン。
次の車両は2両に渡って厳重に固定されたオブスキュラが積まれた貨物車両だった。
唯でさえ列車内は狭いと言うのに、オブスキュラのせいで人一人通れるスペースしか無い。
『狭いな……』
「でも敵は居ないみたいだね。」
『結構倒したからな、もしかしたら予備兵力が尽きたかも────』
『こっから先は通さないぞ侵入者!』
先へ進もうとした瞬間、乱暴に前方の客車の扉が開けられ、大男が姿を現した。
どう見ても防爆スーツとしか思えないパワーアーマーと、帯電させたパワーフィストを装備したクリアスカイ兵は狭い一本道の車内を突進してくる。
『リン!下がってろ!』
突進してくる敵にスキフは構えていたTRs 301を足元に捨てる。どの道あの鎧に5.56x45mm弾は通用しない。
逆に敵に立ち向かいミアズマシールドを纏った両手で拳を受け止めた。
その瞬間、凄まじい──「
『があああああ!!』
強烈な電撃に怯んだ瞬間、パワーフィストによるアッパーがスキフの顎を捕え、ガスマスクが吹き飛んでいく。
負けじとエクソスケルトンの拳を相手の顔面に喰らわすが、相手も反撃に腹部に一撃を喰らわされて後退りしてしまう。
視界が揺れ、口の端から血を流しながらスキフは忌々しく敵のパワーアーマー兵を睨み付けた。
「クソったれがあ……」
『クックック……所詮、ZONEで流通するエクソスケルトンは旧世代の外骨格……骨董品に過ぎん!最新鋭パワーアーマーであるこの“ジャガーノート”には敵う訳がない!』
「もっとマシなデザインにしたらどうだ?爆発物処理班にしか見えねぇぞ。」
スキフはナイフを取り出してパワーアーマーと相対する。
さっきの電撃はどういう訳かミアズマを貫通した。どういう事なのかスキフが思考の端で考えていると、目の前のパワーアーマー兵が電撃を放出しながら勝手にネタバラシを始める。
『
「どうせ試作段階の初実戦だろ。全員がアノマリーを操れるんだったらこっちはもっと苦労しているし、噂だって耳に入る筈だ。」
『確かにその通りだが……ならば貴様が記念すべき犠牲者一号だ!』
電気アノマリーである
狭い通路内、ボクシング選手の様に回避しながらエクソスケルトンのパワーでナイフとジャブを喰らわしていく。
ブルムバー・エクソスケルトンにはある程度電気アノマリー耐性が備わってるが、防御の要であるミアズマシールドはアノマリーには効果が全くなかったらしい、そのため回避に専念するしかない。
「何とかしてあいつを倒さないと先に進めない…!スキフさんの助けになりそうな物は………何これ?」
重装甲を纏った2人が列車内で殴り合いを繰り広げている中、離れた場所で見守っていたリンは周囲のオブスキュラから違和感を感じ、隙間に入っていたものを見つける。
“それ”が何なのかはっきりと分かった瞬間、リンの血の気が一気に引いた。
同時に“それ”がオブスキュラの隙間にびっしりと詰まっていた事も判明する。
「マズイよスキフさん!爆弾が仕掛けられてた!オブスキュラの隙間に沢山!」
「沢山って……嘘だろ!?」
『は?ば……爆弾だと?』
戦いの手を止めたスキフは疎か、パワーアーマー兵ですら素っ頓狂な声を上げる。どうやらこの男は何も知らされずスキフの足止めに向かわされたらしい。
スキフが真横のオブスキュラを見ると、リンの言う通り隙間に爆弾がこれでもかと詰め込まれていた。
よく見れば爆弾にはタイマーがセットされていた、残り時間は────あと数秒。
「────リン!」
『こんな作戦聞いてないぞぉ!』
スキフはリンに向かって走る。パワーアーマー兵の追撃が来ないか心配だったが、どうやら奴は先頭車両へ逃げ出したようだった。
走る最中にTRs 301を拾い上げ、腰に巻いたアーティファクトコンテナを取り付けたベルトを外し、銃とベルトをリンの胸に押し付ける。
「これを抱えて絶対に離すな!」
「何を……!?早く安全な場所に逃げようよ!」
リンは後部車両に逃げようとするが、無視してリンの身体を掴んで持ち上げる。ちらりと見ただけであの爆薬量だ、後部車両に逃げても盛大に脱線して悲惨な事になるだろう。
ミアズマシールド付きのエクソスケルトンがあるスキフは兎も角、リンはどう足掻いても無事ではいられないし、回復キットを打つ前に潰れて死ぬ可能性が非常に高い。
ならば────やる事は1つだ。
「転げ落ちるんじゃないぞ!」
「待ってよ!まさか───わあぁぁぁぁ!!」
エクソスケルトンのフルパワーでリンを前方の車両に向けて投げ飛ばす。
比較的軽めのリンの身体は、のしのしと逃げるパワーアーマー兵を飛び越えて客車の屋根に頭から落ちる。
ヘルメットを被っているとは言え、思っていたより衝撃も痛みも無い事に困惑しつつ、渡された銃とアーティファクトコンテナを抱きしめながら顔を上げる。
「す…スキフさ──────」
最初にリンのいる車両と後方の車両を繋ぐ連結部が爆発し、一瞬の間を置いてスキフとパワーアーマー兵が乗っているオブスキュラを積み込んだ貨物車両が吹き飛んだ。
爆風がリンを襲い、破片が頬と肩を裂くが、必死に屋根にしがみつくことで耐え忍ぶ。
「う…そ……」
さっきまでいた車両が脱線してコンクリートのトンネルを削りながら横転し、勢いそのままに後部車両が次々と突っ込み、折り重なってトンネルを塞いでいく。
◇パエトーン図鑑「クリアスカイ・セキュリティ」
新進気鋭の企業であるクリアスカイ・コーポレーションの保安業務を担当する契約傭兵。
高い給料、ピカピカの青い制服、クリアスカイ専用の兵器を与えられた彼らの大半は、新エリー都の本社では無くZONEという領域で平和維持活動(主に自社やTOPSを守る為)を行う為に派遣される。そこで彼らはアノマリーや地元の野生動物(人間と非人間問わず)との心温まる触れ合いを契約満了まで楽しむ事になるのだ。
その規模は非常に大きく、急拡大を続ける新進気鋭の企業たるクリアスカイを象徴する部門と言えるだろう────会社の規模に対してあまりにも不釣り合いな私設軍隊であるが。
「共に蒼天を!」ーークリアスカイの求人広告に書かれた標語。