元神の冒険   作:さすらいの旅人

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元神、地上へ

「はぁっ、何だか昔の自分を思い出したな……」

 

 一通りの情報と物資を提供してくれた後、創造神は俺を地上へ送る為の転送をした。何でもこの世界の天界と地上には特殊な境界線が隔てられており、それを通る為の手順が必要らしい。

 

 その途中、俺は少しばかり呆れると同時に憂鬱な気分だった。

 

 勝手に異界に呼びつけて大魔王バーンを倒して欲しいと頼んでおきながら、何一つ寄越そうとしない姿勢を見せていた創造神を見て、それが人に頼む態度かよと内心呆れた。

 

 だが、聖書の神(わたし)はそれを完全に否定出来ない。神は基本的に人間の考えを理解していない他、生活に関して全く無関心なのを知っているから。流石に全く知らない訳ではなく、俺が言ったモノはちゃんと提供してくれているが。

 

 聖書の神(わたし)も嘗て人間を愛しているとは言っても、人間達が地上でどのように生きているのかなんて知ろうとはしなかった。ただ単に自分が愛を与え、神器(セイクリッド・ギア)の恩恵を与えてる人間達は、必ず幸せな人生を過ごしている筈だと自分勝手に決め付けていたから、な。

 

 故に創造神の対応を見て、不意に思い出した。話している相手は、転生する前の聖書の神(わたし)によく似ていると。

 

 まさか異界の神が嘗ての自分と全く似た考えであったとは、ねぇ。思わず其方も人間と同じ生活をしてみたらどうだと提案したくなったが、流石に異界の神相手にそんな事は言えなかった。尤も、提案したところで受け入れてくれるとは思えないが。

 

「……ふぅっ」

 

 聖書の神(わたし)の恥ずべき記憶を思い出してる場合じゃなかった。今は地上へ着いたら、どう動くかを考えなければならない。

 

 創造神から貰った少々古ぼけた地図には、いくつもの大陸が描かれていた。ラインリバー大陸、ホルキア大陸、ギルドメイン大陸、マルノーラ大陸、残りは大陸と呼べないデルムリン島と名もなき大地の二つ。

 

 四つの大陸には人間が住まう生活圏(エリア)とモンスターが生息しているが、残り二つは異なっている。デルムリン島はモンスターだけの棲み処であり、名もなき大地には人間やモンスターどころか生物の気配が一切無いようだ。

 

 大魔王バーンが地上へ進出して拠点にする場所を考えるなら、『デルムリン島』か『名もなき大地』のどちらかだろう。地上ごと人間を滅ぼそうと計画を企てている奴が、態々人間のいる大陸に隠れ潜むとは思えない。俺が敵ならモンスターを隠れ蓑にしてデルムリン島、もしくは生物がいないのを良い事に名もなき大地を拠点に選んでいる。

 

 とは言え、それはあくまで自分の想像に過ぎない。もしかすれば、四大陸の何処かにいる可能性だって充分ある。

 

 奴と会ったのは遥か大昔である為、うろ覚え状態で断言出来ない状態なのだ。唯一ハッキリ憶えているのは、人間を脆弱な存在と見下している事ぐらいである。

 

 取り敢えず俺が行く場所は、人間が住んでいる大陸のどれかだ。いくら創造神から情報や物資を貰ったとはいえ、何の準備もなく大魔王バーンがいる拠点へ向かうなど無謀極まりない。現地へ行って、そこならではの情報や物資もあるだろうから、ある程度の準備をしないとダメだ。イッセーと修行の旅をしていた際、準備が必要だと言うの酷く痛感しているから。

 

「おっ、そろそろか」

 

 移動している出口と思わしき空間の穴があった。それには自然らしき風景があるから、恐らくアレが地上だろう。異界と言っても、聖書の神(わたし)がいる人間界と全く同じみたいだ。

 

 さてさて、聖書の神(わたし)並びに兵藤隆誠の異界冒険は此処から始まるってか。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、地上のとある地域。

 

