今回は少し構成を変えて、話の途中で区切って視点を変えてみました。
それは戦闘が始まった瞬間に起こった。
なぜかギルベルト少年が攻撃するどころか、地面に倒れ伏していたのだ。
「い、いったい何が起こったんだ?」
初めに声を上げたのはグレッグ様だった。
「見てわからないのか、間抜けが。」
そんなグレッグ様にティノは辛辣な言葉を投げかける。
ルーダはここで何かに気が付いた。
「ね、ねぇ。この部屋のマナ・マテリアルの濃度が濃くなってない?」
「よく気がついたな。そう、これはペトラお兄様のインサイド・ミラージュで周りを操作可能にするんだ。」
「なんなんだよ、それは。そんなことが人にできるのか?」
「できるから今こうなってるんだろ」
「それは、そうなんだが」
話を聞いていたけど、全くわからない。ペトラが魔法を使ったのは理解できたけど。マナ・マテリアルの濃度なんて僕にわかるはずもないしね。
「話には聞いていたが、これが『
空中楼閣、これがペトラの二つ名らしい。たしかシトリーが架空の出来事とか蜃気楼とかの意味があるって言ってたっけな。
「この魔法っていったいどんな原理なの?」
「そんなに気になるかい?」
気が付けばペトラが倒れたギルベルト少年を放って僕たちの近くまで来ていた。
「教えてくれるの?」
「うん。隠すことでもないしね」
「ペトラお兄様……自身の切り札なんて普通は人に説明しないんですよ」
「うんうん、そうだね。それでこれを話す前に理解しておいてほしいことがあるんだけど」
ガン無視である。ペトラは研究者っぽいところあるし自分の成果を人に聞いてほしいのかもね。
「まず体内って一種の異界なんだよ」
「……それは、抽象的にってこと?それとも文字通り?」
「文字通りだよ。生物は多かれ少なかれマナ・マテリアルを体にためてるよね。体を
「……えぇ、それとなくは」
「ならよし!それでこの魔法は自分の周囲に結界を張って体の代わりに結界を外郭にするんだ。すると、結界内が体内になって好きに操作できるようになるんだよ!」
?何回も聞いているが、この説明を理解できそうにない。
「そんなことが本当にできるの?」
「こう見えても俺はルシアより精密に魔法が使えるんだよ。その代わりにルシアより威力はないけどね」
僕の感覚ではどちらもものすごい威力と精密性を誇っているのだけど。達人どうしでしかわからないこともあるんだろう。
「おい!まだ終わっていないぞ!」
声の方を見ると、さっきまで倒れていたギルベルト少年がフラフラしながらもペトラに煉獄剣を向けていた。ガッツすごいね。
「足フラフラじゃん。もうやめたら?」
「やめるわけないだろ!俺はまだ負けてない!」
「おい!もうやめておけ!力の差はもうわかっただろ!」
「やめろおっさん!俺はまだ負けてない!」
「同じことしか言わないね」
またギルベルト少年が倒れた。あんなにフラフラしてたから受け身取れてないじゃん。痛そうだね。
「……な……に……を」
ちゃんと喋れてないじゃん。
「さっきよりもほんの少し強くしただけだよ」
「もうその辺にしておいたら? 今回の目的は力量の確認だし、それはわかっただろ」
ギルベルト少年の耳に、ふと千変万化の声が入ってきた。模擬戦開始前と変わらないのんびりとした声。
「君さ、今までのパーティ、自分から脱退したんでしょ?」
「ッ!?」
そう話すクライは薄らと笑みを浮かべる。覇気を一切感じない、根っから脱力しているようないつもの雰囲気。その通りなんだけどね。
そういう言い方するからどんどん勘違い? されるんだぞ。絶対に本人には言わないけど。まぁその勘違いのおかげで面白い状況になってるんだけど。
「な、ぜ――」
「僕にも覚えがあるからさ……実力に差がありすぎたんだよね。わかるよ。『
クライの言葉を聞いてギルベルト少年の顔色が悪くなってくる。うわ、すごい真っ青だ。
「今回のパーティはきっと君にとってもいい経験になると思うよ。思う所はあるだろうけど、若手同士仲良くやろうじゃないか」
クライの言う通り嘆きの亡霊はどんな状況でも、誰も見捨てなかった。どんなミスをしようが、辞めたいと言い出そうが。
まぁクライを辞めさせるわけないよね。いなくなったら楽しくないし。
そんなことを考えていると、クライがカッコつけたように煉獄剣に近づいていく。そしてそのまま足で軽く触れると、剣から炎が渦巻いて出る。
いろんな意味で理解できないだろう。なんせ宝具一つ一つ使い方が違う、説明書もついてない。そんなじゃじゃ馬を持たずに足で触れただけで使いこなしているのだ.
