元神の冒険   作:さすらいの旅人

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六大将軍との戦い①

「創造神の奴め、いきなりモンスターの近くに飛ばすとは何考えている……!」

 

『ギャギャギャギャ!』

 

『ウ~~~!』

 

 初めて訪れる異界の地上に足を踏み入れ、ちょっとした冒険心に心を膨らませながら移動しようと思いきや、予想外の出来事に遭遇していた。

 

 来て早々周囲には、敵と思われる魔物(モンスター)の群れが俺を取り囲んでいる。

 

「それにしてもコイツ等は……」

 

 以前に俺が楽しんでいたゲーム――『竜の探索』シリーズに登場するモンスターにそっくりだった。だから思わずゲームの世界に入り込んでしまったのかと、パニックに陥ってしまいそうだ。

 

 だが此処はゲームではなく現実であり、取り囲んでいるモンスター全員が明確な殺意を見せている。特にライオンみたいな獣系モンスターなどは腹でも減っているのか、口から(よだれ)を垂らしている。

 

『グォォオオオオオオ~~~!』

 

 俺が隙を晒したと思ったのか、ライオン型を先頭に他のモンスター達も一斉に襲い掛かって来た。

 

 一般人からすれば絶体絶命のピンチで、最早食われるしかないと絶望するだろう。

 

 お生憎様と言うべきか、自分は一般人のカテゴリーから外れた存在であり、こんな程度のモンスター如きにやられたりはしない。

 

 今も一斉に襲い掛かる多くのモンスター達に慌てる事無く――

 

「ふ~っ……」

 

 軽く息を吹いていた。

 

 直後、俺の周囲から強烈な竜巻が発生する。

 

『ゴアアアァァァァァ!!!!』

 

 中心にいる自分を除き、竜巻の餌食となったモンスターの群れは空高く舞い上がっていき、そして上空でグルグルと激しく回っている。

 

 突然の光景に、竜巻の範囲外だった残りのモンスター達は足を止め、同胞達の姿を見て唖然としていた。

 

「ふ~っ……」

 

 そして俺は上を見ながら、再び軽く息を吹きかけた瞬間、竜巻が爆弾のようにボンッと破裂した。それによって上空で回っていた多くのモンスター達は分散し、彼方此方(あちこち)へ吹っ飛んでいく。

 

 先程自分を餌と思っていたライオン型モンスターは俺の近くへ落下し、倒れた状態で地面に激突する。

 

 確認する為に視線を移すと、起き上がる事が出来ずにピクピクと虫の息状態だった。竜巻に巻き込まれた他のモンスター達も同様、再起不能状態になっている。

 

 俺がその気になれば簡単に殺すのは可能だが、敢えてそうしなかった。このモンスター達からすれば、俺は縄張りに土足で踏み込んだ侵入者だから、迎撃するのは当然だった。だから敢えて、先程の攻撃は加減して命を奪わないでいる。

 

 補足しておくと、さっき使ったのはドラグ・ソボールの極悪人キャラ『フリーズ』の技だ。残念ながら、これには技名が存在しない。原作には無いアニメオリジナル技であり、襲い掛かって来るナメクジ星人達を迎撃しようと、息を吹きかけて竜巻を発生させて瞬殺していたシーンがある。まさか地上へ来て早々、フリーズの技を使う事になるとは思いもしなかったが、な。

 

 そんあ事よりも、残りのモンスター達は俺が発生させた竜巻を警戒してか、完全に怯えた表情となってジリジリと後退していた。

 

「言葉は通じないかもしれないが、まだやるなら相手をしてやるぞ?」

 

『!?』

 

 戦う姿勢を見せる為に少しばかり殺気を出した瞬間、後退していたモンスター達は同胞を見捨てるように逃走していく。

 

 自分より強いと分かったら逃げるのは、生物としての本能だ。特に野生モンスターは本能に忠実なので、すぐに逃走するのは当然であった。

 

 俺としては、向こうが逃げるのであれば追いかけたりしない。これ以上の戦いは無意味な上に、弱い相手を甚振る趣味も無い。

 

 虫の息状態になってるモンスター達には悪いけど、このまま放置させてもらう。運が悪かったと思ってくれ。

 

 さて、取り敢えずこの場から退散するか。いつまでも俺がいたら、今も密かに俺を見て怯えてるモンスター達に申し訳ない。

 

 

「貴様ぁぁぁ! 此処を魔王軍の縄張りと知っての狼藉かぁぁ!?」

 

 

「ん?」

 

 行動を開始する直後、明らかに俺に向かって叫んでいる声が聞こえた。 

 

 空へ視線を向けてみると、翼竜(ワイバーン)に騎乗している何かが此方へ接近している。コウモリの翼を生やし、頭に角がある悪魔みたいな奴が。

 

 確か竜の探索シリーズに登場する『ガーゴイル』、だったか。俺が知ってるアレは単体で行動する飛行型モンスターの筈なのに、ドラゴンライダーみたいな組み合わせで登場するのは初めて見る。意外なパターンの登場であった為に、少しばかり驚いたのは俺の心の内に秘めておく。

 

 ………ん? ちょっと待て。あのドラゴンライダーみたいな奴、さっき『魔王軍』と言っていたな……。創造神の奴め、どうやら俺をとんでもない場所へ転送してくれたようだ。

 