 其処には人間ではない異形の存在がいた。いるのは逆立った赤い長髪に屈強な肉体の持ち主である魔族の男と、神官と思われる法衣を纏ったアンデッド。

 

「本当なのか?」

 

「はい。獣王クロコダイン、魔剣戦士ヒュンケルが裏切り、氷炎将軍フレイザードが殺された事で、表の六大軍団の勢力が半減しました。これは確かな情報です」

 

 アンデッドからの報告を聞き終えた魔族の男は、途端に嘲笑する。

 

「ふんっ、無様なものだ。聞けば勇者ダイとやらは小さなガキのようだが、ハドラー殿は一体何をやっている? あの男の影武者を務めている私は恥ずかしい限りだ」

 

 魔族の男は『豪魔軍師ガルヴァス』。魔王軍に所属しており、六大将軍を纏めている指揮官である。

 

 だが、ガルヴァスと六大将軍は本来の魔王軍とは少し異なっていた。

 

 正規の六大軍団とは別に、『影の六大軍団』と呼ばれている部隊が存在する。その部隊は魔軍司令ハドラーの手が及ばぬ地域に赴き、戦闘・制圧などを担当しており、指揮官のガルヴァスは表舞台に出る事を禁じられている。

 

 真っ当に任務を遂行している中、部下であるアンデッド『不死将軍デスカール』からの報告を聞いて、表舞台に立っている上司(ハドラー)の不甲斐無い結果に揶揄(やゆ)していた。

 

 すると、ガルヴァスは途端に何か思いついた表情となっていく。

 

「いや、待てよ。もしかすれば、これは好機かもしれぬな」

 

「と、仰いますと?」

 

 不意に考え始めるガルヴァスにデスカールは問う。

 

 ガルヴァスは以前から魔軍司令ハドラーの影武者を務めているのが非常に気に食わなかった。加えて辺境の地域を担当されている事にも既に嫌気が差している。

 

「我々がハドラー殿に変わって勇者ダイを始末したら、どうなると思う?」

 

「……成程。そうなればハドラー殿の権威は失墜し、ガルヴァス様や我々六大将軍が表舞台に立つことを、偉大なる大魔王バーン様は必ずやお認めになるでしょう」

 

「そう言う事だ」

 

 察しの良い部下にガルヴァスは笑みを浮かべながら頷いた。

 

 幸いにも、デスカール以外の六大将軍達は現状報告の為にアジトへ帰還している。彼等が現在担当している地域の支配はあと僅かで終わる為、多少離れたところで問題は無かった。

 

「デスカールよ、緊急会議を開く。至急全ての六大将軍達を集結させよ」

 

「畏まりました」

 

 善は急げと言わんばかりに、ガルヴァスは部下達を呼び寄せるよう指示を下した。デスカールも了承して、一旦部屋から退室しようとする。

 

 だが、直後に部屋の扉が無断で開かれた。

 

「た、大変です、ガルヴァス様!」

 

「騒々しい! 一体何事だ!?」

 

 無断で入室してきた女性は『妖魔将軍メネロ』。影の六大将軍の紅一点である女魔将軍は、嘗てない危機と言わんばかりの表情になっている。

 

 普段なら扉を無断で開けると言う無礼な振る舞いをしない筈の彼女に、ガルヴァスは怒鳴りながらも何かが起きたと察していた。

 

「と、突如見た事の無い人間が現れ、我が軍の兵士達を一瞬で倒し、ベグロムとダブルドーラもやられました!」

 

「何だと!?」

 

 予想外の報告を耳にした事で、ガルヴァスは先程までと打って変わるように狼狽し、そして驚愕した。

 

 兵士だけでなく、『超竜将軍ベグロム』と『魔影将軍ダブルドーラ』まで討ち取られた事で、影の六大軍団は嘗てない危機に襲われる事になる。




補足として、ガルヴァス達は旧ダイの大冒険の映画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 ぶちやぶれ‼新生6大将軍』に出てきた敵キャラです。

古い映画に登場したキャラ達ですが、懐かしく思って頂ければ幸いです。

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