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場所は天使が住まう天界。
最上部の第七天であり、神の奇跡を司る『システム』が存在している。加えて、天界の長である『聖書の神』が住まう場所でもあった。
聖書の神は、三大勢力の大戦によって死亡した。しかし彼は万が一の事を考え、目の前にある『システム』を使って転生に成功している。その結果、嘗て神であった彼は人間として生まれ変わり、現在は『兵藤隆誠』として第二の人生を歩んでいる。
成功したと言っても、『聖書の神』こと隆誠は嘗て振るっていた全盛期の
それを知った天使のミカエル達は残酷な条件であったかのように酷く悲しんでいた。同時に彼が天界に戻らず、人間として生きていく事を知って猶更に。
隆誠としては流石に二度と帰らない訳ではなく、時々帰郷しては
現在の駒王町や人間界は、大きな事件が起きずに平穏な時間を過ごしている為、隆誠は久々に天界へ戻ろうと計画した。勿論、人間としてでなく、本来の姿である『聖書の神』になって。当然
悩める
(あの時は本当に大変だったなぁ……)
目の前にある『システム』を見ながら、隆誠は当時の事を思い出していた。
魔界にいる際、天界にいるミカエル達は世界の危機と言わんばかりの大混乱に陥っていた。何日か経って聖書の神が帰還した直後、天使達は号泣しながら詰め寄って来た程である。
それとは別に、あの時起きた出来事は一体何だったのかと『システム』を使って詳しく調査する聖書の神だったが、結局は分からず仕舞いとなって断念せざるを得なかった。トライヘキサを命懸けで封印する他、三大勢力の大戦が起きてしまった事で。
久しぶりに見ている『システム』は特に異常も無く稼働しているが、人間となった隆誠には使う事が許されず、ただ見るだけしか出来ない。自身が人間に転生する際、『システムを扱う事が出来なくなり、触れる事すら出来なくなる』と言う厳しい条件があるから。
人間に転生した今も原因不明であり、それに触る事が出来ない今の自分では、もうどうしようもない事だと隆誠は既に諦めている。と言うより、最早その選択だけしかないのが実状だった。
(確か魔界で戦ったあの男は、自ら『大魔王バーン』だと仰々しく名乗っていたが……確かにそう呼ぶに相応しいほどの強さだった。全盛期の
大魔王バーンの実力は、当時冥界にいた初代魔王達の力を上回るほどの実力だった。人間となった身である今の自分が勝てるかどうか怪しいとは言え、敗北するかもしれないとの考えは一切無い。あんな傲岸不遜な勘違い魔族に負けたくない他、元神としてのプライドもある。
もしも再戦できる機会が訪れたなら、今度こそは絶対に勝つ。嘗て全盛期だった頃の
だが、隆誠には今も気掛かりな事があった。天界に戻る寸前、大魔王バーンが見せたあの構えを。
明らかに絶対の自信があるように見せていた構えだったから、恐らく最強の技を使おうとしていたのだと隆誠は推測する。
対して当時の自分も、戦いの最中に見せた『終末の光』を最大出力で放つ気でいた。いかなる防御も回避も出来ない光を放出すれば、最強の技を使おうとしていたバーンでも防ぎようが無い筈だと確信していた。今となっては、それが正しい判断だったかどうかは分からないが。
「おっと、どうやら長居し過ぎたな」
嘗ての出来事を思い出している最中、かなり居座っていた事に気付く。
第七天は聖書の神が住まう場所だから、人間に転生したとは言え、隆誠が留まっていても特に問題無い。
しかし、隆誠自身にそんなつもりは毛頭無い。如何に嘗ての住まいであっても、今の自分には分不相応な場所だと思っている。
今回此処へ訪れたのは、久しぶりに『システム』を見るだけであった。本当なら数分見た後に立ち去るつもりだったのだが、不意に大魔王バーンの事を思い出してしまった所為で、予定外に長居してしまっていた。
「それじゃ、また来るよ」
当時の自分を支えてくれた
その直後、何処かからピシッと何かが罅割れた音がした。
「え? ………なっ、あれは……!」
足を止める隆誠が振り向くと、何もない筈の空間が歪んでいる。そして罅割れた奥には、見覚えのあるモノがあった。永い年月が経とうとも、嘗て自分を強制的に吸い込んだ青白い穴は転生した今でも鮮明に覚えている。
同時に彼は混乱していた。『システム』に触れていない筈なのに、何故アレが今になって再び出現したのだと。
そんな中、青白い穴が一人分吸い込めるほどに広がった直後、まるで狙いを定めるように隆誠目掛けて吸い込み始めようとする。
「うおっ! くっ、またこのパターンかよ……!」
途轍もない吸引力で引き寄せられる隆誠だが、不意を突かれたあの時と違って、負けじと踏ん張っていた。
今回はそう簡単に吸い込まれないように遮断する為の結界を張ろうとするも、突然ドアの方からノックする音が聞こえる。
『神よ、何やら急に騒がしい音がしておりますが、どうなされました?』
「ッ! 開けるなミカエル!」
扉の先からミカエルの声がした事で、隆誠は途端に焦って思わず其方へ目を向けた瞬間、青白い穴が隙有りと言わんばかりに吸引力を急速に高めた。
「しまった! う、うわぁぁぁぁ~~~~!」
『!?
隆誠の悲鳴が尋常ではないと分かったミカエルは、無礼を承知で扉を開けた。
しかし、部屋の中には誰もいない。あるのは天界が管理している『システム』だけ。先程までいた筈の隆誠が忽然と姿を消していた。
「ま、まさかこれは、あの時の……!」
ミカエルは朧気ながらも思い出した。隆誠が嘗て『聖書の神』だった頃、突然消失した忌まわしい事件を。
「あ、あ、あああああ……!」
普段のミカエルであれば、どんな不測の事態が起きようとも冷静に対処するのだが、全く異なる事をしていた。敬慕する
その後、天界勢が全力で聖書の神こと兵藤隆誠を捜索する事になり、人間界にいる一誠達、そして冥界にも届いた事で、全世界が騒然となる大事件が起きたのであった。