 ったく。本当なら人間のいる街を回りながら情報を粗方集めて、拠点になりそうな場所を見つけてから行動したかったのに。

 

「何者かは知らぬが、この六大将軍の一人『超竜将軍ベグロム』様に見付かったのが運の尽きだ!」

 

 向こうが恰好良く名乗っているところ悪いけど、さっさと倒すとしよう。

 

 オーラを探ってみて余り強そうな感じはしないが、名前からして幹部みたいな奴だから、もしかすると力を抑えているかもしれない。何せ相手は強大な力を持つ大魔王バーンが率いる魔王軍で、俺が知る限り最も油断出来ない相手だ。警戒しておくに越した事はないだろう。

 

 先ずは挨拶代わりとして、速度が非常に早い『キルビーム』で先制攻撃を仕掛け、そこで浮足立ってるところを一気に接近して倒すのがベストだ。

 

 どうせ躱されるのが分かっていながらも、俺は右の人差し指の先から光線を二本連続で出した。それは勿論、ワイバーンとガーゴイル目掛けて。

 

「ん? 何か指先から(ひか)ッ!?」

 

「グギャッ!」

 

「…………………は?」

 

 何と俺が放った二本のキルビームはベグロムと呼ばれるガーゴイル、そしてワイバーンの額に命中し、揃って貫通した後に落下していった。

 

「おいおい、もう終わりなのか?」

 

 余りにも呆気無さ過ぎる展開に、俺は目が点になってしまった。躱されると思っていた筈のキルビームが、見事に命中するとは思わなかったから。

 

「………本当に死んでいるな」

 

 一応警戒は緩めず倒れてるドラゴンライダーを確認すると………どちらも額を貫かれて絶命していた。

 

 確かこのガーゴイルは超竜将軍とか言う御大層な異名を名乗っていたが、それに見合うほどの強さは無かった。完全に名前負けして期待外れな相手で、拍子抜けにも程がある。

 

 本当に魔王軍の幹部なのかと物凄く疑わしいほどに弱過ぎる。もしかして俺が倒したのは影武者で、本物の強いベグロムが奥に控えているんだろうか。

 

 頭の中が疑問だらけになっている中、突如背後から何かが来る事に気付いた俺は振り向く。視界には丸みを帯びた円盤状の盾みたいな物が飛来しており、明らかに自分を狙おうとしているのが分かった。

 

「よっと」

 

 接近してくる飛来物に慌てず跳躍すると、問題無く回避した。そして盾形の飛来物は素通りしていくも、ブーメランと同じく飛んで来た逆の方向へと戻っていく。

 

 その先には、明らかに飛ばしたと思われる存在がいて、直後に戻って来た飛来物は相手の両肩に収納された。

 

 見た感じだと全身甲冑だが、アレには禍々しい闘気(オーラ)だけしか感じられない。恐らくリビングアーマー、と言ったところか。竜の探索シリーズに出る甲冑系モンスターの中に、ああ言うのがいたのを憶えている。

 

「貴様! よくもベグロムを!」

 

 リビングアーマーが死んだ奴の名前を叫んでいるのは、明らかに仲間である事が丸分かりだ。

 

 呼び捨てで呼んでいるとなれば、奴も幹部の一人と見るべきか。

 

 さっき倒したガーゴイルと違って少しは期待出来そうだが、本当に強いのかと疑問を抱いてしまう。

 

 けれど、変に油断するとやられてしまう可能性があるかもしれないから、このまま手を緩める事無く攻撃を仕掛けようと決意する。

 

 地面に着地した瞬間、俺は超スピードを使って姿を消す。

 

「逃げたか!?」

 

 リビングアーマーが何やら勘違いをしていたので――

 

「こっちだ」

 

「ガッ!?」

 

 思わず突っ込みを入れながら回し蹴りをした。

 

 背後からの攻撃をモロに喰らったリビングアーマーの胸部辺りが砕かれるように無くなり、上半身と下半身が分かれてしまい、そのまま倒れてしまう。

 

 相手は普通の物理攻撃じゃ倒せない相手なので、俺の足が当たった瞬間、オーラを注ぎ込んでおいた。聖書の神(わたし)の光は浄化できる力があるので、リビングアーマーの源になっている禍々しい闘気(オーラ)を消させてもらった。故にコイツは鎧の置物状態になって、もう二度と動く事は無い。

 

「う~ん……さっきのガーゴイルと同様、コイツも全然強くないなぁ……」

 

 魔王軍の幹部がたった一発の攻撃で倒されるって、余りにも情けない姿だ。

 

 大魔王バーンは何故こんな奴等を幹部にしているのかが、全くと言っていいほど理解出来ない。

 

 疑問は深まるばかりだが、取り敢えず残りを倒すとしよう。さっき倒したガーゴイルが『六大将軍』とか言ってたから、まだ他の将軍もいる筈だから。

 

 自分がいる地上の周囲を探知してみると、禍々しい闘気(オーラ)と思われる存在が五つほど感じ取れた。恐らくコレが魔王軍だろうと、俺は改めて認識する。

 

 不本意だが、もう既に敵対した以上は片付けるしかないので、俺は飛翔術を使って敵の本拠地へ向かう事にした。

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