「属性付与と攻撃範囲の拡張、か。単純だがいい剣だ、大切にするといい」
「ば……ばか、な……使えるわけ、がないッ! 煉獄、剣は……宝具だッ! 宝具、なんだッ!」
あら、手足が震えて生まれたての小鹿みたいになってる。そりゃそうだ、ギルベルト少年も煉獄剣をここまで扱うことはできないだろう。自分が見ても可哀そうなぐらいに戦意喪失している。
§
ひと悶着あったが、ギルベルト少年も納得してくれたようで、今はクランのラウンジでティノ達と作戦会議をしているらしい。
俺はクランマスター室のソファで白狼の巣の資料を読んでいる。うん、やっぱり歴史反映系の宝物殿はエピソードが怖いな。
「こわっ! こんなの絶対怨念じゃん……あー、そういうの僕ダメなんだよ」
「わかる。いやだよね、こういうタイプの宝物殿」
エピソードが怖いうえに
「お二人でしたらこのレベルの宝物殿、いくらでも攻略してきたでしょう」
エヴァが取り寄せた宝物殿の資料をパラパラめくりながらそんなことを言う。
攻略できるとしても怖い物は怖いんだけどね。
「よく、ギルベルトが大人しく了承しましたね」
「さぁ。ティノにぼこぼこにされて思うところがあったんじゃないかな。もしかしたらエヴァが調べてくれた情報でかまかけしたのが良かったのかもしれないけど……」
「そうそう、クライかっこよかったんだよ『
「いいなぁ……煉獄剣。売ってくれないかな……炎の属性付与と範囲拡張、もしかしたらちゃんと調べたら他にも効果があるかもしれないけど――」
「無駄遣いはよろしくないかと」
お母さんみたいだな。
「そんなことより、甘い物食べに行かない?ほら、エヴァも頭使って疲れてるでしょ。疲れたときは甘い物だよ」
「……それ、クライさんが食べたいだけですよね?」
「…………いや、そんなことないよ」
やっぱりお母さんだな。名誉足跡のオカンだ。
名誉はいらないか。
「俺は用事があるからちょっと出かけてくる」
「行ってらっしゃい」
「お気をつけて」
§
探協に来た俺はガークさんを探している……のだが、なにやら探協がすこし騒がしい。そういや探協はいつも騒がしかったな、気のせいか。
「ガークさーん……忙しそうだね」
「いったい誰のせいだと思ってるんだ」
「俺以外の誰かだね……。いったい誰だろう、
「ちがう。お前達だ」
「何もしてないんだけど」
「白狼の巣について調べてるんだ」
それでこんなに忙しそうなんだ。多分調べても何も出てこないと思うけど。
「そんなことより、氷嵐戦牙借りるね」
「そこに置いてあるから持っていけ」
簡単に氷嵐戦牙借りれたな。すぐ返さないといけないけど。
さてさて、これにどんな機能を追加しようかな、チャージできる最大量を増やすか出力を上げるか……ほかにもやりたいことが沢山ある。
「わかってると思うが、壊すなよ」
「あたりまえでしょ、借り物を壊すわけないじゃん」
「ならいい」
よーっし早速帰って改造するか!
また投稿が途切れることもあるかもしれませんが、気長に待っていただけたら幸いです。